シン・ゴジラ(第四形態)の評価・レビュー
全身
初代ゴジラ(1954)をオマージュした頭部
シン・ゴジラと言えば感情が読み取れず、どこか虚ろにも感じる小さな目。
人間の目が着想になっていて、庵野秀明監督は白目と黒目の比率にこだわって作られていました。
俯き加減で視線がやや下向きなのは初代ゴジラ(1954年版)と同様です。
また、牙は揃っておらず非常に歪な歯並びになっています。
この辺りも非生物的です。
平成のVSシリーズ以降、ゴジラは恐いながらも格好よく凜々しい顔付きになりがちでした。
それを一気に方向転換させて、不気味で恐ろしい、ホラー要素を強めた造形になりました。
これは初代ゴジラを踏襲したものです。
爛れたように赤く身体
シン・ゴジラの皮膚は赤味が強く、爛れているように見えるのが特徴的です。
『ゴジラVSデストロイア』のバーニングゴジラみたいな、メルトダウンを始めている燃えるような身体とも大きく異なります。
ゴジラのゴツゴツした皮膚は原子爆弾の被爆者をイメージしていることは有名ですが、シン・ゴジラもそれに通じるような、痛々しさすら感じます。
これもまたゴジラの全体に不気味なイメージを与える要因です。
また背びれの複雑な形状も細かく再現されていました。
神聖さを与える上向きの手
シン・ゴジラは全身フルCGで作られていますから、スーツアクター的な『中の人物』はいません。
しかし、スーツによる怪獣の演技は日本特撮にとって重要な要素でもあります。
その伝統的な要素を取り込むことで客の心を動かすゴジラの動きができると樋口真嗣監督は考えました。
そこで人間の動きをデジタルデータとして記録モーションアクターを採用。
そのアクターには狂言師の野村萬斎氏が起用されました。
シン・ゴジラは元々上半身は動かない設定で、野村萬斎氏の動きは激しさよりも厳かさを感じさせます。
そしてゴジラには神性さを強調するため、あえて掌を上に向けさせました。
CGだから成り立つ極太の尻尾
シン・ゴジラの尻尾は特に太さと長さが際立ちます。
脚も相当太いですが、それと比較しても尻尾は生え際からしてその大きさが目立っていますね。
そして尻尾には途中から熱線まで吐き出せるようになったもう一つの顔。
これまでと一線を画すシン・ゴジラならではの要素と言えるでしょう。こちらもちゃんと顔の形のような造形になっていました。
よく見ると歪な足爪
ちなみに東宝怪獣コレクションの爪の色合いは明るめで、原典よりも割と目立ちます。
しかし、よく見るとゴジラは指先以外にもまるで芽のように指らしきものが出て、そこからも爪が生えているのです。
これにより、実は爪が異様な生え方をしているのが強調されてわかりやすくもありました。
生物でありながらどこか非生物的で、恐怖心を煽る異様さ。同時にどこか厳かな神性を帯びている矛盾。
歴代のゴジラよりも、相互理解の不可能な怪物にして荒神。
その特徴は押さえて再現されたフィギュアでした。
なお、初代ゴジラとの圧倒的な体格差があり、そちらについては下記の記事で実際に比較しています。