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【解説・考察】ガンダムとジークアクスの違いを正史と比較!|チート系主人公と化したシャアと二つの大きな転機

これまで親しまれてきた宇宙世紀の世界観を土台にしつつも、全く異なる展開を見せる最新作ジークアクス。かつての名シーンやキャラクターが、思いもよらぬ形で再構築されているのが大きな特徴です。

とくに物語の起点から分岐し、象徴的な人物の行動やモビルスーツの開発計画までが大幅に改変されています。従来の認識をくつがえす出来事が連続する中で、「何が変わったのか」「どこが重要なのか」を明確にする必要があります。

本記事では、物語や世界観における主要な差異を中心に、正史との対比を通じてその魅力と意味を徹底解説します。

この記事を読むとわかること

  • ジークアクスと正史ガンダムの世界観や展開の違い
  • シャアや主要キャラクターの立場と人間関係の変化
  • モビルスーツや戦術の進化と歴史の再構築

出展:機動戦士Gundam GQuuuuuuX

最大の転機は序盤に訪れるシャアの変貌

作品序盤で起こる、シャア・アズナブルの異常とも言える覚醒が、物語全体の方向性を根底から変えていきます。

従来の流れでは遅咲きだった覚醒が、今回はごく初期から全開放されることになります。

この変化が、多くの歴史的事件の順序や結果に大きなズレをもたらし、観る者に強烈なインパクトを与える大きな要因となりました。

異例の早さで能力が開花し、歴史が動き出す

最も衝撃的なのは、シャアがニュータイプとして驚異的な覚醒を果たすタイミングの早さです。

シャアのニュータイプとしての資質は、続編のZガンダム以降で発揮されていた印象が強いですが、今回は序盤の段階で強大な直感力と戦術眼を発揮します。

この早期覚醒がトリガーとなり、彼の行動が本来の歴史を塗り変えていく展開が続きます。

新たな戦力として手にした白い機体の運命

その結果として起きたのが、地球連邦の切り札であった機体の鹵獲です。

本来ならばデニムとジーンが偵察に向かい、ジーンが暴走することによって作戦が失敗します。しかし、ニュータイプの直感からシャアはジーンを置いて、自分で出撃することを選びました。ここが歴史の大きな分岐点となったのです。

白いガンダム(RX-78-2)は、シャアの手によって赤くリペイントされ、新たな象徴機として再誕しました。

しかもこの機体には、ビット兵器が搭載されており、サイコミュ機能を強引に詰め込んだ仕様という設定が加わります。

そしてガンダムを取り戻すために現れたのが、同型のRX-78-1のプロトタイプガンダムです。こちらもファーストガンダムの正史では設定のみで登場はしていません。
ガンダムVSガンダムという美味しいイベントと共に、シャアの技量を見せようとしたのでしょう。

このように、シャアという存在が圧倒的な才能を持って初期から物語を駆動する構図が、従来とは大きく異なっています。

序盤でのこの変貌は、今後のすべての分岐に影響を与える『根源的な変化』と言えるでしょう。

ジークアクスはアムロ・レイのいない世界線なのか?

もう一つの変化として本来ここに現れるはずだったアムロ・レイの姿がありません。

ガンダムの父親テム・レイの姿があったこと、また正史ではハロはアムロが開発したものが後に市販化された設定があります。

このことから、アムロ自身はどこかにいるのではないか説も存在しています。

ただし、ハロは後に元々市販化されたものをアムロが改造した設定に変化している作品も複数あります。こちらの設定を使用していた場合は、アムロがおらずともハロの存在は矛盾せず成立します。

しかし、今回一年戦争の脚本担当はあの庵野秀明氏であることはとても重要です。

庵野秀明氏はシンゴジラやシンウルトラマン、そしてシン仮面ライダーでも、とにかく原点の設定を愛し重要視します。
ジークアクスでも、ホワイトベースは強襲揚陸艦なので、ジークアクス時空ではちゃんと強襲揚陸させることに対して並々ならぬ執念を燃やすような人物です。
(残念ながらTV放送では削られた部分の一つですが……)

また、絵コンテ、原画、デザインワークスなどでも参加しているため、あの庵野秀明氏ならばハロの設定はアムロが作った案を採用したがるのではないでしょうか。少なくともハロの設定を雑に扱うことはないと思うので、何かしらの理由付けはあると考えます。

艦船の役割が逆転、象徴的な母艦の運命

戦局を左右する要となる艦船が、今作では本来とはまったく異なる立場で登場します。

その艦船は、元々は地球連邦軍の切り札として知られていた存在でしたが、今回の展開では意外な転機を迎えます。

この変更がもたらす影響は、単なる兵器の移動にとどまらず、陣営の象徴性すら塗り替えるほどの大きなものでした。

本来の持ち主から奪われ、敵勢力の旗艦へ

元々連邦側が運用していた艦船は、ジオンによって鹵獲されるという驚きの展開を迎えます。

これにより、本来は正義の拠点として描かれていた艦が、敵対勢力の中核として再登場することになります。

戦術的にも大きな利得をもたらすこの鹵獲劇は、象徴的意味合いの強い艦船を舞台にすることで、物語全体の印象を大きく塗り替えています。

改名の背景に見える価値観の違い

この艦船は鹵獲後、『ホワイトベース』から『ソドン』という名に改められます。

単なる名称の変更に見えて、実際はジオン側から見た価値観の表現として、非常に象徴的な行為です。

俗っぽいという理由で名が変えられるという演出は、登場人物たちの美学や組織の方針の違いを印象付ける一幕でもあります。

このように、艦船ひとつをとっても、物語上の立ち位置が大きく変わり、それに伴う意味の再定義が行われています。

また機体色の変更はジオンの象徴化だけではなく、本来与えられていた役割の変化でもあります。
ガンダムの色が派手だったことを、シャアは陽動目的ではないかと予想しました。

実際にガンダムとホワイトベースは、本編だと陽動や時間稼ぎ的な目的で運用されることが多く、シャアはニュータイプの直感でそれを読み取った可能性があるのです。

単なる兵器ではなく、そこに込められた思想や歴史の重みが、改めて問い直される構成になっています。

なお、ガンダムとホワイトベースが占めていた一年戦争の役割については、前回の記事で詳しく解説しています。

開発の方向性がまるで違う兵器体系

両陣営のモビルスーツ開発計画にも、大きな違いが生まれています。

連邦からガンダムが消えて、ジオンがリバースエンジニアリングで逆にガンダムを解析。

採用された機体や量産計画に明確な違いが見られ、勢力の意図や戦術的判断が色濃く反映されています。

強力な機体の量産に成功した勢力の余裕

ジオン側では、ガンダムの鹵獲によっていきなり先進的な技術が手に入り、以後の生産計画もこの技術を元にしたものとなりました。結果として、本来の次期主力MSであったゲルググと、主力候補であったギャンの姿がなくなりました。

そして従来は試作段階にとどまっていた大型モビルアーマー『ビグ・ザム』が量産化されています。

このことは、資源や技術の面で大幅な余裕があることを示しており、汎用的な動きが可能なMSに加えて、戦局を一気に変えることができる極地的な火力が配備されている証でもあります。

また、開発にかかる判断の速さやリスクを取る姿勢も、正史とは異なる思考プロセスを感じさせる部分です。

本来の主力機が影を潜め、異なる機体が前面へ

一方、連邦側では『ジム』が主力機として採用されず、代わりに『軽キャノン』と呼ばれるガンキャノン系統の量産機が登場します。

これは、そもそもガンダムが取れなくなったことへの弊害が最も大きいでしょう。

それ以外にも、ホワイトベースが不在でジオンへの陽動ができなくなったことも関係している可能性があります。そのため前線での火力重視や防衛戦における持久性を優先した選択とも取れ、従来の量産思想とは方向性が異なっています。

結果的に、両陣営ともに開発方針そのものが変化しており、機体の種類や役割にも明確な差が生まれています。

このように、開発計画という裏側の変化が、実際の戦闘や戦略に直接的な影響を与えており、物語の世界観に深みを与える要素となっています。

同じ機体が登場していても、それが持つ意味や使われ方がまったく違うという点が、今作の大きな魅力のひとつです。

パートナーの交代がもたらした心理的な変化

登場人物同士の関係性もまた、本作では大きく再編されています。

特に重要なのは、精神的な絆や象徴的な関係を築いていた人物の不在と、それに取って代わる形で新たに関係が描かれる点です。

これにより、キャラクターの内面や行動原理にまで変化が生まれ、物語全体の雰囲気に影響を与えています。

象徴的な人物の不在と、新たな相棒の登場

本作では、シャアにとって精神的な支えでもあったララァが登場していません

代わりに、シャリア・ブルがシャアと信頼関係を築く人物として登場します。

正史においてシャリア・ブルとシャアが直接出会うのは、シャアがララァをパートナーとして擁立した後です。

そのためシャアはジオン内の立場上から彼を邪魔な存在と見ており、協力することはありませんでしたが、本作では二人が『マブ』となる程に親密な関係となっています(なお、マヴはジークアクス特有の設定)。

シャアの思想的な変化

正史のシャアは自分がニュータイプではなく(少なくとも自覚が全くない状態で)、ララァと出会ったことにより、人類の変革に対して非常に大きな衝撃を受けていました

今回はそれがなく、正史では途中期にあったシャアの思想がブレブレになる展開がありません。
ニュータイプが新たな人類の変革を起こすと見ていながら、本来の目的であったザビ家への復讐もそのまま一切変わらない状態です。
(こちらも劇場版Beginningでは描写されていました)

機体に込められた技術と役割の再構築

かつてララァが搭乗していたニュータイプ専用のモビルアーマー『エルメス』は登場せず、その代わりにビット兵器を搭載した赤いガンダムがその役割負いました。

この機体は、サイコミュ技術を搭載するために内部構造が無理に改造されており、劇場版のBeginningではコクピットが狭いといった描写も見られます。

また、この赤いガンダムは後に別のキャラクターに引き継がれることで、新たな象徴としての役割を担うようになります。

ビットによって次々と連邦軍を撃墜していくシーンは、本来だとエルメスによって成されており、それを眺めるシャリア・ブルの立場がシャアでした。

なお、劇場版ではシャリア・ブルのサイコミュ搭載モビルアーマー『ブラウ・ブロ』は健在でしたが、名前は『キケロガ』に変更されていました。

シャリア・ブルという人物像の変革

またシャリア・ブルはニュータイプとして有能だったが故に苦悩の多い人物でした。ギレンにとっては心中を読まれる邪魔者と思われ、キシリアからも利用される対象となり、政争の道具として扱われたのです。

それに上手く世渡りすることができないため、シャリア・ブルは自身を不器用だと表現していました。しかし、ジークアクスではシャアがその『世渡り』を助けてくれるパートナーとなりました。

そうして不器用だった男は、シャアから様々な機微やしたたかさを学んだのでしょう。ジークアクス第一話時点では、しれっと使用しない約束のオメガサイコミュを持ってきて起動させるなど、飄々とした性格へと変化しています。

それに合わせたデザイン的な変化も見て取れます。だからこそ、シャアがシャリア・ブルに与えた影響の大きさと、シャリア・ブルがシャアを探す情念の深さが窺えます。

このように、人物関係の再構築とモビルスーツの役割変更が組み合わさることで、作品に独自の心理的な深みが生まれています。

勢力の存亡すら異なるもう一つの歴史

本作における世界線では、戦争の終結や組織の存続に関わる重要な出来事までもが正史とは大きく異なっています。

特に、これまでの歴史の中で命を落とす運命にあった人物たちが生き延びているという点は、視聴者に強い違和感と驚きを与えます。

その変化が、後の戦局や世界のあり方にどのような影響を及ぼすのかは、作品の根幹に関わる重要な要素です。

全滅を免れた重要人物たちの存在

正史では戦争の激化とともに次々と命を落としていったザビ家の面々が、本作では異なる運命をたどっています。

特にドズル以外の家族が生存しているような描写があり、これは組織としてのジオンが長期的に存続しうる可能性を示唆しています。

また、ガルマは劇場版だと軍を離れて民間の道を選んでおり、その背景には恋人イセリナとの関係が関わっていることも示唆されています。

ドズルについては生死不明ですが、本編と同様にソロモンが地球連邦に奪われているので戦死した可能性は十分にあるでしょう。
ただし、本編で彼が望んでいたビグザム量産の計画が叶っているので、仮に戦死していても本望と言えるかもしれませんね。

また、ジオン公国を建国したデギン・ザビについても触れられていませんが、本編開始時点で半ば隠居状態だったため大きな影響は与えないと思います。
その上で、ジオン有意に進んだ戦局だと、デギンが死亡したイベント自体が発生しなかった可能性は高いでしょう。

今後の歴史に対する影響

とりわけ重要なのは、キシリアとギレンの双方が生存していることです。
この二人は人類の変革というビジョンを互いに有していますが、その方向性は全く異なります。

キシリアはニュータイプをサイコミュによって兵器利用していますが、同時にニュータイプの持つ力による人類変革の可能性も見出しています

冷徹な女であると同時に、シャアの正体をわかった上でニュータイプの人類変革という未来のためにあえて取り込む、柔軟な思想の持主でもあります。

ギレン・ザビはザビ家の長男でありジオンの総帥。そして軍人としては非常に優秀な男でしたが、同時に先鋭化された選民思想で民衆を扇動する危険人物の側面もあります。

第二話でキシリアがギレンの人類変革を言葉だけな扱いをしていたのはこのためです。

ジオンが連邦に勝利した以上、この二人による政争がジオン内で発生しているのはほぼ間違いありません。その内実によって、ジオンの現状は大きく変化するでしょう。

最終局面の舞台が示す未来の違い

従来の歴史ではア・バオア・クーが最終決戦の舞台となっていましたが、本作では『ソロモン落とし』という新たなクライマックスが描かれています。

この作戦は、宇宙要塞ソロモンを拠点とした戦いであり、時系列的にも構成的にも大きな転換点となっています。

劇場版では、その中でも特に重要とされるシャア視点でのゼグノヴァ現象の発生までの流れがカットされているため、今後の本編や別メディアでの展開が期待されます。

このように、人物の生死や戦いの舞台までが変わることで、同じ登場人物でもまったく異なる運命が用意されています。

結果として、歴史そのものが塗り替えられたような印象を受ける世界観が、本作の大きな魅力となっています。

もう一つの世界が描く可能性のまとめ

物語を通して描かれたのは、もしもという仮定のもとに構築された、もう一つの宇宙世紀の姿でした。

これまでの正史で積み上げられてきた設定や人間関係が、まったく異なる形で再編されているのが本作の大きな魅力です。

その背景には、単なる変化にとどまらない、明確なテーマと新しい視点があります。

既存の常識を覆す設定変更の意義とは

本作が提示しているのは、正史の裏返しとしての世界ではなく、あくまで同じ素材を用いた再解釈の試みです。

象徴的なキャラクターが別の立場に立ち、名シーンが異なる形で描かれることにより、既存の常識が一度解体されていきます。

そして、視聴者自身がその違和感を楽しみ、納得し、新たな意味を見出していくことが意図されているように感じられます。

過去を知るからこそ楽しめる、もう一つの宇宙世紀

本作の魅力は、正史を知らなければ理解できない仕掛けが随所に散りばめられている点にもあります。

そのため、シリーズのファンであればあるほど、登場人物の変化や戦局の違いに深く興味を持てる構成になっています。

まさに、これまでの宇宙世紀の知識があるからこそ成立する、もうひとつの歴史体験と言えるでしょう。

まとめると、本作は原点へのオマージュでありながら、まったく新しい物語として力強く存在しています

変化を受け入れ、その意味を考察する過程こそが、この物語をより楽しむための鍵となるのではないでしょうか。

また、他にもファーストガンダムをセルフオマージュしているをシーンや演出がまだまだ数多くあります。未視聴のジークアクスファンの方は是非とも視聴して、ガンダムの奥深さを楽しんでもらえたらと思います。

この記事のまとめ

  • ジオンのシャアが序盤で圧倒的に覚醒し、ガンダムを鹵獲
  • ホワイトベースはソドンと改名され、ジオンに運用される
  • ビグ・ザム量産、ジム消滅などMS開発計画が大幅変更
  • ララァの不在により、シャアの相棒がシャリア・ブルへ交代
  • 赤いガンダムにサイコミュとビット兵器を無理やり搭載
  • ザビ家が全滅せず、一部は生存している可能性が示唆される
  • 最終決戦の舞台がソロモン落としに変更されている
  • 人間関係・思想・戦術までもが連鎖的に変化した構成

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