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仮面ライダーBLACK SUN【ネタバレ感想・考察】敗者達の希望と悪の連鎖

2022年11月13日

前書き:仮面ライダーBLACKの特殊な立ち位置

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

50年に渡る仮面ライダー史において、仮面ライダーBLACKはかなり独特な立ち位置にあると私は思っています。

熱狂的な直撃世代が多数いながらも、そこから外れるとさして興味を持たず、昭和ライダーとして一括に考える人もまた多いです。
むしろあまりの温度差から、熱い最強キャラ語り(主にRX)に辟易していた世代すらいます。

明確な昭和ライダーでもなく、かと言って平成ライダーには決してカウントされない。近い期間の作品群とも毛色が違います。

私はBLACKのリアルタイムからは外れた世代です。
幼少期にビデオで観ましたが、記憶にはあまり深く残っておらず、TTFCやニコ動の配信でRXと共に部分的に見返した程度。

そのため根強く残る熱烈なBLACKとRX信仰を、私は持っていません。
むしろディケイドに倒され、時代の流れで最強ライダーの代名詞を喪失した姿の方が印象に残る世代でしょう。

ならばBLACKアンチかと言われると全くそんなこともなく、漫画版はしっかりと全巻読破しており、我が家のフィギュア棚にはブラックとシャドームーンの真骨彫フィギュアが並んでいます。

今回はニュートラルな側の人間として、純粋にBLACKSUNとしての感想と考察を中心に書いていきたいと思います。

まずはネタバレのない部分から始めていきましょう。

第一章:BLACKSUNが賛否両論のシリアス作品扱いされる理由

魅力的だがかなり人を選ぶ作品性

今回は先に結論を述べておくと、面白い部分は結構あって楽しめたのだけど、抱えている問題も同時にまたかなり大きい作品だった。

いやうん、面白いよ。第一話から丁寧に雰囲気作ってから終盤の暴走でこのトンチキめとか思ったけど、それはある意味では本作の味だと思う。
根幹のテーマ性も好きなので、嫌う人も多い衝撃的なオチも個人的には全然オッケー。むしろブレさせずよく描ききった。

でも、世界観があまりに大胆不敵に破綻していて、大人向けの特撮ドラマとしてはちょっと無視できないレベル。

まず、視聴者として合う合わないは、最初の数話でかなりハッキリ分かれる。
特に世界観とアクションの方向性でうーんっ……っとモヤモヤを抱えると、それが最後まで解消されることはないだろう。
終盤で物凄い暴走をかますけど、それはそれとして根底の作品性に対するブレはない。

不特定多数に向けた「オタクくんってこういうの好きなんでしょ?」ってタイプの作品では全くない。
「シリアスな大人向けに作ってるんだからそもそもオタク向けじゃねーんだよ!」と言えばその通りではあるが、じゃあ真っ当に一般向けかと言われると、そっちもノーだ。

世界観はまず間違いなく大人向けであるが、細部の作り込みについてはツッコミ所だらけである。
また大人向けの方向性が、かなりゴア描写にも向けられていた。

ただし純粋に視覚的なゴアは多めだが、アマゾンズシーズン2の方が、一シーン単位でより効果的に精神へのダメージを与えてきた。
ある程度慣れている人にとってはスパイス程度で済む。逆に根本的にゴアが苦手という人には十分アウトだろう。

そして最大の問題点として、本作は全編に渡って根深い差別問題を取り扱っている。
差別描写は明らかに意図して不快感を強く煽るストレスの多い展開が続く。全編を通してそれを吹き飛ばすカタルシスシーンは少ない。
作品の視聴でストレスを感じると、話をスキップしまくる倍速視聴時代に真っ向から挑んだ。この姿勢は個人的にとても好きだ。

ツイッターでは、現実社会と被る問題を扱っているから、アマゾンズより大人向けかつ一般人を対象にしていると語るツイートもあった。
だが、単に社会派ドラマだからリアリティがあるかと言われれば、それも首を傾げる。

差別描写がリアルかと言えば、先に述べたよう穴や矛盾が多く、強引な展開も散見された。大人向けなら細部の作り込みにもっと力を入れて欲しかった。
(具体的な問題点やそうなった理由等の考察は、ネタバレ有りパートで細かに語る)

かと思えば、随所に入る原典BLACKの設定や、ムードがあり過ぎる舞台の画作りはオタクが好む扱い方になっていた。
しかし、これがまた現実感を重視する舞台設定と相容れない。

本作は仮面ライダーBLACKというオタクが大好きな料理に、人種差別やマイノリティを取り扱う社会派ドラマという、オタクが大嫌いな調味料をドバドバぶっかけた。
一方でセンシティブな社会問題や舞台設定の組み立て方が雑でリアリティがない。

作品全体で見たバランス感覚がチグハグで、総合的にみてこの作品はどの層に向けて作られているのかよくわからなかった。

BLACKSUNの要は雰囲気を愛せるか

本作は基本的に物語の純然たる完成度やエンターテイメント性よりも、作品が醸し出す雰囲気重視で描かれている。
画作りや怪人のデザイン、物語の展開についてならば、私も好みな部分が多い。

仮面ライダーアマゾンズは一般向けドラマに寄せていたけど、東映特撮特有の空気感もしっかり残っていた。
だからオタク受けは良かったが、それは同時にケレン味でもあり正真正銘の一般人には刺さり難い要素でもある。

対して、BLACKSUNは邦画寄りな世界観と、それにバッチリ合う画作りをしている。
醸し出す雰囲気だけなら、歴代作品の中でも頭一つ抜けて大人向けだと言われても納得できる。

どちらかと言えば漫画寄りな泥臭い格闘戦も、その雰囲気とよくマッチングしていた。
南光太郎役の西島秀俊氏の、くたびれたオッサンとイケオジを両立させるキャラ性とアクションはあまりに完璧。ハマり役とはまさにこのこと。
それに対する中村倫也氏を当てたのも本当に素晴らしい。倫也氏は現在と昔、双方のファッション性も比べてみてほしい。

BLACKSUNにおける南光太郎と秋月信彦は、この二人しかいないと心の底から思わせてくれた。

ただ、作品としての怪人に対するアイデアや物語の構成は、挑戦的ながらも目新しさは感じられなかった。
ぶっちゃけどっちも先に平成前期の傑物達が果敢に挑んでいるので、こっちはこれ○○○で観たやつだと赤ペン先生気分である。

それでも、要所要所でツッコミまくりながらも、途中で視聴を切ろうとは思わなかった。
最後の異様な爆発力にカルト映画を観ている気分になりつつ、なんやかんや好意的に観ている自分がいたのだ。

言うなれば、BLACKSUNは作品丸ごと引っくるめて、雰囲気イケメンである。
全編通して存在する差別問題は、物語や描きたいテーマ性に対する味付け。言わば調味料だ。
けれど、その調味料はかなり濃い目になっており、しかも配合具合もかなり雑多なので、料理としての出来栄えは色々と問題がある。

BLACKSUNはジャンクフードからは程遠い。しかし美食とも呼び難くて、やたらと癖が強い。ある意味奇跡的なバランスの珍味なのだ。

この癖のある味がたまらない人にとっては唯一無二の名作になり得て、全く合わない人にとってはトンデモなゲテモノ料理になってしまった。

そのため本作は『仮面ライダー50周年として生まれた、かつての名作リブートだ!』という方向性で見るとかなり戸惑うだろう。
在り方として正しいかはわからないけれど、私は記念碑よりも作品として面白いかの方が遥かに重要である。

私にとって仮面ライダーの理想は、珍味でありながら見事な調理方法で美味に仕上げてくれることだ。
そのため、癖の強さがそのまま視聴者の好みに直結してしまう本作を、手放しに褒めることは難しい。

しかし、この珍味さが本作の持ち味であることも確かだ。
平成二期以降に増えてきた、テーマが異なる割には似た展開が続くテレビシリーズよりも(私が個人的に求めている)仮面ライダーらしさはしっかりとあった。

それ故に、新たな客層を取り入れる間口を広める一般向け仮面ライダーではない。
また、オタク達が仮面ライダー作品に触れる初心者向け作品でもない。

仮面ライダーオタクがTVとは新しい味付けを求めるならば、長い歴史の中でも癖の強さはピカイチな作品。それがBLACKSUNの位置付けではないかと思う。

後、視聴する気の人はこれだけは強く言っておきたい。
最終話のあらすじだけは絶対本編視聴前に観ず、また必ず視聴後に確認すること。

終盤の暴走とカルト作品具合をよりハッキリ感じられ、私は思い出す度に無限に笑える状態に突入した。ある意味で一生ネタにできる。

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