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【仮面ライダーゼロワン】2話 感想 ゼロワンとバルカンの対比構造はスーツにまで及ぶ

2019年9月4日

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仮面ライダーゼロワン 2話『AIなアイツは敵?味方?

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

今週は二号ライダーのバルカン登場回であると同時に、或人が仮面ライダーとして己の使命を自覚する話でもありました。
対比構造でキャラに深みを出す演出が随所にちりばめられています。

ストーリーは前回に続いて重い内容を、明るい作風で上手くカバーしてライトな作品として保たれていますね。
或人のギャグをライトまで持ってサポートするイブ。そしてまたギャグの解説までしちゃう。
もう説明までが一つのコントとして成立していて、早くもコンビ感が出ています。

感想を見ると『一期の方が陰鬱なので重いという人がわからない』という意見も見かけました。
今はあまり重過ぎたり陰惨すぎたりするとコンプライアンスに引っかかるので、そういう風に見えないよう上手く構成しているのだと思います。

腹筋法改太郎もマモルも、どちらももっと陰惨に見せようと思えばできたでしょう。
そこをあえて重くなりすぎないよう配慮しつつ、本作のテーマ『AI』に深く結び付けていました。

SF的に見れば利用されるAIやアンドロイドは、どの角度で見るのかで考え方は大きく変わっていく。
不破の登場でそういう構造も見えて、より深くテーマへの問いかけ準備ができたように感じます。

では、今回の感想と考察を始めていきましょう。

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ヒューマギアの善悪はマモルだけで判断してはいけない

第二話は飛電或人と不破諫の主張差に重きを置く構成で、かなりわかりやすく対になるライダーとして描かれていた。
それこそエグゼイドだと患者の心まで救おうとする宝生永夢と、患者には極力関わらない主義の鏡飛彩くらい真反対だ。

或人は主人公らしく「ヒューマギアは人類の夢だ」と考えており、明るい未来を信じている。
対して不破は「ヒューマギアは人を傷付ける人類の敵だ」と断言した。

どちらも極論だが、一見するとポジティブな或人の方が正論に聞こえる。
ただし、現実としてヒューマギア暴走したことで起きた『デイブレイク』は、ヒューマギアを伏せた上で事故として処理されている。
この隠蔽に飛電インテリジェンスが何かしら絡んでいると考えることに違和感はなく、見極めは当然必須だ。

飛電インテリジェンスは社内にマギアが現れて暴れたことすら防犯訓練と言い張る。
社長がどうだったかは不明だけれど、副社長がこれなのだから、会社規模で隠蔽体質が染み付いていてもあまり不思議ではない状況だ。
実際に暴走したヒューマギアに襲われて、クラスメイトを失い自分も殺されかけている不破からすれば、疑念と憎悪を抱く理由としては十分と言える。

或人もデイブレイクの現場に居合わせ、対称的に父親として慕っていたヒューマギアに命を救われていた。
そして警備用ヒューマギアのマモルが、身を挺して人々を守った現場も見ている。

確かにヒューマギアは人々の役に立つ存在だ。
けれど或人には恐らく、ヒューマギアは人の手によって作られたものだという認識が不破よりも薄い。

人の手によって作られた以上は、パソコンやスマホ同様に人が利益を生むための道具だ。
いくら道具として優秀でも、そこには必ず人の思惑が絡む。
そして道具は道具である以上、善意にも悪意にも簡単に姿を変える。
その本質的な部分が或人には見えていないのではないだろうか?

例えば、副社長がヒューマギアの暴走事実を隠蔽しようとした行為は褒められたものではない。
或人はその事実を認めて、サイバーテロリスト集団『滅亡迅雷.net』の存在を告発した。

『滅亡迅雷.net』がヒューマギアのAIを乗っ取って暴走させているのは事実である。
けれど、暴走させてしまうシステムの虚弱性があるのもまた同じく事実。
悪用する者が最も悪いにしても、悪用されてしまう隙があるのは開発者側の反省すべき問題だ。

会社のことを考えれば、対処も考慮しないまま安易に全ての事実を発表した姿勢もあまり正しいとは言い難い。
同脚本家のエグゼイドでは、色々鑑みてバグスターウィルスの公表をある程度控えていたので、意図してやっている可能性はある。

そして『滅亡迅雷.net』が暴走させる手順を何故知っているのか。
そこに飛電インテリジェンスの内通者が絡んでいる可能性は、本来社長ならば疑ってしかるべきである。
特に或人は社内の人材まともに把握していないので、余計に手放しで信じる理由がない。

システムが複雑であればあるほど、そこには必ず多くの人間の意思が絡む。
ヒューマギアが人を傷付ける人類の敵なのだとしたら、それはヒューマギアではなく人間の悪意だ。
妄信的にヒューマギアを信じるという行為は、開発に関わった数多の人間がほぼ全員善人だったと信じ込むに近い。
或人はヒューマギアを信じていても、その裏にある人の意思には無頓着なのだ。

全てはヒューマギアを操り暴走させる『滅亡迅雷.net』が悪いと言い切ってしまうのは、一見正論に見えてその実は思考停止とも言える。

ヒューマギアを敵とみなす不破は、同時に飛電インテリジェンスを強く敵視している。
こちらも深いトラウマによって妄信的にヒューマギアを敵と思い込んでいるのは問題だが、少なくともヒューマギアの裏側にある人間の意思を無視してはいない。
というか無視して捜査は無理だ。『ヒューマギアが人類の敵』は言葉面ほど安っぽいものではない。
現状どちらが正しいかなんて、本来は安易に判断できるものではなく、故にこそ対比として成り立つ。

前回の腹筋崩壊太郎は純粋にAIにある心を語るものだったが、不破諫が登場したことでAIに対する着眼点が増えた。
これもまたAIを掘り下げる重要な要素になっていくだろう。

とはいえ、或人が善意のヒーローであることは間違いない。
社長の責任はゼロワンとしてマギアを倒し、首謀者である『滅亡迅雷.net』を捕まえることで果たそうとしている。

これは或人が心からヒューマギアを信じているからできる行為であり、自分の心を締め付ける戦いでもあるのだ。
或人は先代社長の祖父がマモルと名付けた警備用ヒューマギアの怪我にバンダナを巻いた。

それはヒューマギアを人と同じく意志ある者として扱う行為。
そしてマモルは自分の仕事を認められたことで笑顔を見せた。
二人の間には確かな信頼があっただろう。

けれど、一旦心を書き換えられてしまうと、ヒューマギアはもう別物になってしまう。
それはヒューマギアにとって心が書き換え可能なシステムであるために他ならない。
どれだけ人と同じようにして大切に扱ったとしても、人とAIが越えられない壁は確かにある。

そうなるともはや破壊するしか人間を守る術はない。
そしてその役目を果たすのが、社長であり唯一ゼロワンを扱える飛電或人。

「お前を止められるのはただひとり! 俺だ!」

ゼロワンとしての決め台詞は、早くも社長として或人の覚悟を示す言葉となった。
このことから第一話と二話は単発完結でありながら、物語としては深く繋がっている。

そして、記者会見の場には破壊されたマモルと同じ姿のヒューマギアがいた。
けれど、耳には若葉マークが付いており、同じ型の別マシンであることを示している。

もう、あのマモルは何処にもいない。
その腕には或人がマモルに巻いたものと同じバンダナがあった。

それはきっと或人の願い。
確かにあの時いたマモルは、人を守る、人類の夢だった。
新たな『彼』もまた、同じく人類の夢であってほしい。
誰かに名前を聞かれたら、『彼』もまた社長に名付けてもらったマモルという名を名乗るのだろう。

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AIMSの不協和音はヒューマギアを見習うべきレベル

今回から本格的にAIMSが物語に深く関わりを持ってくる。
内閣官房直属の対人工知能特務機関で、大企業である飛電インテリジェンスにも名前負けしない国家機関だ。

暴走したヒューマギアを破壊する資格を有しており、サイバーテロリストを捕獲する権限もある。つまり実質的な警察役と言える役回りだ。
ただしこの組織、人員の配置が割と特殊で、指揮と管理系統が分かれている。

ここ、一番足並み揃えないとダメなことじゃないですかー。
実際に、マギアが大暴れ中なのに、変身許可を出さず取り逃がしてしまう。
現場指揮の意見が管理側と噛み合わず成果を出せないって、よくあるダメ組織の典型例だよ!

技術顧問の刃唯阿は、隊長である不破の暴走が原因で変身許可を出さない。
不破は暴走するヒューマギアを破壊することを優先して常に暴走気味。
同じ組織で一緒に現場入りしているのに驚く程意思がバラバラだ。
ただし不破の戦闘時における瞬間的な判断力は高く、前回も今回も唯阿の危機を救っている。
どちらも能力的には有能なので、純粋にチームワークが互いの長所を殺している状態だ。

戦闘内容はほぼ丸投げされている或人。対してイズはちゃんとゼロワンが機能するよう徹底してサポートに回っているのでバランスが取れている。男女の戦闘チームプレイでも対比になっていた。
たとえ唯阿がバルキリーになっても、この二人がコンビネーションを駆使した戦いをする姿がまるで想像できない。

とはいえ、さっきも書いたが個々の能力はずば抜けているのだ。
技術顧問としてライダーシステムを作り上げたと思われる組織の技術顧問になっていて、現場でも活躍できる時点で刃唯阿は希少な人材だ。
(プログライズキーを何処から入手しているのかは不明で気になる部分だけど)

不破は戦闘時の判断と対応力がすこぶる高い。
精神力もかなりのもので、プログライズキーのロックを力尽くで外してしまった。

「俺がやると言ったらやる! 俺がルールだ!」

「俺」を主張しているのは或人と同じなのに、発言内容はがほぼ暴君!

不破が勝手に暴れるので、唯阿は唯阿でそれを利用してしれっと上層部と思わしき部署に連絡を入れて、戦闘データの収集をしているっぽい。
現場の連携も、組織的な連携も取れてない。この二人の下で働きたくないでござる。

驚くべきことに、組織人として一番まともなのは飛電インテリジェンスの副社長という状況だ。
少なくともあの人、組織内のバランスを重視して円滑に回そうとしているからね。自分が社長になって責任取る覚悟もある。
ヒューマギア暴走事件の収集が付くまで、或人をお飾りの社長として据えようとしていないだけ、人としての善意は残っていると思う。
お仕事モノ作品でもあるのに、メインキャラにまっとうな仕事する人少なすぎない?

他のライダーで言えば、最初から最後まで険悪だった巧と草加は、戦闘の時だけ平成ライダー屈指のコンビネーションを見せていた。
(それこそ平常時の不協和音はAIMSが可愛く思えるレベルだけど……)

普段は仲が悪くてもいざという時の連携が取れるというのは、組織立ったチームとしてかなり重要な要素だ。逆に言えばそこさえなんとかなれば、とりあえず大事な部分だけはまとまるという例。
AIMSは或人と打ち解ける前に、まず内輪争いをどうにかしないといけない。マジで。

AIや仕事がテーマなのに、人間達の方がいさかいばかりで仕事に支障きたしまくっている。
ヒューマギア達の方が仕事に真摯なので別方向から残念な対比が完成しているぞ!

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ゼロワンのスーツにあってバルカンに隠されているもの

第一話に引き続き、二話も戦闘の演出はかなり凝っていて派手だった。
今のところ大型の敵(一番大きいのはゼロワン変身時のバッタ)が出てこないので、CG費用がその分各所の演出に回せているのだろうか?

演出が派手になる=破壊も大きくなる。
飛電インテリジェンスが第二話にして、早くもあちらこちら結構壊れまくっている。
面白いことに、特に被害が大きいのはゼロワンが召喚したバイクと巨大バッタだ。この社長、自社の損害をいまいち考慮に入れてない!

社長設定なのはいいけど、自分の会社に思い入れや愛着がない状態だ。イズがサポートできる分野ではなさそうなので、これ地味に或人にとっては課題の一つではなかろうか。少なくとも今の姿勢では、ヒューマギア以外の社員が付いてくるのは少数ではと思う。
隠蔽工作はともかく、自社を守ることを優先している副社長と当分ソリは合いそうにない。

なお、被害は他にも広がっていて、他社のビルも窓が割れる(しかも割ったのゼロワン)。
更には倉庫にデカい穴が空く!(やっぱり空けたのはバルカン)

バイクでの派手なアクションは、バッタ型と相まって仮面ライダーを強く意識した戦闘だった。
これらのダイナミックさは全部これぞヒーロー物と王道を行く演出で、出てくる度にテンション上がる。
重いシーンやコミカルなシーン、そして見ごたえのあるアクション描写がバランスよく入り乱れるので、見ていてテンションはすごく上がる。

今回登場したバルカンの基本フォーム、シューティングウルフは狼モチーフで射撃型という割とレアなタイプのライダーだ。
狼フォームで有名どころだとガルルはソードで近接型。
怪人でも巧のウルフオルフェノクは機動性を活かすタイプだ。

バルカンの戦闘は銃を使いながらも積極的に接近戦もこなしていて、遠近両用な戦闘感があった。
公式サイトの設定を見ても、射撃戦をメインにしつつ、接近戦もこなせる武装設定になっている。

使用者の性格とフォルムは野性的だが、戦闘は初戦からエージェントらしいクレバーさを備えていた。
初心者感丸出しでコミカルさもあったゼロワンとの立ち位置の違いも示している。

ゼロワンとバルカンを対比させた後で、コンテナの穴から互いに見つめ合う。
これから事ある毎にぶつかる運命にあることを予感させて、今日の所は互いに役目を終えて撤退する。このバトル締めくくりは三話以降が楽しみで仕方ない。

ゼロワンは仮面ライダー一号のバッタを踏襲しており、涙ラインも従来通りに存在している。
或人は自分が信じるヒューマギアを自分の手で破壊しなければならない。その哀しみを背負い戦う。

不破諫は怒りでヒューマギアを破壊する。
故にそのマスクは涙に濡れた跡がない。
同型機である仮面ライダーバルキリーにも涙ラインらしきデザインはあるのにだ。

けれど、変身時に不破がスーツを纏う際、顔には赤き血の涙を思わせるような跡が刻まれた
(今回は変身シーンのみだが、スーツアクターは不破を演じる岡田龍太郎氏が演じていた)

これはまるで感情が昂ぶると、顔に手術痕の傷が浮かび上がる一文字隼人――仮面ライダー2号のよう。
怒りで暴れる獣の如き不破諫。
けれどそのマスクの下、心の奥には深い哀しみを背負っているのだ。

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