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お仕事5番勝負総括 見所はお仕事勝負ではなく世界観【仮面ライダーゼロワン 感想・考察】

2020年3月29日

天津垓の行動を整理するとお仕事勝負の正しい全容が見える

次にもう一つの大きなモヤモヤ要因は言わずもがな、1000%社長ことで天津垓ある。
飛電側に不利な勝負を押し付け卑怯卑劣の限りを尽くす。あまりにわかりやすい悪役っぷりだ。

ただ、それはお仕事5番勝負を額面通りに受け取った場合での話。
お仕事勝負が今のゼロワン情勢を示す縮図だと前提に考えれば、別の意図も見えてくる。

元々、衛星アークに悪意を植え付け、滅亡迅雷.netを生み出す切っ掛けを作った諸悪の根源こそ天津だ。
そして今度は人類とヒューマギアの対立構造を生み出し煽っている。

だが天津の指摘する欠点そのものは事実だ。
悪意に弱いヒューマギアのメンタルは滅亡迅雷が手を加えなくても、いつか大きな問題を起こすだろう。

だが、最初は無線変身だったマギアは、途中からZAIA側がベルト使って強制変身させるようになった。
これにより『ZAIA側の言ってることは理解できなくもないけど説得力がない』との批判が続出。これは私も最初はそう思った。

だけどこれは正しく言えば逆なのだ。
ヒューマギアの抱える問題は事実としてある。悪意に対して弱く敏感過ぎるのは、ZAIA側の仕込みではなく天然モノだ。

ヒューマギアの問題提議は天津が自作自演しているのではない。
天津はヒューマギアの抱える問題を利用した上で、強制変身を演出として扱い、より事態を煽っているのだ。

視聴者は或人視点で話を見ているので、天津の行動は単なる自作自演として捉えやすい。
そりゃあアークの暴走から全部天津のやった悪行だったら、全部が全部天津の仕業に見えてしまう。
多くの人の脳は複雑な問題は要約して利用しようとする動きがあり、『大体こいつのせいって考えればOKなエイリアン』を求めている!

そしてこの意識差が、お仕事5番勝負の本質的な面白さを理解しづらくしている大きな要因だと私は思う。
多分、少なくない視聴者はお仕事5番勝負が全国に報道されていることを忘れているか、あってもその認識が薄い。
(そもそもヒューマギアよりZAIAスペックが上だと売り込むことが最初の建前なので、報道していないとやる意味がない)
報道されているという事実が、すごく、ものスゴーク大事! ビルドがボトル二本で変身する理由と同じくらい大事!!

ド外道な手を平気で使いまくる天津が、初戦で不正を犯した立花を糾弾して勝負をやり直しにしたのは、目に見える不正はZAIA側のイメージダウンになると判断したためである。
逆説的に考えれば、視聴者に届かなければ何してもいい。なので二戦目のレイダーによる家の破壊はあえて黙認している。

中盤で或人にメタルクラスタホッパーを使いこなされて以降は、怒りや焦りからか自発的な悪行が増えた。それでも、基本スタンスはずっと一貫している。

消防士対決も最初は勝利を譲らない姿勢だったが、ZAIA側の不正に誤魔化しが効かないと分かればアッサリ敗北を認めた。
このことからも、天津はひたすら勝ちを目指すだけでなく、それ以上に視聴者のイメージを優先している。

だが、お仕事5番勝負を見守る側の視点がほとんどない。
我々は、天津の悪行ムーブが具体的にどういう効果を生んでいるかわかりにくいので、目の前のお仕事勝負の展開ばかりに注目している。

市民の声やヒューマギアの捉え方を、お仕事勝負に出てくる人物や、婚活編に出てくる人々だけに限ってしまっているのが、ある意味最大のミスだと思う。
ゼロワン序盤からあれだけ色々な事件があって、現在のヒューマギア情勢が当時と同じなわけがない。
特にお仕事勝負開始後は、ZAIA側に都合の悪い部分はほとんどが隠蔽され、今もヒューマギアは暴走を続けている事実だけが着実に市民へと報道されているはずだ。

元を辿れば、お仕事5番勝負は天津が望み企画して飛電側に提案した。
敗北すれば買収計画が消し飛ぶ。そのリスクを背負ってでも勝負を仕掛ける理由がある。

天津にとってはZAIA勝利と、飛電買収の両方が成立することで成せる計画があるはずだ。
それが何かは、物語に出ているキーワードを整理すれば、完全ではなくてもある程度察せられるところまで来ていると思う。

まずはお仕事5番勝負で使われているZAIAスペック。
これは人間の脳を強化して、ヒューマギアに匹敵できるレベルまで向上できる。
その性能はお仕事勝負最初の二戦や、消防士対決でヒューマギアと連携を取った活躍からも証明済みだ。

ZAIA側のアイテムだったレイドライザーもこの一つ。
ZAIAスペックが処理機能の強化ならば、レイダーは身体強化である。
この二つは機能が明確に分けられていて、同時併用も可能だ。

最初のレイダーになった立花はZAIAスペックも装着しており、レイドライザー装着時に目が赤くなる描写もあった。
レイドライザー単体ではそういう描写がないため、あるいはレイドライザーにはZAIAスペックへの強制ハッキング機能が装備されている可能性もある。

三つ目が無線による強制マギア化と、ZAIAが入手したゼツメライザー。
これによってヒューマギアは人間が拒絶すればする程、暴走してしまう存在となっている。

そして最後は選挙勝負。
天津はこれまでも人間側の怒りや不安を煽ることで、市民のヒューマギア排斥思想を煽っている。
選挙勝負では、いつ暴走するかわからないヒューマギアに対して、正当防衛の手段としてレイダーの有能さをアピールした。

最後が選挙勝負なのは、ここまで天津がお仕事勝負で積み重ねてきた世論扇動を加味した上で、確実に勝てる勝負だったから。
市民がヒューマギアを危険だと判断して危害を加え始める。
そうすると悪意によってヒューマギアはマギア化。

そしてZAIAスペックとレイドライザーで人類はマギアを倒せる力を振るう。
一連の流れが着実に準備されていた。これは明らかな企業的アピールだ。

そしてZAIAが飛電に勝利すれば、ゼロワンや衛星ゼアがその手に渡る。
仮面ライダー兵器化とレイダーは何かしら計画的に繋がりがあるだろう。

これらがお仕事5番勝負の中で整えられてきた計画。
お仕事勝負が正しく機能していないのは、それ自体が単なる隠れ蓑だったから。

ただ全部を俯瞰する天津もちょいちょい残念な行動を取っている。
四十五才児、初変身ではしゃぎ過ぎだよ。そんな能動的にゼロワン攻撃すると傷害罪で訴えられたら負けるから!
そもそもイズが悪行のどれかを撮影していたら詰むよ!

とか、そういう細部のツッコミどころは各所にあった。
あったけど! お仕事5番勝負そのものにおける天津の行動はちゃんと全部意味がある。

天津の横暴なキャラ付けから見えてしまう雑さはともかく、大量の伏線撒きとその綺麗な回収っぷりだけなら、見事な立ち回りではないだろうか。
そして最終目的、天津が夢想する新時代の仮面ライダー神話。

天津垓に最終的な評価が下されるとすれば、それはライダー神話の形が露わになった時だろう。
そして十年後くらいには、天津垓もあれはあれで面白い悪役キャラだったと言われて、レジェンド出演したら皆テンション上げて1000%を連呼していると予想する。

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