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君たちはどう生きるか【ネタバレ感想・考察】理解すると面白さが激変する三要素

2023年7月20日

作品情報

タイトル 君たちはどう生きるか
作品要素

ネタバレ無しレビュー

そろそろ何度目かもわからない引退から現役復帰。宮崎駿によるジブリ新作がついに公開された。
今回の特徴は、なんといっても事前の宣伝がほぼなかったこと。
現代の映画産業では本当にあり得ない行為だ。

あまりに何も情報がないせいで、唯一出ている君生きバード(仮名)と、『君たちはどう生きるのか』のタイトルからSNS大喜利がはじまった。

ファンが二次創作で勝手に広告を量産していく体制は、大阪万博の『いのちのかがやき』君状態だった。
(あれはミャクミャクの名前画できたら、今度は謎の神性を帯びて二度オモチャになったけど)

肝心の評価だが、ネットでは公開当初からかなり真っ二つに割れていた。
褒める人はとことん褒めて、嫌う人はとことん嫌う。

また、本作はやたらと露骨な形式での、過去作のセルフオマージュが多い。
宣伝無しだったため、もっと自分の人生観や作家性を晒して真っ向からの殴り合いでくると思っていたら、シンゴジラやシン仮面ライダーみたいな「これエヴァじゃね?」的な感覚でもジブリ性を出してきた。
これは今までにないやり方で、良くも悪くも意外な変化球ではあった。・

元より宮崎駿氏のジブリ作品自体が、考えながら観るとより深く味わえるアート的な側面がある。
それでも普段は純粋なエンタメ性もきちんと入れており、万人受けも捨てていない。

では本作はどうだろうか?
劇中の出来事は全て繋がっていて無駄な事柄は一つもなく、緻密なシナリオとして完成度は高い。

しかしエンタメとしては中盤での盛り上がりが弱かった。
起承転結でいえば、『承』と『転』がずっと一定でメリハリがなく、全体的にどこかふんわりしていた。

同時に一つ一つのシーンや設定に対する解釈はとても難解なため、このふんわり感が、作品自体そのものへの娯楽性にモヤをかけている。

昨今は映画やドラマ等を問わず、あえてネタバレを踏んでから作品を見る層が増えた。
その是非は別にして、ネタバレを求める人達は面白いに対する保証や安心感を求めている。
わからないならわからないなりに楽しめる娯楽性は、現在の流行として大変重要なのだ。

要するに、事前情報が皆無でジブリのブランドで期待感を煽られて観た結果、『なんかよくわからない』と『ふんわりしてる』感にモヤモヤを抱えた人からの評価が低くなっていると思われる。

逆に、読み解くことに楽しさを覚える人達からの評価は高くなりやすい。
そして私も含めた語りたい人達はネタバレ配慮により、できるだけそれが表に出ないようにしている。

そのためネタバレが出回りだすと、同時に考察や解釈が一気に溢れ出すだろう。
そうすれば作品全体の評価ももう少しは上向くのではないだろうか。

事前のネタバレについては、公式がここまで一切情報を出さなかったことも踏まえて、ない方が望ましいと考える人が大多数だろう。私もそう思ってネタバレを踏む前に公開週で観に行った。
けれど、興味はあるけど『安心して観たい』という人ならば、色んな人の解釈をあえて読んでから挑むというのも選択肢の一つではないかと私は思う。

ネタバレなしでの総評としては、一見わかりやすい物語性の冒険譚ながらも、複雑で読み解く面白さが重要視される歯応えのある作品。
ただし本作は普段の宮崎駿氏の作品よりも、読み解くことでわかる面白さがより重視されており、何も考えずみると娯楽性に欠けるかもしれない。

事前情報を完全にシャットダウンしたことによる期待感と、複雑さがコンフリクトしてしまっているため、評価の振り幅が大きい。
自分で作品を読み解くのが好きな人ならばポテンシャルは十分ある作品。

ネタバレ有り解説・考察

『君たちはどう生きるのか』の意味

私は本作を、三つの大きな事柄に分けて考えている。
一つはタイトルであり原作でもある『君たちはどう生きるのか』について。
正確には、私が読んだのは原作小説ではなく漫画版なのだけど、要約すると『人は分子のように周囲と関わり合いながら、大きな流れの一部として生きている』であり、その中でどのように正しく生きるかを問う物語だ。

飛び上がったわらわらをペリカンが食べる行為を、眞人やキリコは悪行扱いして、ヒミがペリカンを燃やすことで追い払う。
しかしペリカンがわらわらを食糧にするのは、他に食べるものがないためだった。
それに、わらわら達だって魚を食べている。どちらも生きるために必要な食事だ。

一面的にものを見れば悪行のように見えても、少し視点をずらせば食物連鎖の一部となる。ペリカンもわらわらもヒミも分子の一つであり、それぞれに関わり合っている。

そして眞人は、目の前で命尽きたペリカンを丁寧に埋葬してやった。
これもまた命に対する敬意であり、真実を知った上で行った『正しさ』であると思う。

異世界の正体は大叔父様が作り出していた特殊な空間で、その中での均衡を保とうとしていた。
自分の血を継ぎ悪意のない者にしか任せられないとして、世界の作る役割を引き継いでほしいと頼まれた眞人は、これを断った。

自分で付けた頭の傷は自分が悪意を持っている証で、原作だとコペル君が後ろ手に隠した雪玉(自分を守るための卑怯さ)に相当する。
眞人は自分の中にあった悪意を認めて、キリコ、ヒミ、アオサギのような友達を作って外の世界で生きることを選んだ。
友達とはまさに周囲との関わりであり、アオサギのように喧嘩することもあれば手を取り合うこともある。都合良くいくとは限らない関係。それでも他人と関わり合うことから逃げない。それが、どう生きるかの答えなのだ。

クリエイターとしてみる物語

二つ目はクリエイターとしての物語。
大叔父様は石を使い、その中にペリカンやオウムなどを入れて世界を構築していた。
しかしペリカンは上手く餌に有り付けず段々と飛ぶことすらしなくなっていく。
逆にオウムは独自の文化を築き、一つの国として栄えていた。

大叔父様はより良き世界を目指しながらも、実際には危ういバランスで成り立つ歪な形になってしまっている。
これは眞人が旅した部分の話だが、おそらく世界はもっと広大で、やはり同じように不安定なバランスの上に成り立っているのではないだろうか。

石を積み上げるにつれて、自分が本来なし得たかった理想とは離れていく。
それでも、ここまで積み上げてしまった責任からは逃れられない。

インコの王は大叔父様に直談判しにいったが、大叔父様はまるで付き合いの長い友人を迎え入れるような雰囲気でそれに応じた。
大叔父様はよくある神的な創造主ではなく、自分が作った世界に対して愛着を持っている。
それが歪で不安定な世界であってもだ。

大叔父様は自分の限界を知り、眞人を後継者として委ねようとする。
言うなれば大叔父様は老境に至った現在の宮崎駿氏であり、眞人はまだクリエイターになる前の駿少年なのだ。
だからこそ、大叔父様の世界は過去作のセルフオマージュで満ちている。

大叔父様は穢れのない十五個の石を渡し、三日に一つずつ積み上げていくよう命じた。
十五個の石とはこれまで宮崎駿氏が手がけた長編映画の数である。三日というのは、神が一週間かけて地球を生み出したのと同じで、世界を生み出す重さを表しているのだろう。

他人から地獄だと言われても、どれだけ歪な扱いを受けても、ここまで長く熱中してきた世界の構築は、大叔父様にとって生き甲斐なのだ。
だから眞人が外の世界で生きていくことを望んでも、世界の構築はやれと言う。

クリエイターはどれだけつらくて、もう嫌だと思っても、一つの作品を作り終えるとまた次の作品のことを考えてしまうのだ。
どれだけ時間がかかっても、その気持ちから逃れることはできない。

何度も引退を繰り返しては、その度に復帰して作品を生み出し続ける宮崎駿氏のように……。

三人の母親との絆

そして最後が一番面白い。母親についてだ。
本作に登場するヒロインは皆、眞人の母親役を担っている。

生みの親であるヒミ。継母のナツコ。
そしてもう一人、キリコもまた同様だ。

キリコと他の老婆達は、眞人と一緒に食事をして、怪我をした後は順番に看病している。
異世界で眞人が眠っている間、周囲に結界のごとく老婆達の人形が置かれていたのも、本当の意味で眞人を守っていたのが彼女達であるという証だ。

劇中において、眞人はこの三人の母親からひたすらに無償の愛を注がれまくる。そりゃもう見ていてちょっと不自然な程にだ。

ナツコは三人の中で唯一、継母として眞人に好かれたい動機がハッキリしている。
対して眞人はキリコを避けており、特に二人きりで案内を受けている間は会話を避けて、その後も『父が好きな人』と一定の距離を取っていた。
これは眞人が母親を失い距離感を掴みかねていたため。つまりは眞人が悪い……だけではない。

本編内で語られていないが、想像してみてほしい。
空襲の火事で具合が悪く入院していた母が他界した。

疎開したら、父は母の妹ナツコと再婚が決まっていて、既にナツコは身籠もっていた。
この間、僅か一年である。
このクソ親父、母親が入院して苦しんでいる中で、義妹に手を出しやがったな?

これは邪推ではなくて、そうじゃないと辻褄が合わない。
劇中でも寝込んだり産屋に入ったりする程だ。

母親によく似た別人から、母親が存命中に育まれた関係と命に、無理やり手を当てさせられた眞人の複雑な表情よ。
そら話もしたくなくなるわと私も思う。

また父親の仕事は兵器関係の工場だ。
冒頭の空襲シーンでは明らかな貧乏屋敷だったが、一年後には大量の仕事を抱えて上流階級入りしている。
ナツコと再婚したことで実家の援助を得て、事業が大きく拡大したと思われる。

兵器は母親の命を奪った根幹の原因だ。
宮崎駿の少年時代は兵器が大好きだったが、それが同時に人の命を奪うものであると自覚を持ってしまったことで大きく苦しんだ。その感情がこの設定に反映されているのだろう。

しかしナツコは、寝込んでいる時に自責の念に駆られるぐらい、ヒミも眞人も大切に思っていた。
身重なのに、眞人が襲われると弓矢を持って勇ましく駆けつけるぐらい良い人なのも、紛れのない事実だ。

だから眞人もナツコを心底嫌いにはなれなかった。
ナツコが嫌いなんだから危険を顧みず助けにいく必要はないと止められた時も、嫌いなことは否定せず、ヒミの生存を確かめるためだと答えた。
しかし、ヒミのことが罠であると確定すると、今度は明確にナツコを助けに向かう。

眞人がナツコを助けに産屋へ立ち入ると、彼女は眞人が嫌いだと言って拒絶した。
これは最初から眞人を傷付けないためとも取れるが、それだけではないと私は思う。

そもそもナツコは自分から塔に入っている。
眞人は自分の意志じゃなかったかもしれないと言ったが、そんな洗脳じみたことができるなら、眞人を相手に使っていないとおかしい。

不倫についても同様だが、宮崎作品だとあえて曖昧にボカしている部分には必ず意図がある。
ナツコは仕方がないとわかりつつも、眞人から疎んじられるように距離を取られることに傷ついていた。
眞人がタバコを盗んだことも察しており、嫌がらせを受けていると思っていたのかもしれない。

夫は仕事人間で帰りは遅くあまり家にいない。むしろ仕事を家に持ち込んでくるようなタイプだった。
息子を車で学校に送るぐらい家族も大事にしているのだが、周囲から反感を買う行為だとわからないぐらいには急激に変化した境遇に浮かれている。

ナツコと眞人の捜索に、社員の手を借りなかったのも同様だ。家族が何より大事でありつつも、仕事に穴を開けることはできないと冷静に考えている。

出産が近付き身も心も弱っているナツコには、そういう仕事人間な面が不安になった
そうして人避けの意図もあって産屋に入ったのではないか。

だから、危険を顧みず自分を助けにきた眞人に『お母さん』と本心を打ち明けられて、『貴方なんか嫌いだから出ていけ』が『ここは危険だから逃げて』に変わったのだ。

異世界のキリコは若い姐さん的な姿で、眞人を助けて仕事を手伝わせた。
新しい視野を広げて経験を積ませる。言わば育ての親的な役割なのだ。

それは現実世界でも同様である。
ナツコが身重で動けない分、世話焼きは婆さんズの役回りになっていた。

それに継母としてやや過剰に眞人へと気遣うナツコと異なり、キミコはタバコ目的で買収を試みるなど距離感や目線も近い。
眞人が堂々と飯が不味いと言ってのけるのも、単なる嫌味なだけでなく、打ち解けはじめている証拠だ。
(戦時中の食糧難が理由であるともわかった上で言っている)

とはいえ、若キリコとは現実世界での交流が皆無だ。それなのに一日でサクッと打ち解けている。
ぶっきらぼうだが、中身は面倒見の良い姐さんとして、何の見返りもなく眞人を助けてくれた。

ヒミも同様だ。付き合い自体は一日もないはずなのだけど、その間にグングンと好感度が上昇していく。
最終的には抱きつかれるぐらい気に入られていた。昔の母親を相手に疑似恋愛をしている。

キミコとヒミはほとんど接点がない状態から、一方的に助けられてばかりでお返しは何一つできていない。ギブ・アンド・ギブだ。

最後に眞人視点で本編を整理しよう。
浚われた微妙な関係の継母を助けるために異世界へ行き、若い頃の母親達に助けてもらいまくりながら、継母とも仲良しになりました!

性癖ダダ漏れのマザコン冒険譚だ!!


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