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FMO1章 第11節『二重奏♯Destiny's Play』≫2

2024年4月24日

[作品トップ&目次]


 音也が異聞帯に召喚された当初、彼に戦う意思はあまりなかった。
 音也も自分の使命は理解しており、世界を救う意思はある。直接身に降りかかる火の粉なら力で払いもしよう。

 だが、世界を変えるなら、戦いよりも音楽で。
 音也の知る最高の文化にして武器とは、己の奏でるバイオリンだ。

 自分が生まれなかった世界なら、それ自体が失敗。過ちの大きさを己が奏でる旋律で証明してやろう。
 本気でそう考えるのが、天才紅音也という男だった。

 そんな音也の前にクリプターは堂々と現れて、彼らの居城へと案内した。
 罠以外にはあり得ないが、既に客人として紅渡を迎えていると言われてはどうしようもない。要は人質だった。

 そうして城内で父は、消耗しきって変わり果てた姿となった息子と再会した。

 ●

 一体いつから奏でていたのだろう。
 後どれくらい奏でればいいのだろう。

 そんなことを何度も何度も考えてはバイオリンを弾く。
 来る日も来る日も。
 何度も何度も。

 気が付くと倒れていたことは数えも切れない。
 目覚める度に立ち上がって、また続きを奏でる。
 そうしなければ目覚めてしまう、皇帝ツァーリが……。

 覚醒すれば全てが終わり。
 だから、僕が時間を稼がなくちゃいけない。
 それでも、ああ、もう限界だ……。

 目が霞んでよく見えない。
 腕の感覚も、もうほとんどなくなった。
 ずっと弾いてきた感覚だけが頼りだ。

 あれ? そもそも僕、今バイオリンを弾いてたんだっけ?
 何処だろう、ここ? 真っ暗だ……。

 音が聞こえる。
 大きな音が鼓膜を揺さぶる。

 これは、バイオリンの音じゃない。
 この音は、声だ。

 ワタル、ワタルって……ワタル?
 それは名前じゃないか。たしか、僕の名前が、そんな呼び方だった。

 誰だろう?
 見えない。そうだ、目を開かなきゃ。

 ああ、父さんだ……。
 いつの間にか、僕は眠っていたんだね。

 父さんの腕から伝わるぬくもりが、これは夢じゃないと教えてくれる。
 まるで運命の悪戯みたいだ。

 けど、ああ良かった。これで助かる。

「渡! しっかりしろ渡!」

 そうだ、しっかりして、伝えないと。

「父さん……助けて……」

「死ぬな! 渡!」

 僕は静かに首を振った。
 違うんだ、父さん。僕が伝えたいのはそんなことじゃない。

「助けてあげて……門矢士……ディケイドを……」

 ルーラーの僕は皆を平等に扱おうとして、多分かつてのように士君への対応を間違える。

 それでも、彼はきっとここへ来る。
 白紙化された世界を放っておくことなんてできない。

 だって本当の彼は、壊すべき世界を救ってしまうぐらいに心の優しい人だから。

「渡……お前っ! こんな時まで他人のことを……」

「こんな時……だから、だよ……」

 僕一人にできるのは、魔力を消耗しながらバイオリンを奏でて皇帝ツァーリを眠らせておくことだけだった。

 いつか仲間たちが来てくれるはずだと信じて。

 それでも、不安だった。
 少しずつ、心と体が削れていく。

 自分以外にもサーヴァントの噂は聞いていたけれど、ここへ辿り着けるライダーは現れない。
 それくらい皇帝の軍勢は強力かつ堅牢だ。仮に辿り着いたとしても、サーヴァントとなったライダーたちだけでは恐らくこの脅威には勝てない。

 もしかしたら間に合わないんじゃないか。
 体が弱っていくにつれ、苦しさと不安で押し潰されそうだった。

 勝てる可能性があるとすれば『世界の破壊者』ディケイド、そして世界を焼却されようとも諦めず、絶望の未来を覆した人類最後のマスターが揃った時だろう。
 この場ではキャスタークラスでサーヴァント化して魔力を得たことで、僕の力を音に乗せることができるようになった。それによりイヴァン雷帝の活動を一時的に抑制できる。

 二人が現れるまで、この世界を音楽の鎖で繋ぎ止める。それが僕の使命だった。

「最後に……会えた……僕が誰より信じられる人……父さんに……」

 大切なものを守るために、僕は戦った。
 でも、それももう限界。何も為せないまま消えてしまう。
 それだけは嫌だった。誰かに、未来を託したい。ずっとそう願い続けていた。

「ああ、そうだ。俺はお前のためならなんだってできるぞ! だから死ぬな!」

 乾ききった頬に水が落ちてきた。父さんの、涙だ。

「僕は……そこにいるよ……」

「渡……?」

 残った力を振り絞って、僕は父さんの腕を掴んで伝える。

「僕の命を……受け取って……」

 人は前に進むから。僕の意思を託した父さんが戦ってくれるなら、僕は死なない。
 父さんを掴む腕が消えた。身体が光になっていく。
 僕の光が、父さんと一つになれるように。伝える。僕の、最後の言葉を。

「人に流れる音楽を守って……父さん……!」

 父さんのバイオリンなら、きっとこの凍えた世界だって、美しい音で……満ち……る……から…………。

 ●

 紅音也はかつて二度、時を超えて渡と出会っている。
 それらは異なる平行世界での出来事だったが、サーヴァントとして座に刻まれたことによって、今はその両方を把握している。

 そして三度目が異聞帯でのロシアだった。
 僅かな時間、そして出会うと同時の別れだったが、音也は息子の意思と覚悟を確かに託された。

 四度目は、渡であって渡ではない。ディエンドが生んだまさに影法師のようで不確かな存在。
 だけど、それが音也の記憶を目覚めさせる重要なきっかけになった。

 一度目は偶然。
 二度、奇跡。
 三度、必然。

 そして四度目は、運命。

 ああ、確かに、息子との出会いは運命以外の何者でもない。

 ――これが神による悪戯だとするなら、俺は運命の女神を愛してやろう。

 音也があの時渡と出会わなければ、誰も息子を看取ることなく孤独な最期を迎えたかもしれない。
 己は手遅れだったのではない。確かに間に合い、受け取った。

 渡は強い。
 自分の命が燃え尽きるまで、人に流れる音楽を守るため戦い続けた。
 その想いと覚悟。ロシアの凍土だって溶かす、燃えるような熱い音を託された。
 込み上げてくる息子への想いを力に変え、魔力切れが近い身体で起き上がる。

 覚醒して真っ先に感じ取ったのは、アナスタシアの魔力だった。
 ディエンドと戦いながら加速度的に魔力を増している。恐らくはマスターの魔術的な援護かサーヴァントのスキルによる効果だろう。

 ――それはそれとして、あいつは気に食わない!

 音也に目覚めを促すためだったとしても、召喚したキバを人形のように操るディエンドの行為は良い気分がしなかった。
 とりあえず目の前の雑魚は無視してディエンドたちの方へと走り出す。

 アナスタシアの背後に黒い影のようなものが立ち昇り、片腕で少女を守護するよう銃撃を受け止める。もう一方の腕でディエンドの身体を殴り飛ばした。
 雪の上を転がるシアンの身体がすぐ体勢を整えようとするが、影が先んじて追撃の冷気を放つ姿勢に移る。
 そこで音也は跳び、よろめくディエンドを蹴り飛ばして小さな復讐心を満たしつつ、冷気の範囲外へと逃がした。

「これは……運命だ」

 だけど必然だ。何故ならば、

「渡の心に流れていた音楽が、ここまで俺を導いた」

 そして、真に打ち倒すべき敵へと音也は辿り着いた。怨恨の炎をぶつけるべき真の相手を。

「お前ら、よくも操ってくれたな!」

 渡を死ぬまで追い詰めただけでなく、その罪をカルデアに着せて己を戦わせた。
 元々自由人である音也にとって絶対に許し難い行為だ。歪んだ霊基は、変わらぬ復讐の炎を燃やしている。

「やはり正気に戻っていたか。まあ、芸術的な指を鈍らせないよう、そこまで強い暗示はかけられなかったからな」

「今度は貴方をてあげる」

 黒い影の目が光り、魔力が収束される。
 その間にダークキバは地面を伝い紋章を殺戮猟兵オプリチニキの一体へと飛ばして捕獲。
 極寒の冷気砲が撃ち出されると同時に、捕まえた殺戮猟兵オプリチニキを引き寄せ盾とした。

「ふんっ!」

 続け様に大量の氷柱つららが頭上から降り注ぐ。横っ飛びに逃げると、氷漬けになった殺戮猟兵オプリチニキ氷柱つららに刺し砕かれていた。

「視て! ヴィイ!」

 だが、今のは前置き。アナスタシアは既に宝具を発動させるだけの力を蓄え終えていた。
 ダークキバの鎧といえど既にかなり消耗している。まともに受ければ身体が持たないだろう。それでは、もう一度立ち上がった意味がない。

 渡の願いを叶え、カルデアを助ける。
 そのための対抗手段はこれしかない。腰のフエッスルを抜き取りキバットバット二世の口腔へ。

「WAKE UP Ⅱ!」

 紋章でヴィイの巨大な黒い影を縫い付けて、夜天を飛ぶ。
 動きは封じても解放された宝具の魔力までは止められなかった。

 全てを白に染め上げるため荒れ狂う氷の嵐に、ダークキバは飲み込まれていく。
 だが、突き出した脚に己もまた必殺の威力を蓄えて、暴風に吹き飛ばされることなく直進する。

 脚以外は凍てつき、氷塊に鎧が抉られ、疵だらけになる。
 それでも、意に返さず行く。

「せやああああああああ!」

 氷の地獄を突き抜けると、黒い影が目前だった。残った力をそれにぶつける。
 だが、激突の直前に影は霧散した。何も残らない空間を通過して雪上へと着地する。

「ヴィイの眼を突き抜ける愚か者がいるなんて思わなかったわ」

「俺を誰だと思ってる。いつだって世界中の美女から注目の的だ」

 あえて影を消滅させることで踏撃から逃れたのだろう。
 必殺の蹴りこそ免れたが、威力の面では敗北したことを証明され、アナスタシアの表情にも曇りが見える。

 次は、アナスタシアの動きを封じて確実に倒す。そう心では思っても、膝が勝手に落ちた。

「ぐぅっ……!」

「ふん、軽口を叩いてもそれで限界だな」

 音也は既に一度宝具を使い多量の魔力を放出した身だ。

 今の攻撃で身体を構成する魔力すら枯渇して、霊基が崩壊しかけている。
 マスターのいるアナスタシアは逆に魔力のリチャージが始まっていた。

「それでも、きっちりとトドメは刺しておく」

 想いは、届かなかった。息子との約束を守れない。

「くそっ!」

 怒りと無念で雪原に拳を叩き付ける。
 荒い息を繰り返し伏せた顔に、不意の言葉が投げかけられる。

「俺と契約して!」

 思わず上げた視線の前にいたのは、カドックではなくカルデアのマスターだった。

 


 

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