ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
今回は仮面ライダーガッチャードの第1~16話、2023年分までの感想・考察となります。
特にこれまでのガッチャードが仕組んでいた物語の意図と、それが次回からどう変化していくなども考察しました。
仮面ライダーガッチャードの世界
『仮面ライダーガッチャード』は、2023年に放送開始された令和仮面ライダーシリーズの第5作目です。
この作品は、錬金術という古典的な要素を現代的に解釈し、新しい形のヒーロー物語を創造しています。
物語の概要
『仮面ライダーガッチャード』の物語は、錬金術によって生み出された101体の人工生命体「ケミー」を巡る冒険です。ケミーはバッタや蒸気機関車など、様々な形態を持ち、それぞれが独自の能力を有しています。
これらのケミーは『ライドケミーカード』という特殊なカードに封印されていましたが、ある事件をきっかけにカードから解放され、現実世界に現れます。
主人公の一ノ瀬宝太郎は、まるでケミーに導かれるよう事件に巻き込まれ、九堂風雅からガッチャードライバーを託されました。
そして、仮面ライダーガッチャードとしてケミーを回収する使命を担います。
宝太郎は錬金アカデミーに入学し、錬金術師としての修行を始めます。
彼はケミーたちとの交流を通じて、彼らの心を理解し、友情を深めていきます。
この過程で、宝太郎は自身の内面と向き合い、成長していくことになります。
一方で、宝太郎は冥黒の三姉妹という敵と対峙します。
彼らはケミーを悪用し、世界を混乱に陥れようと企んでいます。
シリーズの新機軸
シリーズの特徴は、錬金術師という独特のキャラクター設定と、それに伴う多彩な能力やアイテムが登場する点です。
これにより、従来の仮面ライダーシリーズにはない未変身者も戦いながらサポートする新鮮な戦闘シーンや、ストーリー展開が生まれています。
特に、ケミーという人工生命体の存在は、シリーズに新たな深みを加えています。
ケミーたちは、純粋な存在で使う者の心に強く作用します。これによって仮面ライダーの『本質的に敵と同類の力を使う』要素が満たされていると言えるでしょう。
シナリオ面では、ケミー達自身も人々と関わり、宝太郎達との絆を育むことも重要な要素となっています。
また、学園生活を軸にしたストーリーラインは、現役高校生の日常と非日常が交錯する展開を生み出しています。
また、主人公が高校生であり、仮面ライダーフォーゼ依頼の学園生活を軸にしたドラマが展開される点も特徴的です。
さらに、敵組織が全員女性という挑戦的な側面や、必殺技のほとんどがライダーキック系の技、戦闘中の挿入歌の復活など、新しい試みが多く見られます。
これらの新機軸は、仮面ライダーという要素を見直しながら、懐かしくも新しい風を吹き込んでいます。
主要キャラクターと役割
主人公:一ノ瀬宝太郎
一ノ瀬宝太郎は、17歳の高校2年生で、本作の主人公です。
運動は得意ですが勉強は苦手で、家族経営の「キッチンいちのせ」を手伝いながら、創作料理にも挑戦しています。
しかし、味については皆から微妙と言われてしまう模様。
彼は「ガッチャ」と呼ばれる大きな夢を追い求めており、その過程でガッチャードライバーを手に入れ、仮面ライダーガッチャードに変身します。
進路については未定で、ケミーとの出会いを通じて錬金術師としての道を歩むことを決意します。
宝太郎は、ケミーとの交流を通じて彼らの心を理解し、友情を深めていきます。
しかしケミー以外の交友は元々の友人を除き、序盤ではやや限られてるように見えました。これについては後述。
彼の性格は、好奇心旺盛で心優しい一面を持つものの、腹が立ったら一言言わないと我慢できない面もあります。
やや子供っぽいながらも、聖人君子ではない等身大の少年として描かれており、ケミーを通じて多くを学んでいきます。
サポートキャラクター
宝太郎を取り巻く重要なキャラクターたちには、彼のクラスメイトであり、錬金術師の家系に生まれた九堂りんねがいます。
彼女は宝太郎と同じ高校に通いながら、裏で錬金アカデミーに通っています。
りんねは、クールで内向的な性格ですが、使命に対しては情熱を燃やすタイプです。
序盤の彼女は、宝太郎を錬金術師の世界に導く案内役のポジションであり、戦闘においてもサポートする優秀な相棒でもあります。
また、宝太郎の担任教師であるミナトは、普段は覇気のない飄々とした振る舞いを見せますが、その正体は錬金アカデミーの指導員であり、錬金術師としての厳格な一面を持ちます。
錬金術師の時はしっかりと生徒をサポートしており、作中でも教師としての役割をしっかりと果たしています。
その他にも、関西弁を話す陽気な錬金術師の銀杏蓮華や、極端な人嫌いでありながらケミー好きな鶴原錆丸。
ライバル役の黒鋼スパナなど、個性豊かなキャラクターが『クラスメイト』として宝太郎と共に成長していきます。
仮面ライダーガッチャードのネット評価
ガッチャードに対するSNSなどネット上での評判をまとめてみました。
今年は比較的序盤から意見が分かれている印象が強いです。
高評価の意見
『仮面ライダーガッチャード』は、これまでの暗めなライダー像に比べると、日曜の朝にぴったりな作品として高く評価されています。
主人公の宝太郎と彼を支える仲間たちの物語は、子供を中心とした視聴者に元気を与えているようです。
特に、学生ライダーとしての設定は、小さな子供たちにも親しみやすく、彼らの視点で物語を楽しむことができるとの意見があります。
また、保護者も楽しめる内容であり、毎週の放送を子供たちと一緒に心待ちにしているという声もあります。
シリーズの展開やキャラクターの成長に期待を寄せる声も多く、特に宝太郎の明るく真っ直ぐな性格が好評です。
低評価の意見
一方で、本作に対する低評価の意見も少なくありません。
代表的なものは、子供向けに強く寄せすぎてつまらなくなったというもの。
また、錬金術をテーマにしているものの、実際の内容が魔法のようで新鮮味に欠けるとの指摘があります。
錬金アカデミーの部屋も錬金術というよりは理科室のようで、作品全体が錬金術テーマとしての深みが足りていません。
毎回変わるぐらいにフォーム数が多過ぎる戦闘シーンが、もはやプロモーションビデオのようで、物語性やメッセージ性が感じられないという批判もあります。
これはドラマと商品の宣伝がうまく共存できていないと考えられます。
ガッチャードの王道路線とその裏にあるシナリオ戦略
仮面ライダーガッチャードの評価と、わたしなりの読み解き方で面白いポイントを抜き出しました。
王道と逆転現象
仮面ライダーガッチャードの作品性を読み解くには、ニチアサのスーパーヒーロータイム枠としての視点を持つ必要があります。
昨今はスーパー戦隊側が大きな変革を起こしています。
特に今期の王様戦隊キングオージャーは、スーパー戦隊の枠でありながら、シナリオのフォーマットはむしろ仮面ライダーの方が近いです。
逆に仮面ライダー側がスーパー戦隊のを彷彿とさせる演出やシナリオに寄せられていました。
まるで両者の作品性を入れ替えたようです。
これまでスーパー戦隊は仮面ライダーよりも子供層からのオモチャ売上が主体でした。
しかし近年は作品性の変化や、SNS上で行われるオモチャの購入と予約報告から見ても、明らかに購入層の引き上げを狙っています。
しかしそうなると、仮面ライダーと完全に購入層が被ってしまい、スーパーヒーロータイム枠内での競合が加速しかねません。
それを防ぐため、あえて仮面ライダー側は子供側に寄せて、バランスを取ったのではないかとも考えられます。
宝太郎は人間的に問題有り?
本作は序盤で活躍する仮面ライダーをガッチャード一人に絞りました。
これはヴァルバラドを仮面ライダーにせず、ドレッドを完全に悪役としたことからも読み取れます。
この理由は、『仮面ライダーのヒーローとしての価値を改めて見直す』ためです。
ガッチャードを唯一のヒーローとして、ケミーやそれに関わる人々を救い、仲間達との絆を深めていく。王道のヒーロー路線となりました。
そこに演出面やシナリオ面での一部拙さが加わり、子供向け感が強いと言われています。
しかし、逆にこれを隠れ蓑にしている部分も見て取れます。
宝太郎の目的は人間とケミーの共存ですが、錬金術師の掟としてケミーの事件を解決すると、皆そこに関わる記憶が消えてしまいます。
全体的に人とケミーの架け橋になるシナリオが多いのに、それは決して叶わないのです。
また、宝太郎はホッパー1達ケミーと出会ってすぐ友人のように打ち解けました。
そしてケミーと友達になることを夢の礎として考えるようになります。
この流れがアッサリしている割にケミーへの執着は強い。
また、ケミーを悪用した者達への態度はかなり冷淡です。
元々悪意の強い者達なので当然と言えなくもないですが、倒した相手に一瞥もくれないこともあり、完全に人間よりケミーを尊重する姿勢を見せています。
錆丸達とも純粋なアカデミー生としてではなく、あくまでケミー探しを通じて仲を深めていました。ガッチャあり気の関係。
子供向け王道ヒーローの裏に隠された仮面ライダー性
しかしながら、これらは宝太郎が実は非人間的であることを意味していません。
自分達を殺害しようとする悪人でも、殺されたなら怒りを顕にして、命の危機であれば無条件で助けています。
つまるところ、宝太郎の冷淡さとは、ケミーに対する異様な執着心によるものです。
そしてエックスレックスが宝太郎の記憶を読み取った時に、宝太郎とホッパー1が過去に出会っていた記憶が蘇りました。
錬金術の記憶消去とは、完全な抹消ではなくおそらくは封印なのでしょう。
そして封じられた記憶の中から、なんとなくの印象や感情が漏れ出していたために、宝太郎はケミーに対して無自覚な好印象を抱いていたと考えられます。
それらを子供向けの空気感というフィルターで、視聴者にお約束やご都合主義として誤認させていたのです。
とはいえ、年明け前後から話が重くなる流れは、仮面ライダーだと途中期からよくあることでした。
その辺を理解している人なら、『これは仕込みかもしれないな』との予想は十分できる範疇でしたけど。
ヴァルバラドの立ち位置と2号ライダー枠
ヴァルバラドは設定からして明確に仮面ライダーではないとされています。
そうは言っても実質2号ライダーではないかと考える人は多いでしょう。
しかし味方側にいながらケミーを道具扱いしており、性格も嫌な奴であることを隠そうともしません。
ケミーの回収や戦闘も錬金術師としての使命や職務として割り切っています。
また、りんねに対する執着心を見せながらも、戦闘で必要ならば見捨ててしまう。
(それをガッチャードが救助しました)
少なくとも現段階の黒鋼スパナは、せいぜいが実は良い人かもと少し匂わせる程度で、仮面ライダーとしてのヒーロー性は宿していません。
ガッチャードをケミー大好きな純朴少年にしたことで、直感的にヴァルバラドを仮面ライダー足り得ないと思わせています。
これはドレッドが仮面ライダーであって仮面ライダーではないこと。
仮面ライダーレジェンドは一見すると自分勝手な俺様系だけど、中身はきっちりとヒーローであったこと。
宝太郎に感化されて人間味ある少女の面が色濃くなったりんねが、劇場版で正式な2号ライダーになったことにも繋がります。
新展開での変化とその意味
仮面ライダーガッチャードはこれまでになかった新たな仕掛けとして、新たなキービジュアルが出されました。
そして年をまたぐタイミングでの大胆な多人数ライダー化。
これらの意図を作品的に読み解きたいと思います。
多人数化する仮面ライダー
ただし、『仮面ライダー』のヒーロー性に対する担保とは、序盤の明るくわかりやすい雰囲気が前提になります。
クリスマス回にて、敵対組織側のリーダー、そして現れた新しい仮面ライダー。
ヴァルバラドの仮面ライダー化が確定。
そして劇場版にて、仮面ライダーマジェードの登場と、実質的に生存が確定した九堂風雅。
ドレッドも更なる進化を予感させる発言がありました。
キーヴィジュアルの意味を読み解く
怒涛のイベントラッシュの締めくくりに、新たなキーヴィジュアルが発表されたました。
仮面ライダーが放送中にキーヴィジュアルを切り替えるのは初めてのことです。
また、OPテーマも切り替えるという情報も入っています。
これは明確に、『ガッチャードも君達の知っている仮面ライダーになっていくぞ』というメッセージ。
ならばヴァルバラドと仮面ライダーヴァルバラドの定義は曖昧化して、より複雑になるでしょう。
黒鋼スパナの人物的な背景や成長は、重さを増した背景の方がフィットするということ。
宝太郎やりんねが向き合う真実もまた同様です。
キーヴィジュアルの変化とは、複雑さとテーマ性といった、描く重厚さの切り替えです。
算数が数学という名前になって、その在り方を大きく変化させるように。
しかしそれでも、根幹の本質は揺るぎません。
算数が数学になろうと1+1は2のまま。
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