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劇場版 王様戦隊キングオージャー【ネタバレ感想・考察】天国ではなく地獄が生み出す王の資質

2023年8月13日

作品情報

タイトル 映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン
作品要素

ネタバレ無しレビュー

公開二日目に撮影会有りで鑑賞してきた。
従来のスーパー戦隊と同様に映画としては短編だが、最初から最後まで面白いが詰まっている作品だった。

【感想・考察】映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン

内容的には、いつものキングオージャーをそのまま全体的にグレードアップしたような感じだ。
ファンならこれは観ておけってぐらいに出来が良い。

今回の一番大きな目玉は、ヒロインのデボニカとその歌。
美しい声と、特徴的な曲調と歌詞が相まって耳に残る。
劇中歌う箇所はいくつもあるが、『もういいよ!』という気分にならない。何度でも聞きたい。

撮影現場でも誰かが口ずさむぐらいに大流行していたそうな。気持ちはすごくわかる。

演じるあやねること佐倉綾音氏は今回が俳優初挑戦だが、声優として声の美しさからオファーされた。
基本的に女優としての活動はしないつもりだったが、内容がスーパー戦隊であり、周りからも推されて受けたとのこと。

もう一人、雛形あきこ氏のイロキも非常に良い味を出している。
出番は短くメインキャラでもないのに、かなり印象に残った。

綾音氏とあきこ氏は『もうこの人以外あり得ない』ってレベルのハマりっぷりだ。

なおこれは余談だが、あきこ氏の夫にして橘朔也(仮面ライダーギャレン)役でお馴染みの天野浩成氏は、現在でもニチアサ作品を楽しんでいるそうだ。
あきこ氏のオファーを聞いた際に、これはやるべきと激推ししたという。
そして家に本作の台本がやってきて、中身がすごく気になったのだけど劇場で観るため我慢したとのこと。

当人も現在、仮面ライダーアウトサイダーズに出演中。
X(Twitter)では、二人でオモチャ持ってギャレンポーズをして遊ぶ姿も公開している。
SNSではすっかり特撮仲良し夫婦として認知されているぞ!

ちょっと短め(後半作品の感想じゃねえ)だが、何せ短編なのでこれ以上掘り下げるとすぐネタバレにぶつかってしまう。
とはいえ語りたいことはまだまだあるので、後述のネタバレ有りパートで思いの丈を全力でぶつけているよ!

いつものキングオージャーをそのままに、劇場版として全てがグレードアップされており、短編でも見応えだらけで満足度が非常に高い。

ただし短さから所々描写不足や強引な部分が散見される。
夏映画のスーパー戦隊枠における限界点なので、『つまらない』のではなく『惜しい』と言いたくなった。

劇場版の新規キャラは全員が名演技で物語をより引き立てる。
特にデボニカの歌とイロキの悪役っぷりが非常に良い

演出・演技・シナリオ性のどれをとってもキングオージャーファンなら是非観てほしい名作。

ネタバレ有り感想

テーマ性と一点豪華主義

ストーリーは、本編内で省略された戴冠式と、その中で起きた事件の物語。

これまでのシリーズ全体を通して見れば、仮面ライダーの方がスーパー戦隊より基本的なリアリティレベルは上である。
しかし今回はギーツ側の方が整合性を捨てている部分があった。
(来季のライダー出演とかどうしようもない部分は別にして)

それに対し、本作はきちんと物語的に差し込まれる部分を決められていた。
内容的にも極力矛盾や違和感が生じない構成になっている。
整合性やリアリティレベルの面において逆転現象が起きているのだ。

そしてドンブラザーズに引き続き巨大ロボット戦もない。
やろうと思えばできたはずで、劇場版専用の強化や合体を前提にしたシナリオだって考えられたはずだ。
というか昔は割と普通にそうしていた。
しかし強引な捻じ込み方をしてこず、その分の尺も使って物語性を高めている。

周りに様々なイベントを起こして全員の出番を作りつつ、中心にはギラの『王の資質』という大きな柱があるため話が散漫にならない。
また、例年だと追加戦士の戦闘枠は個別に入れ込まれるお約束もあるが、こちらもカットされてギラに集約されていた。
全体のシナリオだけを俯瞰して見れば、かなりの一点集中状態である。

だからといって戦闘がショボいかといえばそんなことはない。
全員での変身自体が稀有な戦隊なので、ここぞとばかりに揃えて変身&一丸となって戦う。
そこにガッツリ演出を入れ込んでいる一点豪華主義で非常に熱い。

これはあくまで戦闘の話で、セット(今回はほとんどが新規のアセット!)など他の面でもすごく気合が入っていた。
そのためどこを切り取っても画になる。異世界ファンタジーとしての完成度も非常に高い。

尺が短いからこそ必要な部分に力を注ぎ込むと、全体がものすごく豪華に映えるのだと思い知らされた。

短くとも濃いイベントの数々

それに、個別のイベントも短いがそれぞれ象徴的な内容になっている。
閉じられた不可思議な空間でも己の技術で突破するヤンマ。
愛する両親との再会と訣別を描いたヒメノ。
かつて自分が謀殺した前大殿と対峙するカグラギ。
裁いてきた死者の魂と向き合うリタ。

特にカグラギとイロキの対峙はシーンとしては短いのに、その中でかなり深い印象を残した。イロキの悪女ムーブの完成度があまりに高い。

カグラギもいつもののらりくらり躱すのではなく、現大殿として彼女に向き合い問答しているように感じられる。
二人の並々ならぬ間柄が想像できて深みがあった。
カグラギのメイン回で、過去の回想などを使い本編に出てきてほしいと心から思う。

そして王だけでなく、側近達が彼らの支えにやってくる。
その流れが違和感なく自然なのだ。他のスーパー戦隊との違いとして非常に興味深い。
『王様戦隊』という組織の中には、側近達のサポートも含まれているのだろう。

とはいえ、尺の都合上どうしても展開が早過ぎて、説明不足や拙速な部分が散見される。
『今明かされるチキューの真実の歴史!』みたいな前振りから、語られる話の内容がアッサリかつザックリし過ぎて「え? それだけ?」となる。

ヒメノは発言内容的に偽物っぽい両親にお別れを告げるが、その丁寧な喋り方は本物と対面しているようだった。
結局、あの両親は本物が意図しないことを喋らされているのか、それとも完全な偽装なのかがハッキリしない。

リタも死者達から意外と人気なのは良いのだが、大多数が同意見なら相応の理由があるはず。
その辺りが語られないまま終わるのでモヤモヤが残った。
リタの怯えと、それを支えるモルフォーニャの姿は非常に良かっただけに残念だ。

また、個別の戦闘がなくなった追加戦士枠のジェラミー(スパイダークモノス)は、蜘蛛っぽいムーブはしているものの純粋に出番が少ない。
実質側近枠に近いゲロウジームも出番がなかった。個人的に好きなのでちょっと寂しい。

主題になるギラのテーマについても尺の悪影響は感じた。
『どんな王になりたいのか』は戴冠式前にも類似の話をやっている。
ギラが王になる話の部分にブレはないのだが、似たり寄ったりの流れの繰り返しになってしまっている感は否めない。

ただこれは、ギラに対する最初の問題提示が、ジェラミーとの会話からポロリと出た雑さだったからそう感じたのではないかと思う。
多分尺があれば、王になる上での問題に突き当たる部分も、もっと丁寧に違和感なく作り込めたのではないか。
そう思うのは『答え』が本作独自で本当にしっかりとしていたからだ。

二つの王道で語る王の資格

初代国王ライニオールは死者の国ハーカバーカから現世へと復活を目論む。
普通なら権力に目が眩んだ亡者の欲望的な扱いになりそうだが、ライニオールの目的はこれから訪れる世界滅亡の危機を救うため。
一度世界を救った男が、今一度大きな危機に立ち向かおうとしているのだ。

しかし復活のためにはデボニカの生贄が必要となる。
全世界を救うために一人を犠牲にするトロッコ問題に、まるで迷いを見せない決断力だ。
権謀術中や政に慣れきっているのだろう。

ライニオールは王として民の『普通の暮らし』を守る。
そのために最小の犠牲を払うことに躊躇いはない。

しかしギラは否定する。『生きることは地獄』だと。
普通の生活とはある種の理想だ。その水準に達していない人間は世の中にたくさんいる。
普通をお普通といえるのは恵まれた人間なのだ。

そしてギラは孤児院という普通の枠から漏れた世界で生きてきた。
普通なら手に入るものが、当たり前に零れ落ちていく。
孤児というだけで蔑み、一方的に憐む者とも多く出会ってきただろう。
生きてきた境遇。見てきた視点が、ライニオールとは根本的に違うのだ。

ギラはそういう人間を無くす王になるとは考えない。
どれだけ良い統治をしようと、普通を下回る民は生まれる。完全な救済は存在しない。

しかし地獄のような世界でも、人は生きていける。生きていかざるを得ない。
その生活を支えるものとは何か。

普段は質素な食事の中で、誕生日に食べるケーキ。
小さな特別。小さな幸せ。

それは他の人間にもある。
日々過ごす時間の中、大部分が幸せな人間は、それこそ稀も稀だ。
多くの人間は仕事や勉学に追われており、苦しい時間。退屈な時間の方がずっと多い。

その後にある自由な時間。それだって食事や風呂、睡眠を削っていくと残るのは一日の中でほんの一部。
あるいは食事が人生の楽しみの一部だという者はいるかもしれないが、それでも総量で楽しい時間を上回ることはない。

それでも残った時間に得られる楽しみは、人の心にとっては重要な栄養。
それすら無ければ人の心は簡単に壊れてしまう。それぐらい大事なものだ。

ギラは人生が本当は苦しいものだと知っている。
その事実を綺麗事で誤魔化さない。
だから守る。地獄の中にある希望。小さな幸せを。

綺麗事を守るため小さな犠牲を受け入れるライニオール。
普通であること。普通であろうとすること。
それが綺麗事であっても、生きていく上ではそれだってきっと大事だ。

自分の境遇が地獄だと認めて生きていける人間は多くない。
『厳しい環境に置かれた時に、●●よりはマシと自分より下を見て心を慰めようとしたことがあるか』と人に問えば、きっとかなりの割合でYESが返ってくるだろう。

ギラは普通を否定して、地獄の世界を肯定する。
ギラは救国の王を否定して、邪悪の王を宣言した。

それはどちらも国と民を守る意思に嘘偽はない。
ただ王としてどう在るかの違いである。

ならば、それを選ぶのは王ではなく、その国に生きる民だ。
結果デボニカは『大きな世界を救うための小さな犠牲』になるより、『小さな幸せと共に地獄を生きる』ことを選んだ。
ギラは民(デボニカ)に選ばれ、王たちの力を結集して過去の英雄を突破した。

伝説の初代国王と向かい合うことで示した。
己に王となる資格有り。
己に世界を救う資質有り。
そうして民に祝福されて、その頂に冠を載せる。

これはまさしく王になった男の物語。


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