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仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐【ネタバレ感想・考察】英寿を英寿たらしめる本質と最後の進化の繋がり

2023年8月4日

作品情報

タイトル 映画『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』
作品要素

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ネタバレ無しレビュー

ギーツのTV本編は終盤なのもあって重たい空気になっているが、劇場版ではそれを引っ張っていないため、特に前半はコメディ色が強く楽しい雰囲気になっていた。

単体作品として、本編と気分を切り替えて観やすい。
ところで、可愛いけどナーゴってセリフまでこんな露骨に猫科だったっけ?

45話でメラとメロが顔見せに出てきてはいるが、恐らくは本編終了後の時間軸だと思われる。
(ギーツは冬映画でも本編と設定矛盾を起こしていたので、本編終了後でも矛盾が生じる可能性はある)

ただそれを差し引いても、舞台的な設定の整合性は完全にぶん投げていた。
全体的に作品単体として、ノリと勢いを重視しているなぁと感じる。
(詳細な解説はネタバレ有りパートを参照)

そのため強引さが否めないものの、前半はコメディ強めで、後半はしっかりと盛り上げる。一本の映画としてはきちんと完成されていた。
物語設定重視か、あえて細かいことを考えない楽しさか、どちらが良いかは個人の好みにもよるだろう。少なくとも本作は後者に属する。

それとあまり比較はしたくないのだけど、整合性があって熱量がもの凄い展開を、前半のキングオージャーがやっている。
先にお出しされた方の盛り上がりがものすごく良いため、作品全体の出来としてはどうしても『キングオージャーが名作だった』が頭から離れない。
今年は上映の順番を逆にしていたら、ギーツの評価はより高くなっていたのではないかと思う。

もう一つ重要な要素として、今回はテーマ性も本編とは趣が異なっていた。
仮面ライダーギーツにおける仮面ライダー性とは、競い合うライバルと、世界を守る戦士達が両立された特殊な存在だ。

今回は後者的な存在として扱われており、ある意味でステレオタイプな、『人類の自由と平和を守る仮面ライダー』像に強く寄っている。
だからこそ明るく観やすい作品化している部分はあるのだが、デザグラ的な『ギーツらしさ』は薄まっている感が否めない。

タイトルに『4人のエース』とあるように、物語的にはかなり英寿を中心とした構成になっている。ギャグ要素は強いものの、英寿という男の本質にかなり深く切り込んでいて、作品としての見応えや重要性は十分にあった。

その分、他のレギュラーキャラは活躍の場が大部分ギャグ方面で、仮面ライダーとしての活躍は物足りない。
ただ、本編ではなかったコンビの共闘が観られたのはちょっと嬉しかったけど。

それぐらい戦闘面は大部分がギーツに振り切っていた。
本作オリジナルのXギーツはかなり格好良い。名前が『ナインの次』と『黒過ぎ』をかけたギャグなのだけど、むしろXギーツ自体には本作のギャグ要素がほぼ絡んでいない。


ギーツワンネスも個人的には想像していた以上に良かった。
ギーツⅨ(ナイン)が元々神的な存在であり、その進化形態ってどういうことなの? そう思っている人は私だけではなかっただろう。

映画を観るとこれがスッキリと解消する。ワンネスという名前の意味が、何故ナインを越える進化形態が必要だったかと、本作の重要なテーマ性の両方をしっかりと示していた。

また久々に登場する冴(ロポ)と一徹(ケイロウ)は活躍シーンが用意されていて、ちゃんと事前に参戦予告していただけはあると思えた。
冴は肉体美、一徹は年の功を感じる台詞がそれぞれ素晴らしい。

なお例年通り、次回作ガッチャードの出番はしっかり確保されている。ある意味では普段以上の活躍をしていた。
ここもノリ重視か設定重視かで受け入れやすい度合いは変わるかも。

本作における冴と一徹の活躍は、デザグラではないからこその要素も少なからず影響している。
競い合う必要がないからこそ、それぞれの良さを出しやすい。

これは本作全体にも言えることである。
デザグラを通して敵対したり絆を深めたりしてきた仮面ライダー達だったが、その果てに彼らは何を得たのか。一年を通した集大成の物語としては良き作品だった。

(以後は後述しているネタバレ有りパートでの解説・考察へ)

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総評

前半はコメディ色が強く、後半は熱い展開。
全体的に暗さはなく、明るく楽しい作品性で、普段のギーツよりも仮面ライダーらしい仮面ライダーとなっている。
その分、ギーツらしさである競い合いの要素が薄れており、設定や世界観的にも深く考えたら負けのお祭ノリ状態。

身も蓋もないことを言うと、同時上映のキングオージャーが短いながら出来が非常に良く、作品の熱量ではどうしても見劣りしてしまう。
(決して悪い作品ではない)

またメインキャラの活躍も少なめで、英寿と『ギーツ』に極振りされている。
ただし、久々に登場したロポとケイロウの出番は良く、英寿を中心にしたことで物語的な集大成としてもよく出来ていた。

本編の延長線上にあたる夏映画の内容であっても、お祭モノやメタ的なノリが全然問題ないって人ならば十分オススメできる。

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ネタバレ有りレビュー

ジーンの役割は○○の○○

まずはネタバレ無しパートで記述した整合性と設定について。
本作はメタネタと勢いを優先に、世界観を犠牲にしていた。
一番わかりやすい例はジーンである。

そもそも設定的には、まとも(?)なデザグラ運営は撤退して英寿に運営権が移っているのに、ジーンは何処でなにしてるの?
英寿が旧デザグラ運営とは別に未来人とコンタクトを取り、任意で鑑賞可能な状態にしなければこの状況は成立しないだろう。
最終回までに英寿がこれに近いことをやらなければ、かなり致命的な設定矛盾となる。

ジーンはデザグラのオーディエンスに向けた言葉という体で、度々視聴者へと語りかける。
後半はもうどう見ても、ミラクルライトを振るタイミングを指示するプリキュアの妖精だった。
プリキュアなら抵抗感がないけれど、仮面ライダーでこれをやられると脳みそが現実に戻って、私は逆に作品へ没入できなくなってしまう。
まだしも春映画的な何でも有りや、意識的にメタネタをやっているバイスならともかく、本編に連なる話でこういう観客を巻き込むやり方は個人的に好きじゃない。

新ライダーガッチャードの扱いも通常より、お祭モノネタでメタ寄りだった。
大体の劇場版だと次回作のライダーは、登場しても戦闘で手助けするだけで、ストーリー自体にはほぼ関わらない。とりあえず顔見せはするけど作品のジャマはしませんよスタイルだ。

今回はただ戦うだけでなく、強化アイテムとなるカードを残していった。
しかしガッチャードのカードや全体の設定が、ギーツに対してどう関わっているのかはまったく触れていない。
(ガッチャード自身はデザグラの知識を何一つ有しておらず、作品的な繋がり方も暈している)

個人的に世界観をまたいでの出演は、お約束として考えたら負けの境地に入っているが、ストーリーに絡むのは個人的に歓迎し難い。

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メラの在り方はジョーカーよりも○○

敵のメラとメロは世界の滅亡を目的としており行動は派手で、奇抜な道化ファッション。そこにジョーカー的な狂人イメージが込められているとパンフレットでは語られていた。
実際全く意識してないというのは無理筋だろう。

チョコプラ長田氏の演技力は良かったのだが、それでも劇中ではジョーカー程の狂気やカリスマ性は感じられない。
それらは演技だけでなく思想や行動そのものにも宿るからだ。

英寿ごと世界を四つに割り、それぞれ個別に倒して持っている要素を取り込みXギーツを完成させる。
これは完璧超人な英寿に対する攻略法としては面白い。

ただ、世界を分割するのに理論性のある設定や解説が皆無だった。その行動に対する動機も『最短クリア』だけでゴリ押ししている。
英寿を分割化する『案』が有り気のネタで細部がない。そのため敵としての凄味が行為に伴わないのだ。
加えて、遊びや悪ふざけが世界滅亡ゲーム自体の動機なのだが、その悪ふざけに対する掘り下げがほとんどない。

例えばアベンジャーズシリーズで有名なサノスの指パッチン。
それ単体では当時そこまでのインパクトにはならなかったろう。
サノスの思想や、実行までの過程が丁寧に描かれることで、キャラクターの魅力に昇華されている。

ダークナイトのジョーカーも同様だ。利益に見合わない凶人的な行動でまず人間的な理解を遠ざける。その後にバットマンの心を揺さぶる策略を打つことで、異様な雰囲気とカリスマを宿らせていた。

要するに、案だけ先行しても、敵の強さや魅力には直結しづらい。
本当はもっと頭脳犯のはずなのだが、ゲーム感覚で暴れる男という上っ面の設定だけなので、ジョーカー扱いするにはあまりにも浅すぎる。

ただ、『だからキャラクターとして全然駄目』だとも思わない。
遊びで注目されたいから世界を滅亡させて、それをわざわざ動画撮影し、そこに変な加工まで加えていた。
メラとメロの動機やノリは、ジョーカーよりも迷惑系YouTuberのそれである。

醤油差しをベロベロ舐めたり、駅の線路に飛び出して走ったりする迷惑な馬鹿。その極地で過去の世界を滅ぼすまでに至った。
そう考えれば、これはこれで現代的なリアリティがある。
何でも自由にデザインできてしまうデータ的存在の未来人。それ故に人生の刺激が足りないため、デザグラでその欲求を満たす。
それだけでは飽き足らず、わざわざ時代を超えて悪ふざけをする連中が現れた。

技術の発展と迷惑な馬鹿が組み合わされば、非常に悪質な事件を起こす。
生成AIはとても便利だが、そのせいで一般人には見分けられない悪質なディープフェイク被害が加速するのと同じだ。

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英寿を英寿たらしめる本質

 
これまでほとんどの勝負で勝ち続けて、仲間(ライバル)達との信頼も築いてきた英寿。
超人的なキャラクターは本編だとその内面が掘り下げられることが少ない。

内面を描くということは人間味が出て、それは同時に弱さや欠点も描くことになるためだ。
そのためTV本編での英寿は事件を解決する者であり、仲間達の成長を促す者だった。
内面が描かれ成長していくのは、主に景和・祢音・道長の三人である。

だから英寿を重点的に掘り下げられるのは、それだけでも作品としては重要な意味を持つ。
それでも人格を分けることによって、なるべく直球で弱さを描かず済んだのは手法として興味深い。

それでも、例えば『心』の英寿は強さの要素を全部削ぎ落としても、下手くそなオカリナを吹いたり、じょうろをマグナムシューターに見立てて格好良く撃つポーズを見せている。

逆に残った英寿達は積極的に格好付けようとはしていない。
要するに英寿は強くて頭も良いから格好良いだけでなく、根っこがかなりのナルシストなのがわかってしまう。

既に仲間達が十分に成長していて、英寿個人を狙い撃って倒そうとするシチュエーションが、英寿を上手く掘り下げる条件になるのは大変よく理解できた。

英寿の強さや魅力の源泉はどこにあるのか。
それぞれの要素を分割したことで、何が欠ければ真の意味で英寿ではなくなるのかを視覚化した。
力・知・運の単体だと、それぞれの要素で『何か』はできても、英寿は別人になってしまう。

けれど、この三つをかけ合わせると英寿の技能としては完成する。
それらを吸い出して神殺しの黒い神Xギーツと成った。

残ったものは英寿の心。
どれだけ苦難の道でも、いつか勝てると信じて戦うことを諦めない。
母親との再会を求めて、幾度もデザグラに挑み続けてきた。

その上で人としての道は踏み外さない。出来るだけ犠牲を出さずに、助けられる者は助ける。
勝つために手段を選ばないのではなく、手段を選び勝ち続けてきた。
それらが英寿を英寿たらしめる精神性だったのだ。

仲間達はその英寿の諦めない心に触れて、鼓舞されてきた。そして自分達も願いを叶えるためデザグラに挑み続けてきたのだと自覚する。

だから、たとえ力と知と運を失っても『英寿ならば』と、景和と道長は最後まで身を呈して彼を庇った。

創世の神の権能まで得た英寿が、ワンネスでこれ以上何の力を手に入れるのか。
その答えが仲間達の絆だった。

己の願いのために戦い続けてきた仮面ライダー達が、本当の意味で願いを一つ(ワンネス)にして、最悪の破滅へと立ち向かう。
願うことを否定していたバッファと、全ての犠牲者を救うために願いを持つタイクーン。
本編内でも二人だけでのまともな共闘はほとんどなかったが、Xギーツ相手に連携して戦う姿からもそれは明らかだった。

黒い神は力・知・運を奪い、残った英寿の心を絞りカスと否定した。まさしく心ない凶人の所業。
対して英寿は何の力も無いまま仲間達の絆だけを手に、諦めない心で立ち向かった。

ぶっち切りで勝ち続けて、全ての仮面ライダーの願いが叶う世界の実現すら、己の力を元に達成させようとしてきた男。
そんな彼が、最後に頼ったのが仲間達だった。

一番大きな願い……犠牲なく誰もが幸せになれる願いを叶える。そのためには皆の心を一つにしなければならない。
英寿は自分の持っていた全てを失ったことで、それを成し遂げたのだ。

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