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『SAND LAND』ネタバレ感想・考察 鳥山メカ作品の神映画化!

2023年8月28日

作品情報

『SAND LAND』感想・考察 鳥山メカ作品の神映画化!
タイトル SAND LAND
作品要素

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ネタバレ無しレビュー

令和の時代、鳥山明氏といえばドラゴンボールによる迫力のバトルという人が大多数ではないだろうか。
まさしくバトル漫画の金字塔的な存在であるのは疑うべくもない。

しかし、鳥山作品の絵の上手さとは決してバトルだけではない。
どこか可愛らしさを残しつつも精密に描かれた鳥山メカ。ファンの間ではこれもまた大きな魅力なのだ。

『SAND LAND』は老人の保安官と悪魔の王子(+従者)が砂漠の世界で幻のオアシスを探す物語だ。
字面だけだと、地味で童話的なイメージを与えてしまい、鳥山明の絵と相まって子供向けの雰囲気がある。

だがこれは事実ではない。
シブくて格好いいジジイが悪魔達と共に鳥山メカを縦横無尽に操り、砂漠の荒野で熱戦を繰り広げる。
老練な技術と経験が光る読み合い。それを巧みなカメラワークで描くので、非常に格好良くて画になる。

その分アクションシーンはドラゴンボールに比べれば大人しく控えめだ。
劇場版のドラゴンボールクラスではないというだけで、アクションシーン自体はちゃんとある。

それだけでなく悪魔の力を活かした戦車アクションも個人的には見所の一つなのだが、純粋にバチバチの肉弾アクションに高い期待を寄せていると少し物足りないかもしれない。

また、本作はシナリオ面でも非常に優秀だ。
PVだと主人公のベルゼバブがやんちゃな児童のような悪をアピールしており、実際に子供っぽいテンプレート的な演出もギャグと交えて随所にある。

けれど、それが主体だと思って観ないを選択するのはもったいない。
むしろそれを囮にするよう、不意打ちで重くシリアスな展開を叩き込んでくる。
双方が互いの面白さを引き立てて骨太な物語になっていた。

ただ難点として、この二つが相反し合うことも僅かながら有り、ちょっと強引に無理やりスカッとさせている場面もあった。
ファミリー向け作品としては正しいやり方とも言えるので、ひたすらわかりやすいエンタメ作品を求める人なら気にならずスルーできる範疇だ。

話を重くし過ぎず、見応えのあるドラマとアクションが全編に渡り展開される。
最初から最後までテンポよく、観ていて全く飽きない面白さが続く。

日本の映画は予算や産業的なインフラ面などで、ハリウッドの大作アクション映画に勝つのは難しい。
しかしこと2Dアニメならばこれらは覆る。まさしく本作はハリウッドの大作アクション映画に通じる面白さがあった。

鳥山明メカ好きはもちろんのこと、そうじゃない人にも十分にオススメできる良作だ。

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ネタバレ有りレビュー

本作は鳥山メカや話の構成だけでなく、作品的なテーマ性にも光る部分があった。
言葉にするなら『人間と悪魔』と、その中にある種族間の偏見であり、それ自体はさほど珍しい題材ではない。
けれど、その細やかな表現方法がわかりやすくて上手い。

水不足で砂漠化が進む世界で、悪魔達が冒頭から人間達の水を奪うところから話はスタートした。

人間達は井戸も枯れてしまい深刻な状況で、国王だけは潤沢な水があり、それを高値で国民達に売り付ける。
少しだけ値段を下げ国民に寄り添うような振りをしているが、あからさまな欺瞞だ。

悪魔達が水を奪っていたのはたくさん持っている国王軍からだけで、実は水がなくて苦しむ子供がいたらタダで分けていた。
まず悪魔らしい行為をみせるが、すぐに水不足とそれ以上の悪をだして、今度は悪魔達の善行が発覚する。
結果、悪魔の行為は生きるために必要なことで、かつ義賊的な行為にも映る。

サタンの『ゲームは一日一時間』の発言も、悪魔があえて教育に厳しいことを言うギャグだ。
対して人間側のトップである国王は、国の運営をすべて部下に任せて自分が楽して儲けることしか考えていない、あからさまなバカとして描かれている。

国王は国民が水不足で苦しんでいても、自分は巨大なプールで遊んでいた。
サタンは水を取り戻したEDのカットで悠々と風呂に入っている。言い換えれば『悪魔の王でありながら、水が不足している時はしっかりと節水してました』と言うことだ。
ベルゼが特別優しいというのを差し引いても、トップがこれなので悪魔達は全体的にモラルがある種族なのだ。

実際に国の運営を行っているのは、無能な王ではなくゼウ大将軍である。
悪魔達の一部は水不足を解決する装置を作ろうとしていた。
だが水を独占したいゼウは、兵を騙して悪魔側に無実の罪を着せて虐殺を行なっていたのだ。

悪魔のパブリックイメージを使った偏見。ラオとベルゼ達は一緒に旅することでそれらを払拭していき、隠されていた真実を見つけながら、本当に正しいこととは何かを物語の中で問うていく。
最初は悪党だったアレ将軍やスイマーズもそれに感化されていった。

アクションと両立して描いたテーマ性としてはかなりしっかりしており、見ていてストレスも感じないので、適度なバランス感で組み立てられている。古い作品でありながら映画化に選ばれるだけあって、まず原作の構成が巧みなのだ。

特に鳥山明氏の『罪を憎んで人を憎まず』の描き方は、魔人ブウ(デブの方)や『カジカ』でも上手いなと思っていた。

ただ難点として、最後の決着でラオにはゼウ大将軍を撃てない(どんな悪党でも殺してはいけない)。
罰せない悪をどう裁くのか。その答えがベルゼに殴られて星になる(ギャグマンガ表現)なのは強引な誤魔化しだなぁと感じた。

強いて理由を付けるなら、直前のベルゼは目が赤くなって真の悪魔の片鱗が見えており、同時に殺しはしないルールがある。
ならば『死なない程度に死にそうな目にあわせる』の答えが星になるだったのだろう。
EDでもゼウ大将軍は出てこないため実質生死不明となっていた。

悪魔は人間と外見が大きく異なり、肉体的にも遥かに強い。それだけで人間にとっては十分畏怖の対象となる。
これは現実でも当たり前のように起こっていることだ。
弱者は強者が恐い。または羨ましい。だから足を引っ張ったり、悪いイメージを植え付けて、弱者側を正当化したりする。 

そして人間はたとえ、外見や身体の小さな差異しかなくても、人間同士で手と手を取り合えないことすら当たり前にある。
本当に大事なのは、力が強いとか角が生えているとか、肌の色が違うといったことじゃない。

他人に優しくできるか。『気持ちの良いヤツ』と思えるか。
心根の優しい悪魔と、それを信じた男はだからこそ種族も年齢も越えた絆を得たのだ。

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総評

見かけや宣伝映像の子供っぽさに遠慮してしまうかもしれないが、それはごく一面的な部分。
むしろそれらも上手く活かして、重過ぎず軽過ぎもしないシナリオになっており、まさに子供から大人まで楽しめる。

鳥山明作品のアニメ映画化としては、ドラゴンボールとは異なるベクトルで高い完成度になっている。
特に鳥山メカの動きとカメラワークは抜群に良い。ファンなら観るべき。

そうでなくても、エンタメのアクション映画として非常に出来が良い。

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