このページにはプロモーションが含まれています 仮面ライダー 感想・考察

平成ライダー史 仮面ライダークウガ『新たな伝説を創った者達』感想・考察

2020年4月28日

スポンサーリンク

熱く甦れ!

はてさてここまで色々語ってきたが、なんと驚くべきことにまだ作品の開始以前と外堀にしか触れていない。
それぐらい圧倒的な熱量でもって製作されてきたのがクウガという作品なのである。

実際に放送が始まってからは、視聴者の感触は好評だった。
それは伝説のヒーロー復活ではない。新たなヒーロー。新たな伝説の創造に等しかった。

高寺Pは撮影現場で「これ、やっちゃっていいんですね」とたくさん言われたと語っている。
それだけ皆挑戦心に溢れ「いいな、やるぞ、止めんなよ!」と全力全開で取り組んでいた。

たまに高寺Pも知らない暴走なんかもあったという。
グロンギの集合場所が回を追うごとに凝っていったのだが、ある時東映の中でも大きめの撮影ステージに撮影前日から照明部が入り、何やらセットの組み立てを実施している。
やたら派手に何かやってんなー。CMでも撮影するのかなーと思っていたらクウガの撮影用だったと知って驚いたそうな。
しかもそこに水まで張られだしている。どうなってんだ。

台本には『アーティスティックな空間』と一言書かれていただけなのに、プロモーションビデオでも撮るのか思う程にスゲー凝った空間が出来上がった。
話数的には25・26話にあたるので、現物は是非自分の目で確かめていただきたい。

ここまで大変革を起こせば、「こんなの仮面ライダーじゃない!」という批判も多かった。大変多かった。
鈴木氏は知り合いの結婚式場でかつて仮面ライダーを制作していたスタッフに出会い、めっちゃお叱りを受けたらしい。

それで落ち込んだ……なんてことはなく、むしろ自分の挑戦は上手くいったのだと確信を得た。流石に確信犯である。

視聴者達からすらも、放送開始前はクウガのデザインも含め大きな設定変更に反発は大きかったのだ。
新たな挑戦に反発は付きもので、正当な評価とはそれを乗り越えた先にしかない。
仮面ライダー名物と化した視聴者による熱い掌返しはクウガの時点で既に始まっていた!
(仮面ライダーは基本掌返しして楽しむものだと思っている歪んだ視聴者が私である)

とはいえ製作中に問題も多々勃発した。
クウガは東映特撮ヒーローで初めて同時並行で音声収録をするハイビジョン撮影だった。

前年のロボコンまで音声はアフレコになっている。
撮り方も大きく異なりノウハウの蓄積がない。このため撮影は遅れ気味になっていた。

序盤で予算使い過ぎた事件も起きており、第二話で教会炎上シーンをリアルに大炎上させた話は有名だ。

なお高寺P曰く、教会炎上の予算は話を盛られていて、実際には第一話の九郎ヶ岳遺跡の方が予算を多く食っているとのこと。
当初はここまでの予算規模が通るわけないと思っていたのが、パイロット版製作で案外すんなり通ってしまったなど、色々な事情が重なって起きたことらしい。

そして最大の問題はやはりストーリー構成にあった。
かなりシリアスで序盤から人も多く死ぬ上に描写も生々しい。
グロンギの怪人デザインも人に近く、親御さんを中心に従来のヒーロー路線にしてほしいとクレームが相次いだ。

これにより東映は二クール目から作風の変更を現場に要請。
作品的にクレーム原因は脚本の要素も強かったためか、変更要員として井上敏樹氏が新たに起用された。

けれど高寺Pは断固拒否の姿勢をみせて、テレ朝担当プロデューサーである清水裕美氏やスタッフ達の尽力もあり方向転換は免れた。
それだけでなくグロンギ語に字幕を付けて欲しい要望等もあったのだが、作品の世界観を守るためにこれも拒否。清水氏は諸問題の防波堤になってくれたそうだ。
ただし、終盤になるほどグロンギの残虐な殺人描写は鳴りを潜めるようにはなった。
(とはいえ、直球じゃないだけでジャラジみたいなド外道はいる)

他にも伝説の一つとして残っているのは井上敏樹氏の活躍だ。
交代要員として呼ばれた氏は、その時点で上がっていた脚本を全て読んでクウガはこのまま行くべきだと逆に進言

制作スタイルは既にキッチリ固まっており、視聴率も悪くない。
(最終的には結構高人気だった前作のロボコンを平均・最高視聴率共に追い抜いた)
そして新しいスタイルの作品として既にファンの心も掴んでいる。

普段からして、子供向け云々よりも良い作品を作るべきと考える井上氏としては、あえて変えるべき理由がなかった。
(後に響鬼の路線変更で脚本変更を請け負ったことで批判も受けているが、当時は制作が完全に崩壊していた。
また変更を余儀なくされながらも、本来変えるべき要素だと考えられていた明日夢の成長物語路線は守り抜いている)

実際、井上氏が参画して最初に書いた脚本は第13・14話、グロンギに憧れる蝶野の話だ。
残酷さや怖さが問題視されていたのに、むしろ未確認の恐ろしさ、理不尽さを、より現実味を持って描いている。
物語としてクウガのテイストをキッチリ守った上で、まだ荒川氏が触れていなかった部分に触れた。

クウガは制作前にも、製作中にも様々なトラブルに見舞われた。障害も多い作品だった。
新たな作品を生み出す熱と支え合い前へ進む姿勢で、それらを乗り越えていったのだ。

スポンサーリンク

次のページへ >

人気記事

何故アメリカでゴジラが愛されるようになったのか【解説・考察】 1
2014年にハリウッドでギャレス版ゴジラが公開され、2021年には『ゴジラVSキングコング』が激闘を繰り広げました。 流石に注目度の高い人気作だけあって、様々な場所で様々なレビューが飛び交っています。 ...
【感想・考察】ゴジラ-1.0 王道を往くマイナスの本質とは 2
2016年、庵野秀明監督は懐かしくも革新的なゴジラを生み出した。 シン・ゴジラは純国産ゴジラとして、間違いなく新たなムーブメントを迎えた。 しかし、そこからゴジラの展開は途絶える。 新作はアニメ方面や ...
【仮面ライダーアギト 考察】伝説の続きが創った平成ライダーの基礎 3
ドゥドゥン! ドゥン! ドゥドゥン! アー! 令和の世で需要があるのかと思っていたクウガ考察でしたが、本編だけでなく小説版まで予想以上の反響をいただけました。 中にはブログを読み小説版を購入してくださ ...
仮面ライダーBLACK SUN 敗者達の希望と悪の連鎖【感想・考察】 4
第三章:敗者達による永遠の闘争の本質 黒い太陽が再び燃える物語 前章でも書いたが、BLACKSUNは光太郎と信彦の宿命の戦いを描いた物語だ。 それは間違いないのだが、二人の因縁は全編を通して意外と掘り ...
5
最終章:SNS社会を楽しく生き抜くためのオタク道 サヴァイブせよ楽しいオタクSNS生活 ここまで、掘れば掘る程にドロドロした闇が吹き出してくる険しい旅だった。 特撮クラスタが荒れる理由から、その先に待 ...

-仮面ライダー, 感想・考察
-, ,