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【仮面ライダージオウ】36話感想 ソウゴの初恋は共感できないように作られている

2019年5月19日

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仮面ライダージオウ 36話『2008:2019:ハツコイ、ファイナリー!』

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。


今回はマンホール編後半でした。
というか前半でネタアイテムっぽく活用したと思ったら、後半の方がマンホール無双ってどういうことなの? マジどういうことなの?
大方はネタとして処理されそうですが、実はこのマンホールも番組の構成やシナリオ的には案外意味がちゃんとあると思います。ギンガの必殺技弾いたとかそういう意味ではなくて。

個人的にジオウのキバ編を一言で喩えるとザンボット3なんですよ。
スポンサーの意向をとにかく聞き入れ、子供の玩具としてロケットパンチに各種ミサイル、刀、更には十字手裏剣や釵(さい)とか無駄にマニアックなものまで搭載。
巨大ロボットの中にはただの犬まで乗せる。
そんな子供向けの空気を出した上に尺をそこに大きく割いた上で、とんでもないドラマを作り伝説を残した作品です。

井上敏樹脚本のすごいところは、これとすごく似ています。
スポンサーの意向全部聞き入れレジェンドにライダーなし、キバ編と並行してキバとの関わり皆無の仮面ライダーギンガを登場。しかもウォズを強化流れも入れる。
という明らかに詰め込みすぎて尺が足りない状況で、視聴者に強烈な印象を与えて記憶に残る井上脚本を完成させてしまう。

人によっては一ミリも歓迎されないんですけど、逆に言えばそれだけ視聴者には尺の問題以外の何かが残っているんですよ。
これは物語を作るという意味においては重要な資質であると思います。

とはいえ、全編クロックアップした怒涛の展開だったこともまた事実でした。
キバ編が魅せたかったものは何か、ちゃんと整理しつつ考察と感想を書いていきましょう。

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キバ編にマンホールが必要だった物語構成上の理由

ええもう、嫌でもキバ編視聴者の記憶に焼き付いたマンホールを武器に戦う釈由美子氏。
ギンガの必殺技をマンホールで防ぎきるのは流石にねえよ! と思ったけど、多分アナザーライダーの力的な何かがかかってたに違いない。そうだと言って。

そもそもなにゆえ北島裕子という人物にマンホールが必要だったのか。
当たり前なのだけど、必要ないならあえてマンホールなんてアイテムは使用しない。

もちろんインパクトのある武器という意味はあるだろう。
キャプテン・アメリカもビックリな盾と武器としての活用っぷりだった。
(ちなみにキャプテン・アメリカの盾より5倍以上は重かったはず)



北島は自分が冤罪だという理由から裁判の関係者に復讐を繰り返していた。
しかし真実は無罪だと本気で思い込むことで『自分の中の事実』を捻じ曲げる本物の危険人物だ。

そしてアナザーライダーになる以前から、マンホールの蓋で好きになった男の彼女を殴打して殺害している。
この時の北島は両手でマンホールの蓋を重そうに引きずっているので、現在軽々しく取り扱っているのはアナザーウィザード同様にウォッチの力だとわかる。

鉄の塊で人を殴り殺して、罪悪感皆無で嬉しそうに笑う精神は到底まともじゃない。
しかも捕まったらその事実を無かったことにする。コワイ!

これが包丁やバールだったら、放送倫理的に放映不可能だったろう。
日常的に見ることのあるリアルな凶器で、現実的に使用するのは難しいという条件が必要だったと考えられる。
(マンホールは専用の鍵がないと開けられない)

そしてラストの結婚式にもマンホールを持って乱入している。
ここまでマンホール無双していたおかげでネタ武器と化していたが、何も知らない人からするとマンホールで殴りつけてくる女は狂人そのものだ。
主観で観れば観るほどサイコホラーになる演出として仕上げてある。

またマンホールは誰彼構わず使用していたわけではない。
弁護士達にはアナザーライダーの力を使用している。
そもそもアナザーライダーになればいいので本来はマンホール自体特に必要ですらないのだ。

にも拘らず、愛した男の結婚相手にはわざわざマンホール片手に現れる。
またウールとの戦いや、ソウゴを助ける際にもマンホールを使っていた。

特にソウゴを助けたのは、女王としての行動ではなくソウゴと心を通じ合わせかけていたためだろう。
(それまではギンガ戦には参加せず避けていた)

アナザーキバは女王の象徴。なので誤った法である弁護士達はアナザーキバで消し去る。
そしてマンホールは『北島裕子という女の象徴』なのだ。

余談だけど、マンホールブーメランをキャッチしたゲイツもたいがい人間じゃない気がする。
ゲイツリバイブの力を使っても平気になったのは、肉体的な慣れが理由らしい。

耳や目から出血は内臓がやられているので、鍛えてどうこうってレベルじゃないと思うんだけど、そういうことなのだ。
ゲイツリバイブを使いこなすことによって、ゲイツもまた高速で飛んでくる40kgの鉄塊を無傷で受け止められる、人を越えた力を手にしつつあるのだった!

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ソウゴと北島のサイコパス恋愛

キバ編はソウゴの初恋と失恋の物語でもある。
ただし、真っ当な恋愛物語とは程遠いところがいかにも井上脚本だ。
というか、全体的にソウゴと北島の恋愛物語は全然共感ができない。
そしてそれは正しい感覚だと思う。

北島はアナザーキバになる前から腐っており、自分にとって都合のいい幻想に生きている女だ。
ギンガへの共闘を持ち掛けられた時も『ギンガについて忘れることにする』と協力を拒否した。
現実逃避かと突っ込まれていたけれど、この逃避こそが北島という女の本質なのだ。

自分が愛する人の恋人だと思い込み、相手に本物の恋人ができたら、その女の存在を無かったことにする。
(無かったことにしているから男に対しては恨みや復讐はない)
そして殺人者として捕まれば殺人行為自体を無かったことにする。

35話の冒頭を見返すと、北島はまるで元カレに話しかけるような雰囲気で、ひたすら一人で喋っている。
男の方はただ視線を合わさず震えているだけ。
一見すると北島の超人的な嗅覚で見透かされ、図星を突かれて何も言えなくなっているように見えるような演出だ。

北島の「責めてないわ」なども全部一人思い込みで喋っているだけ。
ストーカー殺人鬼の狂気が自分に向けられたものだと考えれば、そりゃあ震えるほど恐いよね!
話しても無駄なのはわかっているだろうから、ずっと無言なのも納得だ。
新しい彼女との結婚が間近なので、安全確認や心に整理をつけるためなどの理由で様子を見に来たのだろう。

そうやって自分に都合の良い事実だけを受け入れ、他は全て排除してきた。
アナザーキバと王の力は、都合の良い世界を作ることにうってつけな道具だった。
だから復讐を辞めると言って早々無実の三人を殺害して、『法を改正した』と堂々と言ってのける。

対する常盤ソウゴも中々にヤバイ奴である。
友達もほとんどおらず大抵ぼっちだったため、自分に優しくしてくれた大人のお姉さんに恋心を抱いてずっと覚えているのはわかる。
しかし偶然出会った相手を、行動が似ているからという理由だけで初恋の相手だと思い込む。
そして北島を『セーラさん』と呼んでいいのか問う(そして当然断られる)。
ソウゴは北島ではなく幻想の中にある『セーラさん』に恋をしていた。
都合の良い事実だけが欲しいので、北島が何となく覚えている風の返答だけで、中身は確認せず『やっぱりセーラさんだった!』と確信を持ってしまうのだ。

二人の特徴は周りの話を全然聞かず、己の世界観だけで自己完結している。
一見ベストマッチな関係にも見えるが、最初からずっと噛み合わずすれ違い続けていた。

『何故こんな私だかわかるか』から『雨のせいなんだ』という謎の自分語りも意味不明だが、ソウゴはそれを勝手に自己解釈して自分が傘になる! と返す。
傍目から見ると完全に意味不明なのだけど、二人は自分の世界で会話しているだけだ。
要するにどっちも自分の理想しか見ていないので成立するサイコパスな関係なのである。

まあ、そういう二人で勝手に自己完結しているだけの関係なので、最後の死別となるシーンで全く共感ができない。
ソウゴが本気で哀しんでいるのはわかる。
けれどソウゴの中で死んだのはどこまでいっても『セーラさん』なのだ。

最後のシーンで麻生ゆりソックリのお姉さんが、また『セーラさん』と同じことをして去っていった。
けれどあの女性が本物のセーラさんであるという事実は確認できていない。

実はソウゴに問われた時、北島は本当にソウゴのことを思い出したのかもしれない。
それはやはり都合の良い嘘で本当のセーラさんはどこかで生きている。
どちらの可能性もあるように見せて、けれどソウゴが抱いた喪失感が消えるわけでもない。

ただ北島の死でソウゴの初恋は確かに終わった。
麻生ゆりのそっくりさんが実は『本物の初恋の人』だという流れになるのは正直わかりきっていたので、前回の考察でもあえて触れなかった。
だからこそ、あえて曖昧にしたこの締め方はすごく上手いなと思った。

少し残念な点としては、この初恋話はジオウ前半でやった方がもっと効果的だったろう。
今のソウゴはゲイツやツクヨミという友達を得て、精神的にも成長し、人との関わり方を覚えだしている。
ウィザード編やオーズ編の、こいつなら魔王になりかねないと思える行動を取っていた頃のソウゴだと、より効果的な演出になったのではないだろうか。

http://kamen-rider.info/zio-8/

また同じ目的を持っており献身的に自分と向き合ってきたソウゴに対して、北島も思うことがないわけでもない。
それがソウゴを助けた理由であり、王と王女のくだりだった。
噛み合ってないのにちゃんと北島の心を開いていたのは流石だ。ソウゴの王の器という名の人たらし能力は間違いなく本物だ。

最後に皆の傘になれと言い残したのは、私だけの王ではなく、もっと広い視野を持った王になれ。言い換えれば『私のようになるな』という意味かもしれない。
北島は『もしソウゴが独善的な価値観で王になっていたら』というIF存在とも取れる。

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平成ライダー一期とジオウ前半の集合体構成

キバ編は全体的に平成ライダー一期の雰囲気が漂っていた。
平成ライダー一期のレジェンド脚本家と呼ぶべき人物が執筆したのだから当然と言えば当然だけど。

勢い優先のライブ感見たいなノリはまさしく平成一期、それも終盤みたいな流れだった。
畳めるの? ねえ、これ本当に畳めるの?
とラスト5話切った辺りから毎週不安になりながら視聴していたあの頃が懐かしい。
そしていつも想定しない方向にアクロバティック着地を決めにいく。

今回もジオウでは初めてとなるアナザーライダー変身者の死亡で幕を閉じた。
ただこの流れは井上脚本として見ると想定通りである。

癖のあるキャラクター性と展開で有名な脚本家ではあるが、物語の根底は王道だ。
悪人は最後に裁かれ、真面目で善良な者が救われる。
北島は罪のない人達を何人も殺害しており、怪人化する前から殺人の罪を犯している。後戻りのできない人物だった。
逆に北島に復讐をやめさせようとしたソウゴは、最後に本物のセーラさんは別にいるかもしれない希望を得ている。

またキバ編は過去のジオウと照らし合わせると、尺不足問題を除けばそこまで無理やりな流れでもない。
レジェンドライダーがいない、もしくはいても変身しない流れは前半だと対して珍しくはなかった。
ライドウォッチを渡したのはキバと縁深い次郎なので、別段無理のない展開だ。
少なくとも風麺屋のオヤジよりはよっぽどまともな人選である。

レジェンド組は基本的に扱いがよく強いのも変わらない。
レジェンド出演した次郎は王としてアナザーキバに仕えていたが、北島の人間性を見極め離脱した。
あくまで自分の意思で王として仕える相手を選別している。

なお、ギンガの登場理由は半ば放棄して次回のカブト編にぶん投げた。
尺を考えれば仕方ない選択だろうし、ちゃんと次回で拾ってくれる要素があるだけありがたい。

ギンガの倒し方については一見雑だけど、実は段階を踏んだ理由付けがなされている。
前回トリニティの攻撃をことごとく止めていた技は自動ではなく任意に発動させるタイプだ。

それがわるようにウォズが先にスウォルツと二人がかりで一発攻撃を当てている。
なので数押しで対処するは正しい選択で、本人だけでなく下僕もいるアナザーキバの協力は展開的な意味だけでなく、戦略面でもギンガ攻略に必要な要素だった。

最後も三人がかりで強引にギンガのガードを打ち抜き、トリプルライダーキックを決めている。
更に武器を押し込んでいく、容赦ない叩き込み方だけど熱い技だった。
この辺もトリプルライダーキックがトリニティのキックを上回る威力を持つ説得力から逆算したのかなと。

また、ブレイド編以降はレジェンドライダーを軸にしていたが、それ以前はレジェンドの持っていたテーマ性やストーリー構成を軸にレジェンド作品らしさを出していた。
キバ編もこれらと同じ構成なのだ。
ゆえにブレイド編以降に慣れてしまい、物足りなさを感じる人が出る。

私は今でも過去作品の再現で言えば未だにウィザード編の構成が最も素晴らしく、再現度で言うならブレイド編やアギト編も届かなかったと思っている。
キバ編はレジェンドが増えた後半の中で、レジェンド脚本家というある種の劇薬を投入して前半側姿勢での作品再現に挑んだ。
正確にはキバのアーマータイムすらないので前半よりもっとしんどいのだけど、躊躇ってキバウォッチが使えないことを理由に代打でウォズギンガファイナリー流れは上手い。

そもそもレジェンドライダーなしで、展開もキバ編と呼べるかどうかギリギリという状況でも、人の記憶に深く食い込む。なんだこれは? と思わせる。
ある意味これこそが、いやこれ以上ないほどに平成ライダー一期らしい自由さとチャレンジ精神だ。
平成仮面ライダーを総括する作品で、作品が洗練されていく過程で失われた真の意味での『平成ライダーらしさ』が見れたことが、私は本当に嬉しい。

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