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仮面ライダーファイズ/555 5話『オリジナル』
ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
第5話にしてようやく巧達は東京に到着。今回でメインの舞台となる菊池クリーニングや、登場人物とスマートブレインへの繋がりもかなりハッキリしてきます。
まさに物語が回りだす重要回の一つと言っていいでしょう。
巧組と木場組が初めてすれ違う話でもありました。
ホントにすれ違うだけなんですけどね!
ただすれ違うだけなのに、互いに微妙な影響を与えていくのが面白い。
こういう伏線の張り方が、脚本の井上敏樹氏は本当に上手いんですよ。
ここまでは断片的だった情報が、パズルのピースみたいに一つにまとまり世界観としてはまり込んでいくのが気持ちいい。
その役割の一つを担ってくれた戸田英一ことスクィッドオルフェノク(イカ型)は今でも好きなキャラクターです。
そもそも物語が回り出すために必要な要素が第5話には詰め込まれています。
ならばその要素とは何なのか。
今週も感想と考察をしていきましょう。
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よくわかるオルフェノク講座
これまで断片的だったオルフェノクに関する情報がまとめられて解説されていく。
まずオルフェノクの誕生には二種類ある。
一つ目が木場や長田のように一度死んでから自力でオルフェノクとして覚醒するタイプ。
なぜオルフェノク化するのかは不明だが、確率的にはかなり低いことはオルフェノクという存在の認知度からも窺える。
(スマートブレインの根回しにより隠蔽されているのは間違いないだろうが、言い換えれば隠蔽できる程度しか生まれていない)
もう一つがオルフェノクに殺害された後に、オルフェノクとして再誕したタイプだ。
設定では『使徒再生』と命名されている。
オルフェノクが人間の心臓を灰化させてオルフェノクエネルギーを注入。
これによって死亡したはずの人間は一度復活する。
けれどほとんどの場合はオルフェノク化に人間の体が保てず再び灰化してしまう。
人によって半ば意識がない状態で生前を倣った行動を起こしたり、灰化までの時間が異なったりと個人差があるのは、この適応現象による反応だろう。
まれに適応が成功してオルフェノクとして覚醒を果たす。
5話のラストで登場した人物がまさにその一例だ。
オルフェノクは人間と敵対している。
というかオルフェノクの存在は世間一般にほぼ認知されていない。
そのためオルフェノクはほとんど一方的に人間を敵視して攻撃している状態だ。
そもそもまっとうに挑んでは数の差があり過ぎて物量的に負けるので、隠れて人間を襲い『使徒再生』によって仲間を増やしていく。
派手にやり過ぎて自分達の存在が大々的に知られると不味いので基本的にはこそこそやる。
異形にして彫刻のような美しさも感じられる怪人達はこうして密やかに数を増やしていく。
というか基本的にものすごい地味で地道な戦いをしているのだった。
(ここまでの劇中だとコソコソしていないオルフェノクも多い気がするけど……)
なぜ人間を敵視しているのかは不明だが、スマートブレインはオルフェノク達の存在を察知して説明や管理をしている組織だ。
統括しているスマートブレインの意志による誘導作用もあるだろう。
これまでのオルフェノクと違い、イカフェノクはちゃんと任された木場達の教育をこなしていく。
レア度の高い使徒再生を成功させて、最期は自分の死を見せることによって完璧に授業をやり遂げた。
まさに先輩の鑑のようなお方だ。
個人的にイカ墨の塊を相手の顔に飛ばす戦い方も独特で面白くて好き。
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不協和音とすれ違い
4話のラストで巧達三人は一応のまとまりを持ったかと思ったが、別にそんなことはなかったぜ!
ってぐらいに今回も仲がよろしくない。
巧一人が孤立しているのかといえばそういうわけでもなく、巧と真理は揃って啓太郎に厳しい。
巧は人間関係を上手く作れない。
真理は父親とベルトのことで頭がいっぱいで余裕がない。
啓太郎はメル友の長田からの返事がなくて気が気でない。
三人ともそれぞれに悩みを抱えていて、三人とも他人を気遣える余裕がないのだ。
そして誰もそのことに気付いておらず、第三者の目線で仲裁する者もいないため、それぞれが自分のことを優先にするのでギスギスしている。
三人の不仲はやや現実的でない背景を背負っていながら、すれ違い方はむしろとても人間的で泥臭い。
一方、木場と長田もやはりあまり上手く関係を構築できていないようだ。
二人はそもそもオルフェノクという異形の怪物になってしまったことに心の整理が付いていない。
しかもオルフェノク自体が平気で人を襲い殺害する化物だ。飲み込めない事実にひたすら戸惑っている。
イカフェノクが人を襲ってもただ逃げるだけなのも、戦うとか人を守るなどとは考えすらできないほど、精神的にいっぱいいっぱいなのだろう。つまり現実逃避したのだ。
人としての人生が最低最悪だった長田ですら、オルフェノク化したことを容易には受け入れられない。
それでもトラウマから人間であることを捨てようとはしているが、唯一の良い思い出であるメル友の存在が繋ぎ止めている状態だ。
巧組と木場組を繋ぐのが、実は本筋から一番関係ない啓太郎と長田のメル友関係なのは面白い。
スマートブレインで二つのグループが初めてすれ違う時も、一通のメールが飛びそれを長田が受け取る。
物語全体から見れば小さな繋がりだが、確かな繋がりがそこにあることを示した。
玉が転がって色んなもの巻き込みやがて大玉になるように、最初の小さな玉が地面へと放たれたのだ。
そしてまだどうすればいいのか具体的な道筋が決められない木場組に、三人目の男が現れる。
これで三人組と三人組の舞台が整った。
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秘められた乾巧の人間性
第5話では物語を回しだすため、三つの大きな要素に切り込んでいる。
一つ目がオルフェノクの設定開示と再整理。
二つ目が巧組と木場組の関係性とすれ違い。
三つ目は物語の主人公である乾巧の掘り下げだ。
これまで巧についてのキャラクター的な掘り下げはそこまでなされていない。
全然されてないわけではないが、他のレギュラーキャラとさほど変わらないレベルだった。
まあ、今回で免停をくらった仮面ライダーという酷いレッテルが貼られたわけだが、そこはさして重要ではない。
ネタとしては面白いけど、人間性語るネタとしてそこ掘り下げてどうすんだって話である。
(理由としてはマスターとの再会と店を閉じる事実でどうすべきか悩み、ついとばしちゃったとか考えようはあるけれど)
なんだったら、4話までなら巧よりも木場の方がキャラクター性は深く掘り下げられている。
今回はずっと突き放してばかりだった巧が初めて自分の心情を吐露したのだ。
乾巧という人物は人と深く関わることを恐れている。
ゆえに、あえて人の神経を逆撫するような無遠慮で身勝手なことを言う。
正確にはそういう生き方がもう染み付いてしまって、捻くれた性格になってしまった。
それは他人に裏切られて傷付けられるのが恐いのではなく、自分が相手を裏切ることが恐いから。
昔巧がバイトしていた喫茶店で店員が金銭を盗む事件があった。
普通なら誰が盗んだのかという話になるだろう。
けれど真犯人が誰かについては全く重要ではないからそこは掘り下げられない。
自分という人間に踏み込まれることで理解されたように思われるくらいなら、自分から突き放して『誤解された自分』で関係を終わらせる。
そうすれば傷付くのは自分だけで済む。
喫茶店のマスターに盗んでもいない金を払いに来たのはそういう理由からだ。
そういう選択をしてしまうのは、巧は自分に自信がないためだという。
信じられないも何も、犯人が自分ではないなら偽る理由がない。
金銭を盗む事件が起きて、他の者達が疑う中でもマスターは巧を信じてくれようとした。
その『信じられる』という行為を巧は恐れている。
信用されれば本当の乾巧はこういう人物だと相手は考えるだろう。
巧はそういう本当の自分というものが信じられない。
だから他人にも見られたくない。
乾巧は他人に対して完全に心を閉ざしているのだ。
問題が定義されれば、物語はその問題を解決するために進行する。
つまり今後は乾巧が抱える心の闇、自分に対する不信感がキーとなっていく。
今後は『仮面ライダー555』とは乾巧が他人に対して心を開けるよう成長していく物語だと考えながら視聴していくのをオススメする。
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