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FMO1章 第14節『Lの世界/魔術仕掛けのラビリンス』≫1

[作品トップ&目次]


「分断された......!」

 立香が周囲を見回すと、そこにいる仲間はフィリップと海東のみだった。
 対してミノタウロス側には殺戮猟兵オプリチニキの部隊が武器を構えている。

「フィリプ君、君は下がってマスターに助言でも与えていたまえ」

 二人で一人の仮面ライダーであるWは、ベースの肉体となるのが左翔太郎だ。彼が迷宮の外にいるのでは、変身して戦うことはできないだろう。
 ならば今戦えるのは自分だけだと、海東大樹はディエンドライバーを構えて変身用のカードを取り出す。

「ハテシノナイ『死』。オワリノナイ『死』」

 ズシリ、と重い足音と共にミノタウロスが進撃を始める。

「来るぞ、マスター君!」

『KAMEN RIDE! DIEND!!』

「コロス、コロシテェェェェェァアァァァアアイィィィィ!」

 対サーヴァント戦の上に数でも負けている。状況は絶望的だったろう。

「僕がいなければの話だけどね」

『KAMEN RIDE! G4! KAMEN RIDE! OOO SAGOZO!!』

 立て続けの二体連続召喚。その場に現れたのは黒と銀のライダー、G4とオーズのサゴーゾコンボだった。

「兵隊には兵隊さ」

 G4はハンドガンを構えて殺戮猟兵オプリチニキへ向けて射撃を開始する。数の上では負けていても、GM-01改四式のフルオートによる連射力がそれを十分にカバーする。
 同じ兵士でも、G4は21世紀に生み出された軍事力の結晶とも言えるライダーだ。個の戦力は大きく上回る。

 そして、怯んだ殺戮猟兵オプリチニキの頭部をディエンドの弾丸が穿ち仕留めていく。

「戦力を分散して数で押せば勝てるとでも思ったかい?」

 弱点も把握できている殺戮猟兵オプリチニキは物の数ではない。厄介なのは本命のミノタウロスだと海東も感じている。

「マズハ、オマエラカラ、クッテヤル!」

 ミノタウロスは直接マスターである立香と、フィリップを狙って突撃する。
 しかし不意にその巨体が下方へと沈み、目に見えて動きが鈍っていく。

 オーズのサゴーゾコンボが、激しいドラミングで自分の胸を打ち付けている。それにより重力場を発生させて、ミノタウロスを引き寄せているのだ。

「ジャマ、ダァッ!」

 妨害の正体を認知すると、ミノタウロスは狙いを変えてサゴーゾへと向かう。
 だが鈍った肉体にサゴーゾはガントレット状の武装、ゴリバゴーンを発射する。

「グヌゥッ!」

 みしりと鉄塊が怪物の肉を打つ。短い呻きを零すが、それだけでミノタウロスは止まらない。
 むしろドラミングが止まったことにより加速が増して、一気に距離を潰すと両手の巨大斧を振り回す。

 重装甲の肉体がそのダメージに耐えながら前進し、ガントレットが再装填された腕で殴りつける。
 力と力の激突。互いから重低音が響く。その均衡を破ったのはミノタウロスだった。怪物の膂力が上回り、怪力と斧の質量でサゴーゾが押し込まれていく。
 やがて力尽きたサゴーゾはダメージに耐え切れず消滅した。

 ――メダルチェンジを失ったせいか。

 海東は防御力と重力操作に秀でるサゴーゾをマスターの盾にしようとしたが、純粋な力の勝負に持ち込まれて先に力尽きてしまった。
 召喚ライダーは一部を除き高度な知能を持たず、フォームも固定化されることにより、オーズが本来有する臨機応変さを発揮できなかったのだ。

「それに、なんだ、これは......!」

 ディエンドは即座に立香のフォローに回ろうとするが、身体が上手く動かない。肉体と脳の動きがまるでバラバラで気持ち悪さを覚える。

 戸惑っているうちに、迷宮の奥から追加の殺戮猟兵オプリチニキが駆けつける。予想外に敵の排除が追い付かない。
 ミノタウロスの前にはまともに戦えない者のみ。それを理解しており、嗜虐的な笑みを浮かべて、一歩ずつ立香へと迫っていく。

「コワイカァ? コワイナァ? クワレルモンナァァァァ!」

「ここで君を失うわけにはいかない」

 立香を護るように前に出たフィリップ。彼自身も自分の命を怪物への供物にしたところで、時間稼ぎにもならないことは理解している。それでも今はこれしかない。

「オマエカラ、クワレタイカァ?」

 その時、横合いから小さな白い影が飛び出し、ミノタウロスへと体当たりした。微かにだが、その巨体がよろめく。

「フォウくん!?」

「いいや違う。これはだ!」

 白い獣はよく見ると毛皮がなく、角ばった機械仕掛けの恐竜のようだった。

「マタ、ジャマヲ......!」

「君もこっちに来ていたかファング、流石は僕のボディーガードだ」

 平常通りなら、フィリップは近くに護衛のファングがいることを予想し、海東たちが戦う中で冷静に周囲を探り発見していた。そうして自分を守らせるためあえて前に出たのだ。
 フィリップが掌を上に向けると、それは飛び跳ねて見事に着地する。

「ここは僕たちに任せてくれ、藤丸立香」

「了解......!」

 フィリップの腰にWドライバーが装着され、ファングを変形させると、そこからメモリの接続端子が露わになる。

「変身!」

『Fang!!』

 転送されたジョーカーメモリが装填され、反対側にファングメモリーが差し込まれると、ジョーカーごと覆うように折りたたまれる。

『Fang!! Joookerrrrrr!!』

 現れるのは白と黒の戦士、仮面ライダーWファングジョーカー。

『無事か、フィリップ!』

「ああ、けど話は後だ翔太郎」

「おう、いくぜ!」

 瞬時に状況を察した翔太郎は、息を合わせるよう集中する。今の肉体ベースはフィリップでも、Wとは左右の呼吸が揃って初めてその力を十全に発揮できる。

「オマエモ、ヘンナスガタニィ!」

「僕らを喰らうつもりなら、それより先に君を狩りとるまでだ」

「ヤッテミセロオ!」

 両者が同時に前へと踏み出す。
 敵が誰であれミノタウロスのやることは変わらず、巨体の腕力を活かして獲物を叩き割る斧の縦振り。

『アームファング!』

 フィリップがファングメモリのタクティカルホーンを指で弾くと、右腕にアームセイバーが装着され、迫る刃を受け止める。

「ぐぅっ!」

 ファングジョーカーの肉体でも、怪物の膂力が放つ衝撃に身が軋む。だが止まりはしない。

「はあァ!」

 重圧ごと薙ぐように斧を弾くとミノタウロスの腹を蹴り込む。
 続けざまに左右に身体を振りながら、アームセイバーで連続して切り付けていく。

「ヌゥ!」

 力では劣るが小回りを効かせた野獣の如き連撃。
 ファングメモリのプログラムが闘争心を引き出しており、冷静沈着な普段のフィリップからは想像できない、力強い躍動感が溢れる身のこなしだ。獣性を理性で制御する。それがファングジョーカーの戦闘スタイル。

「ウガアアアァ!」

 鬱陶しいとばかりにミノタウロスが吠え、身を捻りながら両腕の斧で力任せに薙ぐ。単純な動作だがファングジョーカーを振り払うにはそれで十分だった。

『まるで嵐のような暴れっぷりだぜ』

「ああ、それにこの空間自体が......」

『どうしたフィリップ!』

「ここにいるだけで大きく動きを阻害されるらしい。長期戦は不利だ」

 迷宮の主は力を増し、こちらは強制的に弱体化させられる。ファングジョーカーでも一対一では厳しい。

「ンンゥ?」

 ミノタウロスは何かを訝しむように首を傾げる。
 その隙にちらりと一瞬だけ視線を他へと移してから、フィリップはタクティカルホーンを二度叩く。

『ショルダーファング』

 今度は右肩にショルダーセイバーが生える。それを突き出すように体当りを仕掛けた。

「シャアアア!」

 正面から迎え撃つように斧を振り抜く。それを読んでいたフィリップは身を大きく落として、飛び込みくぐるようにやり過ごす。そして背後に回り込むとショルダーセイバーを外して投擲した。

「グヌゥ」

 ブーメランのように斜の軌道を描き迫る。ミノタウロスは身を逸らして避け、刃は胸の皮一枚を裂く程度に終わる。

「今だ、海東大樹!」

「いけ、G4」

 ミノタウロスとフィリップが肉薄するのと同時に、海東はファイナルアタックライドを発動させ、単騎で殺戮猟兵オプリチニキたちを倒してのけた。

 同時にG4は専用武器ギガントを召喚。そしてフィリップの投擲した刃にミノタウロスの意識が集中した隙を付いて、海東が発射を命じたのだ。
 四連装の対地ミサイルが次々と発射されていく。

「ヌウン!」

 回避が間に合わないと判断したのだろう。ミノタウロスはフィリップがそうしたよう斧を投擲した。
 ミサイルの一つに突き刺さり爆発すると、残りも次々に誘爆する。
 直撃でないとはいえ粉塵と熱風には晒されるが、ミノタウロスの強靭な肉体ならばどうということはない。

 ミサイル爆破に合わせて、フィリップはタクティカルホーンを三連打。必殺の発動音は爆発音にかき消され、ミノタウロスの耳には届かない。
 脚部に生えたマキシマムセイバーから青白いオーラが立ち上り、中空へと飛び上がる。

「『ファングストライザー!』」

 オーラに包まれながら加速し、スピンの旋風で刃が砂塵を切り裂き、不意を打つようにミノタウロスへと襲いかかる。
 それでもなお怪物は反応して、抵抗するよう掲げたもう一本の斧と蹴りが激突した。
 勢いは完全にファングジョーカーが勝り、巨躯が弾き飛ばされる。

「浅いか......」

 フィリップは蹴った感触で察していた。迷宮の補正で翔太郎と呼吸がブレて本来の威力が発揮できていなかった。
 だから威力も速度も落ちてしまい、ミノタウロスに防がれてしまったのだ。

 ——この空間、僕らにとっては天敵だ。

 マキシマムドライブを防いだミノタウロスは、距離こそ離れたが悠然と立っている。

 しかも、こちらは藤丸立香も相応に消耗していた。迷宮の負荷がかかっている状態で、ディエンドとG4による宝具連続使用の負荷がかかっている。
 近くにシャドウボーダーがあれば魔力補給の補助を得られるが、現在は完全に孤立状態だ。

「アア、ヤッパリ。ハライッパイ」

 自分の腹をさすりながら巨躯は続けた。

「アシタニトッテオコウ」

 怪物として在る彼の存在意義とは即ち捕食。
 暴れてもなお食欲が湧いてこないことを自覚すると、立香たちへの興味を急速になくして、あっさりと背を向けて去っていった。
 殺戮猟兵オプリチニキの増援もないことを確認すると、海東はG4を消滅させて変身を解いた。

「向こうは散々暴れて、気まぐれでお帰りとはね」

 ライダーである自分たちが、サーヴァント戦で連続して遅れを取った。生き延びた安堵よりも憤りが海東の口から洩れた。

 


 

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