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仮面ライダーセイバー 剣士達の輝く瞬間こそが真の物語【感想・考察】

2021年9月4日

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ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

まずは、コロナ禍の中で一年間止まることなく仮面ライダーセイバーを作り続けてくださり、ありがとうございました。

去年の『仮面ライダーゼロワン』はコロナの影響によって制作は一時中断せざるを得ませんでした。
無論これはゼロワンが悪いわけではなく、きちんと完結してくださったことには感謝しかありません。

その上で続くセイバーは、ゼロワンの時に培ったノウハウの上に様々な対策を入れ込み、最後まで途切れずに完走してくださいました。
今、我々が新しい生活様式に切り替わりつつあるよう、仮面ライダーもまた新しい制作スタイルを確立するための数多くの挑戦があったことは想像に難くないです。

またセイバーで得た経験と技術は、以後のライダーにも、そしてコロナ禍が去った後にも影響を与えて歴史の一つとして積み上がっていきます。
そういう意味でも、この一年の挑戦は非常に貴重なものであったのは間違いないでしょう。

さて、それはそれとして、作品に対する個々の感想は千差万別あると思います。
特に平成ライダーから数えても既に二十を超える長期シリーズです。

当たり前ですが、それだけの作品を追い続ければ、個人として作品の好き嫌いは生じます。
セイバーは私にとって、その中で決して高い位置にいる作品とは言えないものとなりました。

ものすごい濁した書き方しているのは、決して悪し様に書くほど酷い作品とも思っていないからです。
こうプラス要素とマイナス要素を書き出していくと、結果的にマイナス判定になった感じで、モヤモヤしたものがどうしてもあります。
けれど、それでプラス要素がなくなるわけではないのですよ。

仮面ライダーシリーズって大抵の作品がどこかしらでボロカス言われる方が多くて、それが最終的には手の平返されて「今年も面白かったね」と締めくくる。
実際、セイバーもそうやって一年を終えた方々は多く見かけます。

けれど、私は珍しく最後まで手の平が回らなかった稀有な作品でござました。
なんだったら結構後ろの方まで回す気満々だったのですが、錆びついた機械の如く鈍くなり回しきれなかったというオチになりました。

というわけで今年の総括は、面白かった部分と、今もって抱え続けているモヤモヤを言語化していく作業になります。
基本的にはネタバレ無しの総括+ネタバレ有りで各要素を深堀りしていきます。

今回はホントにそういうものですからね。読んで後悔しないようここでバックするのも選択肢として十分ありです!
とブログ記事としてはあるまじき予防線を引いた上で、感想と考察を始めていきましょう。

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ネタバレ無し感想

セイバーの大きな特徴を挙げるとするなら、王道ファンタジー、多人数ライダー、『物語』をテーマにしたストーリー性、比較的悪人が少ないと言ったところだろうと思う。

そしてこれらほとんどの要素が、私の中で琴線に触れず、噛み合わなかったとても稀有な作品である。
勘違いしないでいただきたいのは、私はファンタジーが嫌いなわけではなく、一番好きなライダーは龍騎ってぐらい多人数ライダーは大好物。メタ要素が関わるテーマも大好き。純粋な悪人がいないのも好き嫌いで言えばやっぱり好きなのだ。

だけどこれがセイバーだと様々な要因で悲しいぐらい噛み合わせが悪くなってしまう。
とはいえ、一年間セイバーの視聴が苦痛だったわけではないので、普通に完走した。
客観的に、作品としてセイバーが面白いと言える要素は様々ある。

だが、主観で語ると刺さる要素が少なく、逆に見ていてモヤモヤすることが最後まであまり解消されなかったため、総合的に見ると微妙な評価に落ち着いてしまうのだ。

ネタバレにならない範疇で語れる要素は王道ファンタジーとしての在り方だ。
途中でSF設定に逃げず、一年間ド直球のファンタジーで走り抜いたことが、セイバーの最も評価すべき部分だと思っている。
これは言葉で言うほど容易ではないのでネタバレ有りで解説する予定だ。

けれども私はどちらかと言えばSFの方が好きで、去年がシナリオもテーマも全部ガッチガチのSF作品であるゼロワンだった。
むしろゼロワンのSFからの揺り戻しでファンタジーになったので、これは狙った事柄ではある。

ただ個人的にはほとんど理想郷みたいな世界観から、逆にSF要素がほとんど無い作品で一年通されてしまったのは普通につらかった。
スーパーヒーロー戦記で出てきたリバイスが、変身時に最新トレンドのテクノロジーを使ってくれたことで、結構な開放感と安心を得たぐらいだ。

例えばセイバーがジオウの後だったら全編ファンタジーでも苦痛はなかっただろう。
ハードSFな世界観だったビルドでも、恐らくここまでのつらさはない。
私がゼロワンの世界観を好き過ぎたことによる不幸な事故としか言いようがなかった。

王道の要素も何割かはこれと同様だ。
ゼロワンはAIとどう付き合って生きるべきかという『正解のないテーマ』を選び、賛否両論の強いネタを多く扱った。
正解がないなら、自分の意見を持つことが大事になり、そこに考える楽しさが生じる。
AIというテーマが好きであることも手伝い、一年間を通してひたすら考えること自体が楽しかった。

逆に王道作品は考える要素が少ない。
考えるべき部分が増える=王道から外れていくためだ。
思考のいらないお決まりパターンであり、それは『そういうもの』としてファンタジーとも相性が良い。

これが指輪物語など源流的なファンタジーなら話は別だ。
この辺は、もはや異世界を作る作業自体が、独創的な世界をまるっと一つ生み出すに等しい。

しかし現代だと、古典的なファンタジーの設定は『ファンタジーの定番』の立ち位置になっている。
現代のファンタジー作品は、源流の設定を『そういうもの』として扱う。

セイバーで言えば、例えば第一話の怪人はゴーレムメギドだった。
ゴーレムとはゴーレムであり、一々ゴーレムとは何かの解説は入らない。
クモ怪人のクモはクモでしょ。
カマキリ怪人のカマキリはカマキリでしょ。
それらと同じようにゴーレムは機能する。

ワンダーワールド自体をかなり『そういうもの』としてしか扱っていなかった。
ここの描き方次第では、ファンタジーとしての完成度は飛躍的に向上して、感想も大きく変わっていたろうなぁと思う。

王道とは予定調和で先が読めてしまう。そして読めていた先に着地することに痛快さを見出せる。これが王道の楽しさだ。
逆説的に言えば、王道なのに結末が全く読めない場合、それは途中で描くべきものを描いていないと言える。

重要なポイント単位で見るなら、ここまで見守ってきて良かったと思う熱いシーンはいくつもある。
例えば、蓮が終盤どうなるかは先が読めた。実際に予想通りの着地をしたが、着地の仕方はほぼパーフェクトで、セイバーの劇中で最も熱と勢い強さを感じた。

最終回も、前半のあるポイントで私は『よくここを拾ってくれた!』とめちゃくちゃ感動した部分がある。これも流れで言えば間違いなく王道展開の一つである。
そういう要所を押さえた局所的な熱量は主に後半でちょくちょくあった。

ただし逆にこのポイント単位で大コケした話も点在する。
その最たるものがセイバー坂事件であり、全体的にセイバーを高評価していたファンですら、この回は悲しそうな声を上げていたのを結構見た。
セイバー坂事件は本作のダメなところが全て詰まっていたと言っても過言ではないと思うし、後でしっかりと取り上げるべき事柄だろう。

とはいえこの回だけ抜き出しても、それこそ偏見を与えるだけになってしまう。
セイバー坂の演出を批判するなら、最終フォームお披露目回の超イカした格好いい演出も合わせて語らないとバランスは取れない。

結局私がセイバーに対するモヤモヤは二つ。
一つは、『全体的な構成の不安定さ』に対してだ。

それ言い出したら「ゼロワンだってお仕事5番勝負とか酷いもんだったろうが!」というツッコミは絶対にくると思っており、完全には否定できない自分もいる。
ただし、先に挙げた通りゼロワンは『ヒューマギア社会に対する答えのない問いかけ』が終始ブレずにあった。

そもそも完璧な作品なんて存在しないと思っている。
ダメな部分はあれ『うるせえ! ここが! ここが良いんだよ!』と熱量を持って語れる部分があるなら、私の中でそれは良作だ。
セイバーには全編通してそれが見出せなかった。これが理由の二つ目。

なので、駄作と言い切るには面白いシーンがいくつもあり、客観的な視点でセイバーを好きな人が語る理由も理解できる。
同時に主観的な目線だと気持ち的に乗りきれない作品だったというのが偽らざる本音だ。

ネタバレ有りの感想では、どうしてこの二つに陥ったのか、逆に熱を持って見れたシーンは何故なのかを(善し悪しごちゃまぜに)解析しながら語っていくのが主体になる。
なので気分悪くなりそうだなと思う人はここで撤退するのをオススメする。強くオススメする。

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