このページにはプロモーションが含まれています 未分類

仮面ライダーギーツ Vシネクスト【ネタバレ感想・考察】本編から更に一歩踏み込んだ理想への情熱

2024年3月19日

『仮面ライダーギーツ ジャマト・アウェイキング』のネット評価

全体的に見れば賞賛の意見が多い印象。
とりわけ原作の空気感を引き継いだ物語性と、吾妻道長の成長に対する評価が高い。

アクションシーンのクオリティの高さも、多くの視聴者からの高評価を集めている。
中でもギーツVSギーツの戦闘シーンは、迫力があり見応えがあるという意見が目立つ。

物語の展開についても、二転三転して視聴者を飽きさせない。また、感動的なシーンが多く含まれており、心を打たれたという意見も多かった。

キャラクターの一人一人に深いバックストーリーがあり、それぞれの成長や変化を感じられる点も、高評価の理由の一つ。
今回は英寿と道長のW主人公で、彼らの成長物語に対する共感性がある。

低評価の意見

一方で、物語の展開については、誰がゴッドジャマトになるか予測が簡単可能であったり、展開が読みやすい。
また、これまでのVシネマ系作品からシナリオ面ではあまり工夫が感じられず、新鮮味に欠けるという批判もある。

キャラクターの中には、十分な出番を与えられていない、または掘り下げが不十分であると感じられるものもあり、その点が不満として挙げられていた。

また、一部のファンからはベロバなど一部キャラに対する期待が大きすぎたため、実際の展開にガッカリという意見もあた。

物語の終わり方についても、あまりにも急ぎ足で物語の解決が強引に感じられたという意見がある。結末に対する満足度は人によって大きく分かれるようだ。

尺不足による掘り下げの問題と矛盾

ジャマトは誰が生み出したのか問題

劇場版にて地球はジャマトによって滅ぼされたと示されていたが、その詳細は劇場版・本編どちらでも触れられることなく終わった。
途中育成者による暴走が何度かあったとはいえ、本編でのジャマトはDGPゲーム運営用の敵キャラ扱いに終始していたといえる。

今回はそのジャマトのルーツを辿った……というか、そのルーツは現代だった!
いや待って、過去と未来が繋がる系の話は王道タイムトラベルだけど、未来を起点にしちゃうと最初の発生要因がなくなる。

これだと『未来から持ち込まれる前に存在したはず』のジャマトがゴッドジャマトにならないと、過去の世界にジャマトを持ち込めない。
今回によってジャマトの出自はタイムパラドクスによって矛盾した状態となった。

未来人側の掘り下げが足りない

例えばニラムは今回、未来の世界を守るために自分の命を犠牲にしてベロバを過去の世界へと送り込んだ。
本編での経緯はともかく、彼が自己犠牲で世界を守るために動いていたのは事実である。
その割に描写はかなりアッサリしており、消えるシーンくらいはもう少しヒロイックに扱って欲しかった。

ベロバは今回未来人レギュラーの中では中心人物である。
本編で推しと壮絶な戦いを繰り広げて消滅したのを、ビックリするくらいサラッと実は生きてましたで済まされた。

この時点でどうかと思うのだけど、次の消滅も演出的にはかなりあっさり目である。
(歴史が変わった以上は生きているだろうけど)今回は完全消滅なのに、お家に帰っただけの時より印象に残らない。

未来の英寿については未来人ズの中では一番出番も多く目立つ存在だった。
ギーツナインとドゥームズギーツの戦いは、凝った構図と演出でまさに神VS神で異次元のバトルだ。

ただ、キャラクターとしての掘り下げは二人と同様になかった。
何があって英寿の人格はああも激変してしまったのか。
ギーツナインはどうしてドゥームズギーツになったのか。

単に永い時が経っていった中での強化なら説明はなくても問題ないが、性能面はギーツナインと同じで互角の戦いだった。

じゃあ何故わざわざデザインだけを変更したのだろうか? Vシネマ用の新ライダーとして出したのなら、変化や登場には相応の理由がほしい。
デザインやベルトの音声などはすごく良かっただけに、この粗さは残念だ。

本編よりも更に一歩踏み込んだ英寿が信じた世界の理想像

仮面ライダーギーツの理想とは〇〇〇〇

本編の仮面ライダーギーツは、個人個々が己の願いを求めて戦うところをスタートとして、皆が幸せになれる世界をゴールとした。

簡単に言えば蹴落とし合いを否定して、皆で皆の理想を叶えていこうとなったわけだ。

もっとも、ベロバのように押しを後ろから刺して一緒の墓に入ろうとする者は否定される。
他人の気持ちを踏みにじる自分勝手こそが悪なのだ。

DGPをエンタメとして消費する行為も、自分たちは安全なところから楽しんで一般市民を犠牲にしているので、現地人たちからすればまさしく悪だった。

また、願い同士だって必ずしも同調できるわけではない。
例えば、100人の人間が宝くじの一等で3億円当てたいと願うなら、それはもう宝くじ自体が破綻するので不可能だ。

もし無理やり叶えようとするなら、我先にと誰が宝くじの権利を得るかで争いが始まってしまう。

それでも、皆が幸せになれる理想を実現するならば?
きっと誰が一番それが本当に必要なのか。
それぞれに3億円が欲しい理由を言って、他の方法でその理由を解決する方法がないかなどを話し合う。

つまり相手のことを知り、互いの気持ちを理解する。皆が幸福になれる道筋には相互理解が必要不可欠だ。

この相互理解を人間だけじゃなく、ジャマトにまで広めようとしたのが本作である。

まず、人間とジャマトの間には感性の違いがある。
とくにジャマト側には根本的な知性や、倫理や知識が大きく欠如していた。

なので、五十鈴大智は共生の一歩目としてジャマトにそれらを教育している。

そもそもジャマトは人間として食事必須などの食物連鎖などが存在しない。争いの種をなくせば理論上共生は可能だろう。

それはさておき、は人間とジャマトの調和を目指している。
突然変異種のクイーンとキングはその懸け橋になり得る存在だった。

問題は、彼らがあまりに純粋過ぎたことである。
ジャマトは肉体と知能の成長が早すぎるがゆえか、それに対して精神的な成長が追い付いていない。

だからキングは一度芽生えた人間嫌悪がパーソナリティのすべてになってしまい、新たな知見を得ることができなくなってしまった。
クイーンはまだしも、キングについては完全に管理者である大智の監督不行き届きである。

とはいえクイーンだって同様の問題は抱えていた。
恋の始まりはメロンパンを受け取って美味しいと無垢な笑顔で返したことだ。
これは『知らない人から物をもらってはいけない』という子供時代に覚えるべき危機管理がないと言える。

倒れそうになった彼を触手で支えるのも同様で、美談であると同時に純真がゆえの危うさが常に付きまとっていた。

夫の死をトリガーに人間への憎しみが一気に暴走しかけたのも、ある程度冷静さがあればまずは子供の安全確保を優先に思考できたはずだ。
全体的に情緒や感情コントロール面が子供のまま成熟していないのである。

子供についてもに相談していれば対応方法などは見つかったかもしれない。

ホウレンソウができていない。やっぱり監督不行き届きだよ!

〇〇〇〇とは即ち愛

クイーンとキングは元になる人間なしで、独自に人の姿になれて、人と同じ食事を採れる。
人間社会により溶け込みやすい存在となった。

クイーンはの期待に応えるよう、人間社会で学びながら恋人を作った。
愛情やまして結婚は相互理解がないと成り立たない。

祢音が求めていた真実の愛も、両親との和解であり、それは互いの気持ちを理解し合うことだった。

しかしキングは人間を拒絶した。
彼は人間自体に強い嫌悪感を抱き、人とは何かを学ぶこと自体放棄している。

ただ、個人的にキングの気持ちがまったくわからないわけではない。
なぜなら彼はジャマトという個性を持ちながら、それを否定されて人間であることを求められているからだ。

それってもっとわかりやすく白人と黒人に置き換えたら、黒人に対して社会で生きていくために肌を白くしろと言っているに近い。
ジャマトだってジャマトとして生きていく権利はあるはずだ。

また、人間とジャマトには争いの歴史がある。
それも人間側がそうあれかしと扱い、ジャマトは管理され一方的に倒される側として扱われていた。

現地人にとってはジャマトは厄介な侵略者であったが、未来人まで含めて考えるなら、生死まで握られた奴隷剣闘士あたりと扱いはそう変わらない。むしろ被害者側なのだ。

アダムとイブと言えば聞こえはいいが、人間になれるのだから人間として振る舞えというのは、相互理解であると同時にマイノリティへの差別でもあるだろう。
少なくともキングがそう感じてもおかしくはない。

じゃあどうすれば正解なのかについては、仮面ライダーギーツの社会で現状ジャマトがどういう扱いや認識を受けているのか不明なので、根本的に描写不足だ。
人類と怪人が共存する社会をきちんと描きたいなら、本来ここの世界観に対する掘り下げは必須である。

人と人を害せるだけの力を持った別種族の相互理解がいかに難しいかは、仮面ライダー555や『BLACK SUN』などによって描かれてきたことだ。
Vシネマ単体だと、ここはどう足掻いても「こまけーことはいんだよ!」でやり過ごすことにはなる。

ジャマトの出自しかり、ジャマトと人類の関係しかり、本作は描きたい部分に全力で尺を割いて、その背景設定はザルだなぁとは感じる。

相互理解を拒み人やクイーンを害し、そのためなら子供すら利用したキングは悪として裁かれた。
キングは当初、クイーンを自分の側に引き入れるつもりだった。

人間の姿に変わりその嫌悪感を否応なく味わったキングは、クイーンも根幹は同じであると思っていた。
しかし、彼女は人を愛して子供までなした。

キングにとっては裏切り者なのだけれど、それでもなお、人間から裏切りを受ければ自分の元に戻ってくると思ったのだ。
そのためには彼女の子供すら裏で消そうとする。

ここまでやったのは、キングにとってクイーンは唯一の同類にして理解者……だと信じていたため。
そうあって欲しかった。苦しみや憎しみを自分と同じ境遇で共感してくれる者を彼は望んだのではないだろうか。

しかし、そこに愛はない。何故なら、キングの行動はすべて相手への同意はなく、ただ自分のためにそうあって欲しかったという我欲の願いだから。

相手のことを理解して庇護する。もしくは欠けているものを補い合う。
クイーンの夫は、ジャマトの存在をきちんと理解した上で彼女を受け入れた。

それらの根底あるのは相手を思い遣る愛なのだ。

人気記事

何故アメリカでゴジラが愛されるようになったのか【解説・考察】 1
2014年にハリウッドでギャレス版ゴジラが公開され、2021年には『ゴジラVSキングコング』が激闘を繰り広げました。 流石に注目度の高い人気作だけあって、様々な場所で様々なレビューが飛び交っています。 ...
【感想・考察】ゴジラ-1.0 王道を往くマイナスの本質とは 2
2016年、庵野秀明監督は懐かしくも革新的なゴジラを生み出した。 シン・ゴジラは純国産ゴジラとして、間違いなく新たなムーブメントを迎えた。 しかし、そこからゴジラの展開は途絶える。 新作はアニメ方面や ...
【仮面ライダーアギト 考察】伝説の続きが創った平成ライダーの基礎 3
ドゥドゥン! ドゥン! ドゥドゥン! アー! 令和の世で需要があるのかと思っていたクウガ考察でしたが、本編だけでなく小説版まで予想以上の反響をいただけました。 中にはブログを読み小説版を購入してくださ ...
仮面ライダーBLACK SUN 敗者達の希望と悪の連鎖【感想・考察】 4
前書き:仮面ライダーBLACKの特殊な立ち位置 50年に渡る仮面ライダー史において、仮面ライダーBLACKはかなり独特な立ち位置にあると私は思っています。 熱狂的な直撃世代が多数いながらも、そこから外 ...
5
前書き:叩かれなければ生き残れない 『特撮界隈は民度が低い』 『特撮界隈は荒れやすい』 Twitterを眺めていて、これまで何度これらのワードを目にしてきたことでしょう。 民度が低い。私の苦手な言葉で ...

-未分類
-, ,