レビュー
原作を読んでいる前提の感想であるためネタバレ注意。
ピクルの目覚め
原作の10.5巻が一話で丸ごとスッポリ収まっている。
アレン君のクズ野郎な演技がとてもよく出来ており、登場時の台詞は観ていて大変イライラした(誉め言葉)。
ピクルの弾丸投擲やアレン君が弾き飛ばされるシーンは、スピード感があってアニメ映えする。
対パワードスーツ戦も原作だとアッサリ過ぎた感があったが、アニメだと一話の中にキレイに収まっていて丁度いい心地だった。
アームの回転で逆にマシンがぐるぐる回る様も、アニメの方が画的にわかりやすい。
夜這い
警備の後ろに付く烈と、勇次郎のお邪魔シーンのピクル編二大ネタだ!
烈は一枚絵だと一発ギャグみたいなインパクトがあった。
それが動きが付くアニメーションだと、烈のゼロ距離尾行が普通にすごい技術として受け入れやすい。
勇次郎のお邪魔芸は相変わらずギャグ色が濃い。
バチンっと戻って服だけ残るところがちゃんと映像化されていて、より芸が細かく感じた。
VS烈海王
烈の素早い連撃はアニメ映えして格好いい。
ただ流れにスピード感があるのはいいのだが、展開が早すぎる弊害も感じた。
技術が通じず烈の心が折れる流れが、アッサリし過ぎてメンタルが弱く見えてしまうのが玉に瑕。
VS花山
ピクルと花山の押しっくら!
基本的にピクルの理不尽なまでの原始パワーが炸裂する本作だが、ここだけは花山の任侠パワーに理不尽さと説得力を感じる。
新宿と原始時代の切替はアニメだと説得力が増す。
惜しむらくは事前のナレーションが一部削られてしまったこと。
匕首を挟んで『無表情な花山は自分が大好き』だとピクルが感じるシーンは、事前の笑顔の客引きが自分を好いていないの対比なのだ。
ここは映像だけで読み取るのは難しいので、ナレーションを入れて欲しかった。
VS克己
突きの激励が克己にぶつかるシーンが物凄く熱い。
目に見えない衝撃が克己を叩き鼓舞する様は、漫画以上に強く心に響いた。
やっぱり克己の成長物語はアニメでも一番テンションが上がる話だった。
画としては、真マッハ突きは細かな動きより演出的なインパクト寄りになるんだなと。
ここはある意味で原作通り。
ただ、肉が弾け飛んだ腕については、アニメだと色が付いて生々しい……。
グロテスクが苦手な人は注意が必要。
ピクルの祈りシーンは神々しさの演出が出ており、去り行く姿と合わせて、ピクルの人間的な成長がしっかりと感じられる。
野生の中に芽生える人間性があるから、戦士達を喰らって犠牲にする忌避感はありつつも、キャラクターとしての魅力を感じるのだ。
VSジャック
濃密なキス(噛み合い)シーンで顔を剝がされてからの『ニィィッ』って笑顔の変化や、その後のアッパーカットの動きが非常に良い。
神への祈りから『勝』の字が途中で消える演出は流石にアニメじゃやりようがない。
代わりに上下から殴られて微妙に前に体が動きながら回る画は、アニメならではの演出として『これはこれで良きッ!!』だった。
二度目の大回転との演出にも違いが見える。
VS刃牙
刃牙の妖術使いっぷりはアニメでも映える! バッチリ迫力があるぜトリケラトプス拳!
アニメでもギャグには見えるけど。
ただラストバトルだけは三話も使っていてテンポがとても悪い。
これは本当に漫画の大ゴマによるスピード感があってこそで、アニメに置き換えるなら調整は必須だったと思う。
烈・克己・ジャック戦のスピーディーな展開の後だから余計にそう感じる。
また、本作は刃牙の演技が特に良い。
ピクルとの初対峙ではウブな少年。
一度野生に触れてもう夢中になった後での、烈っちゃん呼びする興奮しきった台詞。
まるで別人のような違いは非常に上手く演技分けがされていて、落差の演出が抜群に上手かった。
なお、刃牙を蹴りで吹っ飛ばしたピクルの勝利ダンスも、躍動感があってアニメならではの良さがある。
全体
原作のピクル編をアニメ1クールで手堅く上手くまとめた印象。
シベリア虎の独白とか重要じゃない部分などは削られている。
しかしストーリ上の流れはきっちり踏襲しているため、むしろスッキリした印象もある。
ただ、尺の関係から一部の小粋な会話が削られたり、逆に原作通り過ぎてテンポがいまいちなシーンはあった。
後者は勇次郎と独歩の会話シーンがまさにそれで、対話の間に勇次郎が面白アクションをする。
漫画だとさほど気にならないけど、アニメだと一々会話が止まってしまいぶつ切りな印象があった。
また、ピクルの心情を語るためナレーションが増えているのだが、声が古谷徹氏なのだ。
(ナレーション自体はバキの頃から同じ)
生涯で一番見返した回数の多いアニメがアカギなので、脳内で重なりまくる……。
ストーリーとして押さえる部分は演出と共にしっかりと押さえられているので、アニメとしての満足度が高い。
他のバキシリーズと同様に良質なアニメ化だ。
総評
アニメ1クール分で原作のピクル編をまるごとアニメ化している。
重要じゃないシーンから細かく削られているためシナリオ全体の印象はほぼ変わらない。
ただ、刃牙は細かな演出が小粋で面白い部分が多いため、少しばかり物足りなさを感じることはある。
逆に会話シーンやラストバトルは、原作通りに細かな演出を盛り過ぎて、テンポが悪くなっているケースもあった。
ただし、格闘描写はアニメならではの細かな動きや演出も、随所に散りばめられている。
原作好きで見返したい人。アニメのバキシリーズから追いかけている人は楽しめるだろう範馬刃牙シーズン2だった。
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