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ワンピース実写版【ネタバレ感想・考察】愛は感じる海外実写版だが・・・

2023年9月19日

作品情報

実写版ワンピース 愛は感じる海外実写版だが・・・
タイトル ワンピース(実写ドラマ)
作品要素

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レビュー

※ 軽度のネタバレ注意

日本アニメを海外で実写化すれば別物になる……そういう認知が確立されて長い年月が経った。
特に有名なのは週刊少年ジャンプを代表する超人気にして有名アニメの一つドラゴンボール。
あまりにあんまり過ぎて、鳥山明氏や制作した監督すらが、あれはダメだったとハッキリ認めてしまった程だ。

そして本作。ドラゴンボールが昭和の黄金期に生まれた巨頭だとすれば、平成の黄金期に生まれて今なお連載中の巨頭がワンピースである。
本作は、原作者である尾田栄一郎氏がガッツリ関わり口出しできることを大前提として、企画がスタートしたそうだ。
そして制作6年の年月をかけたという実写ドラマ版がついに公開された。

ワンピース自体が、独特な世界観とキャラクター性を重視している。
グランドラインに入ってくるとシナリオも複雑化していき、布石や伏線も重視されていくが、本作はそこに至る以前のイーストブルー(東の海)編だ。

そのため評価の大部分は、どれだけ原作の空気感を壊さず寄せられているかである。
そして、キャラクターや世界観に対する『愛』は確かに感じられた。

まずキャラクターたちは原作者の肝いりだけあって、全体的にデザイン再現度が高い。
ウソップの鼻やサンジの眉毛など、現実的に不可能かつ無理やり再現しても違和感の強い部分はオミットして、『現実にいるならこんな感じだろうな』を画にしたような感じだ。
魚人海賊団もアメリカの特殊メイク技術が見事にキマっている。

また、日本でやったら学芸会や悪い意味でコスプレ感が強くなってしまうことが実写化では多い。
しかし情景がワンピース世界そのものであり、全員が外国人で衣装も細部まで拘っているため様になっている。

またイーストブルー編を八話でおさめているため、オリジナルの改変も結構多いのだが、こちらも世界観の部分については上手く調整していると思った。

例えば道化のバギーは、原作以上にサーカス海賊団をコンセプトとして全面に押し出している。
アメリカらしくサーカスの演出もすごく上手い。

バラティエも原作のデザインを見事に再現しつつ、全体の雰囲気はよりレストランらしくなっていた。

しかしながら残念な面も少なからずあった。
まずはキャラクター面で、全体的にキャラクターは原作と似ているのに、主人公のルフィだけが全然似ていない。堀の深い顔つきや髪型が全然違う。
性格も一般的な倫理観が芽生えている割に行動は良くも悪くも自由って感じで、少なからず違和感があった。それが目立つのはクロネコ海賊団編である。

条件付きとはいえナミのメリー号を盗む提案に同意したり、(熱量は良いのだが)食事中のテーブルに乗って夢を語ったりと、『気持ちの良い男』かと言われれば微妙だ。

もう一人の大きな違いがノジコ。
完全な黒人キャラに変更されており、当然顔つきなども別人。それだけならまぁ許容範囲なのだが、ナミの行動意図に気付いてない。唯一支えてくれる人物だった原作と真逆のキレキャラと化して唾まで吐き出す始末だ。

全体的にポリコレを感じるキャラ作りである。
(偏見だと申し訳ないのだが、個人的にポリコレだと暴力的な女=強いになっている節がある)
それにベルメールの墓(原作では実家のみかん畑)に盗んできた財宝を隠すのも、ノジコに見つかるリスクが無駄に高く、実際しっかり見つかっているので設定にも矛盾が生じていた。

対比として、カヤは病弱で孤独だけど見かけ以上に芯が強い部分が強調され、ナミとの女同士の語らいも良かった。良すぎてウソップのキャラが食われ気味だった気がしなくもないけど。
ちなみにベルメールも髪型が普通になったほか、豪快さや悪ガキっぽい部分がなくなって、性格は普通の母親になっていた。

ただし、性格面についてはガープ中将の改変もかなり大きかった。
そもそもイーストブルー編では扉絵連載以外で出番がなかったはずなのだが、コビーと共にルフィを追いかける海軍役としてすべてオリジナルで話が作られている。
原作では扉絵の一ページ漫画くらいしかなかったため、コビーの成長物語としては悪くないのだが、海軍組のサイドストーリーによってただでさえ少ない尺がさらに削られたのは事実である。

ガープ中将はルフィに海賊をやめさせたい私情で、元の仕事(バロックワークスの捜査)を放りだしていた。
思慮深く清濁併せ呑む老練さを持つけれど、孫の成長と扱いに悩む湿っぽい爺さんだ。ルフィを追う役をやるために付与された設定のせいで、原作の豪快さはかなり削がれてしまっている。

他にも、くいななど外見はあんまり似てないなってサブキャラは何人かいたが、雰囲気の再現はできていたので許容範囲ではあった。

先ほど褒めた魚人についても、メイクは完璧なのだが身長面は現実的に再現不可能だったのだろう。
アーロンのサイズが普通の人間並であり特別巨漢でもない。むしろ原作重視で絞られた良い肉体をしている。
ただそのため、ガッツリ濃い衣装な他のキャラと並んだ時に、微妙に悪役的な威圧感が弱い。
「あれ、アーロンってこんな小さかったっけ?」と思ってしまった。

その後原作を読み返したのだけど、アーロンは絞られた肉体美に人外の身長を併せて巨体の威圧感をだしている。
そのため人間と相対的なスケール間の違いが如実に出ており、それも種族的な特徴の一つとして記憶されていたための違和感だった。
(ワンピースのキャラは異種族だけど巨体は当たり前で、人間ですら人外サイズがよくいるので、実はアーロンも相対的にはそこまで大きくないんだけど……)
それを差し引いてもアーロンの再現度は本当に高かったので、そこはプラス要素なのも付け加えておく。

もう一つ大きな残念ポイントは、アクションについて。
ワンピースといえばゴムゴムの実をはじめとした派手なアクションも見どころの一つ。
迫力があって個性豊かな原作の表現には、残念ながら全然届いていなかった。

過剰なまでに伸びて反発力で相手をぶっ飛ばすルフィのゴムゴムの技は、普通に伸びて殴る蹴るぐらいのおとなしさですごく地味。お世辞にもあまり強そうには見えない。
ただし砲弾を返すふうせんや、対アーロンラストで使用したガトリングと、原作再現で全力を出していた大斧は再現度が高かった。
これはハリウッド映画とドラマの予算差も出てしまったのではないかと思う。

それにアルビダの金棒や海軍の砲撃は弾き返せていた(後者はゴムゴムのふうせん)が、アーロンの打撃は普通にダメージを受けていた。アーロンはいつのまに覇気使いになったのか。

ゾロも戦闘で使うのはほとんど二刀流のみ。戦闘前の回想で和道一文字を手にしたシーンを出してるのに、次の戦闘で一切使わないってどういうことなの……? その次がミホーク戦で刀二本を失い、与作とジョニーがいないのでアーロンパークでは一刀流のみ。

三刀流はここぞという時の必殺技で、基本は二刀流みたいなスタンスとなっている。しかもくいなとの回想が出てからは三刀流は敗北の一戦しかない。これは大剣豪が遠すぎる。
リアルなアクションで三刀流がいかに無茶ぶりなのかがよくわかってしまった。

サンジの蹴り技は迫力こそ漫画には劣るものの、現実以上の過剰なアクションが程よくスタイリッシュで、麦わら一味の中で一番ドラマ映えしていた。
クロオビ戦の技名を言いながら蹴りのラッシュだけは違和感があったけど。

原作では一番弱いナミは棒術の動きがかなり様になっており、一人で何名もの海兵と真っ向から渡り合っていた。ルフィとゾロが弱体化しているため普通に戦力として数えられる。
(原作的にそれが良いか悪いかは別にして)

ウソップはチュウ戦の火炎星以外はほとんど活躍していない。通常のパチンコ玉はすっごい弱そう。

なお、戦闘シーンそのものは数も時間も大きく減っていた。
前半はドラマパートの後に全員でボス戦みたいなRPG的な構成になっていて、ボスキャラ扱いのモーガンやバギーは原作より強くなっている。

逆に原作では初めてルフィと互角に渡り合えていたクロは戦闘シーンを削られて弱体化。
首領クリークに至っては、ミホークから逃げきれずに壊滅。ルフィと戦ってすらいない。
(弱体化しているルフィでは、クリークの兵器や鎧に太刀打ちできる気がまったくしないのでどうするのかと思ったら……)

その他、画作りでいえば画面が暗いシーンが何度も出てくるのも残念だった。
シン仮面ライダーを観た人なら、後半の暗くて見えづらいシーンがちょいちょい出てくると言えば伝わりやすいだろう。

シナリオ面では削られたキャラクターは多数いる。
ジャンゴ、パール、ハチなど特にギャグ要素の強い敵キャラは概ね削られていた。
パールとハチは、体格的にも再現が非常に難しいのはあるだろうと思う。

一番影響が大きい部分としては、ジャンゴがいないので、黒猫海賊団編でウソップの活躍がカヤを連れて逃げるくらいしかないんだが?
ナミとの対話シーンなどが追加されたカヤの成長物語が一番目立っており、特に活躍のなかったウソップが仲間入りするのは少々違和感が残った。

原作の設定を無視する実写化に比べれば、全体的に確かなワンピース愛は感じられた。
けれど欠点も多く、並べていけばキリがない。

それでも世界的には人気があるらしい。
最も重要な雰囲気作りには成功していることから、日本でも一部のキャラに対する改変を除けば好印象な人も結構見かけた。
シーズン2の決定とチョッパーの登場も実質確定している。

バロックワークスの名前やエージェント(ゾロが昔戦った設定がある先代のNo.7)を出しており、ラストはクロコダイルらしき存在(葉巻だけなのでスモーカーかもしれない)も出ていた。

私が一番好きなのはアラバスタ王国編で、今の感じならクロコダイルとニコ・ロビンのキャラ再現は大いに期待できる。
もうCG以外ではどうしようもないだろうチョッパーや、スナスナとハナハナの実がどう扱われるかも気になるので、配信されれば多分観るだろう。

作品愛は感じられた。ならば後の観る観ないは心意気よ!

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総評

ワンピース原作のイーストブルー編を全八話で実写ドラマ化した作品。

全体的なワンピース世界の雰囲気再現は、予算と時間をかけたのが見ていてわかるぐらいに丁寧だった。
ルフィがメリー号を手に入れる経緯など、原作ではやや強引だった部分に海洋冒険モノらしい設定を足して、整合性が向上しているケースもある。
原作の後付け設定を拾ってシーンを追加するファンサービスまであった。

しかし、一部のキャラが改編で似ていなかったり別人化したりな状況になっており、どうしても完璧とは言い難い。
特にノジコとガープ中将の別人化が酷かった。そもそもイーストブルー編にガープの出番はほとんどないのを大幅に増やしてこの結果だよ。
(ガープは外見だけなら大変良かった)

また、戦闘シーンのアクション性や格好良さは原作漫画に比べると大きく劣り、イーストブルー編を八話にまとめたせいでガッツリ削られた部分もある。
戦闘シーンも漫画に比べると迫力や見応えに欠けていた。

実写化への努力は随所に感じられるも、同時にドラマとしての限界も見えてしまった感がある。
海外ではかなり好評なようで、海外ドラマ好きな人や、ワンピースの世界観と雰囲気が好きな人ならば楽しめるかもしれない。

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