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ドラゴンクエスト ユア・ストーリー【ネタバレ感想・考察】制作者が見えていなかった大切な視点

2023年11月2日

作品情報

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーが見えていなかった大切な視点
タイトル ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
作品要素

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ネタバレ無しレビュー

私は本作の発表時点ではまったく観る気が起きなかった。
単純に人物デザインが好みからかけ離れていたことと、ドラクエVの物語を二時間映画の枠でまとめるのはどう足掻いても無理があると思ったからだ。

そして案の定……というか予想斜め下の評価がネット上に出回り出す。
アニメ作品でありながらかの映キチ案件にまで発展したのだから、もう逆に大したものだ。

とはいえ実際に観ていないものを語るのはマナー違反なのでその時点ではスルーしていた。
しかし監督の山崎貴総氏が話題に上がる度に何度でもその名が復活し続ける状態へ。

そして、次回のゴジラ新作が山崎氏担当と発表され、やはり当然のごとく話題として擦られるユアストーリー。
ここまで来れば逆に気になる。
というか絶対に観る映画と間接的な関わりが生じてしまったら流石に無視しきれない。

そういう経緯で私は本作への視聴へと至ったのだった。
元々が期待感ゼロというかクソ映画ハンターモードから入ったので、どんな怪作が出ようとこちらは既に覚悟完了だ。

だからこそ、視聴が始まった段階では、普通に面白くて良い感じに作品へと引き込まれた。
キャラデザインについても、『観る』と一度決意を固めてしまえば思ったより気にならず、すんなりと受け止められたのも大きいだろう。

思えばドラクエだからデザインに抵抗があっただけで、私は海外アニメ映画も普通に観るので、この手の3Dアニメーション自体には抵抗感が少ない。
キャラクターの演技(動き)も海外感がかなり強めだったのも、違和感の低減に役立っているだろう。

また、モンスターのデザインと動きに関しては、むしろ今回最も評価している部分だ。
ドラクエのモンスターそのものが、リアリティのある質感で動き回るのは中々に感動した。

ゲマはアレンジを効かせつつも、ゲームの底意地悪い邪悪さが上手く出せている。
個人的にキラーマシンも大変気合いの入った描写でとても良かった。

それと音楽の出来も大変良い。
懐かしさを思い出させながら、3D世界観にも見事に調和している。
ドラクエ世界に対する没入感の強さは、間違いなくモンスター達が生み出していた。

設定や話は色々と端折られたり改変されたりしていたが、思ったよりもキレイにまとまっていて驚いた。
ゲームプレイ者を前提とした『要約』としては上手くできている。
あえてリュカに勇者の期待感を煽っていくのも、ゲームの肝をキチンと捉えていて、それを映画一本の尺で表現しようと試みたのだろう。

しかしながら、未プレイ者視点だと話は大きく変わる。
幼年期を丸ごとすっ飛ばして、かつ全体の物語もかなり継ぎ接ぎしているため、ビアンカとフローラの掘り下げが足りないなんてもんじゃない。
パパスよりマーサに感情移入しやすいドラクエVが生まれるとは夢にも思わなかった。

またグランバニア王子の要素が半ばすっ飛んだ状態で、リュカのフルネームを呼ぶのは違和感が強い。
本来だと、幼年期は自分がグランバニアの王子だと自覚がないため、ビアンカの情報収集源は大きく限られる。
グランバニアの王と王子であることを伏せてパパスは質素な旅をしていたのでは……。

山崎氏はドラクエへのリスペクトがないと言われるが、BGMの使い方なども含めて随所の演出にてドラクエらしい要素は普通に感じられた。
海外アニメ風ドラクエVぐらいの感覚で、『思っていたよりも悪くなかった』が素直な総評である。

なお、ここまでの評価は『ラストのオチを除けばだがな!!!!』が大前提だ。
実際はそんなに悪い作品じゃないですよー。皆さんも観てから判断しましょうねーでお茶を濁すと思うていたか。
こちとら人生の初ドラクエであり最も遊んだ思い出深い作品がVなんだよォ!!

まぁ、酷評を知った上で観たので、そんなに激怒はしてないのだけど、人気の無さは普通に納得できる。
もしこれを期待感持って劇場で観ていたら、さぞガッカリしたろうなとも思う。

本作はドラクエを大事にしていても、ドラクエVプレイヤーへの配慮は欠如していた。

監督がドラクエを知らなくてもドラクエらしさは他のスタッフが補えたし、実際にプレイすればゲームとしての勘所も理解はできる。
けれど、うん十年に及ぶプレイヤーの気持ちを理解することは難しい。

オチに対する伏線は散りばめられていたが、視聴者を納得させるには根本的な欠陥があった。
詳細は重大なネタバレのため後述するが、これで多くのドラクエVファンは本作の評価を大きく落としたのだ。

残った層で好評を博するのは、ドラクエVに対してあまり思い入れがなく、アクションが面白ければ人物の心情描写などが多少浅かろうと気にしない人達となる。
このストライクゾーンの狭さでは、怒り狂ったファン達の酷評をひっくり返すことは不可能だったからこそ、本作は現在に至っても悲劇として語り継がれているのだろう。

『ジュブナイル』などれっきとした名作だっていくつも生み出している方でもあるため、『山崎監督=ユア・ストーリー』のような扱いはよろしくないとは思う。

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総評

満点とは言えないまでも、ドラクエVは映画の尺にある程度上手くまとめ直しており、原作ファンが観る映画としては十分及第点ではあった。
だが最後でそれら全てを見事に無に返す所業により、ドラクエ史に残る問題作扱いとなった。

とはいえ、ドラクエのモンスターを見事にそのままCGに落とし込み3Dで動かしたのは素晴らしい。
映像美と音楽の扱いは本当に良いので、そこは作品評価としてちゃんと加味すべきだろう。

ネタバレ有りレビュー

本作の問題点は、一見するとわかりやすいようで少しばかり複雑だ。
原因そのものは単純明快。ラストで起きるちゃぶ台返しである。

ドラクエVの映画かと思ったら、ドラクエVをプレイする人の映画だった。
そしてゲーム内に潜入したウィルスが「いつまでもこんなゲームに夢中になってないで大人になれ」と説教をかましてくる。
「私が観たかったのはそういう映画じゃねえ!」と思ったドラクエVファンが私を含めて多数いたのだ。

一応、メタ世界の構造は随所に伏線が張られており、本当の意味で唐突だったとは言えず、完全に予測不能だったわけでもない。
また、主人公はウィルスの言葉を否定しており、作品テーマとして見ても、説教そのものが目的じゃないのも明らかだ。

しかし、視聴者には『ちゃぶ台返して説教ぶっ込んできた映画』として記憶に刻まれている。
これが何故かと考えれば、リュカの反論があまりに脆く説得力に欠けるためだ。

ドラクエの世界は偽物じゃない。自分の人生の一部なのだ。
そう返してはいるものの、虚構は虚構である。
ドラクエVは作品年代的にいい年した大人が多いため、現実と虚構の区切りはもう自分の中で付いている。虚構を虚構として素直に楽しめる者がほとんどだ。

説教自体も余計なお世話で、それに対する反論も薄っぺらく感じた。
この薄っぺらさは解決方法にも起因する。

自分のいる世界がゲームだと突き付けられて、それに対する逆転の方法はスライム(監視プログラム)が作ったロトの剣による反撃だった。
ドラクエと共に生きてきた。リュカはやっぱり勇者だったのだ! ……ってそうはならんやろ。

プログラムの元になるワクチンを自分で組んだわけでもないので、要するに即席で作られたイベントに従っているだけ。やっぱりゲームじゃねーか!!

ここは台詞だけでなく『ドラクエは自分にとってリアル=日常に結びついた存在』であり、『だからこそこの苦難を乗り越えられるのだ』という姿を、ちゃんと画で見せる必要があった。
それが昔のスーファミで遊んでいる姿を少し映した程度で全然できていない。

結局言葉でしか否定できていないため、その後世界が元に戻ってビアンカ達のセリフを聞いても、「これも所詮、プログラムが喋っているように見せているだけだよね」と冷めたテンションで見てしまう。
物語上では敗北しようが、視聴者の認識を破壊して、かつそれを戻せなかった時点でウィルスが勝利してしまっているのだ。

またSF的に見ても本作は問題点が散見される。有り体に言えば作品を成立させるための嘘があまりに多いのだ。

まずゲームの場所とプレイ時間。
VRによるリアリティゲームとしては、今やゴーグル型で何処でも気軽に遊べるが完全に主流となっている。
まぁ、一時的に記憶を書き換える行為は倫理的にも色々と問題をはらんでそうなため、第三者が管理する場所で遊ぶというのは理解できなくもない。

けれどそれならそれで、プレイが問題となる。
作中ではウィルスが登場した段階だと、幼年時代をすっ飛ばしている上で数時間プレイしていると言われていた。

数時間も休憩なく没入型ゲームに入って遊び続けるって健康的にどうなの?
しかも映像でのゲーム起動時から立ちっぱなしに見える。
トイレはどうなっているのだろう? 多分五感はリアルと切り離されているので、どう処理するのか大変気になる。

幼年編を含めたらどう足掻いてももう一~二時間は追加が必要だろう。
食事やらも含めて、ぶっ通しで遊べる時間ではない。

その場でプログラムを組み上げるという設定も、ラストでウィルスを倒すプ即席ログラムを組むためだとはわかるが、流石にちょっとご都合主義が過ぎる。

しかも、そうして組んだ自己暗示プログラムは、ゲーム内でゲームキャラに無効化する薬を飲まされて解除されてしまう。
組んだプログラムに脆弱性がある上に、キャラが自己判断で解除しようとするのもゲーム的に大きな欠陥だ。普通に駄目じゃん!!

そしてマーサやスラりんが問題に気付いていたなら、その時点で運営側は問題の検知が可能なはずである。
顧客の安全を考えてゲームを止めるのは当然の措置だろう。

とりあえずドラクエVでやる問題から目を背けるなら、ゲーム世界という設定と随所に伏線を散りばめる方式は悪くなかった。
しかし細部で詰めの甘さが目立っており、総じて子供だましの感が拭えない。

ドラクエVでないSF映画でいいなら、類似性のある世界観とテーマ性で『レディ・プレイヤー1』の方がよっぽど完成度は高かった。
公開時点でドラクエ映画が観たいと子供にせがまれて親子で行くならともかく、現在だとあえて本作を選ぶ理由は思い付かない。

私のようにクソ映画ハンター化してあえて観るならば止めないけれど。

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