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仮面ライダーリバイス バトルファミリア 家族というテーマの裏に隠されたもう一つの本質とは【考察・解説】

2022年7月25日

家族愛にも繋がるもう一つの重要テーマとは

語りたかった残念シーンと爆笑ポイントは存分に語ったので満足したぞ!
ということで真面目モードに戻る。

バースオブキマイラを観ていなければ、ホントによくわからない復讐鬼にも成りきれない男で終わった、大谷希望は何故必要だったのか。
ここをモヤっとしたまま終わるか、その意味を理解できるかで、本作のイメージはガラリと変わる可能性がある。
ただしバースオブキマイラを観ていなければ、理解するのが極端に難しくなってしまうのが難点だ。

ネタバレ無しパートでも語ったが、バトルファミリアは劇場版でありながらしっかりとしたメッセージ性を込めようとした。
しかしながら尺的に難しいため、その一部をバースオブキマイラとして切り離したのだろう。

この話がなければ、希望はよくある劇場版用の救われる少年枠に収まり、五十嵐家に救われて命を拾う。なんかいい話っぽく着地することを目指した二段構成のように感じた。

簡単に話を整理しよう。
まずアヅマは赤石と同じく、ギフと直接契約した二人のうちの一人だった。
赤石が表舞台に立って人を治める者なら、アヅマは裏側から世界を誤った道に進ませようとする者を排除する陰の者だ。

しかし人類の愚かさを延々と見せつけられたアヅマは、赤石より先に心が折れて隠居生活にシフトした。
しかしギフが消えたことで肉体の崩壊が始まり、アヅマは再び使命を果たすための行動を開始した。

一方、狩崎は『ぼくの考えた最強の仮面ライダー』開発に心血を注ぐ。
狩崎は悪魔の力に頼らないで、その目標を叶えようとしている。

元々悪魔は危険な存在であり、中でも最強のギフ細胞を使えば、強いライダーが作れるのは当然。
悪魔に依存するリスクを抑えた上で強いライダーを作る思想はバリッドレックスの頃から一貫しており、デストリームにもそれは現れていた。
悪魔をそのまま実体化させてしまうリベラドライバーを、失敗作として忌み嫌った所以もそこにあるだろう。

父の狩崎真澄の思想は、悪魔の力を借りながらも、その悪魔に打ち勝つこと。
故にそもそも悪魔に頼らず真澄よりも強いライダーを作れれば、それが父親を超えた証にもなるのだと狩崎は考えたのだろう。

けれど、その実験中に狩崎はキメラドライバーでの変身に失敗して、ある存在を放出してしまう。
狩崎パパは大変なものを遺していきました。貴方の悪魔です。

パパが自分から息子の中へと移した悪魔、シックが表に顕現して、ギフの瞳を奪って逃走した。
そしてキメラドライバーにギフの瞳を埋め込み、アヅマを仲間に引き込んで、仮面ライダーキマイラとダイモンを生み出す。

そしてシックの実験により友人を失う(経緯はもっと複雑だが全編ネタバレしたいわけでもないから省略)。
ダイモンの戦闘によって巻き添えとなった希望の両親は、希望の身を庇って死亡した。

その復讐で希望は己がキメラドライバーによって仮面ライダーキマイラとなり、アヅマ達を倒そうとするも返り討ちに遭ってしまう。
仮面ライダー史上二人目、人間の姿でライダーをボッコボコにして倒した男、アヅマが爆誕した。乃木怜治もこれは草葉の陰で対抗心を燃やしているに違いない。

アヅマは肉体の再生を望み、五十嵐三兄弟からギフの細胞を抽出して、再び不死の肉体を得ようと目論む。
そんなアヅマに対して、一輝は決着を付けるべく戦いを挑んだ。

ここまでで希望の活動動機はハッキリして、新たに二つの疑問が生じる。

希望は純粋に家族を奪われた怒りをアヅマにぶつけた。
しかしアヅマは冷淡で、大義のために失われる者を単なる犠牲として割り切っている。
そのため戦いに巻き込まれた一家族のことなど眼中にすらなかった。

それによって希望の怒りは更に燃える。
彼はハッキリとアヅマを裁く意思を言葉にしていた。

アヅマにとって世界を導くことは大義、つまりは正しさで人類を裁く。
希望もまた残酷な悪を倒す正しさで裁く。
正しさで裁き合う者達の構図だ。

けれどアヅマの力は圧倒的で、キマイラではまるで歯が立たない。
それでも抗おうとする希望を、五十嵐夫婦(主に元太)が『死んだ両親はそんなことを望んでいない』と止めた。
ここは一輝や他の兄妹では成り立たない。子供達を想う元太と幸美には、希望の両親が何を願っていたのかをハッキリと理解できていたのだ。

両親が希望を護ったのは、自分の身を犠牲にしてでも、ただ彼に生き延びてほしかったから。
由芽の出産に立ち会ったことで、希望はその真意に気付けた。

もし希望が決死の覚悟で奇跡的にアヅマを討てたとしても、恐らくはキメラドライバーの副作用によって、人外の化け物へと成り果てていただろう。
彼の復讐には最初から破滅しか待っていなかった。

子供を愛する親の気持ちに触れて、自分は死んではいけない。両親の分まで生きなくてはと彼は『正しさ』を捨てたのだ。
そして産まれた新しい命には……守られ繋がれた命の名が与えられた。

この結末の裏には、もう一つの家族の物語も隠れていた。
シックは狩崎の人格にマッドサイエンティストな影響を与えてはいたが、決してこれまで表に出ることはしなかった。
狩崎の実験はこれまでも様々にあったのだから、他にもチャンスはあったはずなのは彼の発言から容易に想像できる。

父親の悪魔であっても、今やシックは狩崎の悪魔だ。
その悪魔の動機は自分が何処までやれるのか試したかったから。

最強最高のドライバーを作りたい。それによって父親を超えたい。
その意思が形になって暴走した心の形がシックだった。
父親を意識して、科学者としての未来を託されたからこそ、その病的なまでの熱意があった。

残った疑問は、アヅマは何故一輝達を狙ったのかと、一輝があえてアヅマと決着を付けようとしたのかだ。

元々アヅマの心は摩耗しきって折れていた。
最後まで狂信者で有り続けた赤石とはその点が大きく異なる。

また、単純に肉体を再生させたいだけなら、ギフの瞳をキメラドライバーから抽出して埋め込めばいい。
シックの目論見からは大きくハズれるが、仮面ライダーキマイラを人間のまま圧倒するアヅマなら、力尽くで言うことを聞かせることも不可能ではなかっただろう。

また、活動再開時には肉体再生の目処は立っていなかった。それどころかギフの細胞が残っている事実すら知らない。

彼の目的は、あくまでギフとの契約履行であり、世界を正しく導くことにある。
アヅマは生き延びたいのではなく、残った時間を無駄にしないことが大事だった。

しかしギフが消えた以上は、その契約も無くなった。
それでも彼は、ギフを討った者が正しき世界を導くに相応しい者か否か、ジャッジを下すことを決めたのだ。
赤石はギフ有りきの世界救済だったが、アヅマは世界救済そのものを己の使命としていたのだろう。

もし五十嵐家が世界を導くに相応しい存在でないのなら、彼はギフの細胞を得て、再び世界を正しき道に導くため行動を開始しただろう。

ギフのいない世界で、その使命を果たそうとするアヅマに、一輝は何かを感じ取ったのではないだろうか。
放っておけば消えるはずの命を、燃やし尽くして果たそうとする使命感。それに対して逃げるのではなく、あえてぶつかる。

一輝はアヅマのジャッジに逃げず正面から挑んだ。
その中で一輝は知った。

アヅマは世界を正しく導くため、必死に一人で戦い続けた。
それでも変わらない世界への失望感。
永い時間の中で失われていった愛する者達。
やがて彼は心が削られていき、最後には人間性を喪失した。

アヅマの真意を知った一輝は、ギファードレックスのギフ細胞を分け与えてまで、彼の意思を受け止めることを選ぶ。
そうして己の力を心置きなく出し尽くしたアヅマは満足して消えていく。

彼は判決を言い渡さなかった。
今の世界が正しいなんて、どうあがいてもアヅマは言えない。

けれど未来はどうか。
少なくとも彼はここで消えることに納得した。
それは彼の意思を持って引き継ぐ者が生まれたから。

仮面ライダーリバイスとは引き継がれていく物語。

元太の中にあったギフの遺伝子が、子供達へと継がれたように。
命の誕生を見守った青年の名が、赤ちゃんへと継がれたように。
親の愛が、子供へと継がれていくように。

世界を導こうとした過去アヅマの意思は、未来一輝へと引き継がれた。

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