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ゴジラS.P アニメならではの現実観が生んだ怪作【感想・考察】

2021年5月18日

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

気が付けば前回のブログから一か月以上が経過している……!

新規に立ち上げたYouTubeチャンネルの動画作りをしていたので、全然そんな時間経った感覚はないのですよ。

良ければご視聴ください。
あわよくば『いいね』とチャンネル登録お願いします。マジお願いします(必死)

とまぁ冒頭に宣伝も挟みつつ、今回はアニメのお話です。
新たなアニゴジ、ゴジラS.Pですよ!
虚淵氏版アニゴジは今後どう呼べばいいんでしょうかね?

特撮とアニメはどちらも空想を扱う媒体ですが、同じ作品を取り扱うにも切り口をどうするかがとても重要になります。

以前の虚淵版ゴジラもかなり特殊な切り口で賛否両論もありますが、独自性の強い作品でした。
また視聴者の多くは当然の如く、頭の中に一種の理想形としてシン・ゴジラが住み着いています。

リアリティに虚構を入れ込むことに重視したシン・ゴジラ。
メタフィクションから怪獣を概念化した虚淵版ゴジラ。
もはやゴジラは幾度目かの黄金期を迎えたと言っても過言ではないと思います。

更に初の地上波を含めたアニメ放映。ゴジラS.Pにはだからこその期待と不安が同時にありました。

実際に始まってみると、メタとリアリティどちらでもありながらどちらとも違う、新たな切り口によるゴジラ世界がそこにはあったのです。
今回はゴジラS.Pがどういう思想と在り方で『ゴジラ』を描いたかを主軸に、の感想と考察を語ってきましょう。

ゴジラSP アニメならではの現実観が生んだ怪作【感想・考察】

出典:©2020 TOHO CO., LTD.

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アニメと特撮のリアリティ差

現在のゴジラ作品には前提としてシン・ゴジラという超高いハードルがある。
シンゴジは特にリアリティ面で恐ろしい程に高レベルだ。
そりゃあ日本では同じ特撮枠でしばらくゴジラは作れないよねと思う。

実際の理由は定かではないものの、前回も今回もゴジラシリーズの新作はアニメ枠になっている。
そして虚淵版ゴジラでは日本の特撮だと難しい方向性のハードSFかつ、海外の発想では出ないだろう新機軸によって『怪獣』を解体してみせた。

しかしながらこの発想は面白いものの、『これは僕の観たかった怪獣映画ではない』という声も多い。
怪獣同士の戦いはほとんどなく内容もかなり複雑で難しいため、そう思ってしまう気持ちはわかる。
(私はこういう概念化によるメタ話は大好物で好きな作品なんだけど……)

ゴジラS.Pは怪獣を虚構の存在だと前提して、その虚構が近未来の現実に現れるという形式にした。
それだけだとシン・ゴジラと同じであり、本当に同じことをやったらまず劣化作品になってしまう。

そこで登場するのが三つの要素。

一つ目がジェットジャガーだ。
あのひし形ニヤけ顔のジェットジャガーだ。
テキサスマックが帽子取って頭尖らせたような面のジェットジャガーだ。
『ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ!』のジェットジャガーだ。

※ テキサスマックよりジェットジャガーの方が登場は早いよ!

子門真人氏の歌唱力は本当に素晴らしいぞ……! という話は置いておく。

ジェットジャガーは独特な外見も相まって存在レベルで外連味の塊だが、町工場の年食ったおっさんがパイロットになって怪獣と戦う。ここだけ抜き出すともはや意味が分からない。
これに現実感を与えるために設定を積み重ねていく。

原作だとジェットジャガーを生み出したのは伊吹吾郎という青年科学者だった。
ゴジラS.Pでは少人数の町工場に天才青年が混ざっている。

原作のジェットジャガーは人間サイズだったものが、かなり荒唐無稽で理不尽な巨大化を遂げた。
本作だと最初から巨大ロボとして作られているがサイズはダウンしている。
同じく小型化したラドンに初戦から大苦戦しており、性能も決して高いとは言えなかった。

『いくら天才がいても町工場で作れるのはこれが限界だよ』って妙なリアリティによってジェットジャガーを成立させている。
足の修復が間に合わず車輪になったりアンギラスの角を装備したり、対応や強化も結構場当たり的。それも高度なAI教育があってのことで相応の苦労が描写されていた。

全体的に見ると明らかなトンデモ設定なのだけど、そこに『手作り感』が入ると本来あり得ないものを試行錯誤して何とか運用しているという現実感が出てくる。

それでも実写だったならあまりに現実感がなくて子供騙し扱いされただろう。
アニメは最初から虚構が大前提の媒体だ。なんせ何を言おうともあくまで『絵』であって現実ではないし、そこが魅力なのだ。

アニメのリアクションは元々現実より大仰であり、演技もそれに合わせて激しいものが多くなる。
町工場でロボットを作り時代錯誤の啖呵を切るジジイとかまさにその典型過ぎる!
最初から大げさ大仰で成り立つ媒体だからこそ、根本的な現実感も特撮より許容範囲が異なるのだ。

特撮なら『いくら何でもそれは現実感無さ過ぎて無理』な次元でも、アニメなら『まぁ現実的にはあり得ないけど設定としては有りっちゃ有り』の判定になり得る。

これがアニメでゴジラをやることのメリットと強味。
そして次にジェットジャガーとゴジラが戦う荒唐無稽に現実感を与えるのが、残る二つの要素『怪獣のリアリティ』と『アーキタイプ』である。

【次ページ:虚構を現実に繋ぐ舞台装置の上手さ】

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