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不破諫(仮面ライダーバルカン)が愛されるのは●●ライダーだから!【仮面ライダーゼロワン 考察】

2020年8月30日

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ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

最近はやることが溜まりに溜まって、ブログ更新が完全に滞っております。
けれど、ゼロワンが遂に最終回を迎えるにあたって、最低限ゼロワン関連の記事は出しておきたい! という気持ちが爆発いたしました。

最終回後には総括記事も書きたいのですが、まずは第一話からずっと物語を支え続けた重要キャラにして二号ライダー、不破さんについてを語りたい。

ゼロワンは作品単位でみると、ネット上では賛否両論の強い作品だと思いますが、不破諫という人物については概ね好評だった印象です。
不破というキャラクターが何故ここまで愛されるのか。
この理由を丁寧に掘り下げると、人によってはかなり意外に感じそうな回答にたどり着きました。
また、これは必然的に平成以降の二号ライダー全般にも関わる、ある意味仮面ライダーの様式美的な部分にも深く関わってきます。

そういう二号ライダーとしての在り方を考えつつ、不破はゼロワンの物語においてどういう役割を担っていたかも考察していきたいと思います。

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ヒューマギアを否定する復讐者

序盤の不破は暴走ヒューマギア絶対壊すマンだった。
ヒューマギアを絶対に認めない姿勢はかなり極端なキャラ付けではあるが、少年期に暴走したヒューマギアに襲われたトラウマ、家族を殺害された怒りと恨みが説得力を与えている。

恐怖と哀しみを怒りで覆い隠していると言えるだろう。
バルカンへの変身時に見える赤いラインは、まるで血の涙を流しているようだった。
(刃唯阿も同様の変身だが、涙ラインが見える回数は不破に比べるとかなり少ない)

その復讐に燃える攻撃的な姿勢は、或人との比較としても機能していた。
二人は同じデイブレイクにて、或人は父親のヒューマギアに命を救われ、不破は家族や友達を奪われた。
ヒューマギアに対して明暗を象徴する存在であり、第二話ではバルカンが開けた穴から双方が見つめ合う演出も、その関係性を強調していた。

また、プログライズキーを力でこじ開ける。ゴリライズという脳筋キャラを確立した。
これも真面目な方面で考えると、不破の俺ルールを強調しており、同時にテクノロジーへの否定にもなっている。
相棒として対極に立つ刃は、しっかりとヒューマギアや他のツールを使いこなしており、バルキリーへの初変身時は、『仮面ライダーというテクノロジー』の扱い方をレクチャーするような口ぶりでもあった。

序盤の不破はひたすらヒューマギアを否定し続け、そのためなら無断でAIMSの武器も使用する。
それを『俺ルール』という言葉で補強する。
不破のルールとは己の生き様であり、ヒューマギアへの怒りや恨みと直結するからだ。

「俺がやると言ったらやる! 俺がルールだ!」

この怒りの要素は、プログラムとして擬似的な怒りの感情を持つ雷との対比でも描かれた。
真の怒りを抱えて不破はアサルトウルフになり、偽の怒りの具現化とも言える仮面ライダー雷を打ち倒す。

「笑いなんて必要ねえんだよ! 俺に必要なのは……怒りだ!」

さり気なく不破=ウルフもここで強調されている。
(何故アサルトウルフになれたのか、真の理由を隠す方便としても機能していてこのシーンはとても面白い)

しかし同時に、暴れ出さないうちは理不尽にヒューマギアを傷付けることはしない。
声優編ではルール的にAIMSが正しい場合でも、或人に待ってほしいと人情面で頼まれるとちゃんと待つ。
これは或人が隠蔽をしない誠実さを持っているという信用もあるだろう。

自分が死にかけDr.オミゴトに救われた時は、素直にその事実を受け入れた。
(だからこそ或人の『笑い』に懐柔されそうになる自分を『怒り』で否定する必要があったとも言える)

えてして短気系のキャラは嫌われやすいが、不破はそこに理解できる理由付けと、面白リアクションを入れてマイルドにした。
加えて、直上的でも義理人情に厚く誠実さを重んじる男を上手く描けたからこその序盤人気だろう。

決して公式ブログで一人だけ俳優でなくキャラ前提で書いていたり、YouTubeでポテチをゴリラ開けしたからではない!

刃のやつ、プログライズキーのロックを解除しやがらねえから、

無理やりこじ開けてやったぜ。

引用元:仮面ライダーゼロワン キャストブログ

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不破が仮面ライダーを夢見る意味

色々な意味で序盤から大暴れだった不破は、ZAIAと天津が本格的に動き出したお仕事5番勝負からは、出番的に少し大人しくなる。
或人対天津を軸にした対立構造になり、刃も天津に付いたことで相対的に他のキャラとの絡みが減った。

不破の役回りは唯一外側から事件を捜査して、お仕事5番勝負に隠れ暗躍する滅亡迅雷.netの幹部を見つけ出すこと。
暫くは拘束されて動けない滅への尋問が他キャラとの一番積極な絡みで、地味な役回りだったのは否めない。

戦闘ではサウザーに連敗、メタルクラスタの登場で型落ちも進み、復活&強化した迅にも敗北。しかも強化されずラーニングだけで強くなった滅がサウザーと互角に戦いだす。
刃のジャッカルとバルカンの直接対決がなかったこともあり、一時的は主人公と双璧をなす存在から最下層にまで転落した。
或人の主人公感が固まっていくにつれて、不破はある意味正しく脇役に落ち着いたと捉えることもできる。

ただし、要所での活躍や成長は描かれている。
或人がメタルクラスタホッパーで暴走すると、危険を顧みず力尽くでベルトを引っぺがし変身解除させた。キーの次はベルトかよゴリラ……!

事件捜査も刃を失ったことでよりスタンドプレーが強調され、迷走と同時にこの辺りからヒューマギアやAIとの交流が増えていく。
弁護士ヒューマギアとの捜査は、刃とのバディが崩れているこのタイミングだからこそ映える演出でもあった。

暴走したヒューマギアへの怒りは消えない。
だが或人と夢にかける情熱や、人々を助けるヒューマギアを直接見ることで、その善し悪しはラーニングによって決まることを学んだ。

「俺がヒューマギアに判決を下すとしたら、ヒューマギアは俺の命を脅かしたが、俺の命を救った。有罪と無罪、半々だ。
だったら、勉強させて利口なヒューマギアにしていくしかねぇだろ? それがおたくらの会社の仕事じゃないのか?」

悪意に反応する無線暴走に入ったことで、ヒューマギアへの信頼が揺らいだ或人にポジティブな助言をするに至る。
小難しい理論ではない。シンプルな力強さはまさに不破らしく、そして或人に初心を思い出させる大事な言葉だった。
この頑固さと素直さが入り混じった感覚が不破諌という男の魅力なのだ。

そしてお仕事勝負も後半に入ると、これまで伏せられていた不破の真実が次々と明かされていく。
自分の脳をハッキングされて無意識に操られ、記憶まで植え付けられていたというSFのお約束イベントが発生。
視聴者は数々の伏線からある程度察せてはいたけれど、ぶっちゃけ「頭大丈夫ですか?」のネタ台詞は露骨過ぎて伏線としか思えなかった。

とはいえ、不破にとってはまさしく突然の宣告でアイデンティティの崩壊だった。
当人は知らないが、亡の意思を組み込まれたタイミングはDr.オミゴトの手術時だ。
仕組んだのはあくまで天津であり、Drオミゴトの意思によるものではないとはいえ、不破が大きくヒューマギアの行動に心揺さぶられる結果になったタイミングであるのはあまりに皮肉で残酷だ。

ヒューマギアへの恨みと怒り、つまり戦いの動機は全て偽りなのだ。
怒りと憎しみは道具として扱われるために植え付けられたもの。雷の怒りを偽物と断じたのに、自分は記憶そのものが偽物だった。

けれど始まりは嘘でも、戦ってきたこと、そしてその流れで得てきたことは本物だ。
そうして不破が目を向けたのは、チェケラが暴走して選挙戦がどれだけ絶望的な状況になっても、決して諦めず夢を追い続ける或人の姿勢。
不破は何のために戦うのかの『何のために』を過去ではなく未来へと向けるようになった。
未来はこうあって欲しいという願い、つまりは夢なのだ。

そうして不破はランペイジバルカンへの進化を果たす。
ここは主人公のお株を奪うような熱い流れだった。
正確には、物語の展開上一度はドン底に落ちなければならない或人に変わって、溜まりに溜まった視聴者のフラストレーションを発散する役割を与えられた。
ずっと事件を外側から追っていた身軽な不破だから担えた役割だろう。

性能もこれまでのプログライズキー全部盛りで、主人公の最強フォームに多いパターンそのものだ。
全部乗せが二号ライダーのみに割当られるのは、仮面ライダー全体を見渡しても恐らく初で、かなり珍しいパターンだった。

しかもお約束だった腕力によるロック解除にも集大成が訪れる。
なんとランペイジバルカンでは遂に最初から一定の力で強引にロック解除しないと変身できない仕様になったのだ!
不破のゴリラ設定に対して、もはや公式から歪んだ愛情すら感じる。

ここで明確に不破の心境にも変化が起きた。
いがみ合いながらも共にAIMSとして歩んできた刃へ夢を問い救おうとする。
自分を操る要因だった亡でも、彼女が道具から脱却しようとするなら協力する。

家族がまだ生きていたと知ると、気になってしまいひと悶着起こす。その後、家族の顔を一目見て憑き物が落ちたような穏やかさで帰っていく。

自分の生き様=ルールを大切にしながらも、それを殻とせず外へも積極的に目を向けるようなった。
その上で本当の記憶や家族にあまり執着心を抱かないのは、過去の正しい自分ではなく、『仮面ライダー』という夢を今の自分として肯定できたからだろう。

復讐という自分のための行為ではなく、誰かを守るために戦う。
夢を得たことによって、不破は本当の意味で仮面ライダーとなったのだ。

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不破諌が主人公っぽい理由は主人公じゃないから

ここまで大筋を語ってきたが、ネタ要素を除いて不破が人気の要素は大きく分けて三つだ。
一つは目的意識が常にシンプルでわかりやすいこと。
二つ目が、情に厚い熱血漢であることだ。

不破の戦う理由は話の中で変わっているが、迷うシーンは少ない(もしくは短い)。壁にぶつかっても自分の意思を貫き男らしく決断する。

そこに感情的でわかりやすく『不器用で良い奴』という属性が付いてくる。
この二つは合わせると王道の熱血主人公になるのだ。

また、脳にインプラントを埋め込まれことにより変身能力を得て、下手すると悪の手先になってしまうのは『改造手術』を連想させる。
不破は昭和ライダーと合致する要素を多く持っていた。

頑固でテクノロジーに疎い面も、古いタイプの人間みたいなイメージを与えやすい。
(実際の昭和ライダー達は、天才的な頭脳でテクノロジーに強いタイプとか、医者や宇宙飛行士とか頭良くないとそもそもなれない仕事してる者がゴロゴロいるけどネ!)

しかも昭和サイドには、家族や友人を殺され深い哀しみを背負い、復讐を胸に抱き戦うパターンは多い。
つまり不和諫は、王道昭和ライダー路線だからこそ人気なのだ。
平成ライダーを終えて令和ライダーとなった世の中で、中々皮肉な話である。

実のところ2号ライダーの王道キャラパターンは、主に平成ライダー二期(正確には電王以降)ではよくあるキャラ付けだ。

『W』の照井竜は復讐を動機にして、『変……身……!』とあえて溜める。
これはビーストやスペクターなどの二号ライダーで時々使われる、昭和ライダーではスタンダードだった掛け声だ。
(変身に溜める掛け声は、オダギリジョーの発案で古臭さを消すためクウガであえて変えた)

平成ライダー以降の主人公は飄々としていたり一癖あったりするタイプが多い。
或人も元お笑い芸人で社長という特殊な立ち位置で、特に序盤は主人公の視点を通してヒューマギアの説明もしなければならなかった。

こういうタイプは主人公らしさを出しにくい欠点があり、二号ライダーに熱血主人公型を置くと話が分かりやすくなって盛り上げやすくもなる
(これやると結果として主人公の立ち位置を食われてしまうリスクもあるのだけど)

ビルドの戦兎と龍我の関係性がその典型例であり、龍我はまさしくもう一人の主人公に近い相棒の立ち位置だった。
ジオウとゼロワンもその流れが続いている感じだ。

不破は相棒ポジションでこそないが、或人と思想的な対立関係を作るために活躍の場面が多かった。
その後も課せられた設定の重さ故に、不破の出番はコンスタントにあったため、より主人公っぽさが強くなっている。

ただそれでも、個人的に不破が主人公だと言われるのは違和感がある。
或人が主人公として複雑なメインテーマ部分をしっかり担っているからこそ、シンプルな不破は自由に動ける。

そして不破は物語の中で大きく成長しているが、それは或人有りきの成長なのだ。
ヒューマギアを憎む心を緩和させたのは、或人が誠実さでもって訴えかけ続けたから。夢を持つようになったのもやはり或人の影響だ。

イズや迅が或人によって心を成長させてきたヒューマギアであるように、不破は或人によって最も影響されて変わった人間なのである。

ヒューマギアを恨み続けた男が、自分の意思を乗っ取っていた亡の気持ちに応え、プログライズキーを受け取った。

そうして変身能力を奪われてから、亡の協力によって新たに変身した姿は双頭の狼、オルトロス。
人の意思とヒューマギアの意思を絆として、強大な力に立ち向かう。
或人に変えられた男が、変わってしまった或人に夢を説く。
不破が悪意と同化した或人を相手に貫いたものは、或人の意思そのものだ。

或人の意思はヒューマギアだけでなく、人の意思も変えていく。
だから或人が悪意に呑まれても、彼の意思を継ぐ者が彼を止めるため立ち上がる。

不破自身が課してきた自分へのルールは、いつしか或人の理想と重なっていた。
親友でもなく、家族でもなく、けれどそこには二人だからこその絆がある。

これは不破諫が主人公ではないからできたこと。
そして不破諌が仮面ライダーバルカンだからできたことだった。

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