仮面ライダージオウ 43話『2019:ツクヨミ・コンフィデンシャル』
ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
今回は先に宣伝をしておきます。
私が仮面ライダーグッズで一番収集癖を発揮しているS.H.Figuartsを何か形にしてみたくて、レビューをスタートしました。
手ごろな価格(ものによってはちょっとお高いけれど)で素晴らしいクオリティのフィギュアシリーズですので、知らなかった人は買おうか検討している人を後押しできるコンテンツなればいいなと思います。
今週はアナザージオウⅡ編の完結回でした。
終盤に入って話も大きく動いていますが、ソウゴというキャラクターはその中で翻弄されつつも、しっかりと自分という芯が入ったキャラクターに成長したなと思います。
登場人物が多くて、否応なしに目立つ門矢士や海東大樹がいても、ソウゴがちゃんと話をまとめて締める存在になっているので話の土台はブレていません。
その隣にゲイツやウォズがいるのも大きいんですよね。
ソウゴが相変わらず叔父さんに知らない子扱いされて凹んでいる横で、さり気なく肩ポンするゲイツがすごくいい。
前回書いた記憶が失われた世界でも残る絆があることを、ごく自然な流れで示してくれています。
準レギュラーとしてディケイド組が本領発揮し出してもちゃんと『ジオウ』として確立できているのは、アギト編がレジェンド増し増しで展開できたのと同じ理屈です。
まあ、レジェンドに尺を大きく割いたことで、この終盤で風呂敷を畳むためにまだ広げているのは不安要素でもありますが……。
とはいえ加古川との決着をつけつつ、終盤を盛り上げるための準備もできて盛り上がりは十分にあったと思います。
今回はアナザージオウⅡとの決着を付けるに際して、ソウゴが『仮面ライダージオウ』という番組で何を形にしてきたのかを中心に語っていきたいなと思います。
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終盤で物語を引っかき回す海東大樹の在り方
今回は門矢士よりも海東大樹の方が目立って、物語を先に進める役割を担っていた。
士は『世界の破壊者』として、時空の歪みであるアナザージオウⅡを倒す役割を担うつもりだったのだろう。
ここで解決できていれば、それこそ写真撮って帰ったかもしれない。
ならば海東大樹の役割とは何か。無論、お宝をゲットすることである。
混沌とする世界で、その中で生じるお宝を狙って頂いていく。
そうして物語をややこしくするのが海東の役割だ。
なんせ今回も(Twitterで)士に辟易されているぐらいだ。
最終回付近なのに掻き乱さないで。 https://t.co/YPpTUVR9l8
— 井上正大 (@MAAAAAAAASAHIRO) 2019年7月13日
以前は『オーマの日』のタイミングを利用して白ウォズのノートをゲットした。
あまりに良いタイミングでとてつもないチートアイテムを持って行ったので珍しく利用して話を引っかき回すのかと思いきや、結局使わないままオーマジオウⅡ編を終えた。
何のためにゲットしたんだよって話だけれど、私としてはむしろこの展開の方が好ましい。
というのも、海東は盗んだお宝を積極的に活用することは案外少ないのだ。
海東にとって世界のお宝とは、手に入れること自体が目的の傾向がある。
何度か書いているが、海東の本質は『すごいお宝を得る=こんなレア物を持っている俺スゲー!』だ。
そのため実のところお宝の価値は重要視しても、中身の活用はあまり考えていない。
完全な例外は大ショッカーから盗み出したディエンドライバーで、後はディエンド版ケータッチぐらいなものだろう。
(一応巨大化した仮面ライダーJもディエンドのお宝だと申告しており、全く使わないわけではない)
また今回あっさりグランドジオウウォッチを渡したのも、海東大樹という人物の美学から考えれば納得がいく。
あくまで自分で狙って自分で得たものが真のお宝なのだ。
故に、未来を操る超アイテムのノートすらコレクションの肥やしにしてしまう方が、海東大樹のキャラ性をしっかりと反映しているように感じられる。
そういう意味では強制的に与えられた時間停止能力も、海東にとって本当に喜ばしいものであるかは疑問だ。
アナザージオウのウォッチもやはり同様で、あくまでスウォルツの命令に従った報酬みたいなものだ。
しかもアナザーディケイドが手に入り、もう必要なくなったものを譲ったような扱いである。
これで海東が満足したとは到底思えない。
そもそも海東は士と敵対はしても嫌っているわけではなく、二人の間には奇妙な友情がある。
士を犠牲にしてそのまま放置して終わりとは考えにくく、白ウォズに付き合って最終的に未来ノートをゲットしたように、本当のお宝を手に入れるための前振りみたいなものではないかと思う。
少なくとも、ただスウォルツの手下として上手く立ち回ってウォッチ手に入れて帰るとは考えにくい。
海東大樹は門矢士よりもずっと前から通りすがりの仮面ライダーなのだから。
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スウォルツの正体と目的
スウォルツは別世界の王族だった。
そしてツクヨミはスウォルツの妹にして王位の継承者。
自分が王になれなかったことに納得がいかないスウォルツが、ツクヨミの記憶を奪い別の時間軸へと追放した。
スウォルツの目的は、ライダー達が王位を争う戦いを利用して、自分が最強の王になることだったのだ。
こ……小物だー!
設定が壮大な割に、よくある継承者問題で、真の目的もストレート過ぎる。その上セコイ!
典型的な大物感のあるフィクサーだけど、蓋を開ければ案外大したことない目的だったの典型例だ。
ここまでの立ち回りはすごいのになあ。
しかも目的がわかりやすいせいで、今までの回りくどい行動が何だったのかよくわからない。
ウールやオーラに力を与えて、今まで色々アナザーライダーを生み出していた理由は何だったのか。
王の擁立で時間をかけた必要性と理由が見つからない。
ジオウを育てて、その力を自分のものにした上で王になろうとしていたのならわかる。
王の擁立はジオウを育てるためのプロセスだったと解釈できるからだ。
けれどスウォルツはジオウに匹敵するアナザージオウⅡの力を放棄して、最終的に入手したのはアナザーディケイドだ。
むしろ今の段階でツクヨミが見つかったのを好都合と言って力を奪ったのは、ジオウが思った以上に厄介な存在になったためだろう。
むしろここまでが筋書き通りに進んでいないと言っているようなものだ。
なお、スーパータイムジャッカーのティードが何者だったのかもさっぱりだ。
アナザークウガになって仮面ライダーの歴史を終わらそうとした。
ティードは自分が王になろうとしたのかもしれず、単に仮面ライダーの歴史を終わらせることそのものが目的だったのかもしれない。
どちらにしてもスウォルツの狙いとは噛み合わない。
ウールとオーラにタイムジャッカーとして活動できる力を分け与えていた設定は面白くて、この段階ではちゃんとボスキャラ感が出ていた。
そして以前に白ウォズに対して語ったセリフがあった。
『人間には使う者と使われる者とがある。使う者は崇高な目的を思考し、使われる者は前者の目的を理解できない』
これは現状のウールとオーラにピッタリと当てはまる言葉だ。
このセリフと白ウォズとの秘密の関係があったから、スウォルツには視聴者も知らない壮大な目的があると匂わせた。
別の時間軸から来た存在ならば、白ウォズと接触できて別時間のアナザーウォッチを入手できたのはわかる。
けれど、こちらもこちらで白ウォズとの関係が何だったのかはやっぱり不鮮明なままだ。
スウォルツの目的は明かされたものの、これまでの行動と繋がらないためどうにもスッキリしない状態だ。
ここでこれまでの計画が一本の線に繋がったのなら、裏ですべての糸を引いていたボスキャラとしてカリスマ性が出ただろう。
現状は残念ながら影の大物感がなくなり、王位継承に負けて暴走した男止まりになってしまった。うーん、残念かつ勿体ない。
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過去に拘る加古川飛流の孤独
黒幕のスウォルツが目立っていたので感覚的には感じにくいが、ソウゴと加古川の戦いは互いの総力戦だった。
加古川はアナザーライダーを召喚して集結させているのは、何気にグランドジオウ級の能力である。
加えて今回は以前と違い、アナザークウガまでいる。
なぜか攻撃がひたすらノーコンで、あらぬ方向に攻撃しまくっていたけどね!
その結果、加古川は大敗した。
いい勝負ですらなくほぼ完敗である。
アナザーライダーを利用しても打ち倒されて、自分の手で未来を予知して倒そうとした。
けれどその未来が変化して逆にカウンターを受ける。
この時のジオウはライダー召喚能力を使用しておらず、「これが俺の力だ!」と宣言している。
つまりソウゴは時間書き換えの力に自力で覚醒したのだ。
元々未来創造能力を無自覚ながら有しているので、その応用として未来の変化は可能な範疇だろう。
元々アナザージオウはジオウと同じ力を有しているので、加古川が堂々披露しちゃったことで、ソウゴは自分の力を理解した。
こうなっては書き換え返しという名のキャンセラーが発動して、アナザージオウⅡの優位は消える。
そうなればスペック差でグランドジオウに押しきられてしまう。
ソウゴと加古川、二人の差が如実に出た結末だった。
二人の間にあるものは単純な力ではなく、人生の差だ。
加古川は王になる資格と力を得ても、過去だけを見ていた。
言葉にすれば後ろ向きで単純な動機だ。
けれど加古川が本当に無能だったかと言うと、私はあまりそうは思わない。
多分加古川の恨みの始まりは、ソウゴが叔父さんに支えられて笑顔になった姿を見た時だろうと思う。
自分は家族を失い苦しんでいるのに、事件の発端となった少年は笑顔で誰かと過ごしている。
人は嬉しいことや感動は自分の中で消化できるが、不満は人に愚痴として共有したがるように、人の怒りとは時に喜びや楽しさよりも強い力を生み出す。
けれどエネルギーが大きい分、長い間維持することも難しい。
最初は頭に来ていても、時間が経って謝られると案外許してしまった経験は誰しもあるだろう。
まして加古川は家族を失ったのは幼少期である。
心に整理を付けて新たな人生を歩みだすには十分な時間があったはずだ。
また、記憶は時間と共に風化していく。直接的な恨みならまだしも、逆恨みレベルを妄執の域になるまで維持し続けていたことになる。
そして怒り続けるのは苦しみ続けるも同義で、いつしか過去は忘れて楽になりたいと考える。
ソウゴに対する情念が、逆恨みが選ばれなかった者の怒りになるまで恨み続けて、その結果世界を壊すだけのエネルギーを心に抱くなんて普通はできない。
こと執念において、加古川は非凡な領域に達していた。
そしてこの妄執はそのまま加古川の弱さでもあった。
王になれる未来の書き換えですら、ソウゴを苦しめるためだけに魔王になることを選んだ程だ。
過去のために他人の未来を潰してしまう。
過去しか見ない加古川は、誰かと手を取り合い新たな未来を目指す選択肢がない。
その結果が孤独。
王として君臨しても、彼の側には信用できない悪意と道具として扱う人形しかいない。
最後の決戦において、多くのアナザーライダーを従えてソウゴを迎え撃つ加古川は、一見すると強大な存在のように見える。
けれどその実、支配者の王国にはアナザーライダーしかいなかったのだ。
途中で乱入したディエンドは、スウォルツが自分の目的を達成するために動かした存在。おそらく加古川はディケイドとディエンドの戦いがあったことすら知らないだろう。
人のいない虚空の国。
過去に縛られ誰とも繋がれない孤独の王。
それが加古川飛流という人間だった。
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未来を創るソウゴが積み重ねてきた絆
対する常盤ソウゴはどうだったか。
幼いソウゴには常盤順一郎という救いがあった。
家族を失った孤独を叔父さんが埋めてくれて、人の優しさを学べた。
けれど何度も繰り返し見た夢がソウゴの人生を狂わせる。
王になる。具体的な形のない夢。
けれど、ならなければいけないという思いだけは確かにある。
それは高校生になっても変わらないままで、周囲との大きな壁となってしまう。
両親を失って友達もいないソウゴを、叔父さんもどう扱っていいかわからない。
ソウゴもまた、スウォルツの手によって孤独な人生を歩むことになった。
「寂しい時くらい大丈夫って言わないで、ちゃんと寂しいって言いなさい!
寂しい時に寂しいって言えない人間なんて、人の痛みが分からない王様になっちゃうぞ!」
順一郎が一度だけ、ソウゴのことを想い叱った言葉。
ソウゴに正しくあろうとする心はあった。
最善最高の魔王になるという言葉からも、その気持は現れている。
けれどその様子はどこか達観していた。
最善の行動を目指しているのに、いずれ魔王になってしまいそうな危うさも同時に内包しているように見える。
ソウゴは一人が当たり前になっていて、いつしか自分が寂しいのだという感情すらわからなくなっていた。
それは言い換えると共感性の喪失。
ソウゴは正しくあろうとした結果、人の気持ちがわからない人間になっていた。
ゲイツが中々ソウゴに心を許さなかったのは、未来を守る使命感に縛られていただけではなく、ソウゴのそういう面に不信感を抱いていたためでもあった。
けれど、ソウゴはジオウになって少しずつ変わっていった。
魔王になった己と対峙して、一度は夢を諦めかけた。
この事件から、王になることの本当の意味を理解する。
そして自分を支えてくれる仲間達との出会い。
ソウゴはゲイツとツクヨミに出会って、自分の孤独を理解できるようになった。
寂しいと言えるようになった。
そして共に夢を追いかけてくれる人ができたのだ。
最善最高の魔王への道は、同時に最低最悪の魔王への道でもある。
植え付けられた未来への恐怖は今も変わらない。
グランドジオウでオーマジオウへと挑んだ時、まだ勝てないという現実を突きつけられても無理やり足掻こうとした。
この執念地味た使命感の裏にあるのは、未だ変わらない未来への恐怖だろう。
自分が世界を壊してしまう未来。
ソウゴはその責任から逃げず立ち向かうことを選んだ。
『最低最悪の魔王になると確信したなら倒してほしい』というゲイツとの約束は、命懸けで未来を目指す決意の現れでもある。
けれど、同時にゲイツは信じている。
ソウゴは絶対に最低最悪の魔王にならない。
自分の知らない新たな未来を創ってくれると。
ウォズもまた、オーマジオウの手先でありながら、ソウゴが望む未来を否定することなく手助けするようになった。
今やただ導くだけでなく、共に戦い未来を創る手助けをしてくれる。
門矢士は行き詰まったソウゴに道を示した。
世界の破壊者は、それ以上に繋ぐことの大切さを知っているから。
アナザージオウⅡとアナザーライダーの軍団にソウゴ達はたった四人で挑んだ。
ウォズによるいつもの「祝え!」から始まる士やゲイツ達の軽口。
そこに一人ではないと感じたソウゴは「いける気がする!」といつもの言葉が自然に出ていた。
これこそが加古川飛流との決定的な違い。
そしてアナザージオウを打ち破った先にあったのは人々の笑顔。
ソウゴが望んだ最善最高の世界とは、皆が幸せに生きられるこの光景そのものだ。
そこにはゲイツとウォズもいた。
かつては敵対していた二人がじゃれ合うように触れ合いながらやってくる。
二人の関係もまた、ソウゴが望んできた未来の形。
誰もが笑顔になれる未来を目指してきた。
だからソウゴはもう一人じゃない。
ゲイツがいる。
ツクヨミがいる。
ウォズがいる。
叔父さんがいる。
皆で新しい未来を創る。
それが常盤ソウゴの歩む王道なのだ。
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