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仮面ライダーファイズ/555 7話感想 夢に対する各視点と描き方が面白い

2019年6月1日

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仮面ライダーファイズ/555 7話『夢の力』

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

前回加わった海堂が主軸の一つになって、物語のメリハリもより強まってきましたね。
表面的なキャラ付けはあまりの濃さから漫画的だけど、露悪的なゲスさとその奥にある本心が両方出ている様は泥臭くてある意味一番人間的だなと思います。

第7話と続く8話はファイズにおける屈指の人気回として有名です。
それぞれの視点から夢を語りながらも、主人公である巧にはそもそも夢と呼べるものがない。
その温度差を七話で示して伏線を撒き、次回の収束へと持っていく。
井上敏樹脚本の真骨頂と呼べる物語作りだと思います。

また、巧だけでなく木場側もちゃんと次回へと向けた物語が作られているのも重要です。
ではでは、今週もファイズの感想と考察をはじめていきましょう。

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OPより先に流れる挿入歌

仮面ライダーといえばエンディングがない代わりに、毎話最後の戦闘シーンで流れる挿入歌が有名だ。
(後のライダーになると挿入歌があまりない作品も出てきたが、平成ライダー一期の時代はお約束の一つだった)
実質エンディングテーマと化している。

なんと今回はその挿入歌が冒頭から流れるのだ。
多くは挿入歌と共に怪人を倒すことから処刑用BGMとしても有名だが、ホースオルフェノクがライダーキックを跳ね返す場面で音楽は途切れてしまう。
こういうフェイント的な扱い方は他でもあったが、物語冒頭から流して畳みかけるようにこの使い方となると、露骨に『定石外し』を意識している。

これによって木場(ホースオルフェノク)と巧(ファイズ)の因縁を強調して印象付けた。
また、作中では解説されていないが、オリジナルのオルフェノクは使徒再生によって生まれたものより強い個体となる。
ファイズと引き分けることで、この設定も言葉ではなく実際の性能として説明したのだ。

戦闘後の巧と木場の扱われ方も印象的だった。
普段は喧嘩ばかりだが、いざとなるとちゃんと助けてくれる啓太郎。
善意で助けに入った恩を仇で返すように見捨てられた木場。
本来良い奴である木場の方が割りを食っている。

なお、啓太郎の特訓する? という言葉は『昭和の仮面ライダーは怪人に負けたら特訓して強くなって倒す』という流れを意識してだろう。
またその際はおやっさん達が特訓に付き合ってくれるので『努力・友情・勝利』の流れが成立する。

私はこの辺の生まれではないのであくまで感覚的なのだけど、昭和ライダーは改造人間であるため元から強い者達だ。
特訓させることで人間らしさや改造人間でも、努力や苦労を重ねて戦い続けていると視聴者に意識させて、ヒーロー性や共感を与えるのが目的だったのではないかなと思う。

それを巧はそんな恥ずかしいことできるかとバッサリ切った。
まさに今どきの若者的感性で人間味を与えている。
平成初期近くの仮面ライダーは『平成仮面ライダー』ブランドにおける挑戦心や自由度を探している感覚が強かった。
こういう昭和と比較したセリフもやはり定石外しの一つなのだろう。

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人間であろうとする木場勇治の異端性

木場はオルフェノクになっても人間性を捨てず、善人であり続けようとしている。
戸田(イカオルフェノク)が人を襲った時は、オルフェノクの本質と殺戮現場を目撃した恐怖から逃げ出した。

すでに従妹と元恋人の二人を手にかけた木場は、オルフェノクの本質に強い恐怖を抱いている。
「オルフェノクの力に溺れたら、俺たちは本当のモンスターになってしまう」

海堂は木場の言葉をむしろ肯定的に受け入れて、心までモンスターになろうとしている。
長田も一見すると、自分の意志を強く持てず木場をサポートする立場だが、本心では虐待されていた過去から人間に対して強い不信感と恐怖を抱いている状態だ。
二人はオルフェノクとしての本能を肯定するか内心で自覚している。

オルフェノクとしては人を襲う倫理が正とされている。
木場は仲間と共に、オルフェノクの本能から反逆しようとしているが、現実は孤立しているに近い。
それだけ木場は異質な存在なのだ。

そもそも、木場の在り様は本当にオルフェノクの本能から逆らえているのだろうか。という疑問もある。
今回は仲間である海堂が襲われている場面を見て奮起して、自らホースオルフェノクとなってファイズへと襲いかかっている。
行為自体は仲間を守ろうとする勇敢で優しいものだ。

けれども、木場は本来そこまで強い人間ではない。
それだけの強い気持ちが最初から備わっているなら、戸田の凶行を止めるため戦ったはずだ。
逃走時とファイズへと襲いかかった時の違いは、仲間を傷付けられたことへの強い『怒り』である。
『怒り』に任せて衝動的にオルフェノク化したことでフェイズと渡り合えた。

木場がここまでの物語でオルフェノク化したのは、人間を手にかけた時だけ。
その時も木場の心は『怒り』に支配されていた。

『怒り』でオルフェノクに変異するのなら、ファイズと戦った時も結局はオルフェノクの本能で人を襲っていることに変わりない。
(ファイズの中身が人間かどうかこの時の木場はわかっていないけど、オルフェノクに敵対する存在として問答無用で襲いかかっており、オルフェノクの暗躍は人間との戦争であると戸田からは聞いている)
まるで、海堂を救った木場はヒーローの姿に見えるが、木場もまた人間とオルフェノクの狭間で、無自覚に揺れているではないだろうか。

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それぞれが抱く夢

7話では夢を抱く者達の姿が、それぞれ別の形で描かれている。
これが一つ一つ解きほぐしていくと至極面白い。

啓太郎の夢は『世界中の洗濯物が真っ白になるように世界中のみんなが幸せになる』こと。
壮大で大きな夢だが、それ故に綺麗ごとで具体性が全くないので手当たり次第に人助けをしている。
菊池クリーニングは人助けしている間、店の営業が完全停止している。もはや本末転倒だ。

真理の夢は美容師になること。
啓太郎に比べてずっと現実的な夢だ。
その分、夢を叶えるための道筋もハッキリ見えている。

「夢を持つのは楽しいけど、夢をかなえるのは楽じゃないわよ」
働くことが決まっている美容院の店長に、技術の無さから厳しいことを言われても、真理は笑顔で返した。
夢を目指す行為そのものに強い喜びと意志がなければできないことだろう。
実際、真理は家に帰るとすぐ言われた課題をクリアするため練習に励んでいる。

二人に対して、夢を持つことを理解できない巧は『こいつら何やってんだ』という態度を取って、案の定二人から批判されまくってしまう。
恐らく巧の発言は、クリーニングとは別問題のことに巻き込まれてイライラも募っているだろうけど悪意はない。
夢を持たない巧は夢を持つ二人の行動が理解できないのだ。

壮大すぎて叶え方のわからない夢。
現実的な夢を叶えるため邁進する者。
夢が理解できない者の三者三葉が並んでバラバラに動いている。

そして木場サイドである海堂は『夢破れた者』だ。
事故によってギターが弾けなくなったことから自暴自棄になって、心までモンスターになりきろうとする。

けれど夢を諦めきれないから、ギターを壊せず人の心を捨て去れない。
オルフェノクになって暴れようとしても、才能あるギターの音が聞こえたら人間に戻って確かにいく。
就職活動の意思があっても中身が伴っていなかった理由もここに由来するのだろう。

普段はふざけた態度を取っていても、音楽の恩師や真面目に向上しようと努力する後輩の前では誠実な姿勢を見せる。
海堂の才能は本物だったため、周りには上手く利用するとする取り巻きが多くいたようだ。

変わり者だからこそ才能があったという側面もありそうだけど、あそこまで奇異な行動はわざと取り続けなければ馴染むものではない。
簡単に掌を返すような者達と距離を取る手段として露悪的な態度が身に付いたのではないだろうか。
わざと人を避ける態度で自己を防衛する生き方は巧とよく似ている。
そう考えるとヤケになってオルフェノクになろうとする行為もまた、普段の態度と同じで逆説的に人間であり続けるために必要なことなのかもしれない。

また海堂が夢を持っていた頃も、啓太郎や真理とは違う。『叶えられたはずの夢』だった。
コンクールで受賞してトロフィーを手にするぐらい明確に才能があって、このまま進めば一流のミュージシャンにも手が届いたかもしれない。

『夢』という言葉一つでも多種多様な有り様があり、群像劇の物語に入れ込んで様々な視点から見せている。
強烈なキャラクター性と、露悪的な態度を取るキャラが二人もいてわかりにくいが、ファイズの物語はパッと見た印象以上に人間臭い物語をロジカルに作りんでいるのだ。

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