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平成ライダー史 仮面ライダークウガ『新たな伝説を創った者達』感想・考察

2020年4月28日

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空っぽの星、時代をゼロから始めよう

仮面ライダーという作品は50年近い長き歴史の中で、延々に続いてきたわけではなく何度かその道筋は途切れている。

それは様々な諸事情があってのことだが、昭和ライダー10号の仮面ライダーZXで途切れた後、新たな仮面ライダーを生み出そうと試みた作品が『仮面ライダーBLACK』だった。
仮面ライダー作品としてみればBLACKは高い人気を得て、続編のRXも生み出している。どちらも間違いなく成功した作品だった。

だが特撮ヒーローとして新しい作品だったかと問われれば否だろう。
RXのラストでは結局再び昭和ライダー達が集合して戦う、昭和ライダーお約束の流れになった。
加えてクライシス帝国は単純な悪の軍団ではなく、善良な人達も住んでいると示す要素はあったのだが、結局はラスボスを倒して帝国側の世界を滅ぼしてしまう。

後続はTVシリーズではなくVシネマでの『真・仮面ライダー』が登場。
こちらは仮面ライダー特有の設定を踏襲しつつもリアルかつグロテスクな外見。『改造人間』として作り込まれた異色な設定を有していた。
本来は全五章構想だったらしいのだが、残念ながら序章で終了してしまう。

続けられなかった理由は諸説あるが、本作の次に出されたVシネ特撮が大コケしてVシネ特撮そのものが頓挫したとのこと。
序章で終わったことをネタにされがちの作品ではあるけれど、別に真そのものがライダー作品として不人気だったわけではない。

そのため続くZOやJはそれぞれ劇場版作品として世に出された。
これらも世界観や設定は昭和よりもむしろ平成に近くなっているが、劇場版単体作品では色々と限界がありライダーシリーズを革新させるには至らない。

そうして仮面ライダーシリーズはまたも足を止めてしまう。
だが、仮面ライダーというブランドがこれらの作品で人気を失ったわけではない。
事実ZOやJも作品単体での評価は低かったわけではなく、新作を出そうという企画もあったのだ。

だが、当時の東映TV部門ディレクターである鈴木武幸氏があえて流れを止めた。
仮面ライダーの視聴層はまだ親子二代の世代に至っていないこと。
そして段々と休止期間が伸びてしまっている現状を、過去の成功例から脱却できなくなっているためだと分析した。

BLACKは色々と設定を変更しつつもこれまでのライダー観を無下には扱わず、お約束的な要素は守った上でそれを一歩進めた。
つまり昭和ライダーの延長線として進化した作品だ。

現状のまま新作を作っても、かつてのような長期シリーズ化はしない。
まずは親子二世代になるタイミングを見計らってリスタートしようと考えた。
BLACKからクウガに至るまでの空白期間は計画的なものだったのだ。

そして再び仮面ライダーに新たな風が吹き込んだのはクウガ開始から約三年半前に遡る。
仮面ライダーは本流が止まってもそこはそれ、元は東映のドル箱コンテンツ。グッズやメディア展開は継続していた。

その流れの中で、セガサターンのCMで藤岡弘ブームが再燃。
そしてゲームセンターのプライズ品でも売上が伸びていた。

藤岡弘氏は言わずもがなの初代仮面ライダー。このネタに喜ぶ客層は大人も多い。
UFOキャッチャーなどの景品を狙うのも一定年齢以上の人が主体だ。

もう一つの検証として、テレビマガジンにて毎月ライダー特集を組んでもらった。すると子供達の反応も良く手紙がたくさんきた。
これは父親とその子供がライダー関連に興味を示す二世代時期に差し掛かることを告げている。機が熟したのだ。

余談として、結果を先に再開したのは新時代のライダーではなく、昭和ライダー達による漫画化作品『仮面ライダーSPRITS』だった。
SPRITSは作者の氏が休憩時間に描いてた仮面ライダーの絵を元に、石ノ森プロへ相談したことから始まった企画である。クウガの企画立ち上げが三年前だとすると、仮面ライダー人気再熱がこの企画実現にも影響を与えた可能性もあったかもしれない。
(ただし平成ライダーとSPIRITSの誕生に同じ理由が関わっている資料は見つけられなかったので、これはあくまで想像の範疇)

独自の(超深い)解釈やストーリー構成も入った本作は、昭和が主体でありながら平成ライダーが目指した高いドラマ性も獲得した。
連載誌休刊による停止があったとはいえ今尚続く長期連載に至る。
こっちはこっちで平成の世を駆け抜け連載が令和に届いた。昭和ライダーの生ける伝説でありながら、共に平成を駆け抜けた名作なのだ。

話を戻そう。一旦足を止めたことは勿論色々と弊害もあった。
製作の過程から見ても『仮面ライダー』のブランドは過去の遺産として悪い意味で扱われ、煙たがれることが多々あった。

当初、仮面ライダーの放送枠は毎日放送(MBS)の予定だったが、既に平成シリーズが走り出していたウルトラマンが優先された。
同じ歴史の長いシリーズだけでなく、当時勢いのあったゾイドにも負けている。TBS系統では諦めるしかなかった。

結局は現在進行系で東映特撮を放映中だったテレビ朝日へと変更される。ただテレビ朝日側も大手を振って迎えわけではない。

当時の東映特撮は宇宙刑事ギャバン~シャリバンを皮切りに、メタルシリーズなど三年を一枠とした特撮シリーズを展開していた。
クウガが始まる一つ前の作品は『燃えろロボコン!』。リメイク作品として反応は良かったものの、じゃあ次はどうするかの予定は決まっていなかった。

ロボコンに至る以前からテレ朝特撮枠はネタに困り迷走を続けていた。
そこで東映リメイクシリーズの二作目として仮面ライダーを採用したが、「他にネタがないからなあ」と渋々引き受けた状態である。現在からは想像できない扱いだよ……。

かつてテレ朝の特撮枠は金曜夕方のゴールデンタイムだったのだが、メガレンジャーの途中で朝に島流しされた経緯がある。
今じゃSNSでも毎週確実に話題をかっさらう『ニチアサ』ゴールデンタイムになろうとは……この時はまだ誰も予見していなかった。

そのためクウガに携わった関係者は、鈴木氏とは異なり新仮面ライダーは一年限りの作品として続編は考えてはいなかったそうだ。
オワコン扱いをされて、先のことなど考える必要がなかったからこそやり逃げてしまえる。伝説は唯一つでいい。

そして世は特撮新時代、シャンゼリオンが作った『ここまでやった』下地もある。
後も先もない一発勝負が、ずっと縛られていた昭和の呪縛からライダーを解き放った。

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