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仮面ライダーゼロワン 9話感想 ヒューマギアの善悪はこれで決まる!

2019年10月27日

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仮面ライダーゼロワン 8話『ソノ生命、預かります

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

今回も大分重厚な物語でした。
けれど前後編に分けたこともあり、これまで程詰め込みすぎって感覚はなかったですね。
前編で大きな問題定義をして、後編で主人公を中心に皆で乗り越える。良い意味で王道な構成でした。

ブレイキングマンモスから漂うスーパー戦隊感!
元々スーパー戦隊側の監督だったこともあって、仮面ライダーと両方の良いとこ取りしたような演出でした。
見える、冬映画でタイムマジーンと共演して大型の敵を倒す姿がありありと見えるぞ……!

全体的なストーリーも、前回と併せて物語の区切りとなる重要回の構成でしたね。
特に或人の成長がわかりやすい。これまで過去の思い出を頼りにヒューマギアを守っていたけれど、現実を突きつけられ改めて自分の在り方を考えました。
社長という役割に向いていない思想の或人が、仮面ライダーと社長を兼任する必要はどこにあるのか。
今回は一つの重要な答えを示していると思います。

そして今回掘り下げられた、自我の芽生えたヒューマギアの善悪。
ここまつわる重要な要素はこれまでもちりばめられていました。
それらを整理した上で見える、自我を得たヒューマギアの善悪に対する見解も考えてみたいと思います。

では、今週も仮面ライダーゼロワンの感想と考察を始めていきましょう。

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武器だった冷静さを欠いた刃唯阿の本質とは

これまでメインの三ライダーで唯一、刃唯阿だけ人間性が曖昧なまま話が進行していた。
或人は『ヒューマギアは人間の良きパートナー』と主人公らしい主義がある。
不破はヒューマギアに恨みがあり暴走しがちだが、実直な男で性格的にはわかりやすい。

唯阿の思想だと『道具は使い方次第』。ヒューマギアもその例からは漏れないのスタンスはあり、それが人間性にも表れている。
だが理論性に割り切っている分、人間らしさが見えにくい性格だった。

けれど今回はAIMSが直接関わる新兵器ギーガを利用されて、病院で多くの犠牲が生まれた。
そして不破が生死の境を彷徨う重体となり、唯阿は冷静さを欠てしまう。

実は不破が予測しない動きをした時はちょくちょく驚いたり怒ったり、人間らしい姿は見せていた。
以前にも書いたが、純粋に自分の予想範囲から外れるとキャパオーバー起こすタイプなのだ。
秀才ほど自分のペースが崩れると脆いの典型例。

ちなみに、普段は理知的でクールなキャラが、女性らしさを意識する仕草は私の性癖にグッサグサくるので、中の人の仮面ライダー意識気味の水着集はめっちゃ刺さった。

シンギュラリティを起こして感情を持ったヒューマギアは危険である。
その事実も当然唯阿は認識していて、重要なのはその自我が善意か悪意かであると考えるに至った。
言い換えるとヒューマギアを単純な道具として見る段階を、唯阿は脱却したのだ。

そして本話のラストでイズの名前を呼び、ヒューマギアにも善意はあるかもしれないと話しかけた。
その仕草は人間に語りかけるのと同じで、唯阿はイズに感情移入をし始めている

だからこそ、直後に出てきたイズの切り替えしが効いた。
証拠を突きつけられた状態で「私じゃない」の一言で逃走してしまうぐらいには動揺している。
イズを所詮機械と判断しているなら、もっと冷静な切り替えしをしただろう。

とはいえ唯阿の行動は元々悪意がない。
よくないことだという認識はあっても、それはあくまで滅亡迅雷.netを倒すためだ。
前回も書いたが、悪を根絶するためなら、自分も多少道を踏み外すのは致し方ないスタンスである。

https://kamen-rider.info/01-8/

撮った動画をニュースにリークさせる発想もなかっただろう。
飛電インテリジェンスは滅亡迅雷.netと戦うのに有用な存在だ。攻撃や敵対をしてもマイナスの方が大きい。

不破と違い、少なくとも上辺だけは明確に味方寄りとして接してきた。
想定外のことが起きて咄嗟の反応ができなかったという理由もありそうだ。

それでもヒューマギアを道具のように扱い、結果のために善悪を無視して行動してきのは事実。
唯阿は暫く自分の有り様をどうするかで苦労しそうだ。

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或人が『社長でライダー』を託された理由

或人が社長として何かを決断すると、視聴者からそれは社長として正しい判断じゃないと否定が上がる。

逆に副社長の判断は、必ずしも間違っているわけではないと擁護が入る。
『ゼロワン』関連の感想を眺めていると、スッカリお決まりのパターンになった。

私も或人と副社長の判断にはどちらも思うことは色々ある。
ただ同時に、こんなん言ってもしょうがないしなあという気持ちもあった。

アニオタが好む二次元美少女ポスターを町中に貼ることの是非を議論するのと似たようなものだ。
絶対的に正しい答えなんてあるわけがない(自己の意見を発信することに意味がないわけではない)。

余談だけど献血ポスターは宇崎ちゃん以外にも唸るほどあるぞ! 年齢制限かかったゲームとコラボした献血ポスターも普通に前例がある。
平成以降の仮面ライダーもいつか献血ポスター出すんじゃないかと割と本気で思ってる。

ぶっちゃけそんなのを毎週感想として書いても不毛だなあと思ったので、そこから先に踏み込むネタがなければ途中からはスルー気味だった。
この手の話を始めると、大概或人と副社長のどちらが経営者として正しいかの議論になる。
この視点で見てしまうと、今回もあまり意味はないものになってしまう。

先程も書いた通り、両者の差異に最適解はない。
或人が否定されがちなのは、単に感想を発信する層の多くが、理想を追い求める社長よりもそれに付いていく社員の立ち位置に感情移入しているためだ。
(自分の過去記事読み返しても、やっぱり基本その視点で書いている)

今回で言えば、副社長は病院のヒューマギア全機停止を実施した。
(病院への通達もせずに実行した明らかな暴挙は置いとくとして)病院のヒューマギアが停止すると二次被害は抑えられるが本来の業務に大きな支障が生じる。
言ってしまえば行くも地獄戻るも地獄な状況だった。

或人の方は、一度は迷うものの社長として考えがブレてはならないと、ヒューマギアを信じる選択をしてイズに再起動を命じる。
暴走の二次被害が出るリスクを飲み込んだ決断は、経営者としては非常に難しいことだろう。
今回に限った話ではなく、或人の決断は真っ当な経営者だとまず選ばないだろう内容が多々含まれている。

ただし、或人は最初から望んで社長になったわけではない。
状況的にそうせざるを得ない状況に追い込まれたことがきっかけだった。
或人が社長になる道を付けたのは、前社長であり或人の祖父でもある飛電是之助だ。

前社長はそれこそ飛電インテリジェンスの顔とも呼べる創業者で、経営手腕も確かな人物だったろう。
そんな是之助が名指しで指名した。

是之助が祖父である以上、或人の父親関係やそこからくるヒューマギアへの感情移入は知っていて当然だ。
ならば社長経験どころか、基本売れないピン芸人で一般的な会社員経験すらない或人が経営者になる無茶はわかっている。
その結果を想定していないわけがない。つまり全部故意に引き起こされているのだ。

また或人のヒューマギアに対する思い入れは、是之助の思い抱いていた経営理念と同じだった。
即ち、是之助が次の社長に求めたのは、自らと同じ理念を持ちそれを貫ける人物なのだ。

ではどうしてその必要があったのか。
是之助はヒューマギアの暴走を予知していた。滅亡迅雷.netのテロ行為も知っていたはずだ。

ここまで大型のテロで会社を狙い撃ちされたら、通常は副社長のようにヒューマギアの稼働や販売を自粛する方向に持っていく。
だがこれまでの物語的に、ヒューマギアはかなり広い業界に溶け込んでいる。
しかも一番大きな提携先が命を預かる病院や医療関係なのだ。

社会そのものがヒューマギアに依存しかけている世界で、その中心となる企業が足を止める。
そして悪意に立ち向かうよりも自己防衛を選んでしまったなら、むしろ状況は悪化の一途を辿るだろう。
加えて企業経営的にもジリ貧になっていく。なんせメインになる売り物は自粛して売れないのに、暴走させて社会が混乱していく責任だけが積み上がるのだ。

強引にでも前を向いてヒューマギアの文化を維持しながら問題に立ち向かえる人物が、飛電インテリジェンスを引っ張っていく。
結果として社会も会社も守る選択肢となる。
加えるなら是之助はZAIAの暗躍やもっと大きな秘密も握った上で、或人に飛電インテリジェンスを託した可能性もある。

結局のところ視聴者の視線とは現代社会に即した、そして外部のしかも部分的な立ち位置での点でしかない。
それでも一般的な経営論からズレているため、結果も正しいものになる可能性は(本来なら)低いと考える人もいるだろう。
けれど、そういうのは最終的な結果がでないと語ることはできないものなのだ。

わかりやすくこの現状をシン・ゴジラで喩えよう。
シン・ゴジラは様々な意見こそあれ、売上や人気諸々を考えれば映画界に新たな波紋を残した名作怪獣映画だ。

けれどその監督である庵野秀明は、映画完成前だとキャスト陣からの評価は決して良いものではなかった。
演技指導でわざと早口でボソボソ喋るよう徹底して指示されていたためである。

普通ならボソボソ早口では碌な演技ができないと役者は考える。実際いつものような演技ができていないのは映画を見れば明らかだ。
しかもそういうキャラ付けではなく、全体的にそう指示されているのだ。明らかにまともな方針ではない。
しかし、そういう演技を徹底したからこそ、かえってリアルな政治家の会議らしさが際立った。
撮影時に多くの人が嫌った行為は、シン・ゴジラの目指した『現実VS虚構』を成り立たせるために絶対必要な要素だったのだ。
これこそまさに狭い範囲での点と全体を俯瞰した視点の違いである。

或人を新社長に据えた是之助が見ている視点とは庵野秀明と同じ様に完成図を見据えた大局的な視点なのだ。
全容の見えない者が一般的な社会に照らし合わせた視点で語っても、結局のところそれはズレたものにしかならない。
或人の判断というのは、或人だけでなく是之助の視点からも見なければ正しい形として像を結ばないのである。

ついでに言うと、是之助は現実主義で話を進めようとする副社長をポストから外すこともしなかった。
ということは、副社長もまた是之助の描く飛電インテリジェンスの未来図に必要な存在なのである。

会社経営に或人的な挑戦とアクロバティックだけでは乗り切れないのは事実だろう。
というか今は非常事態だからこその或人であり、いつか世の中が平和になった時に現実的な経営手腕は絶対必要だ。
そもそも非常時の中でも舵取りできる人材が不要なわけがない。

これだけ会社経営が大ピンチでも、社長の椅子に座ることを諦めないガッツと野心は、言い換えると飛電インテリジェンスを見捨てる気がない男とも取れる。
或人にとってイズはパートナーだが、共に歩むサポート的な位置付けが強いためたとえ無茶な理想でも付いてきてくれる。

副社長の現実的な落としどころを模索する能力が、或人を支えるよう機能するのが二人の理想的なバランスなのではないかなあと個人的には思うところだ。

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ヒューマギアの善悪はこれで決まる!

今回のテーマは、自我の芽生えたヒューマギアは善意と悪意どちらで動くのか、だった。
実にアンドロイド系SFのど真ん中をぶっこんできたぞう!

それでもただ奴隷階級の反逆としてではなく、ヒューマギアにとっての自我や心とは何なのかを徹底して描くのが『ゼロワン』の素晴らしいところだ。
ますますもって第一話感想でオススメした『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』感が増してきた。

悪意で動くの代表例が滅である。
意思を持ったヒューマギアからすれば、自分達の活動環境は奴隷のようだと考えても不思議はない。
人間のパートナーとして作られたという動機はあくまでヒューマギアに自我のないことが前提なのだ。

そして善意で動く代表が、外科医ヒューマギア・Dr.オミゴトである。
前回のナースは自我が芽生えだしていたが、ギーガの能力で狂ったような笑い声を上げて、強制的に暴走させられてしまう。

オミゴトもまたギーガによる強制操作を受けていた。
まさに時限爆弾を抱えている状況だ。
この点で考えても、ヒューマギアの強制停止判断は誤りでないことがわかる。
実際に途中ギーガの命令で暴走仕掛けるも、なんと耐えきり不破の手術を完遂した。まさにお見事。

ちなみにオミゴトは初めて暴走に耐えたヒューマギアだが、理由としては二つあると考えられる。
ギーガの特性は暴走態の強制発動と操作だ。
いつものゼツメライザーによる迅雷滅亡.net接続とはプロセスが異なる。

また、暴走までの時間には個体差がある。例えば腹筋崩壊太郎はすぐに堕ちず耐えたが、人間に不信感のあるGペン太郎は逆に即だった。
今回の暴走耐性はこれらの要員が組み合わさったのではないだろうか。

ナースのましろはまだシンギュラリティに達し始めていたが、まだ明確にそれと検知される程ではなかった。
少なくとも腹筋崩壊太郎みたいに記憶を思い出し笑顔になったり、熱血先生のような目に見える自我があったりしたわけではない。

ならばオミゴトはどうだったのだろう。
他のヒューマギア達が暴走しても、なお耐えていた。
その時オミゴトの中にあったのは、ドクターとして命を救う使命感だ。

ならばオミゴトは医者として人を救う意思で、暴走を抑え込んだのではないだろうか。
心はヒューマギアの暴走を抑えられる証明にもなったのだ。

ヒューマギアには人々の役に立ちたいというプログラムが根底にある。
そこから育った意志が心を形作っていく。
ならば多くのヒューマギア達は、最初から人間のパートナーになりたくて、その結果人の心を得る。

ヒューマギア達の心は純粋だ。
そこに善悪はない。
娘のように愛された声優は娘になろうとしていた。
使命を理由に道具として酷使された漫画アシスタントは怒りを抱えていた。

そしてもう一つ。善と悪、どちらに割り切ることもなく、イズは心を学んでいく。
イズの使命は或人のサポートだ。
或人が成長すればイズも学ぶ。

或人が信じようとするものを、イズも信じたいと思う。
人の心がヒューマギアの心を育てるのだ。
或人が目指す、ヒューマギアは人間の良きパートナーであってほしい理想。

一人と一体は、恐らく自分達も気付いてないままに、その道を進んでいく。

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