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岸部露伴ルーヴルに行く【ネタバレ感想・考察】ロジカルに整えられた劇場版

2023年5月30日

作品情報

【感想・考察】岸部露伴ルーブルに行く ロジカルに整えられた劇場版
タイトル 岸部露伴ルーブルに行く
作品要素

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ネタバレ無しレビュー

人気シリーズにつき第二、第三シーズンと重ねられてきた『岸辺露伴は動かない』シリーズ。
第三シーズンで全三話が二話に減ったので、少し息切れかと思いきや、意外ッ! それは映画化ッ!

『岸辺露伴ルーブルに行く』のタイトルだけでも十分特別感がある。
岸辺露伴がルーブル美術館の中を歩くだけでも映画を作る価値があるッ!

原作でもフルカラー100P超えで、露伴シリーズ内でも特別感の強い作品だった。
とはいえ二時間の映画としてみると尺の不足は否めない。

しかしそこは小林靖子脚本。
二時間映画のボリュームでキッチリ伝奇サスペンスに仕上げている。

TVドラマ版よりもオリジナル要素は多め。
ここまで原作改変を入れたら、批判される確率も飛躍的に上昇する。

しかし本作も岸辺露伴シリーズとして、ほとんど違和感のない作品に仕上がっていた。

これができたのは、3シーズン分の積み重ねも大きい。
原作を重視しつつも独自に築かれてきたドラマ版『岸辺露伴は動かない』の世界観が、視聴者にはもう根付いている。

本作はドラマの劇場版として完成されているからこそ、オリジナル要素が『原作を大切にした独自の改変』として好評を博した。

ただ、今回は改変にまったく問題を感じなかったわけでもない。

黒い絵について、込められた怨念の勢いが目に見えて落ちている。
というか映画だとあまり邪悪に感じられないのは一番の欠点だろう。

おそらく良い話にしようとシナリオを調整したことで、全体的にマイルド化してしまった。
(これは黒い絵に直接関係しない部分も含むが、そこはネタバレ有りパートで解説)

また、生じている現象は原作通りなのだが、画として見るとややパンチに欠ける。
これは邦画と漫画表現を比べるのが酷といえばその通りなのだ。

物語の整合性を優先した結果もあるだろうけれど、呪いの表現は目に見えない何かに襲われるシーンが多い。
その襲われ方も、最初の森の中以外では全体的に結構地味。
ジャンル違いでホラー映画的なゴア描写も使えないため、怨念パワーのインパクトが弱い。

シーズン3でジャンケン小僧のガラスシャワー再現があまりに完璧だったのと、映画という理由から画に対して期待し過ぎてしまった。

細かい部分で見れば残念なポイントはあるものの、原作改変について不要な部分があったかと問われればほとんどない。
尺の増加以外でも、原作だと心情がやたら複雑怪奇だったり、呪いの理屈が完全に破綻していたりの問題点があった。

本作では全てがわかりやすく、かつ綺麗に整えられてロジカルに展開していく。
オリジナル要素も入れこまれ逆に複雑化した部分もあるのに、全編を通して非常に見やすくなっていた。

全体の構成やスケールの大きさ共に、『岸辺露伴は動かない』シリーズの映画化として、レベルの高い位置で上手くまとまっている良作だ。

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ネタバレ有りレビュー

ネタバレなしパートでも語ったが、本作は改変部分が作品評価に大きく関わる。

駆け出しの若い露伴は漫画に恋心や男女の私情を持ち込み、話の核心を自ら手放す。
それを現在の『完成』している露伴が再び絵の謎を解き明かした。

奈々瀬が露伴に興味を抱いたのは、仁左衛門とよく似て絵を愛していたから。
そして彼女は露伴の遠い祖先でもあった。

ここは正直欲張り過ぎでは?
映画では過去に起きた悲劇をより深く掘り下げていた。

映像作品として、仁左衛門役を露伴に割り振りたい気持ちはわかる。
けど直接の祖先は別人で、赤の他人が自分とソックリって、落ち着いて考えれば中々に無茶な設定だよね。

怨念と化した絵が、夫婦を襲った悲劇というのは美しくも悲しい物語だった。
仁左衛門も黒い塗料の魅力に取り憑かれた流れになっているが、直接的にご神木を傷付けるような行為はしていない。

樹液の回収をしている姿を密告されただけで、荒れ狂ったのは妻を殺害されたためだ。
絵への異常な執着の原因も、やはり妻を救いたい一心である。

全体的に動機が綺麗過ぎて『邪悪』の要素が正直見当たらない。
密告した弟や執拗に暴力を振るった者達こそいるものの、どちらも悪党としては小物だ。
世界の名画を私欲で売り捌いていた窃盗グループの方がよっぽど邪悪である。

また黒い絵が呪い殺しているのは、美術品に対して敬意のない犯罪者だけ。
絵の探索に加わっただけの被害者は、襲われこそしたものの命に別状はない。

本来なら、黒い絵は見た者全てを無差別に呪う怨霊的な存在である。
原作では本当に無差別で理不尽な暴れ方をしており、それ故に『邪悪』だったのだ。
スタンドで言えば条件付けによって発動する自動追尾型である。

それでも実際の犠牲者があからさまに選り好みされているのは、ラストで黒い絵と彼女に対して同情しやすくするためだろう。

漫画家岸部露伴はリアリティを追及することにより、漫画に圧倒的な説得力を生み出していく。
リアリティを損ねてでも視聴者の感情を優先した本作の物語構成は真逆に位置する。
岸部露伴が体験した物語だからこそ、リアリティの追及は大事にしてほしかった気持ちも心の片隅に残ってしまった。

けれど二時間映画として心地よくみれる物語として、緻密に構成された作品という証明でもある。
それは随所の演出でも見て取れた。

例えば、贋作を使った悪行は、ヘブンズドアーの説明を兼ねた物語開始時点で布石として出ていた。
またその時に作品に対して敬意を払わない者が、岸部露伴基準の悪として描かれている。

中盤以降で登場する日本人キュレーターは、岸部露伴を褒めてこそいるが、それは表紙だけをみた上辺の評価。『作品』に対する敬意をまるで払っていない。
この時点で、彼は絵を盗み売り捌く悪人であると読み取れるようになっていた。

原作でも露伴は記憶を消して難を逃れる結果は変わらない。
けれど祖先を遡っての攻撃に対して『記憶を消す』対処方法は、筋が通っているようで通っていなかった。

原作だと、自分が知らない他人や祖先まで見えていた。
しかもただ近くにいるだけで、過去や祖先は自分を攻撃してくる。

顔料に含まれた蜘蛛みたいな生物が関わっているが、記憶を刺激する以外の要素はまるで説明になっていない。
ジョジョ特有の『こまけーことはいいんだよ』感があった。

映画では蜘蛛の存在は絵に溶け込んだ呪いの比喩的な扱いであり、絵を見たか否かが判定となっている。
また奈々瀬が全て忘れるよう助言したので、危機を脱した理由が原作よりもシンプルで、迷う要素が綺麗に整理されていた。

奈々瀬は絵を鋏でグサグサぶっ刺す時の激情と叫びは完全にジョジョのそれであり、とても雰囲気が出ている。
この意図は原作だと露伴が考察しているが、今回はそのパートがなく、黒い絵が誕生した理由も変化していた。
そのため絵を切り裂く行為に含まれている意図も、同様にニュアンスが異なっていると思われる。

まず漫画では奈々瀬への気持ちは露伴の一方通行に近い。
(原作の奈々瀬と仁左衛門の繋がりや想いは、話の流れから察するにまだ切れていない)

対して映画では仁左衛門と露伴がソックリである。また本物の仁左衛門は意思のない呪いの化身となっていた。
故に奈々瀬は双方が自分を題材に描いた、仁左衛門の黒い絵と、露伴の漫画を強く重ねていたのだろう。

漫画の複雑な感情や行為の動機を、恋愛という最も察しやすくわかりやすい感情に置き換えたのだ。
漫画ではモノローグで色々と消化したが、これを台詞そのままでやられると、わかりにくい上にものすごい勢いでテンポが死ぬ。
映画は画で見せる必要があることから、この簡略化は正解だったと思う。

その後、奈々瀬は露伴を窮地から救い、黒い絵は燃えて消失した。
そして奈々瀬が一人で背負っていた悲しき過去を露伴が繙いたことで彼女は成仏する。

最後に戻ってきた傷跡のない原稿……。
もう誰も何も傷付けなくていい。奈々瀬の心が解放された証なのだ。

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総評

話を丁寧に作り過ぎた結果、黒い絵の怨念についてはパワーダウンが否めない。
しかし全体を通してみるなら、ドラマ『岸辺露伴は動かない』の一遍として、これまで通りにハイクオリティな作品。

シリーズファンなら十分オススメできる完成度の高さ。

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