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仮面ライダージオウ 6話『555・913・2003』
ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
前回のフォーゼ編からの流れで今回はがっつりファイズ編。
ストーリー構成的にはファイズという物語を部分的にピックアップして、大分わかりやすくした展開でしたね。
仮面ライダーディケイドだと、ファイズの世界観を学園という閉鎖空間を使うことで再構築していました。
http://kamen-rider.info/?p=289対するジオウのファイズ編は、ファイズの世界観を使うことなく、ファイズにおける人間関係の絡まりを表現しようとした意欲作といった感じ。
ファイズ原点に多かった、善意と悪意がゴチャゴチャと絡まりあった末の結末を上手く描いていたのはとても評価したいポイントです。
また補完計画で先に公表されたので二話でも軽く触れましたが、白倉Pがツイッターでジオウに関する重要な設定情報を公開しました。
これらを踏まえて、ジオウにおけるファイズ世界の表現と、ジオウだからできた解決を考察していきます。
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ファイズのキャラクター性を再現
ファイズから15年経過しての巧と草加だったが、どちらも過去のファイズを思い出させてくれる要素に満ちていた。
年齢を経たことによる変化はどうしようもないが、その中でも巧らしさや草加らしさを追求することは忘れていない。
巧の猫舌は基本として、あの無愛想で言葉足らずな性格は実に乾巧だ。
菊池クリーニングで働き続けていて、流しの洗濯屋ってどういうことだよって仕事内容も巧らしい。
世界中の洗濯物を真っ白にする夢。
それはファイズ本編のラストで、巧が最後に見つけた夢だった。
正確には世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに皆が幸せになることだが、たっくんの口下手か歴史改変の影響で少し変わった可能性はある。
どちらにせよ、ソウゴにそれを迷わず語れるのは、夢の護り手だけではなく夢を追いかけられる人間に成長した証だ
もうこれだけでリアルタイム視聴していたファイズファンである私はめちゃくちゃ嬉しい。
草加雅人はもう前回からして草加雅人だったが、やはり今回も草加雅人だ(褒め言葉)。
二人が普通に揉めて争っているのも相変わらずである。
ライダー史上最も仲の悪いメインライダーコンビだ。
またファイズでは真理に偏っていたものの、草加も流星塾のメンバーについては複雑な思い入れがある。
そのため利己的な事情はあれ、まっとうに三原を鼓舞するなど、時折能動的な動きを見せることもあった。
特にオルフェノクと化した塾生の澤田は、自分の手で倒すと執念を燃やしていた程だ。
怪物へと堕ちた塾生を本気で潰しにかかるのは、草加のキャラクター性から見ても不自然な感じはしない。
草加はとにかく癖の強い人物像を、強引でない形でストーリーに落とし込めているのは評価すべき事柄だろう。
また物語後半は部分的に画面が暗くされていた。
ダークな世界観に合わせたアマゾンズと同じ手法である。
結局今回はエグゼイド編と異なり、カリンが救われることはなかった。
巧と草加も和解することもなく去っていく。
ここはどうしても、人によっては消化不良を感じる流れだ。
しかし人間の思い遣りと悪意が絡まり合った末の悲劇と、決して大団円にならない展開こそがファイズらしさだ。
フォーゼ編は如月弦太朗本人を出さずに弦太朗がそこにいると感じられる展開を工夫していた。
対してファイズ編はオルフェノクやファイズのベルトを使わず、ファイズらしい世界観と展開を作る工夫を随所に感じられた。
オルフェノクとファイズが使えないのは、ジオウの設定と展開的な問題でもあるのだけど、そこは後術。
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嫌いでも仲間である草加雅人
巧と草加の因縁は根深く簡単に言い表すのは非常に難しい。
しかし二人には歪んでいても奇妙な仲間関係が成立している。
それらの内容は以前考察した通りだ。
それでも巧は草加に仲間だと言い切った。
決して馴れ合わず友情なんて欠片もなかったが、決して見捨てることもできない。
それが巧にとって草加への仲間意識だ。
なお、知らない人向けに解説すると、草加が首を絞められているのはファイズ本編のオマージュだ。
本編の草加はこのまま本当に首の骨を折られて無残に死亡。
遅れて駆けつけた巧が死体(灰の塊)となった草加を見つけるという展開だった。
15年の歳月を経て、巧は草加の助けに間に合ったのである。
TV本編、映画二本、小説版二本と全てにおいて死亡してきた草加雅人。
なんと今回が初の生存エンドである。
(ディケイド客演では最初から変身済みで、草加は声のみの本人出演なしだったのでノーカン)
ちなみに首絞めの流れは草加役である村上幸平氏本人の提案だ。
おそらく誰よりも草加に思い入れがあり、最も愛した人物によるオマージュと知って更に胸が熱くなった。
戦いが終わると草加は礼も告げずただその場から去っていく。
巧が歩み寄っても決して馴れ合わない。
本編ならむしろここで憎まれ口を叩くのが草加であるが、彼らしさを出した話の締め方としてはこれが一番良い落としどころだろう。
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歴史改変の設定について
今回は二話の戦闘シーン途中でファイズの世界が改変されて、変身も途中で解除されてしまった。
ネットの感想を見るとこれ真理死亡ルートじゃね? と思っている人も多かったが、そういうことにはならない。
ソースとして、白倉プロデューサーによるかなり重要な設定解説がツイッターに出ていたので引用する。
遅まきながら。
ジオウにおいては、「もしタイムジャッカーが介入してなかったら」という想定はありえません。
ビルドを例に取るなら、先週までのエグゼイドとはまるで別設定のビルドがしれっと始まったのは、タイムジャッカーがエグゼイドの歴史をなくしてしまったからである…みたいなことです。— 白倉伸一郎 (@cron204) 2018年10月5日
他作品も含めると劇場版の合流設定などと大きく矛盾するのだが、これはあくまでジオウ時空の話として解釈しよう。
毎年別の世界観で新たなライダーがあるのは『タイムジャッカーによる歴史改変が理由』となっている。
つまり時代毎にその時間を象徴する仮面ライダーが存在しており、特異点のような扱いになっていると考えればわかりやすいだろう。
その特異点ライダーがアナザーライダーになり変わられた時点で、その時代におけるライダーの物語自体が消滅する。
だからファイズの変身が解除された次点で、オルフェノクという存在もなくなる。
少なくとも真理が殺される歴史の流れも変わるはずだ。
巧もオルフェノクではなくなっているので2018年になっても生存している。
そうなると巧の性格が変わってしまい、流星塾についても大きく歴史修正が入り、草加とどうやって出会ったんだという話になるのだけど……。
その辺りを突っ込むと、馬に蹴られてしまうゾーンだ。
この設定により、ジオウでは各時代の怪人が絶対に発生しないことになる。
ゆえに今回もオルフェノクが直接話に絡むことがなかった。
かなり根幹の設定になるため後半や劇場版で例外的にひっくり返る可能性はあっても、しばらくは同様の展開となるだろう。
このためジオウでは本編の怪人やライダーが非常に扱いにくくなっている。
折角、乾巧と草加雅人という二大レジェンドが出てきたのに、変身シーンが出せなかった。
これには流石に各所で落胆の声は少なからずあり、設定的な欠陥だと言わざるを得ない。
予算どうこうの問題もあるだろう。
それならせめてサブタイトルに変身コードの使用は避けるなど、変身しないなりの配慮はするべきだ。
煽られてスカされた側の気分も理解していただきたい。
巧は近年の劇場版で何度か変身しているが、草加はこれを逃せば次があるという保証もない。
何より巧と草加の同時変身が観たかったという思いはどうしても残ってしまう。
劇場版やライドウォッチを集め終わった後での再登場を願うばかりだ。
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ジオウ側の仲間意識とジレンマ
前回はゲイツがソウゴのライドウォッチを借りてフォームチェンジしたが、今回はソウゴが自主的にゲイツへウォッチを渡した。
そして二人はそれぞれ別の時代で同じアナザーライダーと戦う。
ソウゴとゲイツは友人といえる間柄ではない。
しかし仲間ではあると認識できたからこその行動だったろう。
ゲイツも余計な言葉はなく時代を越えて戦う。
「俺達が、お前達を救う!」
多分無意識だろうが、ちゃんと『達』が付いている
お互い言葉にしなくても共通認識が生まれた証だ。
ゲイツはアナザーファイズとの戦いで、歴史は変えるべきではないと主張した。
変えないことで二人を救う。
オーラの問いかけに対しても覚悟を決めた熱いセリフを返してみせた。
「救うさ。仲間のために奴がなげうった15年の歳月をな!」
なお、ファイズアーマーもゲイツだと必殺技がしっかりと原作再現されていた。
肩の巨大携帯電話だけはツッコミたいが、その他は全体的に格好いい。肩以外は。
ソウゴは王様設定とタメ口による違和感のせいでどうにも変なヤツになっているので、こういう熱い部分をゲイツが持っていっている感がある。
キレッキレの動きで戦いながら変身していることも含めて、今回もゲイツの方が主人公っぽい。
しかしゲイツの戦う理由はジオウの魔王化を防ぎ歴史を改変すること。
彼が抱いて戦う想いは、彼自身の目的と矛盾している。
ゲイツは未来を変えるために過去改変を防ぐ。
この辺、現代人であるソウゴは最良の選択で未来を創っているので、本人の目的と矛盾しない。
ゲイツだけが抱える戦いの矛盾と、いつか彼は向き合う日が来るのかもしれない。
(この立ち位置もゲイツの方が主人公っぽい……)
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