ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
仮面ライダーガッチャードで、ライダー史上初の女性2号ライダーが登場したことが話題になりました。
それをめでたいと考える人がいる一方で、
『2号ライダーはヴァルバラドじゃないのか』
『2号ライダーなのに、変身アイテムがプレバンで受注生産なことにモヤモヤする』
といった声も一定数上がっています。
本日はこの問題について、何故こうなったのか、東映の意図や戦略などを考察して読み解きます。
仮面ライダーマジェードの登場が衝撃的だった理由
マジェードは登場まで情報が伏せられていた
仮面ライダーマジェードは2023年の冬映画にて登場した新ライダーです。
🦄ユニコン!
⚠️重大解禁⚠️
本日公開の映画#ガッチャード& #ギーツ
最強ケミー⭐︎ガッチャ大作戦に、九堂りんねが変身する#仮面ライダーマジェード
がテレビに先駆けて!先 行 登 場‼️
映画でしか見れないりんねの活躍!
「2号ライダー」の勇姿を!!ぜひ劇場でお確かめください!🦄☀️ pic.twitter.com/uehFErQ6qf
— 仮面ライダーガッチャード【東映公式】 (@Gotcha_toei) December 22, 2023
一般的に仮面ライダーの映画だと、劇中で活躍する新キャラクターや新フォームは、作品の目玉として公開前に発表されます。
しかしマジェードは、公式が隠し要素を匂わせながらも、公開日当日まで伏せられていました。
また、ガッチャード本編内においても、九堂りんねがライダーになる展開の伏線なども見当たりませんでした。
少なくとも公式にとっては、客寄せ以上にサプライズ性を重視していたということになります。
(公開時点での発表だと、少なくとも前売り券の販売にはまったく貢献できません)
先に登場したけど2号として扱われなかったライダーがいる
1号ライダーであるガッチャード以外にも、スピンオフを含む作品内には、既に二人のライダーが登場しています。
そのうち、仮面ライダードレッドは本編内での登場ですが、完全に悪役のため、2号とはカウントされていません。
もう一人、スピンオフ作品として登場した仮面ライダーレジェンドは、過去作ライダーのデザインと能力を扱うお祭的な存在のため、こちらもノーカウント扱いです。
これらは視聴者側からしても、例年の扱いや感覚的に「これは2号ライダー枠ではない」と判断されており、とりわけ議論なども発生しておりません。
むしろ既に別の仮面ライダーが出て活躍している中で、さらに冬映画で追加されたライダーが正式な2号枠を得たこと自体が前例のない事態でした。
そこに意外性を見出す人が多かったのです。
2号ライダー枠としてみる仮面ライダーヴァルバラドの存在
仮面ライダーマジェードが正式な2号ライダーであることは、ガッチャードの公式X(旧Twitter)でも明言されています。
それでもなお、モヤモヤを抱える人が多いのは、ヴァルバラドという重要な存在がいるためです。
彼はガッチャードに続いて登場した戦士ですが、設定面で仮面ライダーとは別の存在として扱われていました。
しかし、第16話で変身者の黒鋼スパナ用の変身ベルトが登場。さらに新章のキーヴィジュアルでも仮面ライダーヴァルバラドの姿がありました。
こうなると話が大きく変わってきます。
先に登場していたヴァルバラドこそが2号ライダーではないかと考える人も現れました。
過去の例でも、2号ライダーの登場時は、主人公と真逆の思想を持っていることが多いです。
風都の風を嫌っていたアクセル。
自分の欲望に忠実なバース。
ヒューマギアを憎むバルカン。
などなど、例を挙げると枚挙にいとまがありません。
去年の仮面ライダーギーツも、シニカルで騙すのが上手いギーツに対して、タイクーンは素直でお人好しなキャラクター性でした。
そう考えると、ケミーを道具と断言するスパナの性格は、2号ライダー寄りと言えます。
ただこれは、そういう傾向が多いというだけです。
総合的に見れば、以下を理由にして、マジェードが2号ライダー枠である見解の方が主流になっています。
- あえてヴァルバラドをライダーにせず、先にマジェードを出した。
- 過去に例のない劇場版での初変身と戦闘が行われるという、非常にインパクトの強い扱いであった。
- 映画でのヴァルバラドは、2号ライダー扱いではない、ライバル役のライダーとの共演がメインだった。
仮面ライダーマジェードと●●から読み解く商業戦略
女性ライダーレギュラー化の歴史
女性の仮面ライダーを望む声は、以前から少なからずありました。
また、近年では社会的にもジェンダーレスの意識が進んだことで、女性ライダーの登場は加速している傾向にあります。
仮面ライダーで初の正式な女性ライダーは、平成3作目の龍騎からで、以後も時々登場する程度でした。
平成最後のジオウにて、最終盤にメインヒロインが変身して仮面ライダーツクヨミが登場しました。
次の、令和1号のゼロワンから、本格的な女性ライダーのレギュラー化が始まります。
令和ライダー4作中の3作では、ヒロインの一人が3号ライダーのポジションになっています。
(追加で他の女性ライダーもレギュラー化するケースもありました)
ただし3号と2号では、ライダーとしての扱いに大きな差があるのは事実です。
2号ライダーは主役に次いで出番や活躍に恵まれており、強化フォームも複数あるのが通常です。
3号ライダーだと、本編内では強化フォームがないことも珍しくはありません。
仮面ライダージャンヌは女性の3号ライダーで、終盤に強化フォームもありました。
それでも、強化までのイベント量は、2号ライダーよりも圧倒的に少なかったです。
女性ライダーが2号の枠に入るというのは、それだけ大きな意義があると言えます。
女性ライダーの商業的問題
女性ライダーが抱える大きな問題が商業面です。
仮面ライダーは変身ベルトを代表として、玩具の販促が非常に重要な番組です。
女性ライダーの活躍を望む声は男女問わずありますが、それが直接売上に結び付くとは限りません。
どのような作品にもメインの客層があり、仮面ライダーの場合は未就学児の男子がその対象になります。
メインの男児に、女の子が活躍するアイテムが売れにくいのは明らかです。
また、子供向けの玩具売り場も、多くは男の子向けと女の子向けコーナーにそれぞれ別れています。
女性ライダーのアイテムを購入したい女の子へ、積極的に商品を売る導線も、確立できていないのが現状です。
その対策として、仮面ライダーゼロワンでは、変身に必要なエイムズショットライザーが、2号と3号ライダーの共通アイテムになっています。
仮面ライダーギーツでは、メインの仮面ライダーは全員同じ変身ベルトで規格が統一化されています。
これらによって、変身には単価が低い玩具を1つ追加するだけで済みます。
逆に仮面ライダージャンヌの変身ベルトは専用アイテムです。
こちらは予約を必須とした受注生産による販売形態になりました。
男子プリキュアでも同じ問題は起きている
メインの客層と商品の対象がズレたことで発生する問題は、仮面ライダーに限った話ではありません。
『ひろがるスカイ!プリキュア』では、初めて男子のレギュラープリキュア『キュアウィング』が登場しました。
仮面ライダーと同様、プリキュアになりたい男の子もいますから、それ自体は良いことであると思います。
この手のヒロイン系では変身衣装のアイテムは非常に重要です。
大抵はキャラクターの登場に合わせて商品化されるのですが、キュアウィングのみ発売されませんでした。
そしてこれはプリキュアのイベントでも使用されており。衣装を着て写真が撮れる人気コーナーもあります。
男の子のプリキュアファンの母親からXにて『自分もプリキュアになれると息子が着替えコーナーに向かうと、キュアウィングの衣装だけがなく泣いてしまった』という話が投稿されました。
このポストは、プリキュアファン達から売上重視で子供の夢を壊したと批判され炎上が起こりました。
商業的な理由は仕方ないとはいえ、バンダイが『夢・クリエーション』をスローガンとして公言している以上、致し方ない側面もあると思います。
その数日後に、プレバンでの受注生産販売が発表されました。
数日で発売を決め、試作品と広告まで作って即発表は不可能です。
キュアウィングの衣装は元々受注生産販売だと決まっていたとみて間違いありません。
加えて、発表時点で予約開始日が決まっていなかったので、炎上をきっかけに前倒しで発表された可能性が高いと思われます。
ちなみに、公式ショップにもキュアウィングの衣装が設置されて、撮影できるようになるとの発表もありました。
これを知り、泣いていた子供は大歓喜したそうです。
この炎上騒ぎが起きたこと自体はよくないとしても、なるべく早めに対応する姿勢は評価されるべきだとも思います。
ちなみに、キュアウィングより登場の遅かったキュアバタフライや、追加戦士枠となるキュアマジェスティも登場後に変身衣装は店頭販売されました。
また変身アイテムは、本体の規格が統一されているため、キュアウィング用も発売されています。
こちらも仮面ライダーと同様と言えるでしょう。
仮面ライダーマジェードの販促戦略を考察
ヴァルバラドはオモチャ面での2号枠
仮面ライダーにおける2号ライダーは、商業的にも重要なポジションです。
売上的に厳しい女性ライダーを2号ポジションに置くのは、かなりのリスクが伴うことは想像に難くないでしょう。
そこで出てくるのがヴァルバラドです。
キャラクターとしての登場は従来の2号ライダーと変わらない早さで、オモチャも店頭販売で売られています。
仮面ライダーヴァルバラドとしての変身アイテムも、仮面ライダーガッチャードの強化と共用で店頭販売されました。
また、2号ライダーが誰かを一番重視するのは、子供ではなく大きなお友達の方です。
子供にとっては、オモチャがほしくなるカッコいいキャラが大事であって、ヴァルバラドが分類上3号かどうかなんて問題ではありません。
そもそも気にして調べなければわからない以上、知らない子もたくさんいるでしょう。
であればヴァルバラドは、従来の2号ライダーに近い感覚で、オモチャが売れる環境を構築しておく。
その後に、いつもより遅いタイミングで設定上の2号ライダーのマジェードを登場させて、プレバンによる受注生産で玩具を販売します。
そうすれば販促上は従来の仮面ライダー通りになります。
これが仮面ライダーガッチャードにおける、女性を2号ライダー枠とするために考えた商業戦略でしょう。
予約による受注生産販売の功罪
仮面ライダーでは、購入者が少ないながらも一定の需要が見込めるケースは、プレミアムバンダイの受注生産によって販売を可能にしました。
女性のレギュラーライダーや、本来は作るのが難しい3号ライダー以降の強化フォームも実現できています。
実際、仮面ライダーグリスブリザードは当初の登場予定にはなく、作中で人気が出たから生まれた強化フォームでした。
これもオモチャと番組がしっかり連動できたのはプレバンの商法があったからこそ。
つまり受注生産は、作品に多様性を生みだすことができるのです。
その反面、商品の価格は通常よりも高めになり、手に入れる方法もネット通販のみになります。
結果として、女の子向けの仮面ライダーなのに、女の子の手に届きにくい矛盾も生じました。
この問題を解決するには、まずは受注生産で売上が見込めると証明すること。
そして作品内での扱いなどで少しずつ女性ライダーの人気や需要を高め、女の子向け商品を売り込みやすい導線を作っていくことが必要です。
だからこそ、ガッチャードでマジェードを2号ライダー枠にしたような実験や挑戦を、今後も続けていくのが重要であると、私は思います。