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仮面ライダーW AtoZ/運命のガイアメモリ 感想 勢いと熱さで駆け抜けた名作

2019年5月2日

劇場版平成仮面ライダー作品の中でも特に高い人気を誇る一つ。
それが平成と令和への切り替えタイミングで改めて無料配信されました。

AtoZは当然のごとく私も好きな作品です。
ただ、同時に色々と思うことが多くもあるんですよね。

面白い作品だという意味では、やはり人気に裏打ちされた熱い展開で素晴らし一作。
W本編に関わる人間関係や設定が盛り込まれた重要な位置付けであると思います。

ただしAtoZを純粋に一本の作品だけで見ると、私の中ではそんなに評価は高くない。
星5で評価するなら3.5くらい。
面白いのにその程度の位置で落ち着いてしまうとても不可思議な作品。

なぜそうなってしまったのか、一度自分でも明確にアウトプットしたいという気持ちはありました。
今回のタイミングを機に吐き出してみようと感想と考察をまとめていきます。

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オリジナル最強フォームと新ライダー登場の構造

AtoZはディケイドのようなお祭りモノ構造から、『仮面ライダーW』として独立した一本の物語へと戻った。
ストーリー的にも本編の時間軸、44話と45話の間に位置している。

パラレルワールドではなく、正式に本編に位置する単独ライダー映画作品としては電王以来だ。
(ただし、後術するような設定的な矛盾は存在する)

また『仮面ライダーディケイド』によって放送時期の改変が入ったため、ディケイドよりも以前の夏映画は中盤頃での上映だった。
これまでは最終フォームのフライング登場のパターンが多かったが、『仮面ライダーW』は既に終盤へと入っておりエクストリームは登場済み。
そこでTV本編のエクストリームを上回る真の最強フォームとして劇場版限定のゴールドエクストリームが登場した。
以後、真の最強フォームを劇場版で出す流れを生み出したのはWである。

また、ディケイドから汲んでいる次のライダー初お目見えの流れも引き継いで、仮面ライダーオーズが登場した。
ただしディケイドのような重要なボスキャラを倒して美味しいところを掻っ攫うという手法は取らず、敵の一人であるルナ・ドーパントを引き受ける形式だ。

新ライダーが極力本編に大きな影響を与えない流れになっており、オーズがいなくても(Wが自力でルナ・ドーパントを倒せば)物語は成立する構成だ。
新ライダーの基本フォームが現ライダーの最終フォームよりも強いという逆転現象も調整されている。

なお、新ライダー登場を明確なパターン形式にするためか、『仮面ライダーは助け合いでしょ』という台詞が出てきた。
これは火野映司における名言の一つとなり、現在でも『仮面ライダー同士は協力し合う』という印象を植え付ける大事な要素となっている。

上記台詞も含まれるが、オーズを見てから改めてAtoZの火野映司とオーズを見ると、まだキャラが固まっていないため口調が結構違う。
アンクの姿がないのも今観ると違和感ではある(そもそも何故メダルやグリードのいなさそうな風都に来てるんだよって話もあるけど)。

新規要素を振り返ると、引き継いで改良したりトンボ返りしたり新要素増やしたりと色々な要素が浮かび上がる。
ディケイドから引き継いだ平成ライダー二期の初単独映画として、新たな流れの土台にもなった実験作でもあった。

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熱い展開と設定矛盾の関係性

本作は所々で設定の不整合や矛盾が生じている。
一番わかりやすいのは仮面ライダースカル、鳴海荘吉の登場シーンだ。

鳴海荘吉ことおやっさんは命を落としており、もうこの世にはいない。
設定では追い詰められた翔太郎が見た幻となっている。

しかしおやっさんが置いていったロストドライバーは本物だ。
なお、おやっさんが実際に使用していたロストドライバーは、漫画版の風都探偵によるとタブー・ドーパントに破壊されている。
(フィリップを連れて逃げる時に変身しなかったのはこのため)

つまり、おやっさんの置いていったロストドライバーは本来どこにも存在しないものだ。
幻が逆転のキーとなる現実のアイテム置いていくのはご都合主義としか言いようがない。

また48話で消滅したフィリップが翔太郎にロストドライバーの置き土産をしている。
このロストドライバーは小説版にてフィリップが個人的に入手したものなので、おやっさんのベルトとはまた別物。
そもそも、翔太郎が劇場版で入手しているとロストドライバーが二つになってしまうため、物語全体の流れとしてはおかしい。

けれど運命のガイアメモリとして翔太郎の手に、まさしく切り札としてジョーカーメモリが渡り、仮面ライダージョーカーとなるのは熱い。
翔太郎のキザったらしい台詞も、このタイミングだと完璧にマッチする。

ライダーキックとライダーパンチの使用時に仮面ライダー一号と二号独特の効果音やポーズもたまらない。
仮面ライダーW自体が初代仮面ライダーを意識して作られた作品だということを上手く利用した演出と、主人公の翔太郎が相棒のフィリップを救うために奮闘する王道の逆転展開だ。

矛盾はこの一場面だけではない。
Wとエターナルの最終決戦で、Wが次々とメモリチェンジしてエターナルを追い詰めていくシーン。
ここもW本来にして最大の持ち味であるメモリ変更によるフォームチェンジにて、最強の敵エターナルに対抗する熱いシーンだ。

しかし、そもそも対抗できていること自体が矛盾でもある。
互換性のないファングはまだしも、最強の上位フォームのエクストリームでも敵わなった相手に通常フォームで対抗できてしまう。

設定的にも感情の昂ぶりで性能が向上するのはジョーカーメモリだけ。
けれどジョーカー以外の組み合わせもバンバン使っている。

またジョーカーの出力向上時は左右のメモリはバランスを取れずエクストリームは事実上の使用不能だ。
その後にエクストリームにチェンジしている。
つまり翔太郎とフィリップの心が重なり燃え上がっているからという根性論的な理屈もなりたたない
Wの急激なパワーアップは説明のしようがない現象だ。

そして一番の目玉シーンであるゴールドエクストリームに至ってはもはや言うまでもないだろう。
このシーンだけは奇跡によって起きた逆転劇とあえて呼んでいいものだとは思う。
奇跡に理屈付けするのは野暮と言われればそれまでだ。

ただ、それでもあえて言うならば、奇跡は一回に一度ならば、たとえご都合主義でもある程度の説得力が生じる。
このシーンで起きたことを簡単に整理しよう。

1. 仮面ライダーの勝利を願う風都市民の『祈り』が風都タワーに風を呼んだ。
2. 風を受けてエクストリームがゴールドエクストリームに進化した。

エクストリームが風都の風によって進化するという機能は本来存在しない。
(もしかしたらあるのかもしれないが、作中には何の解説も入っていないので無いも同様)
実は風を呼ぶ事象と、ゴールドエクストリームへ進化することは別々のイベントだ。
ご都合主義にご都合主義を重ねた展開での逆転である。

もう一つ付け加えるなら、ゴールドエクストリームだけはメモリを介さないフォームチェンジだ。
これまであくまでガイアメモリにこだわってきた作品だけに、最後の最後で方向性が違う進化を遂げる。
それも特に説明もないご都合主義による流れだ。

単純な話で風都の風は祈りによる奇跡だとしても、ゴールド化は風を司るサイクロンメモリと、極限まで力を引き出すジョーカーメモリの併せ技によってパワーアップした姿とか理由付けはできるはずだ。
視聴中はさして気にならないのだが、後々冷静になって考えると、最後までガイアメモリのシステムは押し通して欲しかったなと思う。
(というか後にタジャドルの風でもゴールド化しているので、根本的に風都の風である絶対性はないのだけど……)

いやね、そんなの関係ねえ! 面白いものは面白いんだよ!
と言われれば確かにそうなのだ。
これまでWが救ってきた街に、今度はWが助けられる。
風都の街と人を軽んじていた大道克己が最後は『風都』に負ける。

ゴールドエクストリームになる描写も、風都の風によってベルトの風車が回る流れは、ここも仮面ライダー一号のオマージュだ。
演出自体はとても丁寧で、この流れはものすごい勢いと熱量を持っている。今風に言えばエモさ全開だ。
だからこそ、もう少し脇を固めて欲しかったなと思ってしまうのである。

『仮面ライダーW』という作品は、後の展開で補足や追加設定を入れて内容を補完することがある。
大道克己があえて最初にエターナルを奪ったことや、風都を狙った理由はVシネマの『仮面ライダーエターナル』で説明がなされた。

T2メモリであっても、Wより性能が劣るジョーカーメモリ一本で翔太郎が二人のドーパントを撃破しているが、これも漫画版の『風都探偵』の追加設定で説明が付く。
実は風都探偵で、ゴールドエクストリームにも補足の解説が入ることを密やかに切望している。

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TV本編やビギンズナイトとの人間的な繋がりがとても丁寧

どうしても設定矛盾を否定する流れにしまったが、展開全てがそういうわけではない。
むしろ人間面についてはかなり丁寧に扱っている

翔太郎がフィリップの気持ちを考えない発言をして殴られるのは、第二話で翔太郎がフィリップを殴った流れの逆バージョンだ。
同時に、翔太郎から見たフィリップが身近な存在になり過ぎていたことも示している。
フィリップの成長を頭では理解していながら、感性の繊細な成長を考えずいつものフィリップとして扱ってしまった。

フィリップも同様で翔太郎や鳴海探偵事務所という居場所が当たり前になり過ぎており、それが自分にとって本当の家族なのだと気付けず、記憶から消えた『家族』という形を追い求めている。
判明していく重要な事実にフィリップの心が追いついていなかったとも言えるだろう。

劇場版後の45話で重大な事実が発覚するのだが、それまでに改めて翔太郎とフィリップ、そして鳴海探偵事務所の関係性を整理する役割も持っている。
人間としてフィリップの成長を明確な形に落とし込む。その上で失われた最も重要な記憶が明かされる流れになっている。

この話があったからこの後に控えるフィリップの展開と、それを受け止めて前へ進む翔太郎。
そこからの収まるべきところへ収まる流れが納得できるものになるのだ。

大道克己がフィリップを同類として扱ったのも大きな転換となった。
かつて自分で考えることをせず、流されるままガイアメモリを生み出して悪魔の少年フィリップ。
家族の問題と向き合い、克己の所業を否定することで自分は悪魔ではなく、風都を守る仮面ライダーなのだと断言した。

それだけでなく、克己が同類だと呼びフィリップが否定した言葉の意味はその後の展開で大きくひっくり返されてしまう。
同類と言った克己も恐らくは知らなかったであろう、とんでもない伏線の張り方だった。
全体の物語として、AtoZはかなり重要なピースである。

また相棒のフィリップを失い自分の失敗を自覚した翔太郎の前に鳴海荘吉が現れた。
失われた相棒は翔太郎が荘吉に託された存在である。
翔太郎は鳴海荘吉にとって切札(ジョーカー)と言えるのだ。

ロストドライバーという要素を除いても、このシーンにはジョーカーメモリへと繋がる意味がある。
なお、T2メモリは運命に引き寄せられるよう持ち主を探す性質がある。
最初の雨漏りが伏線になっているため、ジョーカーメモリが翔太郎へ渡るのはご都合主義展開ではなく相応の説得力があった。

照井竜と鳴海亜樹子の関係もTV版からの進展だ。
こちらは後に劇場版やVシネマが出る度、着実に関係性が発展している。
最初の切欠はTV版本編だが、後に続いていく展開を築いたのは劇場版の本作だろう。

未来についてだけでなく、照井竜は過去への繋がりも地味ながら本作に盛り込まれている。
ウェザー・ドーパントが再び現れても、困惑こそしているものの以前のようには取り乱さず冷静に対処した。
後、ナスカも実はオレンジ色の強化体しか知らないため、ちょっと特別な反応を示したのが面白い。

アクセルメモリが使えなくなった展開も、あえてアクセルメモリを手にするのではなく、昔のようにクッソ重いエンジンブレードを力技で振り回す姿が見られた。
そしてメモリ無しで戦う姿を心配した翔太郎に『俺に質問するな!』とぶつける。
いつもの厳しい口調なのだが、このシーンにおいてはそれが『信頼の証』へと転化されており、竜の強い覚悟が形になった熱いシーンとなった。

キャラクターの関係性については、劇場版の中でだけでなく、『仮面ライダーW』という物語全体を見渡してキーポイントになる要素が幾つもある。
またそうなれるだけの丁寧な描き方がなされていた。
これらの丁寧な人物描写と、勢いのある熱い展開の合わた構成こそが、AtoZの高い人気へと繋がっている。

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