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SSSS.DYNAZENON 共感性の群像劇が光る怪獣アニメ【感想・考察】

2021年6月20日

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『繋がり』が喪失を埋める未来への原動力

ガウマ隊は皆、過去に大きな何かを喪失している。
蓬は少しわかりにくいが、離婚という形で父親を失った。

そして物語の最後まで誰も喪失した何かを取り戻せてはいない。

蓬は再婚を止められず、望まない者が新しい父親になるだろう。
夢芽は知恵の輪も解け姉の死の真相を得たが、死んだという事実は覆ることはない。

暦は稲本さんと再会したが、彼女は既に結婚しており関係の修復は望めない。

過去の時間に飛ばされて、今度は札束から逃げださず稲本さんに付き添うこともできた。
けれど大人になった暦の感性はあの頃には戻れない。
稲本さんが望んでいたのは青春の一ページだったが、札束に目が眩んで結局彼女と心がすれ違ってしまう。

チセは学校へ戻ろうとするが心が受け付けない。
ガウマは姫と再会できず命尽きた。

それでも、皆、ダイナゼノンの戦いで仲間を経て成長している。

暦は稲本さんの夫を救助したこと。
本心では助けたくなかっただろう。それでも稲本さんに言った『人助け』を巻き込まれではなく自発的な行動として起こした。
ガウマはその行動を評価して、ダイナゼノンでの戦いは暦の中で明確な使命となった。

そして稲本さんの夫を救助した恩を思い切り利用して、暦はニートから無事社会復帰を果たす。

就職した暦の隣にいたチセはいつも通りだ。
型破りな少女は破壊された学校の前で、似合わない制服を笑い飛ばす。その腕には最高の友達のタトゥーが新たに彫られていた。

父親を失った少年と姉を失った少女は、けれど手と手を取り合える新たな関係を結んだ。
分かたれ二つになった知恵の輪が、もう一度二つに繋がったように。

かつての仲間と決別して愛する人も失った男は、見知らぬ世界で想いを同じくする真の仲間と出会えた。
そしてそれを彼女の導きだと信じて、満足と共に人生を終えたのだ。

シズムは蓬に告げた。
怪獣とは理外で超常だから自由。
怪獣使いのインスタンス・ドミネーションはその超常と繋がることで、失った時間すら戻せて、生と死すらも超越できる。まさに真の自由を得られる。

けれど怪獣との繋がった先には誰もいない。
だから蓬は誰かと繋がることで、かけがえのない不自由を手に入れていく道を選んだ。

失ったものや関係は戻らない。
けれど新たな繋がりを得て、彼らは新しい道を歩んでいく。

さあ はじめよう
僕らの未来を勝ち取るために
今 君が必要なんだよ

引用元:
インパーフェクト(大石昌良)

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