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『ルパン三世VSキャッツ・アイ』 ルパンの敗北宣言【感想・考察】

2023年2月3日

作品情報

『ルパン三世VSキャッツ・アイ』 ルパンの敗北宣言【感想・考察】
タイトル ルパン三世VSキャッツ・アイ
作品要素

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ネタバレ無しレビュー

※ 物語の詳細に触れない程度の軽微なネタバレ注意

まず映像に関してはCG作品で全体的に固めの印象。
とくに五ェ門のアクションシーンが強く影響を受けていて、手書きのスピード感や勢いを失っている。
ただ、体の動きに対する見せ方はうまく、瞳の盗みアクションは丁寧で良い感じだった

デザインに関してはキャッツアイ側が若々しく、ルパン側は全体的にちょっと彫りが深い。
多分、設定的にルパンの方がベテランだからだろう。
このデザインとストーリー性が相まって、今作のルパンは全体的にシリアス寄り。
同時に、ルパン一味ラストの迫力は、このデザインだから良く出ている感じもあった。

フル3D作品であれば、劇場版の『ルパン三世 THE FIRST』がクオリティも高く、シナリオも「これぞ超王道のルパン!」って感じで見応えや満足感が高かった。
(こっちはデザイン性がまさにCGって感じなので、慣れたら逆に違和感をあまり感じなくなるタイプだと思う)

キャッツアイ側は全体的に、美人三姉妹とキャラ分けを違和感なく現在風に置き換えている。個人的に瞳めっちゃ可愛い。
衣装も現代風なデザインにアレンジされ、観ていて時代錯誤的な違和感は全然感じなかった。

しかし……だがしかし、全体的に色気が足りない! セクシー方面での色気がスッカリ抜けているのだ。
エロいのが見たいって話ではなくて、これは元々あったはずの魅力が損なわれていることへの不満。
見た目美味しそうな寿司を食べたら、わさびが入ってなくって、美味しいのだけどなんか物足りない。そんな感じ。
ここが本作で最も残念なポイントだった。

衣装は悪くないので、キャラデザインと見せ方の問題だと思う。
以前『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』で友情出演した際は、わずかな出番でも特有のセクシーさはたしかに感じられた。
国民的ヒーローとコラボったせいで変な気を使ったのだろうか。不二子ちゃんはいつも通りセクシーなのに……。

評価できる点としては、シナリオ内にちりばめられた小ネタやパロディの数々だろう。
一番わかりやすいのはルパンのジャケット。

キャッツアイは80年代の作品で原作はリアルタイムと連動して物語を進めていた。
それに合わせてかルパンも同年代に放送していたパート3のピンクジャケットだ。
最後に出たのがパート5のごく一部だけで、ぶっちゃけ全シリーズの中でも、その後一番見かけないやつである。

キャッツアイのキャラも、可能な限りオリジナルキャストを揃えていた。
(変更されたのは故人のみ)

他にも、序盤の瞳が「エッチ!」とビンタ入れるシーンは原作から拾ったネタ。
ルパンが動く動機も、『カリオストロの城』とほとんど同じ流れである。

機関銃VS斬鉄剣は、見ながら「これって昔、トリビアの泉でやってたやつじゃ……」と思っていたら、他でも同じ感想書いてた人がいた。ダヨネー。

ルパン一味とキャッツアイ両方を入れ込んでいるので、映画一本分の尺でも話の展開は結構早い。それでも双方にきちんと見せ場を用意している。
後述する問題があるため、作品バランスの悪さを指摘する人は多いが、私はむしろ全体的に原作への敬意や愛を感じられる作品だと思う。

そして、シナリオが良かったので、視聴の後味も良かった。
本作は言語化すると細かな不満が多くなってしまうのだけど、作品全体だと『難はあったけど作品としては丁寧で面白かった』というところに落ち着く。

次にコラボ作品としての両作。
ここは結構、賛否両論がある感じだ。

不満がそれなりに多い理由は、キャッツアイがルパン一味より明らかに格下の若輩者扱いされている部分である。
これは私個人としての作品解釈としては正しいと思う。

両者の設定を丁寧に反映し過ぎたことが一つだろう。
ルパン三世は設定的にも世界規模の大泥棒なわけで、訳アリで怪盗をやっているキャッツアイとはスケールが違う。
舞台設定も80年代当時なので、潜ってきた修羅場の数からしてもキャッツアイ側はどうしても格下になる。

もう一つは、多分タイトルが『ルパン三世VSキャッツアイ』なためか、両者をかなり直接的に対決させたこと。
単純に同じ獲物を狙ってよーいドンで競うのではなく、相手のアジトに乗り込むとか、戦闘も含めたガチのなんでもあり。

ルパンが盗みで敵の本拠地に乗り込むのは基本で、歴代の敵に比べればそりゃキャッツアイの拠点は隙だらけだろう。
逆にルパンは普段から決まった拠点を持たない。
この点一つとっても、そりゃキャッツアイ側とは大きく異なって、有利不利は一目瞭然だ。

技量については、キャッツアイもその辺の雑兵なら、銃を持っていようが蹴散らしている。
けど『相手にもしっかりと技量があるなら、銃を持っているルパンが圧倒的に優位となる』って現実を、めっちゃ素直に描いちゃった。
盗みだけでない荒事でも対等に渡り合うなら、それこそ冴羽獠を連れてこないとって話だ。

シナリオについても、ベースはルパン三世側で、劇中で起きる事件はキャッツアイの根幹をなす要素で構成されていた。
つまりキャッツアイは、ルパン三世やそっち世界基準の敵と戦わされる。
しかも今回は戦闘力だけならルパンたちですら手こずるクラスなので、そりゃあしんどい。

ぶっちゃけルパン三世のシナリオはある程度パターン化していて、こっちをベースにして、キャッツアイを入れ込んだ方が作りやすいだろう。
その上で、ものすごく丁寧に両者の整合性を取るとこうなったのだろうって感じのシナリオだった。

純粋に双方のバランスを取るなら、舞台は日本国内のみに絞って、もっと純粋に盗みの技術だけを競い合う流れにしてしまう。
そうしたら、またかなり違った展開にはなったと思う。

ただし、そうなると作品としてのスケール感はかなり落ちる。
今回のように、一本完結の映画風にした壮大な物語にはできなかったろう。

そして、本作はあえて技術も含めた『差』を描いたことで見える、怪盗としてみた双方の違い。
これがちゃんと物語の結末と共に語られている。

Amazonの感想をざっと見ると、そこに気付いていない人が多いように思う。
映像とシナリオ双方をちゃんと整理すると、キャッツアイが格下でルパンが一流のベテランとして描かれているのには、きちんと意味があるのはわかる。

ここを理解できるか否かで、本作の面白さはめちゃくちゃ変わってくる。
映像とかいろいろと思うことはある……その上で、私は原作への丁寧なこだわりに敬意を表したい。

なら具体的にはどのような意図が読み解けるかという部分については、かなり重要なネタバレになるので、次ページで語ろう。

興味が沸いたって人は、現在アマプラで無料なので先に視聴することをオススメします。

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総評

細かな問題点のあれこれと、万人受けよりも、作品を読み解くのが好きなガチオタ向け作品であることから評価は星3。

3Dアニメでの作画が全体的に固い印象を与えてしまっている。
とくにデザイン面だと、キャッツアイのセクシーさはどこで落としてしまったの?

シナリオに関しては、原作を強く意識した丁寧な作りで、キャッツアイの背景設定をうまくルパンの世界観に落とし込めている。
反面、キッチリやり過ぎてルパン三世側が技能的に格上でパワーバランスはよろしくない。

ただし、それらはきちんと一本の物語として繋がっていた。
怪盗としての格の差がなぜ生じる理由さえ含めた、ルパンとキャッツアイのそれぞれに対する怪盗としての本質を、物語内で描いている。
それがラストでテーマ性と共に美しく昇華されていた。

それを読み取れるか否かで、作品の評価は大きく変わるだろう。

ネタバレ有りレビュー

後編:怪盗としての本質と違いを描く美しい結末

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