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キャッツアイはルパンがたどり着けない希望の光
まずは、ルパンとキャッツアイの関係性を簡単に整理しよう。
ルパンはかつて自分が駆け出しだった頃に仕事をしくじって、ベルガー(キャッツアイの父親)に助けられた。
その借を返すため、当人が行方知れずになってもベルガーの作品回収に動いている。
そして本作では、キャッツアイが同じベルガーの作品を盗み出そうとしたためにぶつかった。
互いの実力差は総合的にみると完全にルパン一味が上。
今回の敵は表向きこそ武器商人だが、中身はプロの戦争屋でもあるため、直接戦闘だとキャッツアイでは厳しい。
そのため、構図としてはルパン一味がキャッツアイを助けることになる。
また原作とは対象的に、直接的な盗み役が多く物語でも最もメインになる瞳が、本作内では一番目立たない。
俊夫との絡みの大部分を、銭形警部に持っていかれてしまっている。
そしてルパン一味との組織的な絡みは泪が多くなっている。
これは元々が司令塔的なポジションなので、必然的にそうなったという感じ。
言い換えると、瞳の出番がさほどでもない時点で、直接的な盗みの対決はさほどやってないのである。
そして怪盗としての実力差と、少女の純粋さを強調するために、ルパンとの絡みが一番多かったのが愛だった。
ルパンと愛の関係が、『ルパンがキャッツアイを庇護している構図』をかなり強調している。
最終的にキャッツアイはルパンの助言を受けて、デニスを捕獲して状況を逆転することに成功した。
その後遺跡内を爆破されて、キャッツアイはようやっと盛り返した状況からあっさりとデニスを逃がした。
彼女らは最初から命のやり取りなんてするつもりがない。
そして生きてきた環境が違うので、『ここでこいつを再起不能にしておかないと、ヤベー闇プロ連中にこれからも狙われ続ける』なんて意識もなかった。
ルパンは違う。
デニスから今回は見逃してやると言われても、逆に殺意をみせて煽る。
三人揃って満身創痍の状態で、明らかに強がっていると見抜かれていても、あえて戦う姿勢を崩さない。
そしてデニスはその胆力に気圧されて戦闘を放棄。
結果的に『見逃される』状態から『見逃してやる』という立場を作った。
この瞬間双方の格付けが済み、ルパンが『上』になったのだ。ゆえにデニスはルパンの要求をのまなければならない。
そこでようやくキャッツアイは身の安全が保障された。
本来は、デニスを人質から解放する時に、キャッツアイが自分達でやるべきことだった。
その甘さ、覚悟のなさがキャッツアイとルパン一味の間にある怪盗としての格の差である。
彼女達には一生、血塗れのルパン達がみせたあの凄みは出せないだろう。
しかし、そもそもデニスはキャッツアイをあの後も追っただろうか?
あるいは、ルパン達を見逃したように、何もせずとも今回だけは見逃す選択肢を取った可能性も普通にあるだろう。
(一応、ルパンはデニスがキャッツアイに助けられた事実を知らず、消す発言のみを聞いていたってこともあるけど)
ルパンがデニスから逃げるだけで良しとしなかったのは、かつての借りを返すためではあった。
けれどキャッツアイを守るためには、ここで命を懸けてでも確約しなければいけないと判断したのも事実。
なぜかと言えば、ルパンは闇世界の住人だからでもある。
キャッツアイの盗みは略奪された父親の美術品を奪還するため。
対してルパンはスリルやロマンを楽しむ私欲だ。
どれだけヒーローらしい行動を取ろうと本質は悪であり、同じ悪党どもがどんな汚い手を使うかは知り尽くしている。
悪人同士ならば、自分の意思を通すのに命を懸けるのが当たり前。それぐらい彼らの世界で“命”は軽い。
同じ怪盗でありながら、キャッツアイはそういうことを考えず、純粋に人命を優先できる。
最初からずっと描かれてきた双方の差は、まさしくここへと収束されているのだ。
ルパンが盗むことで守ろうとしたのは絵に隠されていた三つの宝石でもあった。
契約を果たした所有者に栄光をもたらす秘石だ。
『立派な人物に宝石を渡して世界を平和にしたい』というハインツの高潔な願いに対して、ルパンは「お前のロマンは俺には荷が重すぎた」と言った。
それはルパンがカリオストロの城でクラリスを連れていけなかったのにも似ている。
どれだけヒーローを気取ろうと、悪であるルパンでは『美しい願い』を正しくは扱えない。
そして石の色は青、紫、橙の三つ。これはそのままキャッツアイの色でもある。
怪盗という仕事に手を染めても、美しさを失わないキャッツアイは、もはやルパンには持てない光。
ハインツに向けた言葉は、キャッツアイに対する敗北の宣言でもあるのだ。
では、ルパンは結局何もできなかったのか? それも違う。
もう一つ、宝石には『契約を果たす』という要素があった。
本作における契約とは、ルパンにとってだとハインツの美術品を集めることだ。
今回、ハインツの三連作を集めるという契約は果たされた。
その後、ルパンはそのお宝をたしかに『立派な人物』へと渡している。
そうしてキャッツアイの三人は、父親が描いた家族と『愛』を真に理解した。
正しさを失わないからこそ、彼女たちの盗みの先には希望の光があるのだ。
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