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シン・仮面ライダーのルリ子が用意周到なのにちょっと抜けている理由と心の内面

シン・仮面ライダーのルリ子が用意周到なのにちょっと抜けている理由と心の内面

シン・仮面ライダーがブルーレイが発売されて、再評価されだしています。実際、特に再フォーマットされたことで「見やすくなった!」との声も多いです。

そして、シン・仮面ライダーにはもう一つコミカライズ版が存在します。こちらは本編の前日譚から始まり、ラスボスだった緑川イチローの視点からショッカーサイドの物語が展開されていきます。

こちらを押さえてから映画本編を読むと、もはや別物と言っていいくらいに世界観が広がり見方が変わるのです。

今回は中でも押さえておくと面白いポイントをかいつまんで解説・考察していきます。

ルリ子が用意周到な割にちょっと抜けている理由

本編のメインヒロインである緑川ルリ子は一見クールで完璧主義者で、口癖は「私は常に用意周到なの」でした。

その割にはクモオーグの襲撃をかわせなかったり、隠れ家を政府に押さえられていたりと対応できていない場面も多く見られます。

また、彼女自身冷たいようで本郷猛を戦いからあえて外すなど彼を気遣っているようにも見える部分が最初の方からありました。これらは劇中では語られていない理由や別側面があったのです。

ルリ子が用意周到で有りきれない理由の一つは父親の教育

ルリ子はショッカーによって生み出された人造人間で、生体電算機という非人道的な設定です。
しかし、その割には意外と人間味のある部分があるのですが、これは父親である緑川博士が関係しています。

緑川博士はルリ子を完全な道具として扱わず、彼女をあえて保育園に通わせたり、地域のボランティア活動に参加させたりしていました。

ちなみに、ハチオーグことヒロミと仲を深めていくきっかけになったのも、これらの活動を通してです。

最初はそれこそロボットに近い無感情だったルリ子は、子どもたちに溶け込んで自然に振る舞うという行為が理解できず、めちゃくちゃ困惑します。

しかしそういった活動はルリ子に少しずつ人間味を与えていく結果に繋がりました。

ショッカーからの脱出が近づいてくる頃には、同じくボランティアで保育園の子どもたちを相手に遊ぶことも慣れており、本編ではほとんど見せなかった自然な笑顔も見せていました。

人間味が冷静さを奪う

彼女自身はそれを役割と割り切っているようでしたが、それに反発するヒロミとは違い、嫌悪感を持たず受け入れていたのが印象的です。無意識のうちに彼女はきちんと人間として育てられていたのです。

同時にそうした人間味が、彼女から機械的な思考と精密性を奪っていたと考えられます。

幼いルリ子は人間と過ごすうちに人間に感化されていたケイに、機械的になりきれていないことを指摘していました。

しかしルリ子が成長するにつれて、危険な実験などで判断に迷いや躊躇いが生じるようになってきます。とくに危機的な状況でそれは顕著になっていきます。

そこで今度はケイから機械的な思考によって合理的な判断をすべき場面だと返されるのです。それをルリ子は否定しますが、ケイからはルリ子から指摘されて学んだことだと逆に返されました。

また、ショッカーを抜けて脱走した理由も、合理性よりショッカーの中で変質していく兄のイチローが目指す理想の世界に危険性を感じ取ったからです。ただしハビタット計画には危険性以外の救済的な意味合いも確かに存在はしており、人類を幸福に知るショッカーの理念に正しく従うものです。むしろバラバラに幸福論を追求するショッカーにおいて、全員を幸福にする唯一の方法といっても過言ではなかったでしょう。

これも思考をしていた頃のルリ子ならば否定せず、兄の意思に従っていた可能性はありました。

本郷猛に対する罪悪感

ルリ子は心が成長していくにつれ、ショッカーの理念はともかく、その非人道的な方法論や危険性についていけなくなっていきます。

そして、それらの計画の犠牲に人間性を破壊されていく仲間サソリやクモオーグ、そして兄の緑川イチローの存在こそが、彼女を苦しめる最大の要因でした。

しかし、ショッカーを離反して彼らを止めるには力が必要です。そのために緑川博士は本郷猛をバッタオーグに改造しました。

けれどルリ子にとっては毒をもって毒を制すにしても、その毒自体が彼女の忌み嫌うものだったのです。だから、計画に必要としてクールに振る舞いながら、彼女は本郷猛に対して罪悪感を抱いていました。彼が戦う理由も戦わせて良い動機も本来は存在しないものだと心の何処かでは思っていたのです。

そしてコウモリオーグ戦の前に、暴力を忌み嫌い戦えなくなった本郷猛をルリ子は突き放しますが、内心は異なります。日常を生きてきた心優しい青年である本郷猛の拒否反応は当然であると理解し、彼を開放したい意図がそこには込められていたのです。

このように緑川ルリ子の態度と行動は、彼女が脱走するまでに緑川博士や周囲に影響される形で育まれた人間性がその裏側にありました。

とくに、ショッカーの危険な研究に手を貸す形になった緑川博士にとってルリ子に人間性を与えたのは、彼の良心や償いとも言えるでしょう。なぜなら、ルリ子の遺伝子情報は緑川家のものでも、彼が失い研究に没頭するようになった理由である、緑川硝子ものだったからです。

そして、それを引き継だルリ子は決して機械的ではなく人間として成長したのです。父を失い本郷猛の背に捕まり走るバイクの中で、一人ひっそりと隠れて涙を流していたくらいに。

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