あらすじ
スミスはブレイバーンの直掩TS部隊ブレイブナイツの隊長に任命される。どんな困難もブレイバーンとイサミなら乗り越えられると語るスミスは、イサミを勇気づけるように共に世界を救おうと約束を交わした。日本を取り戻した多国籍任務部隊(ATF)はヨーロッパ方面への進軍を計画するが、出港の直前、横浜一帯が深い霧に包まれる。視界もままならず通信も途絶、孤立したコンステレーションに新たな3体のデスドライヴズが襲い掛かる。
出典:勇気爆発バーンブレイバーン 公式サイト
ブレイバーン第8話のネタバレ感想・考察
デスドライヴズの目的
前回も語ったけれど、デスドライブズは異なる自殺願望を抱いている。スペルビアが推して参りたいのも、武人としての死を望むが故だ。
また望む死の内容は、それぞれが七つの大罪に割り当てられいる。
彼らの望む死と大罪は以下となる。
機体名 | 大罪 | 望み |
スペルビア | 高慢 | 武人としての誉れ高き死 |
クピリダス | 強欲 | 滅茶苦茶でハチャメチャな死 |
クーヌス | 淫蕩 | 宇宙一の快楽の果ての死 |
ヴァニタス | 虚栄 | まばゆい光に照らされた死 |
ペシミズム | 悲観 | 感じたことのないほどの悲しみに包まれた死 |
なお、公式によると『死』は侵略兵器の手段ではなく、『死』を目的として侵略を行っているようだ。
要は自分たちは基本的に不死身で死に対する憧憬を抱いている。
そして自分たちじゃその理想の死に至れないので、他の星に喧嘩を売って自分たち殺しにくるよう仕向けているわけだ。
侵略行為はあくまで目的を達するための手段でしかない。
そう考えると、堂々と地球を侵略しているのに、スペルビア個人からは敵意や悪意のようなものが感じられないのも理解できる。
また、デスドライヴズの語源はおそらくデストルドーから。
死や破滅に向かって自ら進んでいく欲望、即ち破滅願望である。
機体名については、七つの大罪の元になった八つの枢要罪だろう。
まさしく彼らは各々の欲望という名の罪で他を害する存在なのだ。
デスドライヴズは塔から自分たちを再生(再生産)可能な上、その塔を壊されても母艦のような存在からも復活してきた。
スペルビアもこの方法によって復活を果たしたのだろう。
(なぜかルルのみ母艦からは生成できない?)
デスドライヴズにとって死は終わりではない。
輪廻転生どころか生と死は完全な地続きで一つの現象でしかないから、死に対してまるでファッションのような願望を抱いたのだろうか。
クーヌスがデスドライブズの復活をできなくした理由
今回その母艦がクーヌスによって破壊されてしまった。
これにより、塔の破壊が本当の意味で致命傷となる。
母艦は地球の外に待機していたことから考えて、塔が破壊された際に復活するための保険。
そして他の星への移動手段でもあると思われる。
どちらもなくなると困るものなのは考えるまでもない。
デスドライヴズがバカスカ死ねるのは、それが望む形の死じゃなくてもやり直せるから。
今回、遂に彼らは自分たちに望む死を与えてくれる存在を見つけた。
だから我先にと三機のデスドライヴズたちが集まってきたのだ。
しかし、ここで意見の食い違いが起きた。
ヴァニタスやクピリダスたちは最高の瞬間を何度も味わいたいと思っているので、保険的な再生手段を重宝している。
(ペシミズムは新たな哀しみをゲットできたので、結果オーライの可能性もあるかも?)
クーヌスだけは最高の快楽をやり直しのできない一度だけの時間と考えた。
時間と空間を操る能力を有しているので、やり直しに価値を見いだせないのかもしれない。
そうでなくともクーヌスが変わり者なのは事実だろう。
他の皆がブレイバーンに期待する中で、彼女だけがあえてスミスを選んだ。
それもスミスを選んだ理由は、理論的ではなく直感的なものでしかない。
戦力的な格差をスミス側から埋める手段すらなく、本来ならクーヌスが負けることは不可能だ。
それでもスミスと最高の交わりを求めるがゆえに、自分が内蔵していたルルすらあえて放棄して、わざわざ自分の方を下げている。
ブレイバーンと同じく精神的な感応であると思われ、同時にスミスは生理的に無理と拒絶したブレイバーンと真逆の行動だ。
しかしながら、クーヌスが最高の快楽を得られたのかは謎である。
ルイスが最後にパーツを分離して攻撃した際、彼女は驚いた反応をした。
それはつまり『クーヌスが思っていた交わり方』ということであり、やり直しを放棄したことで、結果的に彼女は望んでいない終わりを迎えたのかもしれない。
ヒーローではないままヒーローになったスミス
子供の頃からヒーローに対して強い憧れを持っていたスミス。
しかしブレイバーンには生理的に無理と言われ、クピリダスとも適合できなかった。
しかし彼自身は性格も能力も人並み外れて優秀で、本人の望みとは裏腹に、ヒーローのサポーターとしての役回りで出世を果たした。
自分の願いとは異なっても、軍人として任されれば嫌味の一つも言わずに全力を尽くす。
ゆえに少しの趣味は入っても、部下たちからの信頼も厚い。
乗せるのは無理と言われたもの、能力面ではブレイバーンからも高い評価を得ている。
そして誤解から距離を取られていたイサミとも和解できて、今やまさに専有の間柄だ。
彼は何処までもヒーローになれない秀才だった。
唯一の例外はルルである。
彼女という特別な存在が懐きそばにいることで、彼は保護者的な役回りとはいえ『選ばれた人間』であったと言えるだろう。
そんなルルが共に戦うことで、ライジング・オルトスを操縦することができた。
それでもやはり特別な力とまでは言えず、襲来したクーヌスを相手にまるで歯が立たない。
部隊の仲間たちは次々と倒され戦闘不能や戦死に追い込まれていった。
そしてスミスは覚悟を決めた。
ルルに皆を頼んだと理由を付けて機体から脱出させる。
そしてたった一人での特攻。
「どうだ俺のTSは。クールだろ?」と彼は自らそう言った。
TSは本来彼が乗りたかったマシンではない。格好いいヒーロースーツやブレイバーンのようなスーパーロボットこそが彼の望みだった。
それは存在しないと言いきかせて、彼はTSに乗っている。
しかも、最後にスミスはまだスーパーロボットのようなデザインの外装を自ら脱ぎ捨てた。
骨組みのような無骨なマシンになって最後の一撃を撃ち込んだ。
それはどう見ても、彼が望んだヒーローの姿ではない。
英雄ではない、兵士による泥臭い捨て身の一撃。
しかし、そこに後悔はない。
仲間を守り、ルルに未来を託して。
彼はありたっけの勇気を爆発させたのだから。
その瞬間、その姿、ルイス・スミスは間違いなくヒーローだった。
遺されたルルの成長
スミスの相棒となり大活躍すると思われたルルだったが、現実は戦闘ではまったくと言っていい程力になれなかった。
無論それは相手が強過ぎたというのが一番の理由ではある。
けれど、スミス自身がルルを相棒ではなく子供として見ていたのも大きい。
やる気満々のルルに対して、最後は負けたよと認めたように搭乗を許可した。
けれど、それは結局のところ状況的にそうせざるを得なかったからだ。
ブレイバーンやイサミのように、良くも悪くも一蓮托生な関係ではない。
だから、最後の局面でルイスは理由を付けてルルを脱出させた。
皆を任せたと言ったが、それはあくまでルルができる範囲の話で、脱出の方便なのは考えるまでもない。
ルルだって、自分のしていることがいかに危険だったのかを正しく理解していないだろう。
あくまで子供の駄々っ子で、それを軍が認めたのも、人類存亡を賭けた戦いだからである。
ルルが本当の意味で戦場に出るには、彼女の精神的な成長が必要だ。
そして、人の成長とはどのような時に促されるか。
一つは大きな困難にぶつかり、それを乗り越えた時。バトル系のアニメや漫画ならお約束の王道展開である。
なら他には?
こちらは知らない人も少なくないだろう。もう一つは、取り返しの付かないものを失った時だ。
その痛みが人に成長を促す。逆に言えば心の成長痛でもあり、これは青春と言い換えてもいいだろう。
自分の弱さや未熟さから大事なものを喪失したならば尚更だ。
スミスを失ったルルは、彼の名を呼ぶ。その声色は、明らかにあどけない子供のそれとは異なっていた。
大切な人を失い、痛みを知り、ルルの幼児期は終わりを告げた。
この先、デスドライヴズと対等に戦える力を、彼女が本気で欲したならどうするだろう?
どれだけの才能がルルに眠っていたとしても、地球の兵器では敵わない。
ならば地球外の力ならば?
あるのだ。誉れ高い死を望み、しかしルルの意思を感じ取ったことで、戦うことをやめた存在だ。
それでも諦めたわけではない。
彼は今も、ただただその時を待っている――
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