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仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本 短編だから見える作品性【感想・考察】

2021年1月10日

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ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

新年一発目の考察記事はセイバーの劇場版となります。

先に書いたゼロワン側は、作品全体としての集大成であり壮大なエピローグでもあったため、かなり掘り下げて書きました。
逆にセイバーはわざわざ短編と称される程の短い作品であり、正直感想や考察を書くかどうか迷ったのですよ。
とはいえ、思うことを整理してみると案外書きたいことはありました。

特に仮面ライダーが短編映画になるとどうなるのか。視聴者にはどう映るのか。
ここら辺を掘り下げると、結構面白いことがわかるし、書けるのではないかと。

そんなわけでゼロワンに比べると短編でサクッと読める、短編映画の短編考察・感想をお送りします!

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ネタバレ無し感想

ゼロワン感想で書いたが、ゼロワンは当初の予定より上映時間の尺不足が増えた。
その影響を受けるのは当然セイバー側であり、最終的に二十分の短編映画となった。
しかも、この二十分という枠すら中々定まらなかったそうだ。

通常、冬映画のクロスオーバー枠は最新作が優先される。
例えば前作劇場版の『令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』では、まず新作側のストーリーを固めてから、前作メンバーの活躍を入れ込む形式で作られていると白倉Pが前夜祭にて解説している。

もちろん全体の構成を決める時点で、前作側のシナリオや出番もある程度は考慮されて組み立てられるだろう。
それでも商業的に推したいの側が新作であり、そちらを優先した作品作りとなるのは当然だ。

短編になると、とにかく余分な要素は削り落とされる。
セイバーという作品を構成する核の要素、そして劇場版ならではの派手な演出に集約されていく。

そうなる過程でストーリーもシンプル化していくのは道理だ。
元々セイバーは第一話からスーパー戦隊みたいな作品性だと言われていたが、短編映画の文脈もまさしくスーパー戦隊に寄っている。

その結果、ライダーファンからは『中身がない』というストレートな感想が多くなった。それ自体は間違いではないだろう。
シンプルとは余計な要素が省かれているからこそシンプルなのだから。

昨今SNSでは何かとスーパー戦隊やウルトラシリーズと比べられて仮面ライダーへの批判が増えた。
だからと言って、一話完結の尺と構成でシンプルに格好良い要素を抽出したら『これが俺達の観たかった仮面ライダーだ!』とはならない。
それより先に中身の薄さや強引さをツッコまれる。
現在の仮面ライダーがシリーズとして求められているのは、一話完結スタイルでの完成度ではなく連続性のある深いシナリオだとも再認識できた。

それでも、セイバーは二十分の枠でそれなりに上手く話をまとめられていたと私は思う。
短い中で作品性を出そうとすると、純粋にセイバーとして表現したいものが浮き彫りになる。
また、与えられた映画予算が短時間の枠に敷き詰められているとも言えるため、演出面は派手だ。そりゃあもう派手だ。

ストーリー性は薄くても、映像的な見所で言うならそこらかしこにある。
これぞ「特撮!」な迫力は、やはり映画の巨大スクリーンでこそ楽しむべきものだと思うのだ。

私としては短編でストーリーが薄くなるのなんて最初からわかりきっていたことで、格好良い映像と演出を繋ぎに繋いで作られた『仮面ライダーセイバーとはこういう話だ!』を結構楽しめたため、そう悪い印象は持っていない。

セイバー単体で言えばそりゃあ物足りなさはある。しかしゼロワンと二本立て前提だからこその尺であり、やはり単体としてのみの評価を全てとすべきではない。
故に、濃密なゼロワンタイムを味わう前にサクッと楽しめるポジションで、とにかく派手な作品だったというのが総合的な感想だ。

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短編映画を掘り下げた底に光る面白さとは

余分を削った末に、セイバーという作品とはどう形作られていて、何を伝えたいのか。
その答えが劇場版の物語そのものだろう。

特徴的な六人の剣士が協力しあい、地球とは異なる世界で悪と戦い世界を守る。
これでスッキリ片付くあたり、セイバー本来のシンプルさがよくわかる。

セイバーにおける仮面ライダーとは、それぞれが聖剣に選ばれ、共に悪と立ち向かう仲間達だ。
横並びで歩き、同時に変身する演出も、チームとしてのライダー観をシンプルかつ分かりやすく示している。

特に全員同時変身は、本編だとありそうでなかった事柄でもある。
六人という数もさることながら、セイバーの変身は基本的にバンク映像だ。

これはコロナ対策の一つとして機能しているが、それ以上にCG処理班の負担軽減の意味合いも大きい。
特に昨今では、多くのライダーが色んなシチュエーションで変身しているが、そこにかかる負担が大きいことが問題視されていた。

その対策として導入されたのが変身バンクだった。
バンクの連続使用は時間的な尺を使うし、リアルタイム感の消失などで同時変身感そのものも損なわれてしまう。
(バンク演出はライダーにファンタジックさを与える要素でもあるため、一概に悪いとは言えないのだが……)

順番に本が開き、一人が変身すると隣り合う次へと繋がり、ぐるりと一巡していく。
六人続く変身を飽きさせず順番に見せていくこの演出は、チームとしての連帯感と見応えを両立していて、歴代の劇場版ライダー変身演出でもトップクラスの格好良さだった。
ゼロワンまで通して、劇場まで足を運んで良かったと思った最初のシーンでもある。

続く戦闘もとにかく格好良さと演出重視だ。
二十分で十四フォーム消化という無茶を敢行しており、次々とフォームが切り替わり派手な技も連発される。

大量の雑魚を蹴散らしながらキメまくるこの戦闘シーンの文脈は、仮面ライダーではなくむしろスーパー戦隊だろう。
これも元々スーパー戦隊味のあるセイバーなので違和感があまりない。

そして色と役割どちらもレッド役のセイバーは、敵ボスの仮面ライダーファルシオンに集中している。
この戦いもとにかく派手!
特にナパーム二十連発やCGではなく本当に燃えてる火炎剣烈火を持たせての演技など、飛羽真役の内藤秀一郎氏もかなり体を張っている。

なお、ナパームのすごさをわかりやすく言うと、最近だとイズが壊れる時にチュドーンと爆発した演出に使用したのがナパームである。
飛羽真の周りでイズが次々と爆発していったに等しい。爆発の数だけ或人社長の絶望が深まるぜ。

変身前のバハトは、アマゾンズで絶大な知名度と人気を得た谷口賢志氏だ。
むしろアマゾンアルファがハマり役過ぎたため、キャライメージが固定されてしまった感まである。それは谷口賢志氏にも自覚があり、オファーを受けた時は迷いもあったそうだ。

しかしながら自分のデビューが東映の、それもニチアサ作品であることから、ニチアサに対して恩返しがしたい。
敵役のライダーで、他のライダーを倒す気満々(喰っちまうよう)な存在ならと考えていたら、まさしくドンピシャの役柄だった。
作品としても、短編の短さで強敵かつ濃い印象を与える必要がある。もはや最適解ではとすら思う采配だ。

仮面ライダーならではの要素として、思想のぶつかり合い的な要素もあるが、これも戦いながらやる。
ここではモモタロスの『戦いはノリの良い方が勝つ』理論がそのまま炸裂。

最初に独自理論を展開するファルシオンが押しまくり、キャラの濃さと強敵感を出す。
谷口賢志氏が迫力出して真理っぽく言うとやたら説得力がある。
争いが終わらないなら人類滅ぼして争いを根絶する。戦いの果てに行き着いた終末理論だ。

しかも破滅を望む本人は不死身なため封印されていた男であり、破滅させるために戦い続ける矛盾した装置と化している。
人として破綻した凶人っぷりがめちゃくちゃ似合う。

対する飛羽真は「人間は争いだけじゃない」と反論する。人類の歴史とは争いの歴史であり、文化の歴史でもある。

それだけでなく、本もまた文化の一つであり、その文化を書き記す役割も担う。
人の創り出したものを信じ、人を護る。
最後は飛羽真の意思を形にするようパワーアップしての大逆転。

なお、パワーアップに理屈的な説明はなかった。
これは整合性無視した手抜きのようにも思えるが、そもそも飛羽真は普通のホモサピエンスでは扱えない聖剣を当たり前のように扱った系ホモサピエンスである。

第一話の伏線を、改めて張り直したとも解釈できる。
そうしてバハトは再封印されるが、復活させたのが誰かは不明なまま。
けれど犯人と思われる者ソードオブロゴスにいることを匂わせるカットを入れてくる。

明言こそしていないが、度々再登場があるような前提の話がされており、劇場版の短編ながらいくつか今後の伏線も蒔かれている。
『セイバーという物語』の一つとして刻んでいくスタイルであり、忘れた頃に回収してくれると視聴者は大体手の平返してテンション上げるやつだ!
地上波で谷口賢志氏がセイバー達を喰らいに来る日を楽しみにお待ちしております。

そして物語の締め、最初に勇気を出せず友達の輪に入れなかった少年が、仮面ライダー達の活躍を見て心を動かされ、自ら新しい一歩を踏み出す。
自分の物語の結末は自分で決める。そのために必要なのは一歩を踏み出す勇気。
それこそ、劇場版セイバーが一本の作品として子供達に残したいメッセージなのだ。

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