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シンエヴァ【感想・考察】庵野監督の心情で読み解くともっと楽しくなる解説

2021年3月21日

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『エヴァの呪い』の本質

ニアサードインパクトによってネルフに関わる者達は十四年が経っても変化しない体質になってしまった。
しかし、『エヴァの外側』にいた者達は年を経て大人になっていく。

エヴァの関係者だけがエヴァに囚われ時代に置いていかれていく。
これはそっくりそのまま『エヴァに関わった者達』だろう。

エヴァファンにとって綾波はずっと綾波で、口紅塗って微笑んだら解釈違いでこんなの綾波じゃないと言い出す。

アスカはずっとツンデレで実はシンジが好き。ラブってコメろ!

つまりは、『そうあってほしい僕たちのエヴァンゲリオン』イメージを持ち続けている。
いやぁ囚われてますね! どちゃくそに!

もちろん作り手だってこうまで売れてしまったら、いつまでもエヴァエヴァしてしまうエヴァ。
庵野監督とガイナックスはエヴァが利益に囚われ続けた結果、学生時代からアニメを作り苦楽を共にしてきた親友と、事実上の絶縁にまで至っている。
祝福と呪いは表裏一体なのだ。

わかりやすくエヴァを再構成してスタートした『序』。
変化が起きて明るい方向に進みだした『破』。

しかしエヴァによって起きた呪いを描いて『Q』は再び業深き作品となった。
結局エヴァはエヴァだったのかとファンからは少なくない落胆の声も出ていた。

これによって庵野監督は身も心も疲れきり、塞ぎこんでしまう。

碇シンジ復活! 碇シンジ復活! 碇シンジ復活!

『Q』を制作した後はうつ病が酷くて、自分の立ち上げた株式会社カラーに近付くことさえままならない。酷い時は自殺すら考えていたという。

庵野監督はエヴァに関わりうつになったことは以前にもある。
もういっそ死んでしまいたい。しかし死には至れない。

塞ぎ込んで、逃げ出して、苦しくて、苦しくて、苦しくて。
自分の生み出した。自分がやってしまった。起こしてしまったシン・エヴァという名のニアサーに追い詰められ、ファンの声も絶望のように降りかかる。

それでも死ねない。
どれだけ死にたくても腹は減る。
死にたいと思っているのに、悔しくて涙を流しながら飯を食べる。
そんな日々を繰り返す。

周りの人達はそっとしてくれたり発破かけてくれたりする。

地獄のような赤い世界。
そんな中にでも存在するのどかで活気のある村。
どちらも確かにある心象風景のようなものではないだろうか。

暖かな自然のある風景は、庵野監督が愛してやまないジブリを思い起こさせる。
(実際関わってましたネ!)

たとえ一人になっても皆は見捨てず、優しい声をかけてくれる。

『風立ちぬ』の声優やらないか。
『シン・ゴジラ』を作らないか。
『シン・ウルトラマン』を作らないか。

ジブリ作品、ゴジラやウルトラマンの特撮はどれこれも庵野監督が好きな作品である。
それらを手がけられる環境の中で徐々に復活した庵野監督は、シン・ゴジラは空前の大ヒットを飛ばし安心から自信を取り戻す。

そう、綾波(ゴジラ)が帰らぬ人になり、目の前の戦いに再び立ち向かうことを決意したのだ。

いや勝手にゴジラを殺すなと言われましても、あれ絶対続編作れないじゃないですか。
その後の作品がアニメや海外だけで、本流の日本特撮ゴジラはこれからマジでどうするんだろうね?

エヴァを終わらせるにはゲンドウと向き合わなければならない。
父と子の和解。よくあるテーマなのだが、延々とこじらせ続けたゲンドウとシンジである。
特にゲンドウ。自ら息子を隔絶してきたクソ親父イメージをゴリッゴリに固めてきたオッサン。どうすればファンは納得する?

そうだ、同じ環境を別側面から見れるキャラをもう一人作ろう。
ミサトさんがご懐妊をすっ飛ばし子供がシンジと同年齢になってました!

自分への戒めとして息子と会わない。
けれど心では息子を想う親。

シンジに対する冷たい態度も本質は同じで、焚き付けた自分への罰であり、これ以上シンジに十字架を背負わせないためでもあった。
向き合わなければ人の本心は見えないのだとシンジは学んだ。

そしてゲンドウはフォースインパクトを発動させる準備を終える。ある意味で空気を読んだクソ親父! 最後の大舞台は整った!

【次ページ:落とし前を付けるの意味とは】

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