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仮面ライダーファイズ/555 8話『夢の守り人』
ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。
第8話はファイズ屈指の人気回で、状況に流されるよう戦ってきた巧が自分の使命を見出す話でもあります。
それだけでなく、登場人物達の想いが収束してそれぞれ結論に辿り着く。
泥臭くもがき続けた先で光るこのカタルシスこそが井上敏樹脚本の醍醐味!
真理と巧の関係性はもちろんのこと、オルフェノクサイドの特に海堂と木場の関係性はとても興味深いものがありました。
では、それぞれの動きを元に今回の物語を考察していきましょう。
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オルフェノクである自分を受け入れることの意味
オルフェノクになると強大な力に溺れて心まで怪物になってしまう。
それが本当の意味で怪物(オルフェノク)になるということだろう。
海堂は自分の才能を奪った誰かが大学にいることまで突き止めたが、結局復讐を果たすことはなく終わる。
それよりも自分に懐き、才能ある後輩の奏でる音楽を優先した。
小説版でも海堂の設定は元天才ギタリストで変わっておらず、『頭の中に音楽が響く』ため自分を見失って人間を襲うことがない。
TV本編で海堂が人間を憎むのは、誰かの悪意で夢を絶たれ呪われたため。
しかし人間が生み出したギターと音楽に執着しているからこそ、最後まで人間を捨てきる選択もできなかった。
やはり一番変人で突拍子もない行動ばかりとる海堂こそ、ファイズにおいて一番泥臭く人間らしい人間として描かれている。
長田の心の奥には人間に対する恐怖や憎しみがある。
人間時代に受けていた酷い仕打ちを考えれば、これは致し方のないことだろう。
全体的に暗く受動的に動く長田だけど、海堂が夢を絶たれた理由が誰かに仕組まれた事故だったと知ると涙を流した。
他人の悪意に一番敏感であるがために、自分と重ねたのだろう。
そして海堂にギターを弾いてほしいと、頼まれごとでもなく自分から願い出たのだ。
この時点で長田は海堂に対してかなり入れ込みだしている。
やはり実際に近くで海堂を観察していた長田と、怪我で寝ていた木場では感じ入ることが異なるのだろう。
見た目と言動のメチャクチャさが海堂にとって自分を守る壁にしているのが、ここでもよくわかる。
また長田は木場が人間が好きで自分も人間でありたい。そして私達にもそうあって欲しいと考えていながら、人間を受け入れようとしていない。
あえて言葉にはしないが、自分がオルフェノクだと受けれいているように感じられる。
海堂の夢を壊した犯人にぐいぐい踏み込み詰問して、襲われそうなるとオルフェノクの力を使って上手く撤退した。
その姿に以前の弱々しい少女の姿はない。
前回スマートレディに指摘されたように、長田だけは心まで怪物化する素養が強く残っている。
口では否定してもそのことにある程度自覚的でもあるだろう。
一見派手でメチャクチャだけど中身はまともな海堂。
一見おとなしく内向的な少女だがモンスターを受け入れかけている長田。
木場の前途は見かけよりもすっと多難だ。
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夢の呪いと解呪
知ってるかな、夢っていうのは、呪いと同じなんだ。呪いを解くには夢を叶えるしかない。
けど、途中で夢を挫折した者は、一生呪われたまま……らしい。
あなたの……罪は重い。
海堂は心から音楽を愛していた。
その想いと想いにかけてきた時間はどうしようもなく本物で、夢への道を絶たれても諦めることができない。
海堂の語る呪いとは、未練という名の執着だろう。
これは現実でも強く当てはまる話だ。
余談の上に聞いただけの話で真実かどうかは不明なのだが、声優業界は極めて競争率が高い(これは確固たる真実)。
そして声優のギャラは技術や人気に関係なく、年功序列でも自動的に上がっていく。
これは声優の生活を守るためのシステムではない。
人気の出てない声優の給料がアップしたら、より選考で選ばれる可能性やオファーがかかる確率は下がる。
上がれば上がるほどに仕事が得られなくなっていくのだ。
そうしていつしか夢を断念せざるを得なくなる。
声優は元々競争率が高いため、バイトをしながら仕事を得るのを待つケースが多い。
人気声優になりたい夢を諦めきれない人は、ズルズルと実質フリーターと同じ生活を送り続ける。
このままじゃダメだとわかっていても諦めきれない夢。
そういう声優の未練を、あえて断つためのシステムだ。
それ程までに、叶えられない夢は呪いへと変わってしまう。
海堂はそのことを嫌という程に味わっているのだ。
夢を持たない木場は、海堂の言葉を聞いてその夢を奪った教師に怒りを燃やす。
木場の怒りは他人を想い遣れるからこその優しさと言えるだろう。
しかし木場のしていることは復讐代行であり、決して前向きな行為とは言えない。
犯人を倒したところで海堂が救われるわけではなく、そもそも頼まれたわけですらないのだ。
海堂は大学で夢を託せる者を見つけて、ようやく夢を捨てられた。
自らの手でギターを壊したことで呪いは解けたのだ。
これは他者の才能を認められず、生徒に夢を託すことができなかった犯人の教師とも対比構造になっている。
そして、海堂の出会えた救いは木場の戦いとは何の関係もない。
確かに人を襲い、才能ある者を潰す犯人は卑劣極まりない。
けれど木場は海堂の事件を通して勝手に怒り、勝手に始末を付けただけだ。
前回の感想でも書いたけれど、木場は怒りを原動力にして戦う。
悪く言えば、今回も木場は自分の感情に任せてただ許せない相手を倒したに等しい。
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熱く切ない夢と護り手
今回も戦闘ではオートバジンが登場した。
ピンチの巧にマシンガンでの援護射撃だ。遠近両用のスゲー奴である。
けれど敵ごと撃とうとしちゃうドジっ子バジンちゃん。
助けにきたはずが蹴飛ばされてビークルモードに戻されてしまう哀しみ。
そしてハンドル部分を引っこ抜かれてファイズ固有の剣、ファイズエッジが初登場した。
これまでのライダーシリーズの剣とは一線を画するデザインの格好よさ!
必殺技で相手の動きを止めて攻撃するという部分はクリムゾンスマッシュに近い。
同時に前回敵を仕留め損ねてしまったデジカメパンチことファイズショットの立つ瀬がない。
とはいえ、ファイズエッジはリーチも威力もあってアタッチメントの中でも強力だが、反面使うとオートバジンの援護がなくなる欠点がある。
相手の動きを止めるプロセスがない分命中率は悪いが取り回しは良いファイズショットとの使い分けは一応できている。
ファイズエッジの格好良さも素晴らしかったが、やはり今回は変身シーンがとても重要だ。
この話は巧にとっても一つの転機になる。
おい知ってるか、夢ってのはな、時々スッゲー熱くなって、時々スッゲー切なくなる……らしいぜ。
俺には夢が無い。けど、夢を守る事はできる! ……変身!
クラシックギターの伴奏を流しながら巧と木場はそれぞれ他者から聞いた夢を語る。
海堂の演奏は海堂の目指した夢そのものだ。
夢を背景に、夢を守る者と復讐代行者がそれぞれに夢を奪おうとする者達と戦う。
特に巧は上記のセリフと共に変身して戦う。これが素晴らしく熱い!
巧は夢を持つ者を理解できない。
理解できないが、真理が落ち込んだり努力したりする姿を見て守りたいという意思を見出した。
自分が人を裏切り失うことが恐いと思っていた巧が、失うよりも守たいと思ったのだ。
不器用で露悪的な巧が、初めて守るために戦うと決意した。
乾巧という人物は、ここで初めてヒーローとしての意味で『仮面ライダー』のスタートラインに立った。
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