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乾巧と草加雅人の屈折した仲間意識

2018年10月5日

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

『仮面ライダーファイズ』の特異性は人間と怪人(オルフェノク)の交錯にありました。
主人公である乾巧自身がその筆頭であり、オルフェノクの破壊衝動と人間らしい感情に揺れ動く木場勇治はもう一人の主人公と言っても差し支えのない存在です。
そしてある種、怪人よりも質の悪い性格の仲間もいました。
それがファイズの魅力を語るにおいて、必ず避けて通れない存在でもある草加雅人です。

作中の二号ライダーは最初こそ敵対しているパターンはあれど、どこかで打ち解け合い友情を育むものです。
しかしこと草加雅人だけは、その掟とも言える黄金パターンを真っ向から破壊した男でした。

仮面ライダージオウでもレジェンドライダーとして本人が客演したことからも、その重要性と人気がうかがえます。
今回はファイズ本編における乾巧と草加雅人の特殊な関係について掘り下げましょう。

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草加雅人の人物像

草加雅人はスポーツ万能の大学生で、幾つものサークルを掛け持ちし仲間達からも信頼を寄せられている好青年。
と見せかけて、中身は非常に裏表の強い人物で、自分に敵対する者や都合の悪い存在は徹底的排除する。

それも純粋な暴力だけでなく、嘘や謀略を駆使しコミュニティから排除するという陰湿な手を平然と使う。
非常に陰険な人物として描かれている。
実は良い奴とか、訳あって悪人振っているわけじゃなく、素の人格からすごく嫌なヤツなのだ。

草加を信用せず隠し事を追求しようとした巧は、彼を特に毛嫌いしていた。
草加も草加で、最初は後輩ライダーとして謙虚な振る舞いを見せつつ、裏では巧が仲間達と反発するように仕向けた。
他の仲間達がいない場で、冷淡にねちっこく嫌味を吐くのはデフォルトと言っていい。

巧を積極的に排除しようとしていた頃の台詞が、草加雅人という人物をよく表している。
「俺のことを好きにならない人間は邪魔なんだよ」

草加はオルフェノクに対しても強い憎悪を向けている。
木場等の人間に対して友好的なオルフェノクですらそれは変わらない。
むしろ巧と木場が手を取り合う動きを見せたら積極的に邪魔した。

また同じ流星塾(小学校兼養護施設)で虐められていた草加を助けてくれていた園田真理に対しては、偏執的な愛情を抱いておりヤンデレ属性まで持っている。
小説版ではなんと犯罪まがいの方法で真理の処女を奪っている。
真理は木場に対して好意を抱いていたことも、草加が木場への敵愾心を燃やす大きな理由となっていた。

こうした嫌味な立ち回りと偏執的な愛情を抱き続けた結果、邪魔者を排除するはずが逆に皆からの疑心を買ってしまう。
そうして自分が仲間達から徐々に離反していくことになった。

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草加雅人のブレない強さ

こういう性格なので、草加雅人を嫌う視聴者も多い。
ファイズは昼ドラのようにドロドロとした展開の多い作品だったが、その中でも一際大きな要因だったのが草加雅人といって過言ではない。
そもそも仮面ライダーのそれも二号ライダーでありながら、ここまで徹底的に主人公や他の仲間達と敵対し続けた人物は他にいなかった。

それはそれだけ草加が卑劣な冷血漢だったことを示している。
嫌う者が出るのは当然の反応としか言いようがない。

ただし、嫌な役回りだったからこそ、草加がファイズの物語を大きく動かして盛り上げていたのもまた事実だ。
そしてファイズという作品は味方側の登場人物は、自分の在り方や他者との関係性に思い悩むシーンが多い。
その中で草加は唯一と言っていい程、自分の行動に迷いが無かった。

全く無かったわけではないが、一度たりとも己の信念に背いたことがない。
数少ない迷いも、両方自分の信念に関わるもので、真理を生き返らせるためにスマートブレインへベルトを差し出すか否かだった。
あまりに強固な信念は己の死期が見えてしまい、父親と慕った存在に戦いを辞めるよう警告を受けても止まらない。

作中で誰よりもある意味真っ直ぐ我が道を行き、それが死ぬまで変わらなかった人物。
そういう評価も同時に与えられており、嫌う人も多いがファンもかなり多いという、好き嫌いがかなりハッキリ分かれる。
これだけ嫌な奴なのに、ディケイドでは声だけとはいえ客演として呼ばれ、『平成ライダーVS昭和ライダー』でも全くブレない立ち位置で登場。
ジオウでも乾巧と共に本人が再登場したのもこの人気があってこそだ。

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巧と草加の複雑な関係性

巧という人物を簡潔に表現すると、根は良いヤツだがひねくれ者で口が悪い。
二人の出会いは偶然によるものだったが、気に入らないという理由から巧が草加に突っかかるような感じで敵対した。
素直になれない性格の巧と、自分に敵対する者には全く容赦がない草加は根本的に相性が悪い。
それは巧も自覚して草加に対して言っていたことだった。

そして巧は草加から度重なる嫌がらせを受けており、かなり激しく対立していた。
草加の性格は抱え込んでいる過去が起因していると知ると、巧は攻撃的な態度を収めて草加を救おうとするようになる。
ただし当の草加はむしろそれを嫌っていて、争いの火種になってしまうこともあったが……。

しかし草加も草加で、途中で巧の排除を辞めてファイズの力をあえて利用するため、強化アイテムを渡したり共闘したりすることもあった。
巧が必要以上に味方を得たり力を付けたりすることは邪魔しつつも、共に戦う時は普段の敵対とは裏腹に息の合った戦闘を見せる。

決して友人とは呼べない関係であり、草加はまともに巧を仲間として扱ったことはない。
ジオウでは巧が草加を仲間と呼んだが、ファイズ本編で二人の関係を仲間と称したのは草加の方だ。
しかしそれは巧に自分の嘘を信じ込ませるための方便に過ぎなかった。

草加にとっての巧は、せいぜいがオルフェノクと戦う時だけは味方程度の扱いだった。
巧も直接草加を救いたいと口にしたことはなく、まともに仲の良かったシーンは本編で一度もない。

しかし草加が死亡した時に、真っ先に見つけてその死を最初に惜しんだのは巧だった。
ひたすら敵対し続けながらの共闘だったが、それでも巧は草加という戦う存在を心の何処かで認めていたからこその反応だろう。
友でなくても、信用できなくても、彼らは『仲間』として共にスマートブレインという途方もなく大きな敵と本気で戦い続けていたのだ。

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