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【仮面ライダージオウ】46話 感想 エターナルによる永遠の世界の否定が意味すること

2019年8月5日

仮面ライダージオウ 46話『2019:オペレーション・ウォズ

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。


今回を除いて、残り三話!
ガンガン話が動いていますね。
その中で所々レジェンドが物語にアクセントを加えていくスタイル。

ジオウが主体の物語構成時におけるレジェンドの活躍はこういう感じなのかーというのが理解できた話でもありました。
扱いに関しては相変わらず賛否両論ありますけれど、ひたすら持ち上げるだけでは予定調和になってしまいます。
そして、そういうお決まりのパターンを拒み続けてきたのが平成ライダーなので安易に否定もできない複雑な部分だなあと。

ちなみに大道克己については、演じておられる松岡充氏の想いから前回の台詞における一部や、今回のラストポーズが取り入れられていました。
そういう想いを汲み取って一つの意味ある形にしてみたいなという思いも今回の考察には込められています。

そして今回のアバンはオーマジオウでしたね。
これはオーマジオウへと至る未来への道筋が、具体的に見えてきたことを指し示すものだろうと思います。

オーマジオウに向かう未来への立役者として、スウォルツが黒幕として捻りのある面白い立ち回りを見せてきたことにも注目したいところです。
では、今週の感想と考察を始めていきましょう。

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アナザーワールドの破壊はトリニティであることが重要

アナザーワールドに取り込まれたゲイツ達を救うため、ソウゴが取った行動はトリニティによるまさかの強制変身だった!
あの無理やり合体ネタを本編で意味のあった行為に変えてしまったぞ。
ゲイツとウォズはこれまであの強制変身のポーズや反応の演技でめっちゃ遊んでたのに、シリアスで使ってくるとは予想の斜め上だった。

トリニティで強引にアナザーワールドから引き出す展開は予想として考えはしたけど、次元の壁を越えないといけないことからも、流石にないよなぁと思っていた流れだ。
いつものようにソウゴとゲイツの友情を再認識させる所謂『エモさ』を形にするような展開で攻めてくると思っていた。
今回のゲイツがアナザーワールドでソウゴへとぶつけた台詞、次回予告ではどう見たって熱い展開で敵の罠を突破するシーンだと考えたろう。

今回一番手放しで面白かったストーリーギミックはまさにここだった。
今まで蓄積していたゲイツとソウゴの関係が、今更完全に崩れるなんて誰も思わない。
むしろこういう障害を乗り越えてより固い絆で結ばれるようになる。そう考えるのが普通だ。

そういう希望を、スウォルツは逆に悪用する。
いつもならゲイツが熱く自分の想いをソウゴへぶつける展開を、アナザーワールドで延々と繰り返す。

メタ的な視点も加わって、『いつものソウゴ大好きヒロイン的なゲイツ』が客観的に視聴者の目に写る。
こうすることでゲイツの想いはどこか滑稽なものとなって、同時に共感性がありながら玩具にされている感が出てくるのだ。
このある種の無様さを、次回予告すらも上手く使って違和感なく視聴者に刷り込んでくる構成が実に面白い。

そして、この局面をあえてトリニティで突破する。
ジオウトリニティは『ジオウ』本来の時間軸に存在しない。
ソウゴとゲイツ、そしてウォズの三人が作った新たな歴史と絆の象徴だ。

言い換えればオーマジオウに至るため生まれるべくして生まれたジオウⅡとは違い、トリニティの存在には必然性がない。
そりゃそうだろう。仮面ライダーウォズやゲイツリバイブもまた、本来とは別の時間軸から現れた存在。
トリニティはいてもなくても、オーマジオウの歴史には繋がる。

ならばトリニティの存在には意味がないのか? それは違う。
トリニティが意味するものはジオウや平成ライダーとは別の次元にある人は変われるという未来の可能性だ。

ソウゴの命を狙っていたゲイツ。そしてゲイツ達レジスタンスを裏切りオーマジオウの未来を望むウォズ。三人の意思が一つになる可能性は本来あり得なかった。
あり得ないはずのものがあり得た、可能性の具現化こそジオウトリニティの本質。

これは前回ソウゴがウールに望み叶わなかった可能性の未来の善し悪し。
そしてゲイツを信じたソウゴの気持ちそのもの。
それらの是非は本来、今更問うまでも無かったことなのだ。

トリニティなれるという時点で、もう既に三人の絆はここで完成しているのだから。
あり得ない希望の未来は今ここにある。大事なのは当たり前になっていたそれが、当たり前じゃなかったと思い出すこと。

ゲイツやツクヨミが介入したことでオーマジオウの未来へと近付く。
それが事実だとしても、逆に事実だからこそゲイツにとってソウゴと共に戦う今の時間は『ゲイツの歴史』であり居場所と言えるのだ。

オーマジオウへと至ると言われた歴史の中で、オーマジオウにならせないためソウゴと共にゲイツが戦う矛盾。
それを否定する鍵は、オーマジオウへと進み歪んでいく歴史の中ですらも異物として扱われるトリニティという可能性。
そう考えれば、IFの世界を悪辣に利用するアナザーワールドを破壊するのに、トリニティ以上に相応しい存在は他になかった

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スウォルツが狙ったオーマジオウへの未来

次々と生み出されていくダークライダー達。私はこれに違和感があった。
それが前回の予想記事でも書いた、ダークライダーと呼ばれる者達の矛盾だ。
スウォルツが召喚したダークライダー達の中で、本当にダークそのものと呼べるライダーは意外と少ない

https://kamen-rider.info/zio-46-p/

結局、ダークライダー達は本来あり得ないIFの世界から現れたライダー達を便宜上そう呼んでいるに過ぎなかった。
故に白ウォズはあくまで白ウォズのまま。ゲイツを助けて自分が消えることに何の躊躇いも見せず戦った。

スウォルツがダークライダーを使って何かを企んでいるのなら、こんな到底制御しきれない者達を扱うのは不合理だ。
スウォルツにとって重要なのはあくまでアナザーワールドの方であり、そこから生み出されるダークライダーはあくまで副産物に過ぎなかった。

そしてソウゴに近しい人物を狙っていたのもやはり相応の理由があった。
ここは本編内でも明確に解説されているわけではないものの、オーマジオウという存在から考えるとある程度想像はできる。

オーマジオウの周りにはほとんど誰もいない。
ウォズ以外はカッシーンやダイマジーンくらいしか確認できておらず、魔王だというのにその周囲にすら何もなかった。
オーマジオウとは王でありながら、どこまでも孤独な存在だ。

つまりソウゴがオーマジオウになるには、まず孤独であることが前提となる。
故にアナザーワールドという一度入れば脱出不能な空間に、ゲイツを含めた知人達を永久に閉じ込めようとした。

その上でスウォルツはソウゴへと三つの選択肢を与えた。
一つはツクヨミを見捨てスウォルツを倒し、ソウゴが最高最善の王となる未来。
ツクヨミを生かすために、ソウゴの命と今の世界を見捨てる未来。
そしてオーマジオウになり今の世界と歴史を存続させてツクヨミも生かす未来。

ソウゴと共にいて強力な力を有するツクヨミからその能力を根こそぎ奪ったのに、アナザーワールド送りにしなかったのはこのためだろう。
スウォルツにとって、ツクヨミはソウゴにオーマジオウへ到達する未来を選ばせるための人質なのである。

これは同時になぜスウォルツがここまで大人しくしていたのかに対する説明にも繋がっていく。
スウォルツの狙いはジオウの力を手に入れて自分が新たな王になること。それならジオウと同質の力を有するジオウⅡでも良かったはずだ。ならばアナザージオウがⅡ成長した時点で目的は叶っている。
にも拘らず、ソウゴがウォッチを集めてグランドジオウに至るまで待っていた。

スウォルツが欲しているのは成長しきったソウゴでなければいけない。その成長しきった姿と力こそオーマジオウなのだ。
真の目的は最低最悪の魔王オーマジオウの力を奪い、王として玉座に座ることだった。

ウールとオーラはスウォルツにとってもはや邪魔であるため始末しようとしたが、物語的に二人がソウゴの見ている前で散ったのもソウゴからより良くなる未来の可能性を奪うためだ。
変わりかけていたウールは勿論のこと、オーラだって悪女なりにウールの目論見を自分が達成しようとしていた。そういう前向きな未来の芽をソウゴの前で摘むことに意味がある。

ちなみにオーラ斬りが炸裂せず無念に散ったシーン。あれで落命したのかはわかりにくいけど、公式では死亡判定になった。
まあ、朝の番組で子供にも配慮しているけれど、アナザーディケイドに変身して人間の首を蹴れば、そりゃあ首がもげて潰れるか、百八十度回るなりするよね。生きてるわけがない。

スウォルツとはソウゴにとって未来と最高最善になるための可能性を奪う存在だ。
故にこそスウォルツは最後の敵としてソウゴの壁となり得る。

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大道克己の仲間想いに矛盾はない理由

三話に渡り『ジオウ』に参戦した仮面ライダーアクア。
士のように準レギュラーっぽい雰囲気を醸し出しはじめていたのに、まさかのレジェンドライダー死亡案件となった。
これは誰しもが驚愕した展開だろう。

レジェンド扱いにならない変身後のみ参戦ならともかく、アクアは渚ミナト本人が登場して変身していたのだ。
流石のディケイドでもレジェンド扱いのライダーは、倒されてもなんやかんやで復活している。
アクアについては復活なしで出番終了が告知された。

これは完全にレジェンドのタブーへと触れてきた。
オーラとウールが命を落として退場するのは、当人らがやってきた行為から考えてあり得ると思っていた。
けれどアクアについては全く予想しておらず、心の準備がまるでできていなかったので精神的ダメージが今も残っている。

この展開については良くも悪くもお約束を破壊してくる平成ライダー精神だなあと思う。
平成ライダーとはまさかこれはないだろうという境界を嬉々として越えてくる。

夏映画のレジェンド枠があの人だったのも、まさにこの精神が形になったものだろう。
これまでギャグとして扱われたトリニティの変身シークエンスが、アナザーワールドを打ち破る鍵となったのだってこの一つと言える。
あえてここでアクアの命が奪われたのは、ソウゴを助けるレジェンドという可能性を破壊するためだろう。

ミハルは一番冷静かつ客観的にタイムパラドックスを認識と理解ができていた。
そういう者がソウゴに付いているのはオーマジオウ以外の選択肢を選ばせないよう誘導するのにすこぶる邪魔だ。もしスウォルツがソウゴを騙すためタイムパラドックスに関して嘘をついていたとしても、ミハルがいないと看破できなくなる。

……という理屈はわかるのだけど、前回からの伏線などは特になく本当に唐突だった。
視聴者のやるせない憤りは、ミハルの死そのものより、死を覚悟するタイミングが全くなかったことだ。覚悟できることは一種の救いであり幸福なのである。

また、それがソウゴにどう影響を与えたのか、今はまだ見えないことも納得しきれない理由の一つである。
ミハルにとって明日へのパンツを握りしめて終わる姿は、自分が信じた希望を手放さないという意味で非常に象徴的ではあったように思う。
もはやミハルが最期に見せた明日へと向かう意思が、ソウゴ達にとって何かしら意味のあるものになることを願うばかりだ。

というかウールの死からダークライダー組以外は全員そういう散り方しているので、まず間違いなく意図的にやっている。
ショックではあるが、まだ慌てる時間じゃないというのも私の本音だ。

そしてもう一人のレジェンド退場者は大道克己である。
こちらはミハルとは真逆で大変満足そうな消え方をした。まさか克己ちゃんがあそこまで嬉しそうに死を受け入れるとは。
最期がどうなるかはわかっていたが、悪役だしこういう方向性でくるとは考えてなかった。

結局エターナルはWアーマーでも敵わず暴れるだけ暴れて、最後まで倒されることなくアナザーワールドと共に消滅。
その際に「俺は、俺だけを蘇らせた世界を壊すことができた。これで、仲間のもとに行ける」という言葉を残している。
克己が負けずに格好良く退場したことを喜ぶ人が多い反面、最後の台詞に対して微妙な顔をする人もまた多い

克己は仲間の一人である羽原レイカが仮面ライダージョーカーに敗れた後、その手でトドメを刺している。
(余談だけどレイカは『ジオウ』のウィザード編でマジックハウスの支配人である木ノ下香織役として登場した。部下がアナザーウィザードになって火を出している。ヒートォ!)
最期の言葉に引っ掛かるのは、そういう極悪非道な人物像と一見して矛盾しているためだ。

なお、歴史が変わった克己は仲間の命を奪わない世界線だったのでは?という意見もいくつか見たけれど、この可能性はあまりない。
というのも、克己は自分が敗北した歴史、つまり『仮面ライダーW』における正史の記憶がある
登場時から自分が本来は死んだという事実を認識しており、自分の敗北理由を『たまたま風が吹いただけ』と言い切った。
ならば自分がレイカを葬った記憶も残っているはず。

アナザーワールドによって改変される前の歴史から書き換わっていないと、仲間不殺の歴史は発生し得ない。
また、書き換わる前の歴史から正史と相違があったのでは、アナザーワールドの性質と設定が一気に陳腐化してしまう。IFにIFの歴史を重ねてどうすんだって話である。

そして、根本的に大道克己の言葉を一部の行動による矛盾だけで否定するのは、克己という人物を一面的にしか見ていない。
元々克己は仲間達であるNEVERからリーダーとして認められていた。それは劇場版やVシネマを観れば明らかだ。

加えて克己はフィリップを自分と同じく科学によって生み出された人外の存在として兄弟と呼び、シンパシーを感じていた。
実験台となり化物へと変わり果てたからこそ、同じ化物である者達への情は確かにあったのだ。
風都の市民全員を生ける死者に変えようとしたことからも、克己の抱いていた絶望と苦しみを察することはできる。

そして、Wと風都の風に敗れ散っていく克己。
「久しぶりだな、死ぬのは……!」
そう語る彼の声色はどこか穏やかですらあった。

克己が完全に人間性を喪失したのは単にNEVERの副作用によるものだけでなく、Vシネマ『仮面ライダーエターナル』で起きた残酷な事件も精神面に影響を与えている。
もし克己に変化があったのだとすれば、それは自分の死を受け入れた時に、ある程度人間性を取り戻したことではないだろうか。

結果的とはいえソウゴは、エターナルの力で永遠に同じ時を繰り返すだけのアナザーワールドを破壊させた。
そしてその決死の行動を『面白い風を吹かせるじゃないか』と肯定している。

エターナルの力を得た克己は永遠という言葉を気に入っている。
そしてそれと同じくらいに、自分へ適合した永遠は死ねない呪いと化していた。
その永遠という名の呪縛を、克己はエターナルの力で破壊できた。
自分の呪いを自分で壊したのだ。彼にとってこれほど痛快なことがあろうか。

永遠に生きる屍と化した克己を救うのは、もはや永遠の対極である『死』という絶対の終焉だけ。
たとえ人間性を失い狂ってしまっても、同類である仲間達の元へと逝けると思える心を残したまま、永遠に対して終止符を打てた。

だから最後の最後、克己は笑顔で変えたのだ。
死神を示すサムズダウンのサインを、満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられるポーズへと。

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劇場版『仮面ライダージオウ Over Quartzer』感想
http://kamen-rider.info/rzi-o-over-quartzer/

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