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【仮面ライダージオウ】34話感想 それが君のヒビキ

2019年5月5日

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仮面ライダージオウ 34話『2019:ヘイセイのオニ、レイワのオニ』

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。


今回は響鬼編の後半でした。
物語は現代の時間軸ですが、物語の流れとしては序盤に近かったなという印象です。
そのため、ブレイド編やアギト編の豪華さを望んだ人には肩透かしだったかもしれませんね。

京介は今回も完全にあのやたらと自分勝手で尊大な京介のままでした。全くブレねえ!
そこにゲイツがいるとちゃんと全部直球でツッコミを入れてくれるので、響鬼本編の頃にあったイラッと感は大分薄れてたなと思います。
視聴者目線でのツッコミ役がいかに大事かよくわかる……今回のゲイツは本筋とは別路線で大活躍でした。

ブレイド編でも思ったのですが、仲良く共闘するのではなく内輪もめしながら戦う流れは、平成ライダー一期が感出ますね。
君達殴り合う前にちゃんと話し合いなさいよ的な。

一番重要な響鬼襲名問題については、納得の部分とモヤっとした部分はありましたね。
ただ、ライドウォッチで京介が響鬼となったのは有りというか、ああするのがベストだったと思います。

響鬼襲名における構成や、響鬼らしさをどう演出しようとしていたのか。
その結果物足りないなと思った部分を考察して感想を書いていきたいと思います。

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鬼とは生き方

トドロキが京介に対して怒っているのは、鬼としてのルールを幾つも破っているからだった。
襲名せずに響鬼を名乗り、あまつさえ弟子を取る。
しかも弟子が鬼の力を悪用し始めてもきちんと師匠としてケジメを付けることもできない。

うん、まとめるとトドロキさんご立腹の要因は全部正論だ。
トドロキは鬼という職業を『生き方』として定め、誇りを持って戦っている。
ならばこそ、ルール違反を繰り返す京介の存在を飲み込めない。

また、安易に弟子を取らなかったのは師匠のザンキがトドロキにしてくれた様々なことや、そこにあった覚悟を理解しているからだろう。
それもあるので弟子に対する責任のとり方が半端な状況の京介を許せないのかもしれない。

それに片を付けられないと『吉野』から『鬼祓い』がくる。
これは響鬼本編にあった設定で、『吉野』とは鬼やそこに関わるスタッフ達『猛士』の総本山だ。

今回のアナザー響鬼のように、鬼の力を悪用する者が出現した場合、宗家の鬼が倒しにやってくる。
しかしトドロキは『弟子の不始末は師匠が付けるもの』だと言っているので、吉野が鬼祓いをするという行為は実質弟子の不始末に責任が取れない鬼の尻拭きみたいなものだろう。
それこそ『鬼を生き方』と考えるトドロキは納得できないし、京介にとっても納得できない形で強制的に決着を付けられることとなる。。

トドロキと京介の関係は深く語られていないが、基本的に二人の職場拠点は同じで付き合いは相応に長いはずだ。
だとするなら響鬼がいない状況なので、トドロキは京介に関わりある先輩として、自分が代わりに決着を付けようとしていると思われる。
故に京介が相応の覚悟を見せたら、何も言わずに身を引いた。
状況を整理するとトドロキは京介に厳しいが、先輩の鬼としてフォローしている。

トドロキにはもう一つ、『響鬼の世界観』を形にする役割があった。
響鬼の世界観は魔化魍退治とそこに関わる清めの鬼だが、付随するように存在する『猛士』の組織だ。
『吉野』や『鬼祓い』といったキーワード、トドロキが持っていたシフト表がそれにあたる。
物凄い連勤してない? 大丈夫? 相変わらずブラック企業なの?
(響鬼本編でも人員不足で、特に鬼のなり手が減っていると言及されている)

そういう意味だと、トドロキは本来弟子は取るべきなのだ。
鬼は命がけの職業なのでいつ大怪我を負って引退するかわからない。
後進を育てておくのは鬼として重要な仕事の一つと言えるだろう。

京介とツトムの関係性を見て、かつてのトドロキとザンキ、そしてヒビキと明日夢の姿や思い出が頭を過ったのかもしれない。
同時に鬼の役目としての将来を考えたのかも。

そして、最後の最後に日菜香さんもちゃんと存在していた!
日菜香役だった俳優さんは既に他界されており、現実に二人が再び並ぶことはもう叶わない。
それでもトドロキというキャラクターにとって、日菜香はザンキと同じく重要な存在である。
名前だけでも出てくれたのはとても嬉しかった。

年も年なのでトドロキと日菜香は結婚していても不思議はないし、『猛士』としては引退しているかもしれない。
そういう意味で表舞台に出てこないこと自体にあまり違和感はなかった。

いやあしかし、今週は轟鬼に変身しなかったのに、トドロキ関連で書くことがあれやこれやと思っていたよりたくさんあった。
書き出してみて、改めて響鬼編におけるトドロキの重要性がよくわかった。

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響鬼の襲名とそこにまつわる物語の問題点

響鬼の継承は大きく分けて二つの問題が絡んでいる。
一つは京介が『ヒビキさん』になろうとしたこと。
二つ目は響鬼ウォッチの継承問題だ。

一つ目から考えてみよう。
響鬼本編では、ヒビキさえも抜いて最速で鬼になった京介が、ジオウでは未だに何者かになれず『ただの鬼』のままだった。
これはジオウを振り返るとかなり衝撃の展開で、(スピンオフの龍騎は別枠として)これまでのレジェンドは皆良いところが切り出されている。

あの草加雅人ですら、嫌な奴という部分は崩さないようにしつつも『決めたことをやり抜く強い意志』と乾巧との奇妙な友情関係にスポットを当てていた。
ジオウの巧と草加を見ると、普段仲が悪いけど戦闘になると息の合ったコンビネーションを発揮することになんとなく納得がいく。
何よりやっていることは冷酷だったが、事件を解決するために直結する行動だった(この辺も実に草加的である)。

桐矢京介は尊大な態度は相変わらず、しかも自分を響鬼と偽り襲名失敗を隠していた。
自分の弱さを受け入れられず、不正をしていた昔を思い出させる行為だ。
響鬼としてソウゴ達を修行させたのは、恐らくアナザー響鬼の鼓屋ツトムからソウゴ達を引き離すため(鬼の修行はその口実)だと思われる。

けれど響鬼を騙るのは、恐らく襲名失敗後からやっていた行為だ。
自分の弱さを受け止められず不正に走るのは、昔からあった京介の悪癖である。

京介の駄目な部分を駄目なままで再現するのは、下手するとかつてあった響鬼後半の批判を再熱させるリスクもあっただろう。
その辺はソウゴの元クラスメイトをアナザー響鬼にしたのが上手く働いている。
京介と同じく、かつて鬼を目指した青年を倒せず躊躇うことにより、優しい甘さを見せて憎めない人間らしさを緩衝材にした(後ゲイツの鋭いツッコミ)。

そもそも何故京介は響鬼を襲名できなかったのか。
トドロキは斬鬼の襲名を自分で辞退はしたので、ザンキさんが代わりに轟鬼と名付けてくれたという話を前回の感想で解説した。

https://kamen-rider.info/zio-33/

襲名できなかったとしても一人前の鬼になったのなら、何かしら個別の名を響鬼からもらうか、自分で名乗ることはできたはずだ。
(ヒビキは師匠がいなかったので、鬼の資格を手に入れたなら命名が必ずしも師匠である必要はない)
襲名できずただの鬼でしかない京介は特殊な状態であり、そうなった相応の経緯があると思われる。

そもそも響鬼を襲名するという時点でヒビキさんは響鬼を引退しているはずだ。
また響鬼を襲名させることができるのはヒビキさんなので、死亡しているわけでもないだろう。
けれど、その辺の理由はヒビキさん不在なまま、解説もなく終わったので不明なままでモヤモヤする。

京介は『俺は師匠のヒビキさんのようにはなれなかった』と語っていた。
京介が襲名しようとした響鬼とは『ヒビキさん』なのだろう。
ヒビキさんのよくやっていたシュッとする指の動きもわざわざ再現していたくらいだ。

実は今の京介と全く同じ状況が響鬼本編でもあった。
それがヒビキさんにとってもう一人の弟子、明日夢である。

明日夢はヒビキさんに憧れて一度鬼を目指したものの、自分の本当に進みたい道を見つけられなかった。
ヒビキさんはそんな明日夢をあえて突き放すことによって、『より多くを救う道』として鬼ではなく医者を目指すと決心した。
その答えを見つけて自分なりに全力で鍛えたから、明日夢はヒビキさんと心の師弟関係に行き着いた。

京介が響鬼の弟子になった理由は、響鬼と亡き父親を重ね越えたいと思ったからだ。
つまりは明日夢と同じく京介にとっても響鬼は憧れの存在だった。

流れを整理すると、京介は鬼の修行を続けて鬼になることはできた。
けれどその後に、かつての明日夢と同じ壁にぶつかった。
そこから脱せないまま鬼の道は行き詰まる。

そしてツトムにせがまれ弟子を取った。
ここでハッキリと渋々だったと言ってしまうのが京介らしさだろう。
しかし、京介にとってツトムを弟子にしたことは、自分を見つめ直す再出発となったのだろう。
そのためツトムが京介の元を離れアナザー響鬼になっても、倒す決心が付かなかった。

京介は師匠として弟子の不始末を正す方法として、倒すではなく救う選択をした。
それに響鬼ウォッチが応えて、『仮面ライダー響鬼』に変身!
ここに真の襲名が成されたのだ!

……うーん、ここの流れが正直よくわからないぞう!
京介が師匠として弟子を救う覚悟を決めたのはいい。
ソウゴがその方法を持っていることも、京介は話の流れで理解していたはずだ。

けれど肝心の響鬼襲名は、京介が勝手に解釈して台詞として発しているだけ。
なぜ京介が襲名できなかったのか不明なので、ウォッチが反応して襲名できたという部分にも説得力がない。
それに話の流れだと京介がツトムを弟子にしたのは襲名失敗後。
弟子問題と襲名失敗は別問題のはずだ。

それにトドロキの発言から、鬼の名も持たず勝手に響鬼を騙りツトムを鍛えていた行為は、あまり褒められたものではない。
襲名失敗と弟子取りを一本の線に繋げるなら、そこにきちんとした解説が必要だった。

ただし、響鬼ウォッチが生まれたということは、何かしらの理由で京介が響鬼になる資格を得たというのは事実だろう。
少なくとも響鬼ウォッチによって京介が一時的に『仮面ライダー響鬼』の姿になることは、とても良いアイディアだと思った。

ヒビキさんが引退して不在で、かつ京介が響鬼を襲名できていないため、今の時代は『仮面ライダー響鬼』が存在しない状態だ。
そのため響鬼ライドウォッチが作れない。
ならば京介が響鬼となって、前回の約束通りソウゴへとウォッチを渡す。

もしヒビキさんが登場して響鬼になっていたら、『継承』することに対する説得力は落ちる。
これだと物語の流れとしてあまり綺麗じゃない。

京介が響鬼を襲名してデザインまで響鬼化するのは設定的にどうなの? となってしまう。
この場合、鬼のデザイン変化についての設定的な整合性もそうだが、もっと重要な理由が幾つかある。

また京介変身態のデザインは、鬼を目指すきっかけとなった『父親』をイメージした白と、師匠である『ヒビキさん』の紫から構成されている。
それが完全に響鬼デザインになるのは、父親越えという京介の理由が消え去ってしまうのだ。
『ヒビキさんになる』と『偉大な父親を越える』は共存できる動機であり、響鬼本編を大切にするならむしろ捨て去ってはいけない。

物語の整合性、『仮面ライダージオウ』としての綺麗な流れ、『仮面ライダー響鬼』としての設定的な流れがそれぞれぶつかっている。
そこにライドウォッチを経由させ、一時的に『仮面ライダー響鬼』の姿になることで解決した。

どうせ響鬼ソックリになるのなら、型の名前を叫んだり文字を出す流れも再現してほしかった。
トリニティの蹴り技が立ったままの変則形式だったので、あまり不自然さなくジオウとも演出は両立できたと思うのだけど。
戦闘BGMは嬉しかったけどね! これなら残りのレジェンドも期待できる。

戦闘後にウォッチがソウゴの手に渡る動機も良い。
歴史改変が発生を置いておけば、京介は自分の音角で変身すれとまた白い鬼の姿になるだろう。

京介は京介の道として、ヒビキさんのような男になることを選んだ。
『仮面ライダー響鬼』になることが京介にとっての継承ではない。

自分の道を見つけるため明日夢はヒビキさんの元を一度離れて医者になると決意した。
対する京介は響鬼本編の最終話から今までずっと、ヒビキさんになる道を自分の夢としてブレず走り続けている。
説明不足の点もあったが、ジオウ響鬼編は間違いなく響鬼本編の後日譚だ。

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鬼とウォズのアイデンティティ

今回は鬼という存在に触れるのがソウゴ達の役割だった。
実際、ジオウとしての物語はウォッチ獲得以外特に進んでいない。
響鬼編全体を見ても説明不足な所が散見されたので、尺が足りなかったのだろうか。

その一つとして、トドロキの元にウォズが一日(多分長くても数時間程)弟子入りした。
いい子にしますから。お願いします! と頼み込むソウゴが完全に母親ノリなんだけど……。

ウォズとしても『我が魔王』が頼み込んだ結果のため断れなかったのだろう。
ソウゴはウォズの悩みも知らず、直感だけで無茶なことを押し通したなあ。
ただソウゴの場合は直感だけでも、自分の考えを現実化させかねない無自覚チート能力所持者だ。

ツトムがアナザー響鬼としてソウゴの前に現れたのも、過去のことを思い出したためかもしれない。
本物の響鬼とツトムは直接的な繋がりがなく、ウールの勘違いから繋がった状況でもあるため、強引に流れを作ったのはソウゴの能力だった可能性も皆無ではないだろう。

ウォズに話を戻すと、祝うことの意味がわからなくなったウォズは苦しんでいたが、それを解決したのはトドロキだった。
トドロキは響鬼編の中で、ただ一人地に足の着いた鬼だ。
『鬼』として自分の在り方を確立させている。

ウォズとトドロキの対話は、斬鬼の存在を強調するための要素があった。
トドロキを鬼として一人前に育てたまさに恩師だ。

二人の対話からウォズが結果として得たものは、実のところ大したものじゃないと私は思う。
何故ならウォズがいることでソウゴを祝うことに繋がるという話は、『ウォズ=祝う』の図式にただ立ち戻っただけだ。

けれど、それでいいんだよ、というのがウォズの得たものである。
何故なら『ウォズ=祝う』ことそのものが重要なアイデンティティなのだから。
トドロキにとっての鬼と同じ、ウォズの生き方なのだ。
(それならもっとオーマジオウと魔王について触れるのがベストなのだろうけど、ここは物語の核心過ぎて今は触れられないのだろう)

ついでにソウゴが襲名できなかった理由をドストレートに切り込んで聞くスタイルもまさにソウゴだったね。
響鬼ウォッチを手にした後の京介も、やはり同じことを言っている。

あくまでウォッチに頼って響鬼になるのではなく、自分の道を行く。
自分のやり方でヒビキさんのような男を目指す。
それが京介の見つけた『京介のヒビキ』なのだった。

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