このページにはプロモーションが含まれています 仮面ライダー 感想・考察

スーパーヒーロー戦記 歴代集合作品から繙く進化の流れ【考察・感想】

2021年7月24日

スポンサーリンク

集合系作品の発展と進化

仮面ライダー40周年はスーパー戦隊35周年とイコールである。
同じくメモリアルの劇場版作品として『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』が作られた。

仮面ライダー側に比べると、こちらの評価は決して悪くはない。
元々長らく紋切型の作品構成を維持していたスーパー戦隊は、同じく集合系の紋切型に当て込みやすく、そこに対するスーパー戦隊向けのアレンジも上手く乗った。
むしろこの手の集合系のお祭りモノ作品は、スーパー戦隊の方がずっと親和性が高い。

しかしスーパー戦隊側の集合系はその後定着せず、本当にメモリアル的なタイミングでの制作が主体となった。
この辺は如実に仮面ライダーとスーパー戦隊の間にある売上差が如実に響いていると思われる。

むしろ仮面ライダーの客層を少しでもスーパー戦隊に流すため、二つの合同作品が企画された面もあった。
それがスーパーヒーロー大戦シリーズだ。こちらは春映画枠で(一部ライダーのみのバージョンを除き)三本作品が制作されたが、ファンからの評価は全体的に渋い。

ライダー集合だけでも厳しいのに、そこにスーパー戦隊まで足したらどうなるか。
もはや考えるまでもなく歴代ヒーロー並べただけみたいな状態になってしまい、集合作品としてのありがたみも薄い。

そしてストーリーをまとめるためと、合流系の浪漫を優先してか、だいたいライダーと戦隊が戦う流れになる。
しかも新作を中心に活躍キャラがあからさまに忖度されて、酷い時は過去作が噛ませ犬扱いになるので、過去作が推しな者からするとかなりつらい。
(ディケイドやオーマジオウみたいに根幹の設定がそうなっているタイプなら受け入れられるのだけど……)

また二つを混ぜ込むと、ストーリーは仮面ライダー側が比較的主導になりやすい。
そうなるとスーパー戦隊ファン単体は出番少なめ、仮面ライダーファンは無理やり紋切型に当て込まれたストーリーでガッカリするという構図になってしまった。
こういった事情が重なり、大きなお友達の平均的な満足度はあまり高くないシリーズである。

ただし、その後仮面ライダーの集合系作品には微妙な変化が訪れた。
春映画枠の『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』……は割といつも通りの集合系だったが、これの裏作品として制作された『仮面ライダー4号』は集合系作品でありながら出演キャラを絞り込み、過去作キャラをしっかりと活躍させたことでストーリー性が一気に向上した。
ライダーファンの観たかった集合系作品の理想形みたいな仕上がりである。

ここでコツを掴んだのか、春映画はスーパーヒーロー大戦の合同や、メモリアル系作品をメインにして、ライダー同士の集合は冬映画枠に移した。
新作二つをメインに据え、比較的最近の作品に絞った主役ライダーをスポット参戦させ、かつ一定の活躍を入れる。
これによりストーリーの破綻を最小限に押さえながら、集合系の楽しさを入れ込むバランス感覚を得たのが『平成ジェネレーションズ』シリーズだ。
(作品構成で言えば『MOVIE大戦』シリーズでも特に人気の高かった『MEGA MAX』に近い)

このシリーズ最終作では、再び平成ライダーのニ十周期にして、平成ライダー最終作ジオウが主体となった。
『平成ジェネレーションズ FOREVR』はやはり新作と前作をメインにしながら、一部のライダーをスポット参戦させ、かつ想い出として歴代主人公を出している。
しかしながら記念作品ならではのメタフィクション性を上手く使い、十年をかけて磨いてきた集合系の演出力もそこに乗り、かつての欠点を大部分消し去ってみせた。
集合系紋切型の欠点を上手く目立たなくして、メモリアルが生む感動の方が大きく上回る名作となったのだ。

存在自体が歴代ライダー集合の要素を持つジオウは、ディケイドと同様に夏映画も必然的に集合系枠となった。
『仮面ライダージオウ Over Quartzer』は記念作品の感動ではなく、平成ライダーのケレン味をそのまま武器に転化した。
構成的には『FOREVER』よりもむしろ『レッツゴー仮面ライダー』に近い。

しかし、仮面ライダーという作品性自体が、長い時間をかけ少しずつ『何でもあり』の許容量を広げてきた。
そしてもう何でも有り感を本編でしっかりと出していたジオウは、『レッツゴー仮面ライダー』の時代では浮いて滑っていた演出を『有り』の枠に収めることに成功した。

ネタバレは避けるが、正直過去作だと「ねーよ」となっていた決戦や必殺技のバカ演出も、『ジオウサイキョウ』と書かれた伸びる剣を普段からぶん回すジオウだと「まぁジオウだしね」となってしまう。
それもこれも、それ以前から『宇宙ロケットが宇宙キタ――!』したり『蛍光ピンクがゲーム医療』したり『ボトルでベストマッチして金型にバチコーン』したりを積み重ねてきた結果だ。

ディケイドから生まれた集合系のお祭り作品は、十年かけてジオウで完成形を得た。
故にどこで作品に入ったか。無茶な姿勢に慣れて過去を水に流したか。などで作品に対する期待値が大きく変わる。

ビルド以降に入った人だと、直近でジオウを経験しているので集合系の忌避感は薄いだろう。
エグゼイドより以前だとスーパーヒーロー大戦が含まれるし、平成ジェネレーションズは集合系とは完全に別枠として見えてしまいギリトラウマかもしれない。
それもっと以前だと春映画枠を何度も経由しているので、不安を持つ人は増えていくと思われる。

かくいう私も、作品分析が好きなのでジオウまでに進歩を考えると、『今の東映なら上手く調理してくれるのでは?』という期待はあった。
これは現在のゼンカイジャーが、集合系をメインで手掛け続け、直近ではジオウを担当した白倉Pだからというのもある。

それでもなお4号以降のような大成功と呼べるクラスのヒーロー大戦型は生み出せていない。
『ライダーだけならまだしも戦隊まで入れると話の収集と尺が……』という不安も拭い切れないのだ。
そういう感情の中で、私は公開当日に劇場へと足を運んだのだった。

スポンサーリンク

【次ページ:スーパーヒーロー戦記の新しいお祭り紋切型とは(ネタバレ注意!)】

次のページへ >

人気記事

何故アメリカでゴジラが愛されるようになったのか【解説・考察】 1
2014年にハリウッドでギャレス版ゴジラが公開され、2021年には『ゴジラVSキングコング』が激闘を繰り広げました。 流石に注目度の高い人気作だけあって、様々な場所で様々なレビューが飛び交っています。 ...
【感想・考察】ゴジラ-1.0 王道を往くマイナスの本質とは 2
2016年、庵野秀明監督は懐かしくも革新的なゴジラを生み出した。 シン・ゴジラは純国産ゴジラとして、間違いなく新たなムーブメントを迎えた。 しかし、そこからゴジラの展開は途絶える。 新作はアニメ方面や ...
【仮面ライダーアギト 考察】伝説の続きが創った平成ライダーの基礎 3
ドゥドゥン! ドゥン! ドゥドゥン! アー! 令和の世で需要があるのかと思っていたクウガ考察でしたが、本編だけでなく小説版まで予想以上の反響をいただけました。 中にはブログを読み小説版を購入してくださ ...
仮面ライダーBLACK SUN 敗者達の希望と悪の連鎖【感想・考察】 4
第二章:差別や社会風刺を扱うリアリティ問題 時代錯誤の差別観 BLACKSUNに出てくる怪人差別に対抗する集団『護流五無』は、どう見ても学生運動のノリで運営されている。実際に1970年代前半は学生運動 ...
5
第二章:パターン化とプレバン商法、或いはドンブラザーズに至る進化 コンプライアンスによる縛りプレイ 第一章では『仮面ライダーの賛否両論が起きているのは基本的に同じ』と説明してきたが、現在と過去では異な ...

-仮面ライダー, 感想・考察
-, ,