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シン・仮面ライダー【ネタバレ感想・考察】ライダーは何故面白いのかの凝縮

2023年3月19日

作品情報

シン・仮面ライダー ライダーは何故面白いのかの凝縮【感想・考察】
タイトル シン・仮面ライダー
作品要素

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レビュー

最初の仮面ライダーって、何故ここまでヒットしたのだろう?
仮面ライダーとは現代日本で最も知名度があり、商業的に最大の売上を出している特撮シリーズである。
その原点である初代ライダーは、当然ながら無数の者達が、数多の観点で魅力を語ってきた。

しかし、その魅力を明瞭簡潔に表せた者を、私はこれまで一度も見たことがない。
例えば、改造人間の悲哀を描き、怪人達の不気味で怪奇的なダークさを有した作品であることは、特によく語られる。

そこに嘘はないが、現実だと子供達に暗い作風のウケはあまり芳しくなかった。
仮面ライダー2号の登場を境に、物語性も明るくより派手な方向へとシフトしたことで人気が上昇した。
孤独なヒーローと言いつつ、実は本郷猛も割と女子と楽しそうに遊んでるとは、白倉Pも語っている。

じゃあその暗さは不要かと言えば、この要素を無視して仮面ライダーを作っても、ファンからは『解釈違い』の言葉を突きつけられるだろう。
本編内で言うほど描かれていないのに、改造人間としての苦悩は絶対に無視できない。

初代ライダーの人気とファンの根強い愛着は、いくつもの要素が時に矛盾まで内包して複雑に絡まり合い、偶発的な要因まで含めて奇跡的なバランスで調和が取れている。
要は再現性があるようでない。

庵野秀明監督は原作作品へのリスペクトが強く、その本質を磨き出すような作品作りをする。
シン・ゴジラの『現実VS虚構』も、シン・ウルトラマンの『空想特撮』も、彼の作家性によって現代に沿った形で再演されたものだ。

しかしながら仮面ライダーは作品性が複雑怪奇過ぎて、真っ当に描こうとすれば様々な要素が喧嘩をはじめる。
力強くて漢臭い、コテコテの様式美に満ちた昭和ヒーローイズムだって、確実に人気の原動力として機能していた。
変身シーンやライダーキックなどはまさにその典型だろう。

それを現代にそのまま再現しようとすれば、どうしても無理が出てしまい、ライダーの中心扱いされている暗いヒーロー性とも反発する。

二度目の黄金期を迎えたクウガ以後のシリーズは、あえて昭和ライダーの在り方に執着せず、『平成ライダー』と称される独自の路線を開拓した。
しかも現在のライダーファンは昭和ライダーとも異なるリアリティと外連味の配合された作品性に慣れしたんでいる。これも丸っきり無視してしまうとやっぱり支持を得にくい。

この辺、ゴジラは停止期間も長く、その時々のシリーズによって空気感も変わっていた。初代のみに焦点を当てる行為に反発は起きにくい状況だったと言える。

ウルトラマンは仮面ライダーに比べると、時代に合わせた作品性の変化は入れつつ、しかしベースとなる空気感はしっかりと引き継いでいる。

だから私は内心、『シン・仮面ライダーだけは失敗して、ファンが賛否両論で荒れ狂うのでは?』と心配していた。
まあ、それはそれで仮面ライダーらしいなぁと思うのだが、何かある度に作品を当てこすって批判する人が現れるのは気分が良くない。

特にシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースは今後も何かと話題になるだろうから、その度にライダーだけチクチク刺される展開は目に見えている。そういう不安が正直あったのだ。

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その結果は、ある意味当たりとも言えるのだが、私の予想からはあまりに斜め上へとすっ飛んでいった。予想できるかこんなもん!

まず大きな誤算は、エヴァも含むシン・ゴジラ~シン・ウルトラマンまでの流れで、私は『庵野秀明氏って、昔よりちゃんと一般受けをする作品が作れるようになったのだ』と思っていた。

しかし違った。樋口真嗣監督が、庵野秀明氏の作家性を上手くコントロールして、一般ウケするラインに落とし込んでいたのだ。
多分シン・エヴァは、今度こそちゃんと完結させる。今なら明るい結末が描けるという覚悟を持って挑んだからできたのだろう。

これまでのシンシリーズはカルピスに程よく水が注がれて、皆が美味しく飲めるように調整されていた。
そうして安心しきっていたところに、シン・仮面ライダーでカルピスの原液をそのままお出しされてしまったのだ。

ある意味選ばれしオタク達はそれを飲み下せるが、そうでない客層は「あ、はい……」と目を逸らす。むしろそっちの方面で賛否両論と化している。

いやぁ、これ止める人いなかったのかな? と思うのだけど、プロデューサーが白倉Pである。
平成ライダーを暴走させ現在の礎を築き、最近ではスーパー戦隊にも特異点を生み出した張本人だ。この人こういうの大好きだわ! 止めるわけねぇ!!

しかしながら、だからこそ初代ライダー感を抽出できたのではないかと私は思う。
シンライダーは最低限の整合性も堂々と放棄して、とにかく盛り上がるバトル! 外連味のある演出! これでもか!! これでもか!!!!

ドラマ部分以外は本当にこのゴリ押しだったので、つまり仮面ライダーの魅力は『コレだ』と堂々宣言しているに等しい。
でも、確かに空気感はちゃんとすごく『仮面ライダー』になっているのだ。

一歩間違えれば非常にチープ化してしまうのだけど、ここはもう勢いのある演出と画作りが抜群に上手い。
実写版キューティーハニーを思い出したのだけど、演出とドラマのバランスはあの頃より確実に向上していた。

時にダサさも伴い、全体の構成もシン・ゴジラに劣るのだけど、ひたすら現代にコンバートされた初代ライダーの格好良さを浴びせかけられる。

シナリオ面についてはテレビ版だけでなく、漫画版からの引用もかなり多い。ここは知らなくても特に問題ないが、知っていればより楽しめる。

ダークで重い部分に関しても、漫画版を下地にすることで、より石ノ森章太郎イズムに近付けていた。

しかしながらただただコピーするのではなく、そこに対して庵野秀明氏の作家性も練り込まれている。

その分、重いシーンの演出がちょっとクドいなと感じるのは、キューティーハニーの頃に近しい。
もっとも全体の勢いを殺す程ではないので、好みの範疇ってところだろう。

ショッカーの在り方やそこに対する決着の付け方は、とりわけ庵野作品色が濃い。
シン・エヴァで回収しきれなかった旧エヴァ要素の一部を、改めて仮面ライダーで決着を付けたなと感じた。

仮面ライダー愛と庵野秀明氏の作家性がどちらも色濃く作品に滲み出ている。めちゃくちゃ庵野秀明氏らしい庵野秀明作品だ。

シン・ウルトラマンの公開当初だと、ゾーフィのようなマニアックな元ネタ解説などがSNSでよくバズっていた。
対してシン・ライダーだと『庵野秀明とは』を語るツイートの方が多数伸びており、本作の本質を如実に物語っている。

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このように濃厚な作品のため、『自分は楽しめるだろうか』と不安になる人も多いだろう。

まず非オタクの一般人には、あまりオススメできない。
シン・ゴジラのような作品を期待しているとギャップで風邪をひく。

それとPG12の軽度な血飛沫描写があるため、血を見るのマジ無理って人はちょっとつらい。
なお、作品のテーマ性に必要な要素のため入れ込まれている感じで、ゴア描写自体を楽しむタイプではまったくない。

ライダー作品にある程度触れているニチアサ特撮民ならば、最低限履修しておけば楽しめる素養は十分あると思う。

まずテレビ版の一話。それと中盤と終盤をいくつか掻い摘んでおくことをオススメする。
基本的に全体の空気感で置いてけぼりを食らわなければ、後は個人の好みで合うかどうかになるだろう。

もっと深堀したいなら、ネットを漁ればTV版これ見ておけリストにたどり着く。

ただ、私としてはそれより漫画版の方が優先順位はずっと高い。石ノ森章太郎イズムの理解度はそのまま作品理解度に直結する。
全3巻なので、値段も時間もそこまで大きな負担にならない。

庵野秀明氏の作家性に触れるという意味なら、エヴァのTV版と旧劇場版は知っておくとより深く楽しめる。

実写版キューティーハニーも実写における庵野秀明らしさに触れられるが、作品としてかなり賛否が強いので取り扱いに注意。

シン・仮面ライダーは庵野秀明監督の偏愛を受けて、氏の作家性が全開となって放たれた。
刺さる人間には猛烈に刺さるタイプの作品だ。

(ネタバレ有りレビューは次ページから、後日公開予定)

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総評

仮面ライダーの根源的な面白さとは何処にあるのか。
石ノ森章太郎は仮面ライダーで何を表現しようとしたのか。
それらに庵野秀明氏の作家性も色濃く練り込まれた作品。

過激派のライダーオタクが作った特濃な仮面ライダーなので、特撮に興味のない一般人にはオススメできない。
シン・ゴジラ感覚で挑むと痛い目を見るかも。

逆に刺さる人にはグッサグサ刺さる。

個々で評価の差が激しい、シン・シリーズの中でも飛び抜けてピーキーな作品。

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