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【感想・考察】仮面ライダーセイバー 新しい多人数ライダー観への挑戦

2020年12月6日

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飛羽真の人間性が起こした悲劇

セイバーではライダー同士が絆を結び、協力し合う。

この流れは非常に王道のヒーロー作品で、仲間達が協力して強大な敵に立ち向かう。
主義主張と出来ることが異なるからぶつかり合うし、皆が集まってはじめて大きな壁を突破できる。そういうヒーロー『らしさ』がセイバーのウリだ。

そのために大きな組織と、個性溢れる隊員達の設定が基盤として用意されている。
ソードオブロゴスは一種の軍事組織なのは間違いないが、その中身はかなり不透明で、現在の情報量だと色々判断に困る部分も多い。

ソードオブロゴスは飛羽真や、なんとほぼ無関係な芽依まで外部協力者として受け入れながらも、部分的にはかなり閉鎖的な組織でもある。

倫太郎の世間知らずはまさにこの象徴だろう。
誰にでもリスペクトを持って接する。良い意味で永遠の二番手。
しかしながら、あまりに真っ直ぐ過ぎるが故の無茶もする。人を守る剣士としての模範生であり、同時に精神的な未熟も抱えるキャラ性だ。

本だと正式名称で書かれていることが多いため、パソコンやパーソナルコンピュータと言われれば理解できるが、PCと言われると何かがわからない。
これがそのままエクレアをエレクール・オ・ショコラだと呼ぶことに繋がっている。いつだって新井式回転抽選器を回したいお年頃。

そういう意味では、人間をホモ・サピエンスと呼ぶのも、設定的に忠実だと言えるだろう。
(なおこの台詞、最初は普通の人間だったのを、撮影時に変えたようだ)

ただし、これはただただ面白いだけの話ではなく、倫太郎は自分が守ろうとしている世界を本を通してしか知らないことを示す。
そしてそういう風に育てたのは、彼が家族と呼ぶソードオブロゴスなのだ。
ガラパゴス化した組織体制が倫太郎や蓮等の特殊な価値観を持ったライダーを生む。

また、仮面ライダーが聖剣に選ばれし者達であることも重要だ。
戦闘現場に息子を連れてくる尾上や、人見知りの強い大秦寺、力こそ正義な蓮でも、態度がクソ罪で仮面ライダーの資格を剥奪されない。

或いは聖剣毎に選定基準があるのかもしれない。
水勢剣流水は騎士としての模範性を重視される。
風双剣翡翠風は、ひたすら強さを突き詰める求道者が基準のため、強さを研ぎ澄ませた蓮が選ばれた。等の理由付けだ。

どちらにせよソードオブロゴスが特殊な組織であることには変わりない。
環境が剣士を作るのか、剣が環境を作るのかは今後明かされていくことに期待したい。

そして、そこに何の関わりもなかったはずの飛羽真が飛び込んでいくことで、安定していた環境に新たな価値観と関係性が生じてドラマとなる。

セイバーではこの時に発生する人間関係の摩擦が、他のライダー作品よりも目に見えて小さい。
皆が一丸となり戦い、キング・オブ・アーサーの召喚に至る流れを序盤でできるのはそれこそセイバーくらいなものだろう。
エグゼイドだと、永夢の口車に乗せられてドラゴンハンターで疑似協力プレイして、また即バラバラになっている頃合いだ。

そうはならない理由は、組織として世界を守る意識が全員に根付いていることもあるが、何より飛羽真の人間性に依るところが大きい。
ステレオタイプの小説家だと、やたらとインテリで気難しいイメージだったり、自分の世界に籠もりがちで偏屈なだったりな人物像になりがちだ。

そういう固定観念を払拭するため、飛羽真は爽やかで気のいい、子供達にも好かれるお兄さんキャラとなった。
店もポップで楽しい。本の世界をそのまま現実化したようなイメージを大切にしている。

また服の着こなしもかなりオシャレだ。
撮影では専属のコーディネーターを雇っており、服装にはかなりの力を入れている。
他人への気遣いが普段着にもしっかりと反映されている。

ソードオブロゴスはそれぞれの制服からあまり着替えることがない。
組織人と個人活動だった対比と差が出ている。

飛羽真は他人を否定しない。とにかく相手を肯定して、そういう時に見せる優しげな言葉遣いや雰囲気が彼らしさでもある。
相手の意見を尊重して約束を守る。大人としての在り方ができている精神年齢高めの主人公だ。
(ただし約束を守るためなら結構無茶もする)

けれど、大人であるからこそ、無闇に踏み込まないのは『遠慮して踏み込めない』の裏返しでもある。
賢人が重要な情報を知っていて思い悩んでいることがわかれば、それが自分の記憶に関することであっても強くは踏み込めないのだ。
(その分、グイグイいくキャラ性をヒロインの芽依が担当している)

心配はしても強引に引き止められないため、大丈夫じゃない『大丈夫』に危険性は感じても、目の前にある溝を埋められなかった。
そうしてカリバーとの戦いと敗北という最悪な結果を導いてしまう。

セイバーを明るく楽しい作品だと書いたが、とはいえ全くシリアスにしないつもりでもない。
ゴーストはファンタジー世界観と思わせておいて、ガンマの世界は人間と変わらず、人間が起こしていた問題と戦いだった。
セイバーも最初はファンタジー色の強い物語となっているが、最後までそうなるとは限らないということは匂わせている。

一年かけた大河ドラマにも匹敵する設定と人間関係の複雑さは、それこそスーパー戦隊やウルトラシリーズには現状出せない、仮面ライダーだからこその強味だ。
根幹にある明るいライダーは大事にしつつも、次第にいつもの『仮面ライダーらしさ』も出てきている。

約束を大事にしながら、一番大切な約束だけは果たせず、大切な友は再び悪意によって奪われた。
その上で、飛羽真は何を得て成長していくのか。

飛羽真は己の経験を元に作品を書いている。
それはつまり、小説を書くまでに何を経験したかが大切なのだ。

キング・オブ・アーサーの真の力を引き出した時、飛羽真は仲間との戦いを小説として書き上げている。
経験とは戦いだけではない。そこで育んだ仲間との絆が物語になっていく。

これからどんな選択をして未来を掴み取っていくか。
それは一人だけで掴めるものではない。
仲間達と歩む道の先、過去から続く絆の先にあるのだろう。

「俺は賢人もこの街も救いたいんだ!」

「飛羽真にはその力がある!」

そうして繋いできた想いの強さを力に変えた。
たとえ友が闇に飲まれ消えても、繋いだ想いは途切れない。
物語の結末は飛羽真が決める。

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