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【感想・考察】仮面ライダーセイバー 新しい多人数ライダー観への挑戦

2020年12月6日

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テンポが速いのに展開は遅いの構造的問題

序盤から次々とライダーが登場しては活躍するスタイルは、見ていてワクワク感がある流を作り出している。
しかし展開の速さは全体としてみるとバランスの悪さを招いてもいる。

一番わかりやすい部分だと、キャラ単位の出番量だ。
群像劇でドラマを作ると、仮面ライダーの場合どうしても主役の出番量がかなり多くなる。これは仕方なく当然の話ではある。二号ライダーも必然的にそうなってしまう。

本作では三号ライダーを主人公の幼馴染にして、物語における重要な要素を背負わせた。
これにより出番量だけなら二号ライダーに匹敵する状態だ。

そして、そのしわ寄せを他のライダー達が食うことになる。
特に酷いのは蓮(剣斬)だろう。

「マジないわ! 下っ端か!」とインパクト強めのムカつくキャラで登場したのはいいものの、その後は特にそういうキャラ付けを見せる出番がない。
の強さに憧れる立ち位置でもあるのだが、当の本人が情緒不安定でカリバー関連のイベントばかりが重なる。キャラの関係性も幼馴染と二号ライダーとの絆をメインに深めていくため絡みがない。
久方ぶりにセットでの出番かと思いきや、独断により共に戦うことはなく、通常の怪人を特に大きな見せ場もなく普通に倒すだけだった。

個性豊かなキャラ揃いだと、相対的に一人あたりの印象は薄くなる。
何よりどれだけ癖が強くても、出番がなければ空気と化していく。登場時以後は本当にメインの外で敵を倒す役に落ち着いてしまっており、目立った活躍がない。

尾上も、敵幹部との繋がりがあるだけマシだが、それでもお世辞にも出番量が多いとは言えない。
子供はレギュラーキャラじゃないのもあり、最初にあった大剣イクメンライダーのインパクトはどんどん薄れてしまっている。

初めから群像劇では尺に難があるのはわかっていたようで、ネット配信にてライダー達の活躍を外伝として描いてはいる。
しかしながら、ファンからすれば一番欲しいのは賢人のような本編での絡みであり、観られない環境の人にとっては救いにもならない。

出番量は戦闘能力にも直結する。
活躍の多いセイバー、ブレイズ、エスパーダは早期に同色三冊のワンダーコンボを達成。
セイバーに至ってはコンボとは別にドラゴンアーサーで巨大ロボットを召喚できるようにもなった。

そして残り半数がコンボ相当のフォームチェンジに辿り着かないまま、セイバーには赤三冊以上の強化フォーム『ドラゴニックナイト』が登場した。
バスターは二冊でデザスト相手に苦戦している状況から特に変わってないんだけど……。

まだ序盤だし巻き返せる……と信じたいが、玩具の販促面から今後もストーリーと強化はセイバーにウェイトを置くのは確定事項だ。
しかもサウザンベースが出てきたように、他のライダーもまだまだ増えるらしい。セイバーを中心軸にして、一話一人単位の出番量は人数が増えた分だけ減る。

この出番量問題は敵であるメギド側も例外ではない。
以前の多人数系ライダーだと、怪人側の組織はかなりシンプル化されているものが多かった。
龍騎では単純に鏡の中にいるモンスターであり、黒幕も一人で組織化すらされていない。その分ライダー同士の戦いに尺を大きく割り振れた。

鎧武も、スタート時における怪人は謎の異世界からくる怪物インベスという扱いであり、組織化された幹部級が出てきたのは中盤以降。
その辺りで新規ライダーの参戦はかなり落ち着いていた。

セイバーでは敵も味方も最初から組織化されており、どっちも物語に絡んでいるので、シンプルに見えて実はかなりややこしい。
メギド側幹部は当初、仮面ライダーカリバーと、ストリウス・レジエル・ズオスの三名体制だった。

カリバーはともかく、残り三人は暫く人間の姿のみで出番も多くない。
そして、三人とも何かしら外国の縁の俳優であり、それも見分けの面だと実はマイナスに繋がる。

差別的とかそういう話ではなく、外人を見慣れていない日本人には通常より識別が難しい。
例えば二時間くらいの映画だと、外人の名前と顔が中々覚えられないので物語に集中しづらく、洋画は見ないという人も一定数いる程だ。
あえて極論を出すなら、動物園の猿山を初めてみた客が猿の識別ができないが、飼育員はしっかりできているのと同じ理屈である。

特に朝の起き抜けで観ていると、敵幹部が出てきて誰が誰だっけ? という部分に脳みそを使ってしまい、上手くストーリーが頭に入ってこないこともあった。
それだけでなく、早々に怪人態のみの幹部級デザストが登場。しかもコイツがまた濃い。相対的に三名の見分けを付けるのがより大変になった。
しかしながら見分けが付き出すといい感じの個性分けになるので、登場人物の多いセイバーでは諸刃の剣ではないかと思う。

なお、そのデザストも登場時を過ぎればとりわけ出番が多いというわけでもなく、やはりカリバーに出番が集中し始めるので、お前何で復活したんだ感がある。
まずは三幹部の個性付けをしっかりすべきだったのではないだろうか。

メギドの戦闘面に関してもやっぱり格差が出始めた。
幹部として高い能力を見せつけるはずだったズオスは、ソッコでワンダーコンボに敗北。
そのワンダーコンボ三人でようやく勝てたカリバーが強化。

そしてそれに対応するため、セイバーもパワーアップ。
デザストならまだしも、ズオスは立派な幹部級なのだけど能力的に早くも二つ分程格落ちが出ている!
なおワンダーコンボのないライダー達の格は更にもう一つ落ちるわけだが……。

群像劇構成に絡む問題はシナリオ面にも見て取れる。
1~2話単位、横軸の話でみると話はテンポ良くスピーディーに進んでいく。

しかし飛羽真の記憶と世界の秘密を縦軸にした、全体の物語で言うと中々進まない。
飛羽真の記憶はかなり小出しにされて、視聴者視点だと「うん、知ってた」って部分を思い出していくこともあり、少しばかりまだるっこしさもある。

ルナの名前が出て全て思い出したぞ! 的な流になっても、飛羽真が思い出しただけで情報の更新がストーリーに反映されないため、視聴者からすれば特に進んでないに等しい。
これは群像劇でキャラを多数出しながら情報を小出しするスタイルの弊害ではないかと思う。

話の尺が足りずに空気と化していく一部のキャラクター達。
横軸はテンポが良いのに、縦軸のテンポが微妙に悪い。

群像劇のプラスとマイナスの面両方を背負い込みながら走っている状態だ。

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