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【感想・考察】仮面ライダーセイバー 新しい多人数ライダー観への挑戦

2020年12月6日

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明るく楽しいお祭り騒ぎ作品

セイバーの特徴は龍騎・鎧武と並ぶ多人数ライダーが創る物語だ。
十話に至る前から既に七名のライダーが登場している。かなりのハイペースっぷりである。

そして過去二作と大きく異なる部分は『ライダー達の共闘関係』にある。
セイバーにおける仮面ライダー達は世界を守る『ソードオブロゴス』に所属する騎士達であり、チームとして協力して戦う組織だ。

平成シリーズ以後の仮面ライダーは基本的に最初は対立関係にあることが多い。本当に多い。
職業ライダーとして始まった仮面ライダー剣は、第一話にして二号ライダーが裏切り組織が崩壊した。オンドゥルルラギッタンディスカー!!
他にも敵対とまではいかないまでも、積極的な協力関係にはない程度で収まるパターンも多い。

同じく『チーム医療』として仲間との連携が重要視されたエグゼイドですら、最初は見事にバラバラでいがみ合っていた。
貴重な例外(というか共通する設定がある)作品は仮面ライダー響鬼だろう。

響鬼に登場する仮面ライダーも魔化魍と戦う組織『猛士』の鬼である。
だが、響鬼ではメインの三人(途中で引退した斬鬼を含めても四人)以外は出てきてもスポット参戦のみで、その三人が揃うのもそれなりに時間をかけていた。
そういう意味も含めると、多人数ライダーで序盤から共闘できているのは、まさしくセイバーが初だ。

世界の平和を守るため、最初からまともにチームとして共闘する仮面ライダーが22作品目にして初! ある意味すごい!
そんな状況からも察せられると思うが、今回の仮面ライダーは明るく楽しいスタイルで物語を作っている。

この最たる理由は、小さなお友達が見てワクワクできること。閉塞的な時代に、夢と希望のある作品を届ける。
発想は3.11の後に生まれた、あえて涙ラインを持たず底抜けに明るいライダー、フォーゼに近い感覚だろう。
大人ですらつらく息苦しいと感じるこの時代だからこそ『子供達にとっての娯楽』は本当に大事なのだ。

個性豊かなライダー達が毎回派手なアクションで戦い、日常パートにもはっちゃけた演出をどんどん盛り込んでいく。意図されたゴチャゴチャ感による群像劇は結構楽しい。
絵的には少々騒がし過ぎていささかリアリティに欠ける部分もあるのだが、ファンタジー色の強い設定と世界観に乗せることで一つの作品として整合性のある枠内に収めている。

元々は前回のゼロワンはSF色が使強かったこともあり、ファンタジー系の作品にしようという話がきっかけだった。
ちなみにゴーストの時も人工知能だったドライブの次作でスピリチュアル系の話を作っていたこともり、高橋Pは「大森さんの後はやりづらい」と言っていた程だ。

そこからコロナ感染拡大に対応するた既に決まっていた部分も含めて制作の見直した行われた。
結果、CG処理を多用して撮影現場を限定的にできる利点を踏まえ、ゼロワンとは真逆に位置する程に世界規模でファンタジーに強く寄ったのだ。

その群像劇と世界観を結び付ける最大の要素が変身ベルトと、セイバーにおける仮面ライダーの定義だ。

多人数ライダーの場合、何処にどうやってキャラクターの個性を割り振るかが重要になる。
昨今、仮面ライダーのベルトと戦闘時のフォームチェンジは増えやすい傾向にあった。
ベルトの数は必ずではないものの、フォームチェンジは安定して増加の一途を辿ってきた。
なお、前年ゼロワンだと登場したベルトは十本以上である。

ベルトを個性化するにはベルト一種類に対して一つのバックボーンを求められる。
数が増えれば増えるだけ、ベルトの設定だけで尺を食うのだ。
(ゼロワンだと、飛電ゼロワンドライバーを父親との繋がりにしたり、サウザンドライバーでは飛電とザイアのテクノロジー対決等で上手く生かしていた方だとも思う)

そこでベルトにある程度統一性を持たせる方向で考えた。
これはジオウの時には、ベルトを徹底してジクウドライバー一つに統一化したことが人気の理由だったのではないか、という発想もあるとのことだ。

確かにジオウは第一話の「使い方はご存知のはず」で強調されて以後、壊して交換してという流れなどはあっても一種類のベルト+ライダーの力を持ったウォッチで統一されている。
これによって『ライドウォッチ=歴代ライダーの力』が強調されテーマ性の重要化にも繋がっていた。
(そして歴代ライダー外の力はあえてミライドウォッチとミライドライバーで明確な線引をしているのも大きいとは思う)

そこからセイバーで選ばたのが『剣』だった。
剣には様々な種類があり、草薙の剣、童子切安綱、カラドボルグ等など様々なバックボーンを持ち、聖剣と呼ばれるものも数多い。
セイバーでは物語のバックボーンとなっているアーサー王伝説にも、超有名な聖剣エクスカリバーが存在する。

剣自体にも様々な種類があり、それぞれの個性付けやアクションができる。
大剣をぶん回す力強さを、父親の頼もしさに結び付けるなど、非常に上手い個性付けだと思う。

また剣を主体として統一性を持たせたことにより、仮面ライダーは『聖剣に選ばれし剣士達』であるとも強調できている。
剣とファンタジーの相性はすこぶる良く、小さなお友達……だけでなく大きなお友達にも安定した人気のアイテムだ。

ちなみに発表当時はドラゴンにセイバーでファンからはFateを散々意識されていたが、現状でもわかるようにFateと連なる要素はアーサー王伝説が下地になっていることくらいしかない。
そもそもメイン脚本である福田氏はFateを名前しか知らず、セイバーという名前のキャラがいることすら後で聞かされて驚いたと証言している。
ゴーストにおける英霊の召喚といい、絶妙なニアミス連発してくれるよね!

加えて平成二期以降、仮面ライダーの要素は基本的に二つで構成されており、変身アイテムは身近の道具であることが条件の一つとなっている。
そういった条件の下で、剣に合うアイテムとして本が選ばれた。

剣はそれぞれの剣士に合った特徴という名の『型』を作り、本は戦いの幅を広げる。
フォームチェンジは数が必要になる部分も、過去の名作なら十分に解決可能だった。

巨大な豆の木を生やしたり、ムッキムキの妖精さんがプロレス技かけたりする。剣士だけでは表現できない派手で楽しい映像面の補完としても十分な効果があった。
創刊! ディアゴスピーディーは流石に笑った。いや、確かに仮面ライダーは今もそこから本出してるけどね!

本にもそれぞれ物語性があり、世界観を広げる役割も持つ。
変身ベルトを剣の鞘として、剣士のように抜剣。するとセットされた本が開く。二つの要素を絶妙に合わせたギミックの完成だ。

実はヒーローとしてはどれも有りがちな設定と言えるが、仮面ライダーだと物珍しい。
まさにエンタメとして王道ヒーローの真ん中を行くヒーロー達だ!

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