どうも、ゲタライド(@ridertwsibu)です。

Twitterでジオウ公式がプロフィールにて「なんだかジオジオしてきたジオ」とか言い出してから、徐々にジオジオが強まって五ヶ月。
ジオウ新作と見せかけて(ジオウ新作でもあるけど)まさかのディケイド!
平成33年という新たな概念が生まれてしまった! おのれディケイド!

本格的に平成を終わらせる気がないぞ東映。
平成仮面ライダー二十周期を終えて、更にディケイドが主役になるとは夢にも思いませんでした。

そして実際に配信された評価はものの見事にディケイドらしい賛否両論。
否定派の方々には、どう見ても否定の方が大きいだろうが金返せと言われそうですが……。

今回は有料配信の特性上、観てない人の便乗批判によるノイズも相当数あります。
何より一番多い感想は『わけがわからない』なんですよね。
ただこの『わけわがわからない』が曲者で、ことディケイドという作品は『わけわがわからない=つまらない』とは限らないのです。
だって、それ言い出したらディケイドの本編がかなり説明不足の投げっぱなしで終わってます。私の知る限り平成ライダーで最もわけがわからない作品ですからネ!

しかしディケイドや門矢士に対する人気の高さは、ジオウ出演での盛り上がりからも、高い人気を持ったキャラクターとして存在しています。
この時点で矛盾してしまうのです。

『わけがわからない』にディケイドらしさを感じる人もいれば、本当につまらなかった人もいる。
観てないけど、批判的な感想に便乗して叩く人もいれば、色々思うことはあったけど悪くはなかったよという声もある。
凄まじく実態が見えにくくなっている作品だなぁと思います。

なお個人的な記憶で振り返ると、ジオディケよりディケイド完結編の方が当時は批判されまくっていたなと思います。
まあ、中身だけでなく宣伝とその後にあった偉い人の謝罪で炎上祭になった経緯もあるのですが……。

ディケイド主体という意味ならスーパーヒーロー大戦もで、平成VS昭和も同じくファン評価は……(私個人の評価は別話)。
やっぱりいつも通りじゃね? と思いますが、そこはそれ。ディケイドだからね!

ちなみに白倉Pは『すべて視ているコアファンも、ライトユーザも、どっちも楽しめるよう緻密に計算された作品』的な発言をしています。
個人的にはむしろ真逆。大多数の『わけがわからない』は割と正当な評価であり、上級者向け作品だったというのが率直な感想です。

私は前回や今後予定しているディケイド関連の記事を書くため、過去作品を再履修して色々なキャストや制作陣のコメントも読み耽っています。
加えて純粋な井上敏樹脚本のファンと呼べる一人。

つまり色々読み取れる環境が事前にかなり揃っていた部類の人間でしょう。
そんな『ディケイドオタが読み解いたジオディケ大解説!』が趣旨です。

そしてハリキリ過ぎた結果、この解説書いていくうちにかなり長くなってしまったので、前後編にわけて解説していきます。

前編はネタバレ無しで、この作品を楽しむための前提条件と共に、井上敏樹氏の作家性についての解説。
ジオディケ両作の全体的な構成に対する見所と欠点。
そしてジオウ側を主体にした解説と考察になります。

では、はじめてまいりましょう。

事前知識と作品を楽しめる人の条件(ネタバレなし)

今回のジオディケが不評で挙げられる理由は大きく分けて三つある。
・井上脚本(一部白倉P)の性質
・全体的に尺が厳しい
・井上氏が販促苦手

多くの場合、作品で途中参加する脚本だと、できるだけ元の世界観を忠実に意識する。その上で作家の個性が滲みでるようなイメージが強い。
視聴者側も、主にライダーオタク達は作品へのリスペクトを求める。

だが、井上氏はこういうオタク的なリスペクト思想を嫌う傾向が強い。
(ただしデスノートのアニメ版など原作を元に話を再構成する脚本は、しっかりと原作を殺さずアニメの尺に置き直している。要はケース・バイ・ケース)

原作通りの空気とか再現性よりも、物語としての面白さを優先するのだ。
井上氏は脚本作りの際、場面の要点や補足を書いた『箱』を作り、それを繋いで物語を作る。『箱書き』という手法を重要視することで知られる。

一部の人が考えていそうな勢い重視の行き当たりばったりでは全くない。
(細かな解説はそのままネタバレになるので後術する)

井上氏の脚本は一言で的確に表すと『濃い』。
この濃さというのは、物語の世界観設定であり、キャラの設定であり、ギャグであり、物語の密度である。
とにかく作家性の強さは、平成ライダー脚本の中でも飛び抜けている。

そのため全体の味付けが独自的で濃過ぎて、綿密な細部に気付かないまま話そのものに圧倒され終わる人がとても多い。
自身が長期的に脚本を手掛ける場合は、それこそキャラとキャラの繋がりや掘り下げを重視して、アギト・ファイズ・キバのような個性の強いキャラクター達による濃厚なドラマとして完成されていく。
ただ今回のような尺が短い話だと、物語の面白さに強く重点を置かれてしまう傾向があるように思う。

加えて、こちらは白倉Pの特性だが、こっちはこっちで物語はシナリオ上の繋ぎに対する整合性を重視する。
大枠の世界観を舞台装置として使い、掘り下げは世界観ではなく作品性に対して重視する。
例えば、人気作のアマゾンズも実はこの傾向が強く出ており、アマゾンがどうやって人間社会に紛れ込めたのか等の説明は本編で一切していない。

ディケイドやジオウは作品のメタフィクション性に重点を置いており、舞台設定の大枠な設定はそんなに重要視しない。
ジオディケも例に漏れずで世界観や物語性自体がまずどうなってんだよ! ってのは相変わらず大枠しか説明されなかった。
それは『何故ディケイドで世界が融合したのか』『TV本編のソウゴは何故オーマジオウになったのか』からして詳細に説明されていないのと同じだ。
(ディケイドは流れでなんとなく説明された気分になっているが、メタフィクションに流されて理論的な説明はなされていない)

特に今作は、世界観のベースはジオウよりもむしろディケイドに寄っている。
ジオディケはわかがわからない。ディケイドは名作だったのに! 時間返せって人は、

キバの世界の国王制度でどうやって現代社会が成り立ってんだよとか。

ブレイドのブラック企業縦社会構造が違和感なく飲み込めていたのか。

龍騎が裁判制度の時点でもうヤバい上にオーディンのカードがそのまま使える。しかも密室殺人が●●カッターで、過去と未来の●●が一つになる展開とか。
(ネタバレ防止のため一応伏せてます)

その他の世界も含めて、意味わかったのかと問いたい。私は未だにわからない(だがそれはそれとして、ディケイドという作品は大好きだ)。思い出美化しすぎじゃないです?

ディケイド知らない人は上記のTV版の話を聞いて「何意味分かんないつまらなさそう……」と思うなら、今回のジオディケは観ない方がいい。時間返せってなる。

また、白倉Pの関わる作品に多い印象としては、基本的に説明台詞を嫌う。それこそ大枠の世界観や本当に重要な部分以外は画で映して、台詞での解説をしないことがままある。
今回の脚本は元々複雑な部分もあり、ちゃんとシナリオや映像から情報を読み取れるかはかなり重要だ。

そのため『話はとにかくわかりやすい方がいい。読み取らなきゃいけないのは、わかりにくい作品を作った方に問題がある』と考える人にも向かない。
わかりやすさが大事の考え方を否定したいわけではなく、この作品はそういう思考で見ると高確率で評価は下がる。

次に純粋な作品としての欠点だが、尺による妥協部分はどうしてもあった。
めっちゃ重要なシーンがサラッと過ぎ去って、え、え、マジか、え……? みたいになってしまう。役者さんの演技はかなり良くできており、その数秒単位の演技から意図を読み取れるかが重要になる。
当たり前だが、作劇内で『余韻』という思考する隙を与えない構成なのが一番悪い。

アイテムの扱いも雑で、終盤の戦闘も展開の濃度に対してすごくアッサリしてる。
井上氏はアイテムのパワーアップ描写をシナリオに組み込むのは昔から苦手だった。
名作として知られるパラダイス・ロストですら、強化パーツについては『流れでなんとなく入手してました』状態である。
ドラマはドラマとして、アイテムと物語は切り分けて作られることがとても多い。

戦闘シーンはドラマに尺を割かれた結果、アッサリになったのではないかと思う。
とりあえずプレバンで新アイテム予約した人達が憤る気持ちは理解できる。

総合すると、これら井上氏&白倉Pの特性と尺の都合や妥協点の部分が混ざった結果、『なんだか意味わからない上に手抜き』みたいな作品に見えてしまい批判が多い。

逆にあれこれ考察して作品を反芻するタイプの人からの評価は、目に見える欠点を認めた上でもそこそこ高い。
そのために、私はこの後そのための解説と考察をやりたいと思ったのだった。

ネタバレなしで、事前に履修しておいた方がいい作品をリストアップしておく。

●必須
・ディケイドTV本編全話
・最終回後の映画予告ネットから探す
・ジオウTV本編全話
・ゲイツマジェスティ

●副読本的に観ておくと尚良い
・スーパーヒーロー大戦
・平成ライダーVS昭和ライダー
・仮面ライダーキバ(全話がベストだが序盤だけでも……)
・ユリイカ2012年9月増刊号(仮面ライダー特集している回)

●作品を観る順番
ディケイド→ジオウの順番で一話ずつ観ていく。
(両方視聴が必須)

これだけあるという時点で敷居の高い作品であるのはハッキリわかる。
大部分はTTFCの見放題に含まれているのが小さな救いだろうか。
例外品として、ユリイカなんてライダーファンでも読んでる人はかなり希少だろうなぁと書いている自分でも思う。副読本的というかホントの副読本だ。

ディケイドはそんなに思い入れはないからジオウだけ楽しみたいというファンは、ジオウ側だけ押さえておけばオッケーなので、そこまで敷居は高くないとも言える。
(以後はネタバレ前提の考察)

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