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【感想・考察】仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ 50周年に描いた歴史とテーマの意味

2022年1月14日

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三層構造で読み解くビヨンド・ジェネレーションズ

ビョジェネのキャッチコピーは『時代を超えた、100年に一度の〈変身〉』と『未来、襲来。』の二つだ。

物語もいきなり悪魔ディアブロに支配された未来から始まる。
しかも未来のライダーである百瀬龍之介はおっさんで、五十年前の過去に自分の『息子』を探しにいく。
小さなお友達はもちろん、他の視聴者を混乱させることも辞さない挑戦的なスタートだ。

そしてこの五十年前が現在で、仮面ライダーリバイスの世界観に繋がる。
(リバイスの世界とセイバーの世界は地続き)

現在(50年前)に復活したディアブロを倒すため、龍之介は息子の秀夫と共に、仮面ライダーセンチュリーへと変身して戦う。
しかし秀夫は父親を毛嫌いしておりセンチュリーは力を出し切れず、しかも暴走した。

そして過去にいた息子の秀夫は龍之介よりも更に年上で、外見はまさしくその辺にいる一般人のおっさんだ。
この原因を説明するために、物語は更に五十年前の過去まで遡る。

龍之介はなんとショッカーの元科学者で、本郷猛の改造にも加害者サイドで関わっている。己の研究のため一度は悪魔に魂を売った男だった。
スタート直後のよくわからんおっさんから見れば衝撃の正体ではあり、運命を感じさせるようなジジ崎の驚きに相応しくもある。

本作では未来(センチュリー)・現在(リバイス&セイバー)・過去(1号)にそれぞれの仮面ライダーがいる。
時を越えつつ、ライダー達の活躍を描いていた。

今回の1号は当時の活躍を描く必要があり、藤岡弘、氏ではなく息子の藤岡真威人氏になった一因はここにある。
なお、ゾル大佐はネルフで司令ができそうな良い声になった。
石橋蓮司氏の死神博士、大杉漣氏の地獄大使など大物がショッカー幹部を演じる流れは個人的にかなり好きなのだけど、立木文彦氏の登場はかなりテンション上がった。

とはいえショッカーが出ると、それだけで否応なしに作品の知能指数は一段階下がる。
五十年前のリアリティレベルや世界観が、現在とは根本的に異なるのでこれは仕方ない。

それでもディケイド等はそれを折り込み済みで作品を作っているため、クロスオーバーとして一種の味になる。
財団Xはリアリティレベルを確保した現代のショッカーになろうとしていた(あえて過去形)。

本作のオリジナル怪人であるディアブロが作品の陳腐化に拍車をかけた。
怪人態しか姿がなく、デザインも強そうな怪人程度で圧倒的な凄みや特別さはあまり感じられない。

性格もただただ典型的な悪い奴でしかなく、とにかく終始薄っぺらかった。
キャラ性だけで言うなら、昭和の怪人に混ぜてもまるで違和感がない。

そのため残念ながらボス敵としては何の面白味もないが、設定だけはギフ様と対を成し、ショッカーも制御できずに封印した超存在。完全にキャラ性が設定を殺している。

オルテカとフリオは瞬殺。アギレラは無条件平伏して、奴隷であると認めて使いっパシリになった。
ディアブロにカリスマ性が全くないどころか小物臭さえするため、連鎖的にこんなデッドマンズは見たくなかったという感情が先立ってしまう。

過去・現在・未来を繋ぐキーの一つとなるボスキャラがものっそいつまらない。
正直、スーパータイムジャッカーさんや時の管理者リーダーもキャラだけみると微妙なのを、怪人態デザインの特別感と、それぞれの役者さんの演技で深みを出していた。
怪人幹部の人間態が如何に大事か、改めて再認識できたのは貴重な収穫だったかもしれない……。

とはいえ、もう一つのキーである龍之介は大変良い味を出しており、ディアブロのどうしようもなさをカバーしていた。
ディアブロは舞台装置として割り切って、龍之介を物語の軸としていたのは間違いないだろう。

また、だからこそ本作にゼロワン組が登場しなかったのは大正解だった。
表面上だけでみると、令和組の中でゼロワンだけがハブられてしまったのは残念で不満に思う人がいるのは理解できる。

だが、ゼロワンの世界観はかなり特異である。
渋谷隕石が落ちたカブトや、三国に分かれて戦争を始めたビルドのように、前後の流れを完全に断ち切る存在だ。
そのためセイバーの最終章でヒューマギアが出たのはかなり浮いた。

リバイスは仮面ライダーの世界をものすごくふわっと繋いでいる。ディケイドやジオウのような世界観上の言い訳もない。アメコミも驚きのふわふわ具合だ。
セイバーとリバイスは世界観レベルで直接繋がりがあるので、この違和感は最小限で済んでいる。
けれどゼロワンまで混ざってしまった途端に、一繋がりの世界観は一気に崩壊する。

加えて、ゼロワンは50周年ではなく令和の象徴的な立ち位置のライダーであり、そのバトンタッチはジオウとかなりしっかりやった。
50周年とは縁がありそうでない。そんな緩さだから、直接的な登場は控えてむしろ正解だった。

むしろその結果、ゼロワンは映画用のネオバッタバイスタンプとして扱われる。
他のライダーはあえて縁のない生物がモチーフのスタンプだが、ゼロワンはそのままバッタだ。
これはこれで特別感があり、リミックスでもオーソライズの巨大バッタを意識したデザインとなった。

戦闘では、メタルクラスタまんまかつ劇中最大の迫力を持った戦闘シーンでの大活躍。
登場せずとも強く意識はされており、ゼロワンの扱いは終盤の盛り上げ役としてむしろ評価している。

話を戻して要点をまとめよう。
この作品は百瀬龍之介という一人の男を軸に、仮面ライダーの始まりから百年後の未来までを一本の線として繋ぐ物語だ。
そして、だからこそ、本作の最も重要なテーマが色濃く生きてくる。

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【次ページ:オッサン二人のセンチュリーと若返った本郷猛の繋がり】

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