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「定価で売れ」は転売屋への援護射撃になる可能性
過去にTwitterで見かけたのだけど、様々な言い訳を盾にする転売ヤーに「じゃあ何故定価で売れよ」と蹴りを入れるイラストがある。
『定価で売れ』は転売屋に対するカウンターとして、よく使われる言葉だ。
過去にセミナーの懇親会にて、転売で食べている人に実際に『定価で売れ』と言われることに対してどう思うか対策などを聞いてみた。
そこでの返答は「じゃあ買わなきゃいいだけだよね(笑)」だった。
残念ながら腹立つとかそういう感じではなく、嘲笑するようなニュアンスである。
残念ながら転売ヤーを嫌って『定価で売れ』や『不買運動』は実のところ大した効果がない。
正確には全く意味がないわけでもないのだ。例えば転売ヤーに買い占められた限定グッズの再販が決定した等の情報をTwitterに流せば、再販を待つ人が出るだろう。
そういう対策としての意味は確かにある。決して転売ヤーを止める努力をする人達を否定したいわけではない。
けれど、この手の情報を拾えるのはTwitterで情報収集をしている人だけ。
そもそもTwitterなどのSNSで自分から積極的に情報を取り込むのは情報リテラシーの強い人達である。
新型コロナの影響で、トイレットペーパーが無くなるというデマが流れて、それを信じた人達と転売ヤーによって現実に売り切れ騒ぎが起きた。
それでもSNSを活用している人達は、デマを真に受けたという理由ではトイレットペーパーを買わないだろう。
他にも、最近見かけたネットニュースでもわかりやすい事例があった。
2020年のクリスマス商戦では、当然の如く『鬼滅の刃』関連の商品が人気になっている。
とある母親も子供達二人が『DX 日輪刀』を欲しがり買いに行ったが、どこも売り切れ! ネットでは高額転売が横行している。
それでも母親は転売に協力したくないという気持ちから、毎日行ける範囲のショップを回り、自転車で二十キロかけてようやく入荷を発見。
しかし商品はお一人様一つ限り……! 我が家の子供は二人……! 行き渡らぬ日輪刀……! 転売ヤー対策とはいえこれは無残! あまりに無残! ショックで崩れ落ちる母……!
結局、もう一つの在庫確保を求めてまた自転車で走り回ることに。
その姿を目撃した彼女の父親が「俺も手伝う」と援軍になった。
しかし、これが更なる悲劇を巻き起こす。
母親の父親、つまり祖父である。
情報に疎い世代であるおじいちゃんは、最近ハマったフリマアプリで『DX 日輪刀』を見つけてあっさり購入。
この状況では、フリマに流れてる時点で百パーセント転売ヤー確定と言っても過言ではない。当然の如く料金も大幅に割り増しされていた。
祖父は商品の定価と、そして転売ヤーの存在を知らなかったのだ。
何のためにうん十キロもかけて走り回ったのか……その母の努力は一瞬にして水泡と化して、父との仲も一時険悪になったのだった。
酷い話だがこれこそ現実。
『買い物=Amazon or メルカリ』でただ検索して欲しい商品を購入するだけの人や、使ってもせいぜいがGoogle検索で上位の情報だけで決める人。
いくらSNSで呼びかけても、こういった人達に「転売ヤーから買わないで!」の言葉は届かない。
転売ヤーのターゲットは情報リテラシーの低い層なのである。
ポッと出てすぐ消えていく者も多い業界だけど、長く生き残っている転売ヤーは決して馬鹿ではない。
情報強者が転売品に手を出す可能性が低いことは、最初から承知の上で売っている。
なので情報強者達が集まるところでの呼びかけは、実質あまりダメージにならない。
むしろ転売ヤーにとっては『嫌なら買わなければいい』や『買いたい人だけ買えばいい』という自己を正当化する理由になってしまう。
元々転売というシステム自体は合法のため、上記の二つは理屈の上では正論である。
チケット転売など明確に禁止されているものは別にして、ルールの上で成り立つシステムを否定するのは非常に難しい。
誰も転売ヤーから買わないは確かに理想だけれど、誰かは買うから転売ヤーは今も成立しているのだ。
あの手のイラストは現実的に『見た人が一瞬スカっとできる』以上の意味は持たない。とても残念ながら。
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